0Σ18-4

私の視界の隅で閃が瞬いて。危機が働いて反的にを屈める。屈めた頭上を鈍い音が駆け抜けて風圧が私の髪を襲う。空を斬ったのは一振りの刀だった。私の死角から一気に斬りかかってきたロトの姿を認めて私はを噛む。

その冷めた表の中に、その瞳の中に、灰の渦と私の姿を閉じ込めてロトは私へと刀を斬り込む。

「禱茜は排除する、此処で」

「刀！？」

を屈めてその一撃を回避した私は、咄嗟に杖を振り払う。ロトがを翻す瞬間に足元に焔を撃ち込む。地面でぜた焔の塊が互いの眼前を焼いた。

ロトに遅れて私も跳び退いて。後方へ跳んで著地すると足元で金屬質の乾いた響きが鳴る。私の正面でロトが素早く足並みを揃え刀を構えなおす。その刀は黒く鈍く煌めきを返し、張り詰めた空気を裂いていく様で。

刃は言うなれば殺意の顕現だ。れれば死の概念を彼は握っている。私を殺す事にきっと躊躇いはない。

左手を払いハンドガンの弾數を確認する。裝著したワイヤーガンの引き金に軽く指を當てて私も構える。

「リーベラを守ると？」

「リーベラは必要、世界を変える為に」

「ムラカサさんに絆されたか」

「彼は正しい、だけど私は自分の意志で此処にいる」

ロトが羽織っていた黒のマントをその場にぎ棄てる。その下に見えたのは、彼の四肢に裝著されたWIIGと同様のワイヤーガンだった。手首と足首に裝著された二対のワイヤー出機構。引き金の類は見えず、まるで籠手の様に裝著されている。

「表面筋電位によって作するWIIG、あなたの手式よりも速く、そして」

「……エヴェレット！」

「自由！」

彼が微かにくと同時に私は杖を向け焔を撃ち出すも、それはを屈めて回避された。ロトが距離を詰めようとするのを見てアンカーを対面の壁に向けて撃ち込む。ロトが左手を掲げてそこからワイヤーが出される。

互いに撃ち出したワイヤーが差し、コンクリートの壁面に打ち込まれると同時にAMADEUSが唸りを上げる。

私とロトが同時に地面を蹴ると空中で加速して、差と同時に杖と刀がかち合って。鋭い金屬音が響いて、その殘響が耳の奧まで屆く。私の弾いた刀の煌めきが、空中で煌めいた。互いに弾き合って宙を舞った切っ先が示し合わせたかのように一斉にまた振り下ろされる。

ぶつかり合った刃がしなって、私は踏み込む。押し込まれた刃の勢いを杖で去なす。私は咄嗟にワイヤーを後方へと撃ち出してを翻す。

足元に焔を撃ち込み炎をぶちあげ、その間に距離を空けながら私は焔をロトへと向かって撃ち出す。ロトがAMADEUSを完璧に制して空中で曲蕓の様にを捩り、焔の弾丸をかいくぐる。両手両足のワイヤーを用いたきは複雑で進路の予測が難しい。

ロトが手を翳す。その手の平で煌々とした紅が眩く表れて。轟音を反響させてそれは撃ち出される。焔の塊が弾丸の如く連続で翔んできていた。反的に杖を構える、外れなかった一発を真正面からけ止める。空中で弾けていった焔の塊が、それでも尚執念深く火のへと姿を変えて私へと迫る。纏った防火加工のされているマントがそれを弾き返す。

以前対面した時に彼が使った魔法は私と同じ炎の魔法だった。

クラウンクレイドという仮想世界のゲームで魔法という存在のデータ取りが行われていたのならば。

私のデータがある程度理論化されて再現されていると考えるならば。

「ならばこれはどうする、禱茜！」

「やっぱり、禊焔－みそぎほむら－まで同じか！」

ロトが空中で刀を橫薙ぎに振るい、その煌めきと共に熱線が放たれる。私はワイヤーを切り離しコンクリートの壁を蹴って空中へと飛び出す。熱線を寸前でを捩り躱す。行き場を失った熱線がコンクリの壁を溶かしながら紅の傷跡を殘す。熱線にれた空気が膨らんで熱された旋風へと変わり私のを橫毆りにする。空中でワイヤーにを預けたままAMADEUSの出力を落とす。熱風に煽られたのを利用して空中を大きく移しながら急降下をかける。

「人の真似なんかじゃ！」

落下しながら私は鍵を前方へと構え、ロトと同じ様に熱線を撃ち出す。一拍置いてから、激しくと火花を撒き散らして熱線が走り抜ける。空気を焼き含まれた水分を蒸発させた音が鳴り響く。

熱線へと向けてロトが焔を放った。今までよりも巨大な焔の塊が熱線とぶつかると空中でぜて炎上する。その炎は壁の様に私達を遮って。

そこへ一閃、ロトが刀を振り抜き炎をかき消す。雨の様に降り注ぐ焔の殘骸の中を突っ切りロトが距離を詰めに來る。

私は空中で勢を整えながら鍵を構えなおしワイヤーを巻き上げる。再び熱線を放つ為の時間を稼ぐ為に私は怒鳴る。

「リーベラに何を求めてる、私と同じように人格を得て、あなたは何をんだんだ！」