《クラウンクレイド》【クラウンクレイド NARKOSE】《N1-2・現実と悪夢》
N1-2
部屋の扉を開ける音がして私は目を覚ました。非常時かと思い咄嗟にを起こすと、雙子の妹である由比が靜かに部屋にってくるところだった。目が合った彼は、私に囁く。
「起こしちゃった? 波留姉ーはるねぇー」
「何かあったの?」
「何でもないよ。おやすみ、まだ夜中だから」
私は分かった、と頷いてまた布をに巻き付ける。冬の冷気は窓を伝って染み出してきていて、カーテンの隙間からは窓にり付いた雪が見える。視覚的な季節の変化を目の當たりにすると、あの日から隨分長い月日が経った事を実してしまう。
考えない様に、と強く目を瞑る。そうして目を閉じても、由比が隣で寢息を立て始めても、私は未だ寢付けなかった。
そっと右手を持ち上げて。部室の天井をなぞるみたいに、空中で指先をかす。私はそれを何度も繰り返す。空中に文字を描く。
「何でもいい、何か……反応して」
だが何も起こらず、視界には何カ月も眺め続けた部室の天井が変わらず其処にあるだけだった。指先には、冷たい空気が纏わりつくだけだった。
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「駄目、ね……」
私はそっと傍らの由比に目をやる。彼は確かに眠りについたようであったが、その寢顔は張した面持ちで眉をひそめている。この極限生活の中での心労は計り知れないものだろうと、行き場を失くした手で彼の手をそっと握ってやる。
由比は私の雙子の妹である。同じ浦高校に通う二人であるが、雙子だと言わなければ気が付いてもらえない程似ても似つかない。
由比は活発で、金に染めたショートカットとピアス、著崩した制服の姿は大人しい私と対照的であった。陸上部に所屬しておりその運神経の良さも私には無いものだ。
私、波留の方は生徒會役員を務め、績は校上位と優秀、絵に描いたような優等生である。
という設定らしい。
このゲームの中では。
「私は……」
ゲームの世界に囚われている。
日本のみならず世界規模で同時発生したゾンビパンデミック。その中で生存を目指すVRゲームが、今私のいる世界だ。ゾンビパンデミック発生と同時にゲームは開始され、プレイヤーはこの世界の住人としての役割を與えられRPG的に振る舞う。私であれば高校生の雙子の姉というキャラクターが與えられ、波留というとしてこの極限狀況を生き延びてクリアを目指さなければいけない。
このゲームの最大の特徴は、リアルな人格を與えられたNPCだ。彼等はプレイヤーをゲームクリアに無條件に導いてくれず、一人格として振る舞う。
故に、極端な話、私が由比に酷い言葉を吐けば彼が腹を立て、私を見捨てて去っていってしまう可能すら在り得る。
プレイヤーはリアルな人間関係を築くのと同様に、他の人々を協力したり、渉したりしなければならないのだ。
最も、由比に優しく振る舞うわけのは損得勘定というわけではないが。
私は設定上とはいえ、この雙子の妹に対して慕を抱きつつあった。何度も彼の機転に救われてきたし、生活を數ヶ月も共にしてくればそうもなるだろう。
そう、數カ月。
あのパンデミックが起きてから數カ月が経ち、季節は雪の降る冬へと変わった。
そして私は。
一度もログアウト出來ていない。
このゲームの世界から出出來なくなってしまった。
これが型ゲームである以上、この世界からの出「ログアウト」もこの世界の中で行わなければならない。本來であればプレイヤーである私が、指で空中に文字を描く事でメニューを呼び起こせる筈だった。だが、何度やってもログアウトどころかゲームメニューの呼び出しすら出來ない。視界の中はいつも私の指が虛空を裂いていくばかりだった。
世界はそこら中にゾンビで溢れていて、目の前で人が簡単に死んでいく。水と食糧の不安に怯えながら、いつ來るかも分からない救助とどうすれば終わるのか分からないクリア條件を模索している。
これはゲームだと知っていても、數カ月間ログアウト出來ず、この世界に閉じ込められていては気が狂いそうだった。
現実世界の私はどうなっているのだろう、何故ログアウト出來ないのだろう。何か重大なバグが、このゲームで起こっているのではないだろうか。夜中に目を覚ますとそんな事ばかりを考えてしまう。
そして何よりも。
この狀態で死んだ場合、現実に戻れないのではないだろうかという妙な不安と想像が私を蝕んでいた。この世界で死ぬことで現実世界の私も死んでしまう。そんな想像がずっと脳裏を過る。
このゲームの景があまりにもリアルであるから、そんな風に錯覚してしまう。
私はどうすれば、この世界から抜け出す事が出來るのだろうか。
「波留姉? 眠れないの?」
由比の聲がした。彼は橫たわったまま、私の方に顔を向けて。不安げな表に向けて私は囁く。
「変な夢を見てしまっただけ、もう寢るわ」
明日には、この悪夢が終わるだろうか。
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