《クラウンクレイド》「6話・啓示」【クラウンクレイド閉鎖領域フリズキャルヴ】
言葉だけならば誰が間違っていたわけでもなかった。ただそれぞれの正しさがあるのみで。
それでも辿り著いたのは、およそ正しいとは言えない結末で。
しかし。それでも。
城の最上階で禱は明瀬の姿を見つけた。事前に志麻から得た報通りであった。
明瀬の手足に拘束の類はなく狀態であったのだろう。
禱の姿を見て明瀬が表を明るくする。禱は明瀬のに怪我の類がないか確かめる。窓の外からは、遙か直下の喧騒が僅かに聞こえてくる。その音に明瀬は不安な様子で禱に問う。
「何が起きたの」
「夜長に反対する勢力が行を起こした。私はそれに協力する見返りに、この場所の報を得た」
「反ってこと?」
禱は頷く。最上階の部屋に備え付けられた窓から外の様子を確認する。禱達の荷は志麻の手引きで取り戻してあった。明瀬を取り戻した今、この場所に価値はない。
「既に死傷者が出ている可能が高い。夜長側が制するにせよ、反対勢力が勝つにせよ、混は免れないと思う」
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平和的な解決に落ち著くとは思えない、と禱は言う。その混に乗じて出すると。
禱の提案に明瀬は口を挾む。
「待って、禱。このまま、このコミュニティを見捨てる気?」
「私達が介する意味がない」
「それは違うと思う」
明瀬の否定の言葉。今すぐにでも出したい禱に言い聞かせるように。
「この世界はゾンビで埋め盡くされて壊れてしまった。あたし達はそれを修復しようとしてる。そうしてゾンビは止められるかもしれない。でも世界を修復するってゾンビを止めるだけでいいの。荒廃した社會や世界を正常にしていくこともそうじゃないの?」
「私が夜長達の問題を解決できるとは」
「それでも、このコミュニティが悲劇的で非人道的な結末を迎えるなんて認めたら、この場所から目を背けつづけたら、きっと何も救えない」
明瀬の正論に、その正しい言葉に、禱は頷く。これもまた、彼らと同じ正しさでしかない。けれども。たとえ、それが歪だと分かっていても明瀬の言葉には従うのが禱にとっての正しさでもあった。
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禱は無駄と分かっていても説得の言葉を選ぶ。
「何かあった時に守り切れないかもしれない。過熱した彼らの行が理や言葉で止まるとは限らない」
それでも明瀬が守ろうとするものについて禱は理解していた。狂った世界だからこそ、人ならざるものが支配する世界だからこそ、人間というものに固執しなければ、人はすぐに人でなくなってしまうのだと。
ゾンビとの生存競爭の果てに生き殘った果てが人ならざる人となってしまうことを嫌っているのだと。
だからこそ、たとえ愚かで理想でしかない言葉だとしても。
明瀬は人である為の最後の一線を守ろうとしている。
禱はその意志を尊重したかった。だが、明瀬を危険に曬す可能を考慮すると首を縦に振れずにいた。
そんな禱に明瀬は言う。
「何があっても禱が助けてくれるって信じてるから」
その言葉に禱は虛を突かれるも、気を取り直して頷き決意を示す。
混沌と化したこの領域を平定させる為に。ひいては人としての在り様を取り戻すために。
城外での混はひとまずの終焉を迎えたようだった。城外へと降りた禱達はその景を目にする。
傷つき倒れた夜長を前に勝者として立っていたのは志麻だった。
その周囲にも幾つもの人間が地面に臥していた。夜長の片腕である神流と志麻の協力者達の姿だ。互いの勢力は相打ちのような形でありながらも、最後まで立っていたのは志麻の方であった。
そして今、夜長の死によって決著を迎えようとしていた。志麻が手にした刃を振り上げる。
「禱!」
「分かってる」
その手にした刃を狙って禱は焔を撃ち出した。正確な一撃でそれを弾き飛ばす。
両者の決著に割り込んだ禱はぶ。
「そこまでだ!」
「一何を」
「私達はこの狀況の決著を対話によって解決することをんでいる」
全ての視線が向いていた。様々ながり混じったその中で禱はその手に焔を掲げる。既にこの事態、互いに犠牲者の出ている今、向かう先は憎悪と破滅でしかないのかもしれない。
だがそこに人である意味の楔を打つことを明瀬はみ、禱はそれに応えたくあった。禱がにとっての人である証左は、そこに存在しているからだった。
傷つき倒れた夜長が苦し気な呼気をらしている。周囲には四肢が折れ、もしくは刃によって傷ついた志麻の協力者。神流がに塗れた刃を手に崩れ落ちていて、憎悪の表で顔を歪ませた志麻が禱の姿に怒聲を上げる。
「今更何を」
「この反の目的は? 新しいコミュニティ運営方針の樹立? 圧政からの解放? それとも憤怒と私刑?」
禱の橫で明瀬は言葉を継ぐ。
「互いに憎しみを抱いて終わったら、相手を殺してそれで終わらせるなら何も変わらない。どんな形で幕を引くつもりですか」
禱と志麻が互いに向かっていき、激突する寸前で足を止めた。視線を合わせ今にも摑みかからんとする勢いで。志麻が言葉を滲ませる。
「目的は果たした。君にもう用はない。この領域から立ち去れ」
「私が従うのは明瀬だけだ。彼はこの『國』の崩壊を危懼してる」
「我々は民主主義としての在り様を取り戻すだけだ」
「こんな形で?」
「武力による圧政を敷いてきたのは彼だ」
「夜長の理想は青臭いものかもしれない。だがそれほどまでに嫌わなければならないものか」
「既に彼は人を殺すという引き金を引いているんだ。子供相手であろうと看過できない。彼はいずれ全てを壊しかねない」
「今、あなたは同じ道を進もうとしているのではないのか。誰かが止めなくてはならない連鎖にあなたは巻き込まれようとしてるのではないのか。それに夜長の力なしにゾンビにどう対抗するというのか」
「なら君ならば、どうするというんだい」
「私には何の権限もない、示すだけだ。別の可能を、今選ぼうとしているものの行く末を」
「それなら、君は人間というものに期待をしすぎている」
志麻は示す。この事態を遠巻きに眺め見つめる人々の姿を。傍観者の姿を。
遠巻きに事の顛末を見屆けようとしている。
絶対の正義など存在しない、夜長も志麻も正しい側に立っているわけではない。だが、だからこそ人々は何も聲をあげなかった。ただ、この閉鎖領域で靜かに待っているだけだった。
結末が提示されるのを。
きっと誰もが夜長の全てを肯定したわけではないだろう。夜長に不満を抱くこともあっただろう。それでも夜長の力に頼り求めた。相反し矛盾しても。
そしてそれを靜観し続けた。
次に提示されるを待っている。別の側面を示す志麻の姿を見ている。
志麻は人々の総意によって生まれた存在ではない、だが志麻を人々の総意が否定することもない。
待っているのだ。ゾンビによって崩壊した世界で、明日にでも命を落とすことになりかねない世界で、何者も救い手とり得ない世界で。この閉鎖領域で待っている。
彼らの次を示す何かを。
だからこそ、今。禱はこの場所に立てているし、志麻と向き合うことも出來ているし、夜長は臥せたままだ。
それは何度も目にした景の様に思えた。
こんな世界でも人々は與えられる次を待っている。
志麻は怒鳴る。
「それとも君が導いてくれるというのかい」
「私には果たすべき使命がある」
「そうだろう、人は全てを救えない」
そこに割り込んだのは遠方より響く悲鳴だった。
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