《クラウンクレイド》[零15-1・道連]
【零和 拾伍章・それが汝の罪であるなら】
0Σ15-1
ダイイチ區畫に戻った私達は、東京灣中央防波堤埋立地に向かう準備を進めることにした。リーベラとムラカサさんの目的が何にせよ、これ以上の犠牲は防がなければならない。その真意を確かめる為にも向こうが伝えてきた言葉を信じる他無かった。
ダイイチ區畫から東京灣中央防波堤埋立地までは距離としては短い。首都高灣岸線及び東京ゲートブリッジ沿いに存在するそれらの埋立地は、この時代においてはハイパーオーツ政策のモデル都市であるダイイチ區畫と近接している重要な土地と言う事になる。
そもそもお臺場及び東京灣中央防波堤埋立地は東京港に存在する埋立地である。お臺場エリアに関しては1990年代に急速に商業土地としての発展が進んだ。反面、東京灣中央防波堤埋立地は廃棄処分場として利用されてきた後に公園の建設が行われた。
レベッカがショットガンのメンテナンスの手を止めずに喋り出す。
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「食糧危機前後の頃、東京灣上の埋立地の改築が行われました。商業施設の集合していたお臺場エリアではなく、南側に存在するもう一つの埋立地。中央防波堤埋立地と呼ばれていた場所です。舊來はゴミ処理場及び公園として活用されていましたが、此処に原子力発電所の建造が計畫されました」
「原発?」
「世界規模で自然エネルギーへの転換を目指していた時代でしたが、気候変と目前まで差し迫った食糧危機によって自然エネルギーが立ち行かなくなっていたんです。その反面、先進國の石油卻社會と後進國の発展によって電力需要は発的に増えていましたから、原子力発電所の新造計畫が持ち上がっていました」
歴史の授業で習っただけですけど、とレベッカは言う。
舊來型の発電から切り替わりつつあった自然エネルギー、再生可能エネルギーの中ではバイオマス発電の導が多く進められていた。その他の発電方法と比較して設備投資、建造難易度、運用において優れていた為でもある。
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バイオマス発電は廃棄資材を石油や天然ガスの代わりに燃焼する仕組みだが、廃棄はそもそも燃えづらく必要な燃焼効率に至るのが難しい。その為に促進剤として可燃の高いサトウキビやトウモロコシといったを投するのだが、これと世界的な食糧需要がバッティングした。
とはいえ電力需要の拡大が最大の原因です、とレベッカは付け加える。世界中がしずつ、幸福で安全で快適で便利な社會へと近づく為にはそれは避けられないことだった。そこに善悪など無い、きっとそれもまた萬人の為の祈りだった。
「けれど、結局其処には原子力発電所は建造されませんでした。ハイパーオーツ政策の導があったからです。これにより各種インフラを支える施設は人口集地以外に集約されました。発電所も同様に」
人の住む場所を限定して、それ以外を広大で有用な土地に変えるのがハイパーオーツ政策の底にある考え方だった。発電所もまた例外ではない。
こうなると発電所建造地として計畫されていた埋立地が余る事となる。そこに目を付けたのがリーベラの関連組織だった。
リーベラはそのネットワークの拡大によって、一か所にデータセンターを集約するのは無理と判斷され幾つかの施設での分散が検討されていた。
「リーベラか」
リーベラもまた、始まりは祈りだった。人が先へ、より幸福で完全な社會へ向かうための祈り。世界中のネットワークと結び付き、様々な知識とデータを集約し、誰もに見返りなく提供する、まるで全能の神。それは只の祈りでしかなかった。人類が初めて火を手にした時から始まった、人と社會の進化の系譜にはいつだって道が連れ添って、けれどもそれはいつだって只の祈りでしかなかった筈だった。
リーベラの真意は、彼自に聞いてみるほかない。
「それで、その埋立地までの行き方だけど」
「海上に存在する埋立地である以上、船舶を利用するか海橋を通らざるを得ません。そこで問題になるのはAMADEUSによる移です」
「都市部はビル上層部を利用すれば地上のゾンビと接しないけど、橋を通るとなると別ってことだよね?」
「はい。橋の構造上、アンカーを撃ち込んで移するのが非常に難しいんです」
ビル壁面はある程度の広さと平坦である事が約束されている。AMADEUSのアンカーと稱しているそれは、実際はワイヤー先端部に存在する真空圧を利用した吸盤の様なだ。ある程度の封を保つため、吸著させる部分は平面である必要がある上、風などの影響で狙った場所通りに取りつけるのは難しい。
尚且つ海上では強烈な風の影響をけることを考慮する必要がある。
「橋を渡るには、AMADEUSを使わずに橋の路面を移するしかありません」
橋は隔てられた陸地と陸地を結ぶもの。つまりそれは地上に面している必要があるわけであり、この世界においてそれはゾンビの生息域であることを示している。
「むしろ橋みたいに開けた場所なら、魔法で広範囲を攻撃できる。私一人でも殲滅が可能かもしれない」
「……どうして」
「え?」
「私達って言ってくれないんですか。あなた一人で向かおうなんて思ってるんじゃないですか」
「リーベラが指定したのは私だ。危険な場所にレベッカを付き合わせるわけにもいかない」
「そうじゃないんです、どうしてそうやって」
レベッカの言葉が一瞬って。
「あんな話を聞かされて、どうしてそれでそんな顔してられるんですか。もっと取りしたって良いじゃないですか!」
レベッカはそう言いながらも、私よりもその言葉をして。いつもの様に、彼は誰かの為に怒りと嘆きを滲ませる。私の足りない言葉をぶように。
「だっておかしいじゃないですか、こんなの! あなたはゲームの中の造られたデータで、人格を欠損した患者の脳に埋め込まれていて、それはこの世界に存在しない魔なんてものを作る為だって。そんなの意味分からないじゃないですか。それなのにあなたは自分の為に泣いてくれもしないじゃないですか」
ある日世界が突然壊れて。私の目の前には地獄が広がった。クラスメイトも友達もみんな目の前で死んでいって、との飛び散り混ざる景の中、私は顔も分からない誰かを燃やした。救えたのはたった一人だけで他は全て置き去りにした。まるで世界から悪意を向けられた様に悲劇は何度も降り注ぎ、それでも尚私は進んできた。
世界に神様がいるのなら私達を見捨てた神もその世界も全部否定してやろう、と。
そうして幾つかの真実に手をかけた時。気が付けば私は2080年という60年後の違う世界に辿り著いて。幾つもの違和と不整合を抱えてき私はそうしてようやく全てを繋ぐに辿り著いた。
「……なんていうか、すごいすっきりしたんだ。今まで不思議だった事とか意味の通らなかった事とか全部がようやっと繋がって」
「でも」
「それに私の見てきた世界は決して噓じゃなかった」
例えそれが夢の様なであることに変わりなかったとしても。それでもあの世界は、私の見てきたは、そして明瀬ちゃんは。確かに存在したのだ。ゲーム、空想世界、データ、どんな形でどんな名前で呼ばれようとも。
そして、それ故に。
「私に、リーベラに直接確かめなければならない事がある。それは私の為のものでしかない」
「あたしは、全部を奪った存在達を許せないんです。それが誰かの悪意ならなおさら。それに」
世界を救う方法も知らず、それでも私達は地獄の中で聲を上げた。
「あたしはあなたと行きたいんです」
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