《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第16話B そして勇者は能力に恐怖する。みたい?
「はー疲れたー。マルちゃんとりあえずコレはただのけいぼうを査定したって事にするから、10Gでいいよぉ〜」
スイッチが切れてタリエルはふにゃっとなってカウンターにうつ伏せになる。せっかく真面目にしてればもうし…まで考えて、勇者はハッとする。
(何がもうしだよ…危ねぇ騙される所だった)
「はいよ。100G、釣りは取っときな。」
「うあーいマルたん大好き〜」
「それでマルマルさん。コレ、どうするんですか??」
「うーん。とりあえずハックにでもやるか?売れないんじゃ仕方ないし。今度から強化はそこそこに留めとこう。」
「あぁ、ウチの家寶がぁ…」
「まだやるって言ってないだろ!それにコレ渡したって表に飾って置けないんだし。」
「え〜もう飾る所まで決めてたんですよぉマルマルさ〜ん。」シュン
「こんなのフロアに飾ったらゴロツキ共が奪い合い初めて大変だろ!?むしろいいのか??」
「マルたん凄いね〜たった1日合わなかっただけでこんなの作ってくるんだから。これもあの黒い奴の力?」
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「そーなんだよ。とりあえず製作に必要な素材さえ揃ってれば、俺幾らでも強化出來るからさ。なんか作ってしいものとかあったらいつでも言ってくれよ。」
「ホント!?じゃあ…早速強化してしいモノがあるんだけど…」
「なんだタリエル、もうあるのか?」
タリエルは何やら紙とペンの様なものを取り出す。
「えーっと…夫婦の誓い、+3的な??」
機に出したのはゲームで有効なアカウントの婚姻証明だった。プレイヤー同士で結婚すると、プレイ中に様々な恩恵が得られるのだが、離婚するには結構な額の課金が必要になる。その為の運営に送信する証明書だった。勇者はそれを見るなり無言でクシャクシャに丸めてしまう。
「あぁ!ちょっと!!」
「いいかなー?タリエル君。ふざけてこんな事するのはいけない事だよ〜。」
更にアイアンクローをタリエルのほっぺに食らわす。
「ぶよ!?うおぶよぼよょ!!」
「ちょっとマルマルさんやめなさいよ!」
「痛ーい!!マルたん何すんのさー!?」
「ったく。1日合わなかったからちゃんと頭冷やしてんのかと思ってたんだがなぁ。」
「マルマルさん!タリエルさんはちゃんと…」
「いいよーマリリーたん!乙の真摯な心もけ取れないような奴に用はないから!」
「うるせー!なーにが真摯な心だよ。ヒトの財布目當てのクセに何言ってんだか。」
勇者はフンと鼻息荒くして店から出て行ってしまった。
「こーっちがフーンだよ、まったくー!!」
勇者が出て行ったドアに向かっていきり立っているタリエル。それを見て呆れるマリーナ。
「もーどっちも素直じゃないんだから2人共!タリエルさんもあんな事したって余計勘違いされるだけですからね!」
「わかってるけどぉ。なーんかマルたんと居るとふざけちゃうんだよねぇ。うーむ」
2人は勇者が出て行ったドアを見つめて無言になってしまった。
「 …て事が今日あったんだよ。」
「ふむ、それでコレを私に?」
ハックの書斎で共に夕飯を食べる2人。酒を飲みながら今日あった事をお互い報告する。
「まぁ正直扱いに困ってるんだ。ハックなら何か有効的に使えるんじゃないかなーっと思ってさ。」
「今直ぐには思いつかないが、何か有用が出來た時の為に取っておこう。パーティ募集の件はどうだったかな?」
「あ!とりあえず集合場所をミンギンジャンの店に午前中來いって指定してたから明日以降來るはずだ。」
「なるほど、來客の名目で仕事をサボる気だな勇者殿。流石抜け目ない。」
「募集要項の所はよく分からなかったから『なんでも誰でも』にしといたぞ?」
「ぬ!?そうか。もしかしたらあまりメンバーが集まらんかも知れないな。」
「え!?マジ?これい方悪かった?」
「募集要項はやはり細かく書いた方が人の目に付きやすい。反対に何でもで募集すると他のパーティで問題起こしてソロになったような人が集まってしまう可能がある。」
「うわ!失敗したなー。明日取り消してもっかい書き直しておくよ。ハックの方は何か収穫あったのか?」
「まぁそこそこと言った所だ。2回目の賢人會議はパーティメンバーが揃ってからにしても問題無いと思う。ただ、その分勇者殿が向こうに帰るのが…」
「いやいやそれは良いよ。なんかこっちでの生活も楽しいし。DMも送れなかったからいきなりすぐ帰れるとも思ってないからさ。」
「すまない勇者殿。1日でも早く帰れるようにこちらも努力する。」
「気にしないでくれよハック。帰れないのは君のせいでもなんでもないんだし。そうだ、今日気になった事があって1つ確認したかったんだ。俺確か最初に熊倒した時にレベルアップしたはずなんだが、今LV1のままになってんだよ。何か原因に心當たりあるか?」
「あー、それは多分ミンギンジャン殿の魔法の副作用だろう。正規の復活魔法ではないから、レベルの消失が起きたと予想される。ステータス値も下がったのではないか?」
「そうそう!何故か殆どのステータスが1か2になってたんだ。そっかレベルダウンか。まぁ灰になった所から復活させてもらったんだし文句は言えねーよな。」
ブドウ酒をもうひと口飲もうと思った勇者の上著のポケットが強く振する。
「は!?ハック!なんか発したぞ!?何か異常あるか??」
「黒いメニューか?!今特に何かしていた様には見えなかったが、ステータスはどうだ勇者殿?」
「いや…何も変わってない。所持品も変わってない。誤作か?」
「それは無いのではないか?今まで誤作だった事なんてないのだろう?」
「そうだけど…今やってた事なんて酒飲もうとしたぐらいだぞ?まさか幾らでも酒飲めるとかか?」
「流石に運営専用の特殊能力にその様な能力があるとは考えにくいが…開いて確認しないのか?」
「今みたいに全く想像出來ない狀況ってのは初めてなんだよ。いや怖いなぁ。」
恐る恐る黒いメニューボードを開く。文字を確認した勇者がドンドン青ざめる。
「どうしたのだ勇者殿、何か悪い事が書いてあったのか?」
「黒いメニューボードの発條件がわかった。効果の確認だ。認識した途端にそれが効果として表示されてるぞ。」
勇者は先程何をしていたのか?ブドウ酒を飲もうとしていたがそれはただの作だ。ではその前に何をしていたか?ハックと話をしていた。『自らのステータスについて』だ。勇者はレベルアップしてからテストプレイ終了までの間にステータスをまともに確認していなかった。復活以降もステータス値をまじまじと見て、深く考えたりもしなかった。だが今は違う。ハックにレベルダウンがあったと聞き、自らのステータスが低い事に『納得』した。それが今回の発條件になってしまった。
文字化けしたメニューボードには、新たに『ステータス変:無効』の文字が現れた。それは勇者にとって初めてのマイナス面の方が大きいデバッグ能力だった。
第16話 END
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