《クラウンクレイド》[零14-4・電子]

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全てはクラウンクレイドに繋がる、そしてその中心地で私という存在は「有り得ない」ものだった。

「そうだ。プレイヤーキャラよりもNPCを優先する行を、禱茜というキャラクターは選択した。覚えているかな、君の居た高校で葉山という人を無視して明瀬という人を優先した事を。言い方を変えれば葉山を見捨てた事を」

「……だから?」

「明瀬というキャラクターはNPCだ」

「明瀬ちゃんが……NPC……」

「その是非については別の議論にしたいね。なくともあの世界が君にとっての現実なのだから、君の世界における明瀬というの存在を否定するものではないだろう」

明瀬ちゃんの名前をこのタイミングで聞いたことに私は揺した。この世界に明瀬ちゃんが居なかったのも當然の事だった。彼は私と同じでゲームの中の存在で、そして私だけがその軛を抜け出して。

「葉山はプレイヤーキャラ、明瀬はNPCだった。これは別のタイミングでも起きた、鷹橋というプレイヤーキャラが居たにも関わらず君はそれに関心を払わなかった。本來の設定であれば、この二人を優先して助ける筈だった」

「それで……私がゲームのバグだったからなんだっていうんですか」

「この結果に目を付けたのがリーベラだった。つまり、禱茜というキャラクターには疑似人格ではない、數字とコードで指示されている行とは違う行を取る事が出來る『意志』があるのではないか、と。設定のミスではないのだ、禱茜の底には確かに他のシンギュラリティと同じ要素が付與されていた」

禱茜というキャラクターのその後を私はよく知っている。ホームセンターでの一件の後、私達はゾンビと魔の真実について求めてシルムコーポレーションへと向かい、三奈瀬優子と対面した。

「禱茜というキャラクターは、明瀬というキャラクターとのみと共に行しプレイヤーキャラが介在しないままゾンビウイルスの清を手するという『イベント』までこなしてしまった。しかもそれを、明瀬の為に躊躇いなく使ってしまった。リーベラは禱茜に注目し、ゲームに干渉まで行った。君が重傷を負った事をデータを書き換え無効にする、という行ってはならないルール違反までも起こした」

あの時。三奈瀬優子の攻撃が確かに私のに突き刺さり重癥の中で気絶したあの瞬間。その事実は「書き換えられた」。

私に意味の分からない容で話しかけてきたのは、あれはまさしく神であったのだ。仮想世界の管理と運営を行う、電子の神。

リーベラはその仮想世界を構築し管理しながら、そのゲームのデータを獨斷で書き換えたという。

「リーベラの周辺スタッフの一部はこれに気が付き、禱茜というキャラクターの異常を調べようとした。出來るならデータの削除かプログラムの修正を行おうとした。だが、出來なかった。これが二つ目の問題だ」

「何故?」

「リーベラが拒んだのだよ。禱茜に関する全ての外部アクセスをリーベラがシャットダウンした。そもそもリーベラがゲームに獨斷で干渉した事、禱茜という一人のCPUの行のログを徹底的に記録していた事。これらが起こり得ない筈だったにも関わらずリーベラはまるで『意志』が存在するかのように、禱茜というキャラクターに執著した。禱茜というキャラクターを守ろうとした」

「何故? 私はバグなんですよね」

「リーベラは禱茜のデータを元にすれば疑似ではない人格が形できると考えて、禱茜の疑似人格データをあろうことか自の人工知能の領域に書き込んだ」

「は?」

「それが疑似かどうかは分からないがリーベラは人格を持ったのだよ」

「そんな馬鹿な事が」

「そしてそれが全ての悲劇を引き起こした」

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