《邪神と一緒にVRMMO 〜邪神と自由に生きていく〜》第三百八十四話 ある老人の獨白

9章 Grim happy end

「戦えるものは居ないのかって?いたとも。ああ、いたとも」

「彼らは勇敢じゃった。細々と暮らしていた我々の村にケンタウロス達が襲ってきた時も、彼らは勇敢じゃった」

「村を渡してたまるかと、怪の好きにさせてたまるかと。村の勇者たちはすぐさま武を持ち、ケンタウロスに突撃して行った」

「しかし、そんなことは無駄だった。全くの無駄だったのだ」

「まず、先陣を切っていた村一番の剣士ホッグが死んだ。一瞬だったよ。數百m離れた先からでかい弓で一撃さ。俺の腕くらいありそうな鋼の矢がに刺さっててな。そいつのケツにまで一直線に貫通していたんじゃ」

「それからおなじことが立て続けに起こった。勇敢な若者たちが撃ち抜かれ、また一人、また一人と死んでいく。數人が死んだところで逃げ出したものも慈悲なく撃ち抜かれた。皆、一様にに矢が突き立てられておったよ。わしらは、最後までどこから弓を撃ってきているのか分からなかったし、そもそも飛んでくる矢すら見えんかった」

「それから先は考えるまでもなかろう。やってきたケンタウロス共に村は躙され、服従を余儀なくされた。この足もその時にやられたものじゃ。

……わしは、わしはその時、村長じゃった。もっと早くに皆を避難させていれば、助かったのではないか。そんなことを考えてしまうんじゃ。逃げ延びたものはいない。逃げていたものもケンタウロスに捕まってしまった。だが、もっと早く逃げていれば、あるいは誰かが生き殘ったかもしれない。そんな後悔が押し寄せてくる。最近には、亡くなった戦士達の聲が聞こえてくるようだよ。『ふざけるな』『俺達が死んだ意味はなんなんだ』とな」

「わしの心は、もう、折れてしまったんじゃよ」

「どんなに厳しくとも、たとえいつかは死ぬとしても。確実な死の待つ外に行くよりかは、此処で飼い殺されていた方がいいのではないかと、思ってしまったんじゃよ」

「これは村の総意じゃ。じゃから、わしらはここを出ていけない。哀れと笑え、愚かだと落膽しろ。これがわしらの答えじゃ。わかったら出ていけ。旅のよ」

そう言うと老人は振り返り、二度とシグレを見ることは無かった。

出し、夜の闇を進みながらシグレは一人思案する。

「緩慢な破滅か、一縷にも満たない希とその裏にある絶か。はたして、どっちがいいのですかね」

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