《邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜》第三百八十二話 老人
9章 Grim happy end
「……あんた。この村のもんじゃないだろ」
そんな聲をかけられたのは、ケンタウロスの酒盛りが終わり、人間達に與えられた僅かな小屋で雑魚寢をしようとしていた時だった。
「その通りです」
「そうか、どうやってったかなどは聞かん、早く出ていくがいいさ」
「おや、ケンタウロスに差し出さないので?」
シグレがそう言うと、話しかけてきた初老の男は「いいや、そんなことはしないとも」と言うと、壁にもたれかかって座るシグレの目の前に腰を下ろした。
「考えてみろ。謎の不法侵者がいる。でも見張りに立てた人間やケンタウロスからの報は一切なかった。つまり、見逃したと考えるのが妥當だろう。ケンタウロスの兵士は人間ごときのためにそんなことはしないから、疑われるのは人間達だ。自分が殺されるかもしれないことをやるわけが無いだろう?」
「その通りですね。しかし、出て行けとはまた突然ですね」
「理由は言わんでもわかるはずだ。見ただろう?奴らの傲慢さを。こんな所は好き好んでいる場所じゃない。早く出た方がいい」
「分かりました。しかし、一緒に出ていくとは言わないのですね」
シグレを気遣っているように見える目の前の男はどこまでも自分を蚊帳の外に置いている。
出したいとも言わないし思わない。
ただ、何かの方法を使い勝手にってきたシグレがケンタウロス達にバレると自分たちの立場が悪くなってしまうからバレないうちにシグレを追い返そうとしているだけである。
「出る気はねぇよ。俺はな」
「自分で好き好んでいる場所じゃないと言ったのに?」
「ああ、俺は出ていかねぇし、出ていけねぇ。なんてったって今はもうこんなんだからな」
そう言うと老人は自らの足をおおっていた紺のズボンを捲り上げた。
「なるほど、確かにその足では難しいでしょうね」
義足ではない。
曬されたものは老いさらばえてはいるがしっかりとした人間の足であった。
多が悪いが、それはこの村の狀況を考えれば仕方の無いことである。
というか労働力にもならない場合この老人なら、むしろまだマシなのではなかろうか。
そんなことを考えてしまうが、重要なところはそこではない。
「ああ、なるほど、きも悪いし逃げようともしない。その理由がよく分かりましたよ」
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