0Σ17-2

「何を」

「ハイパーオーツ政策以外にも、食糧危機の卻の為の策は幾つも研究されていた。様々な國、機関、研究者、そのの一人は人の食生活、ひいては人の食を変えてしまえばいいのではと考えた。肝臓を変異させてで超超高分子化合を造り出す、それによってより長い期間での生命活を可能にする」

レベッカはその話に思い當たる節があった。禱から聞かされた話だと。ムラカサはとある研究者の関係者であり、その研究者は食糧危機卻の為に奇妙な案を見出した。ハイパーオーツとは全く違う案。

「ゾンビの底にはその技が使われているというんですか」

ゾンビ化はウィルスなどではなく人為的なナノマシンの暴走によるものだった。それは人間の中樞神経を破壊し、ホルモン分泌を異常化させ、そして肝臓の構造も変えてしまったらしい。だが、肝臓の変異が起きてもそれは魔法の類ではない。無限のエネルギーを産み出せる魔法は存在しない。

「だからといって5年もの間活出來る筈がありません」

「そう、あくまで長期間の『穏やか』な生命活を可能とするだけだ。彼等が何も食べていなければ、という仮定が間違っている」

「まさか……」

レベッカは息を呑む。

確かに確認はされていないだけだった。パンデミックの日から月日が経つにつれ、人類がゾンビに注意を向ける余力も必要もなくなった故に、何処のタイミングでゾンビの行に変化が生じていても気が付けない。

「彼等は私達と同じ様にハイパーオーツ政策の恩恵をけているよ。今まさに自分達を殺そうとしている存在から目を背け仮初の聖域を謳歌してきた人類には気が付けなかっただけだ」

リーベラはゾンビの原因に関わっている。いや、そもそもゾンビパンデミックを引き起こしたのも、そのゾンビ化の為の技も、全てリーベラによるものであった。パンデミック後にゾンビの活を支えていたとしても不思議ではない。

「いや、しかし理も知識も喪失しているゾンビにそんなことが」

「彼等は実に高度な共同社會を構しているよ。リーベラの手引きで食糧は一定地域に放出され近場のゾンビがそれを食う。そしてそのままそのゾンビ達は各地に散っていく、どうしてか分かるかい？　共食いをさせるのだ」

「な……」

「えたゾンビはそのを、遠方のゾンビの集団に差し出す。そしてまた別のゾンビがハイパーオーツを食ってえていく。その繰り返しだ」

その景を想像して、狂気と醜態に中てられて、レベッカは元までこみ上げてきた吐き気を必死に堪えた。

それを高度な共同社會と呼んだを疑う、とレベッカは思う。

ある程度の食摂取が見込めるのなら、確かにゾンビは長期間の活を可能とする。単純な思考回路、平時の行鎮靜は必要エネルギーを減らし、変異した肝臓が造り出した超超高分子化合は分解のしづらさから非常に高いエネルギー効率を可能とする。ブドウ糖の貯蔵と分解において哺類と大きく異なる機能を獲得していたなら、彼等の生態にも説明が付く。

レベッカは禱とクニシナから聞かされていた話を思い出した。肝臓を変異させてで超超高分子化合を造り出す、それによってより長い期間での生命活を可能にする。

ムラカサはその研究をしていた研究者の関係者だった。

レベッカはムラカサにその點を問いかける。

「肝臓機能変化の技、その研究をしていた科學者をあなたは知っている筈です。ムラカサと姓を変える前の名前はクノト、かつてその研究をしていた研究者と同じ苗字ですよね」

レベッカの問い掛けに、やや間があってから。ムラカサは冷靜な聲で応えた。

「父だよ」

「クノト氏は食糧危機に直面した人類の構造そのものを変えてしまう方法を発案しました。人間の肝臓機能を変化させることで食糧そのものの消費量を減らす事を考えた」