《クラウンクレイド》[零17-1・迷路]
【零和 拾漆章・零和-Zero sum-】
0Σ17-1
レベッカがハンドガンの引き金を引き銃聲が轟いて。咄嗟にムラカサがを翻す。その隙を突いて禱が駆け出した。リーベラが存在している地下へのエレベーターの扉へ向けて駆けていく。
それを見たムラカサがハンドガンの銃口を禱へと向けたが、レベッカが咄嗟に照準を向けて発砲する。
「ちいっ!」
「あたしは禱とは違います!」
立て続けに撃ち出した銃弾が、立ち並ぶ強化ガラスの壁にめり込んで亀裂の様なヒビをれていく。を翻して踴るように跳び退いたムラカサが一発レベッカに向けて発砲し、レベッカがを屈めた隙に壁の背後へと回り込む。
無數のサーバー機が収められた天井まである棚は幾つも立ち並び部屋全を迷路のように変えてしまっている。ムラカサを追ったレベッカが壁を回り込むと其処には彼の姿はなく。咄嗟に背後へと勢いよく振り返り引き金を引く。
その隙に回り込んだムラカサが壁際から一瞬を出すも咄嗟にを引く。その場所で銃弾が跳ねた。咄嗟に引き金を引いたレベッカの反応速度にムラカサは小さく口笛を吹いた。
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「強化ガラスが持つか不安だ。あまり撃ちまくるのは止めてもらいたいものだな。この中に詰まっているのはこの世界のありとあらゆる報だ、損失は計り知れない」
「全部壊そうとしている癖に何を言ってるんですか!」
いた気配に向けて引き金を引くも、そこにムラカサの姿はなく床に當たった弾丸が跳躍したばかりだった。迷路とでも言うべき場所で、レベッカはムラカサを追って走り出す。ハンドガンをホルスターに戻しショットガンを抱える。
壁が途絶えた手前で一度足を止め、背中を預けて、引き金に指を掛けたまま通路の曲がり角に踴り出る。しかし飛び出した通路には誰の姿もなく、レベッカは即座にき出す。
迷路にい込まれたという焦りと同時に、ショットガンを持っている相手には近付きづらいだろうという読みもあった。実際この迷路は、室に無數の棚を平行に並べていった場所だ。中には機が積み重ねられていて反対側の通路は見えず、不規則な形で壁が途絶えている事から、互いに出合頭での衝突が予想される。
至近距離でならばショットガンは一撃で済む。その有利がある以上、警戒すべきは背後からの不意打ちだった。
「あなたは逃げ出しただけなんじゃないですか!」
レベッカはそう怒鳴る。
「正しい世界なんて言ったって、理想を実現するのが無理だったから全部壊そうとしているだけなんじゃないですか! 言葉も手段も盡くさずに、上手くいかないものは切り捨てるなんて只勝手なだけじゃないですか!」
「変わらぬ方が悪いとは言えないかな。何度も繰り返してきた過ちだ、時間の無駄でしかない」
聲は歪に反響していて相手の場所が読めない。機がき続けている事で音がしていて、相手の足音もかき消してしまっていた。
人間相手の戦い方はウンジョウから教わっていた。いつそんなものを使うのか、というあの時の疑問は間違っていたようだとレベッカは思い直す。
聲の調子はさず、強気に出て相手の虛勢を砕く。銃撃戦の経験がないのは向こうも同じ筈で、その余裕をしてやらねばならない。
「自分のやり方が間違っているから、そう分かっているからなんじゃないですか! 自分の理想が理解されない相手なんて人間じゃないって頑なになっているんでしょう!」
「では君は世界をよりよい方向に導けるのかね、時間はないぞ。ゾンビとの生存ゲームに持久戦では人類に勝ち目はないよ」
レベッカは足を止める。通路の中央、左右どちらからの接近にも気が付ける場所で警戒をする。
禱がリーベラを破壊する可能がある以上、ムラカサは焦っている筈だった。ならば向こうから仕掛けてくる可能が高い。
ムラカサの聲は絶えずレベッカをあざ笑う様に位置がき続けていた。正確な方位と距離を摑ませないように立ち回っているらしい。
「ゾンビにだって限界はある筈です、人が手の屆かない位置にいる以上」
「何故、5年もの時間が経過しているのに世界からゾンビは消えないと思うかね」
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