《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第12話B そして勇者は再び眠る。みたい?
ハックという名の『キャラクター』は、廚二病の錬金師として『設定』されている。
自分の知識と経験が多いのは、自らが學んで來た努力の証だ。そう思っていた。だがある日突然、ハックは魔法の練習中にそれは『設定』された事であり、自分はNPCと呼ばれるキャラクターでこの『大陸』を彩る為の『エッセンス』の一部に過ぎない事を知る。
自分が今まで學んできたと言う事実は無く、ただ単に博識というキャラクターを演じる為にある程度の『報』を與えられている、もしくはそれらを詮索出來る。ただそれだけの事だったと『理解』してしまった。それからの彼の人生はとてもつまらないへと変った。
晝夜を問わず寢食さえ忘れて魔法の研究を重ねていた事が急にバカらしくなり、タリエルと『認識』しあってからはパタリとやめた。
自分は孤獨な天才で、誰からも理解されない特別な存在だと盲信し、自らを漆黒の存在として世の中から隔離されるべきだと言い放ち、あえて他者とも関わりを持とうとしていなかった『黒の白鳥ブラックスワン』。それがハック・ザ・<錬金の師マスターアルケミスト>。そのはずだった。
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そうだと思い込んでいた。だがその実は、ただのNPCの一人に過ぎなかった。
だが、それは一人のプレイヤーによって曲げられてしまう。私はキャラクターとしてこの大陸において他のプレイヤーを導き、つかず離れずの立ち位置を守り、尚且つ必要以上には干渉してはならないという前提。
それが『真実』であったにも関わらず、彼にそれを否定されてしまう。ちゃんと『人間味』があって、『仲間想いフォローシップ』を持った奴。それが『ハック』だと言われた。そんな奴が自分が作られた存在だからと言って生きるのを諦められる訳が無いと諭された。
ハックにしてみれば、それは『勇者〇〇』という『プレイヤー』にここに生きて良いんだよと言われたようなものだった。今までこれが自分だと信じていた偶像はもろくも崩れ去り、形だけの亡霊を続けようと諦めたはずの人生は、再び息を吹き返した。仲間の為に自らをい立たせるという新たな自分に。
それを気付かせてくれた人は、彼にとって最早大切な仲間以外の何者でも無かった。そして今度は『その人』が人生の窮地に陥ってしまう。自分とは真逆で、人では無くなり作られた存在となってこの大陸に閉じ込められてしまう。ハックにはそれが現実だと言う事が『許せなかった』
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それでは、彼の為にやろう。大事なを気付かせてくれた仲間のために。大事なとは、私が私であるという、『尊厳』。その為に今度は私が立ち上がろう。私の全霊をかけて。彼が『プレイヤー』であるという、『尊厳』の為に。
『錬金の師わたし』という『キャラクター』であれば、何か必ず気づけるはずなのだから。
再び眠りについた勇者に一禮すると、ハックは部屋を後にし、自らの書斎にる。そしてありとあらゆる文獻を漁る。この大陸に干渉していったプレイヤー達の報を。そこからきっと何か見つかるはず。何故なら、自分の中の何かが『そう』囁くからだ。
どのくらいの間、眠って居たのだろうか。最初見たときは窓から差し込むは朝日だった。今見ているのはどう見ても夕日だ。そして『殘念な事に』また同じ部屋の中で目覚めてしまう。
何故か気持ちは落ち著いていた。最後の記憶ではハックが何か魔法をかけてくれたらしいが、アイツには何から何まで世話になりっぱなしだ。負擔や迷をかけていることをとても申し訳なく思う。
「・・・・・・。」
何度もメニューボードを立ち上げ直してみる。だが表示されるステータ畫面は相変わらずの紫だ。それに何回見ても変化が無い。
NPC名:勇者〇〇 Lv:1 RANK:-- 種族:人間
昨日まではプレイヤー名と表示されていた部分は、NPC名という表示に変っている。それだけなのであれば、ただ単に表示が間違っているかもと思える。だが違う。問題なのはその隣、RANKの表示だ。
これは他のプレイヤーがNPCキャラのステータスを見た時に、今現在の自分とそのキャラのコミュニケーションランク(通稱コミュ)がどの位なのかという確認するための項目だ。もちろんプレイヤーのステータスには存在しない機能だし、ランクの數値が表示されないと言うことは、『自分で自分の』ステータスを確認しているからに他ならない。
そしてもう一つ。ログアウトの項目が影も形も無くなっている事だ。ステータス畫面の右上に、一番最初に表示される項目。それはログイン、ログアウトの選択だ。
NPCのステータスにはそもそもでその項目は必要ないので、當然付いてない。何度見ても表示されず、手をかざしても何も反応しない。強制終了のコードも試してみたが、全くもって反応する気配が無い。
つまり俺は、ゲームの世界に取り殘された。と、言うより、ゲームの世界の住人になってしまった。
足のまま、家を出て外に歩いて行く。辺り一面には草原が広がっており、夕日を浴びて黃金に輝いている。優しい風がむこうからそよいで來る。辺りに一本だけ生えている木の下まで行き、そこに腰を下ろして草花を何本か抜いてみる。
「こんな草も、吹いてる風も。歩いてきた土の上も、全部偽なのか・・・?」
誰に言ったわけではない。手で摘まんだ草が風で飛んでいく。ただそれを眺めている。
「・・・・・。」
何を思えばいいんだろう。何か考えなければいけないんだろう。でも、頭がうまく働かない。前をボーっと眺めるしか出來ない。
「・・・でもなぁ。とりあえずの人生目標、立てた途端に葉っちまったようなもんなんかなぁ??」
機の筐を買ったらもっとこのゲームに沒出來る。その為に仕事頑張る。そう決めた途端にまさかの永久ログイン権獲得をしちまった。これはプラスマイナスで考えればプラスになるのか?しずつ思考がいてきた。
「・・・悩んでたってどうにもならんよなぁ。」
「・・・ぉーぃ・・・」
「んぉ?」
「マールたーん!」「マルマルさーん!」
遠くから二人が走って近づいてきた。もう店番は終わったのだろうか?
「いえーい私の勝ちだよーマリリーたん!」
「はぁ・・解りましたタリエルさん」
そう言うといくらかの小銭をマリーナがタリエルに渡す。なんだ?
「どうしたんだ二人とも。なんのお金だ?」
「いやぁねぇ。支所締めてハックさん家に行こうとしたらちょーどマリリーたんにばったりあってね。ちょうど良かったし親睦を深める為にかるーく子會したんだよ。」
「そこでマルマルさんの話になったんですけど、タリエルさんが言うにはマルマルさんはタリエルさんの可さが忘れられなくて戻ってきたっていう話になりまして・・・。」
「へぇー・・・へ?」
「そこで、ちょっとした賭をする事になったんですけど、まだマルマルさんがハックさんの家に殘ってたら、タリエルさんの『為』にこの街に殘ってるってことでタリエルさんの勝ち、居なかったら私の勝ちでそこのコーヒー代賭けてたんですよ。」
「ほう・・・。」
「ま、結果は分かってたけどねー!マルたん、けっこう私にゾッコンらぶ?って奴だったもんね~それは仕方ない事なんだよ。なにせ大陸一の人鑑定局員とあんな関係になっちゃって、忘れられる訳ないモンねぇ。」
「・・・・・。」
「と、言うことで賭は私の負けになりました!それでさっきタリエルさんにお金渡してたん
・・・ですけど・・・・あれ?ま、マルマルさん、怒ってます?」
「やだもーマルたんったら恥ずかしがっちゃってーー!!かわいいなこのこの!でもゴメンねマルたん。マルたんの気持ちはそりゃ嬉しいけどさ、やっぱパーティーでは『そーゆー関係』はいけないと思うんだよ。ハックさんも居ることだしさ。だから、ね?これからもこのままプラトニックな関係って奴でいましょ?ねっゆうたん?」
凄まじい怒りのが、右手に集中するのが分かる。俺がこんなに悩んで考えてたってのに、コイツと來たら人が元の世界に帰れなくなってるのも知らずにコーヒー代賭けてやがった!!しかも、勝手に訳分からん勘違いまでしてそれをマリーナに教えてる始末。この罪、萬死に値する!!!
「ちょ、ちょっとタリエルさん!なんか、マルマルさんの様子がおかしいんですけど!?」
「あー?あぁ、男の子の思春期特有のって奴だよ。マリリーたんも~大人になったらオトコノコのそーいう部分、許してあげられるようにならなきゃメっだぞ?」
「ま、マルマルさん後ろで棒振りかざしてるんですけど、ホントに大丈夫ですか??」
「いいっていいって気にしない!こーいう時に余裕持つのが大人のなんだから。」
「なんか顔つきも変って目も真っ赤だし、口からは牙みたいなの見えるんですけど!?!?」
「まーこれだから年頃の男ってのは、オンナをみたらすーぐオオカミになっちゃうんだから。でも、そんな辛い思いさせてるのもこれも全部私の可さが原因なのね、あー可いってつらいわーまじたいへんー。」
「た、タリエルさん!?!?もはやオオカミってよりもオーガみたいなんですけど!?」
「えー?マルたんのどこがオニみたいだっ・・・え?」
タリエルの悲鳴は、草原のむこうまで大きく木霊した。
第12話 END
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