《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第10話C 勇者はどうしても現実に帰る。みたい・・・

「・・大察しが付いている。『あちら』に帰られるのだな?勇者殿よ。」

「え!?マルたん帰っちゃうの!?」

ハックはちょっと、タリエルはかなり寂しそうな顔をしている。闇夜を照らす月が、より一層二人の『その顔』をしく映し出す。

「そうなんだ、すまん。もう時間なんだ」

「で、でも!すぐ逢えるんだよね?」

「これタリエル。勇者殿だって『あちら』での生活がある。そう易々とは『大陸』に戻って來られまい。あまり負擔を・・」

「そうじゃないんだ、ハック」

「うぬ?」

「俺が・・今日ここに來た、いや、『ゲーム』をしてるのは、テストプレイの先行に當選したからなんだ。」

「なんと・・そういうことであったか。それは・・・悲しいな。」

「なに?ちゃんと説明してよマルたん!ハックさん!!」

「このゲームはまだ発売されていないんだ。今日は世界で同時に開催されたテストプレイの日。俺のログインが許可されてるのは、今日の24時までなんだ。」

そう言うと二人は自分のメニューボードを取り出し、現在時間を確認する。

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「あ、あと5分しかないじゃん!!なんでそんな事急に言うのさ!なんでもっと早く教えてくれなかったのさ!!!」

タリエルが泣き顔で怒ってくる。こいつ、俺と會ってからずーっと泣いてばっかだな。ゴメンよ。

「つまりこういう事か、先程セーブはしたの、そのデータが発売まで有効な保障はなく、『我々』もその時までこの記憶を保持している保障はない、と。」

「そういう、ことに、なる。流石だな。<錬金の師マスターアルケミスト>は。何でも分かっちまうんだから。はは」

「・・いまの『解答』は、頼むから當たってしくは・・無いだったがな。」

「あ、あぁ、すまん」

「二度と、會えない、の?」

草木のから、マリーナが出てきた。どうやら話を聞かれてしまったらしい。

「マリーナ・・ごめんな。迷ばかりかけて。」

「いいの、なんか、そんな気がしてた。・・・だって、『変な名前』だし、どっかヨソから來た人なんだ、って。」

「おいおい、俺の名前笑わないんじゃないのかよ?」

「笑ってなんかいないわ・・笑ってなんか」

半分鳴き聲みたいに震えているが、必死に泣くのを止めながら、無理矢理作り笑いしてる・・そんなじの、顔だった。

「わらってるだろ、君」

「いいえ!笑ってなんかいないわよ!」

そう言うとマリーナは俺に抱きつき、頬に軽くキスをしてくれた。

「たすけてくれてアリガト!それから・・これはパパのお店馬鹿にした仕返し!ちょっとでも私の事思い出して・・切なくなってくれればいいかなぁ?あはは!」

月夜に照らされたマリーナの、一杯の強がりは、俺の心の奧につき刺さった。あぁ、こんな顔させるぐらいなら、知り合わなければ良かったなぁ。ま、そんな事言ったら、またビンタされるがな。はは。

「ぶぅええぇぇ~~んマルた~~ん」

タリエルが泣きながら後ろから抱きつく。こいつ俺の服鼻水まみれにしやがって。

「わるかったなタリエル。へんな『魔法』かけちまってさ。人の気持ちいじるなんて、俺は最低の事したよ。すまんかった。」

「え~~んえんえん!!いいよぉ~~!グズッ、私が、わだじがゆうたんの正ヒロインになっであげるがらぁぁ~~!!いがないで~!」

「あのなぁ、マルたんって呼ばれてもゆうたんって呼ばれてもどっちも俺全然嬉しくねーぞ?なんか自分で差付けてるみたいだけどよぉ。なんだよ正ヒロインって、まったく。」

「ぞ、ぞんあごどいわないでぇ~~!うえーん!!」

「泣かせてばっかでほんと悪い事したよ。こんな小さいのに、一人で生きるの大変だったろうに。金にがめつくなるのも、多わかる気がするなぁ」

「ごどもあつかいざれだ~~!え~んぐやじい~~!!」

「泣いてんのか怒ってんのかどっちかにしろよ、ホラ鼻かめって。」

そうやってFランク裝備を集める時に手にった手ぬぐいを渡そうとしたが、タリエルは俺の裝備してる旅人のマントで鼻をかみやがった。

最後だし、まぁ、許そう。

「おいハック!け取ってくれ!」

そう言ってハックに『アレ』を投げて渡す。ハックは片手でけ取った。

「良いのか?勇者殿、こんなレアアイテム、滅多にお目にかかれない代だぞ?」

「へっ、これからログアウトする人間が持ってても仕方ねーよ。それにアンタなら、きっと俺よりうまく役に立てられるはず。そうだろう?ハック・ザ・<錬金の師マスターアルケミスト>!」

「あぁ、分かった。大切に使わせてもらおう。<負け犬ルーザードッグ>・・・いや、勇者、<二重丸の勇者ダブリング・ブレイブハート>よ。また會う日までソナタの旅の無事を祈ろう。」

ハックは一度握りしめると、『ソレ』を大事そうに道袋にしまい込む。『黒いメニューボード』を。

「お?そろそろか?・・なんかお迎えが來たみたいで、笑っちまうな。」

勇者のいる辺りだけ、夜中だと言うのに空高く白いが差し込んでくる。勇者のしづつ浮かび上がる。

「マルマルさん!」「ゆうたん!」

「勇者殿!!」

「じゃあな3人共!テスト終了の強制ログアウトの時間だ。おめーらといっしょで・・・」

「何!?聞こえないよ!ゆうたん!!」

「~次~~~ティ~~!~~!!」

「何!?マルマルさん!?」「勇者殿ォ!!」

「だから!!『次』、こっち來た時こそ!パーティー組んで一緒に冒険、しよーーなぁーー!!」

地面からもうだいぶ離れて遠く見える。ちゃんとあいつ等の耳に、屆いたかなぁ??屆いてるといいな。

良し、下ばかり見てられない。俺は俺で現実に帰らなきゃな!そして本編が発売されたら、またあいつ等と目一杯満喫してやるんだ。

「レッツエンジョイ!『サウタナ』ライフ、『2』を!!」

そうこうしているに、勇者〇〇のは、に包まれて白く半明になり、やがて空高く消えてしまう。

 

勇者〇〇、<負け犬ルーザードッグ> <二重丸の勇者ダブリング・ブレイブハート>の冒険は今、幕を閉じたのであった。

第9話 END 第1部、完

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