《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第2話A 勇者はどうしてもログアウトしたい。みたい!

メニューボードとは各プレイヤーが一人一つずつ必ず持っているアイテムで、それは持ちに分類されず、なおかつプレーヤーの手から離れたとしても必ずまた自分の手元に出現する特別なアイテムだ。

各プレイヤー同士でフレンド登録すると、いつでも相手プレイヤーのステータス狀態が確認でき、また相手からも確認することが出來る。仲間プレイヤーのステータス管理はとても重要で、視認出來る範囲であれば相手とも通信を行う事が出來る機能も備わっている。

ただし基本的に一人ひとつのアイテムであり、たとえ相手のメニューボードを盜もうとしても、起させる事は出來ない。それはこのゲーム「サウザンドオルタナティヴ2」では基本中の基本的な知識だ。

「な、なんだ?く、黒いメニューボードなんて見たこと無いぞ?」

本來ならば木の板のような質で薄い緑、裏側には金のキレイな細工が施されている。

だが、この黒いメニューボードは鉱石のような質で、裏側の細工は無く、その代わり裏にも表にも文字化けした文字がランダムに浮かび上がり、持ってるだけで気持ちが悪くなるような覚さえしてくる。

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「さっき間違いなく俺の服から落ちたはず。上著のポケットからスルリと抜け落ちた覚があった。つまり、俺の、2枚目のメニューボード??」

単に次回作になったからと言ってメニューボードが一人2枚に増えたとは考えにくい。機能を拡張したいなら、ステータス畫面のページ表記を増やせば良いだけの事。ではこの黒いメニューボードは一

おそるおそる黒いメニューボード中央に指をばし、メニューを開こうとする・・・

「あのぅ、大丈夫ですか??」

「うあお!!」

「きゃ!ご、ごめんなさい急に話しかけたりして!合悪そうだったから聲かけたんですけど・・・大丈夫です?」

背中側から急に聲を掛けられ、驚いてとっさに黒いメニューボードをポケットに隠す。なぜそうしたのか分からないが、が勝手に反応してしまった。

振り返るとそこに、かわいらしいがいた。白く明るいに斜めにとがった耳、そして金髪のショートボブが軽やかに風に揺れる。間違いなくエルフのの子だ。

「なんだか隨分顔悪そうですけど大丈夫ですか?何かステータス異常になってないですか?」

「い、いえいえお気になさらず!あ、あはは」

「もし良かったらですけど、ウチすぐ近くにあるんで寄っていきませんか?異常回復に効果のある薬草とか使った料理も出せるんで。まぁ、その分お金は掛かるんですけど・・・」

「え、ウチ、ですか??」

「ごめんなさい!てっきりその格好でしたんで冒険者の方だと思って聲かけちゃいました!わたしの家、冒険者管理ギルドと共同経営で酒場やってるんですよ」

「はぇーなるほど。」

「って言っても料理しているのはパパだけで、私はただそこの給仕の手伝いしてるだけなんですけどね。アハハ」

「へーお父さんが料理を・・・ん?」

何か引っかかるがあったが、思い出せない。何だったっけ?

「今はまだ冒険者として駆け出しで、別にステータス異常にもなってないよ。そもそも一回もまだ戦闘経験無いしさ。」

「そうなんですか、じゃあ今度冒険してきたら帰りにでも寄って下さいね!新人さんにはいっぱいサービスして、はやく常連さんになってもらわないと!」

うふふと笑う笑顔が凄く可い。畫面越しにキャラクターを見るのと機を使ってゲームをするのはやはり大違いだ、まるであたかも本當にそのが目の前にいるみたいに見える。

・・だが何か引っかかる。なんだ?この魚の小骨が歯と歯の隙間に突き刺さって抜けないような覚は。

が離れながら手を振りこうぶ。

「ウチの店、『大魔道飯店』っていうんですー!ぜひ良かったらごひいきにー!!」

「はーい!わざわざどーも! ・・・ってあの激マズぼったくりで有名な大魔道飯店!?!?」

やっと魚の小骨が取れた。前作ファステの街、街の手前側にあるDM専用端末、そこから冒険者管理ギルドへ続く道の途中にある、この街で唯一冒険者管理ギルドとの共同経営酒場。そこにはガリッガリに痩せたオークの店長がいて、冒険者登録をして間もなく宿代もまともに稼げないようなプレイヤー達からありったけの金品裝備品を請求して、その代わりに回復量のない不味い食事を提供する・・・

あの大魔道飯店のがめついオークの親父に!あんなに可い娘が!!

このゲーム前作から何年経った設定なのか知らんけど、どうやったってあんな可い子生まれないだろ!しかも種族違うし!!運営さん、そりゃとんでもない設定ミスだよ!

そしてとんでもないミスをしたバカがもう一人ここに。そう、俺。何故かって?そりゃ勿論・・・

「頑張って経営してる家族の目の前で、そんな事言うなんてヒドイっっ!!」

一度笑顔で手をふり、歩いて立ち去ろうとしたその可憐なは、大魔神よろしく鬼の形相で振り返り、俺に全力ビンタを一発かますと、大開きで怒りをわにしながら歩いて街の奧に消えて行った。

Aパート終了→

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