《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第33話 #10 『殘念勇者の伝説』

勇者とタリエルは、領主の屋敷の1階をあらかた調べ終えていた。殘るは玄関の真正面にあった階段を登った2階。だが、2階を調べるというのはリスクがあった。

(大1階は終わったけど、翌々考えたら客間なり応接間なんかにが隠されてる訳ねーよなぁ。はぁ)

(どうするの?2階行く?)

(そりゃ行きてーのは山々だが…階段を登るってのは階段を降りる以外の逃げ道が無くなるって事だ。こっからは更に慎重に行かなきゃならんな。)

(でも、さっき1階調べたけど、お屋敷に誰も居ないんじゃない?)

(こういう所って、住み込みのメイドとか住んでるもんじゃないのか?イメージ的にそう思ってたんだけどさぁ)

(でも、誰も居ないよね?)

((うーん…))

(ハック達も探してる風が無いのも不思議だ。流石にもう侵出來てると思うんだけどなー)

(とりあえず、ゆっくり上がって行こ!)

勇者達はそろーりそろーりと階段を上がって行った。ハックに消音の魔法を掛けられているのも忘れて。

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一方的その頃ハック達は…

「何を考えているんだ!君達は!!」

衛兵に見つかり、敷地のり口付近にある詰所でこっぴどく叱られていた。叱られている理由だが、ハックは咄嗟の判斷により「俺達は付き合って間もないアベックで、いつもと違う豪華なベットの上でし合いたいから領主の屋敷に侵しようとしていた」と、噓を付いたからである。

「その年頃でイロに狂う気持ちも分からんでもないが、慎みを持ちなさい!!全く!!」

「ず、ずびばぜんでじだぁ〜」ギリリリリ

マリーナは、勝手にとても恥ずかしい理由で噓を付かれて、それを町の衛兵に見つかるという恥辱にひたすら耐えていた。泣きながら歯を食いしばり、橫目でハックを睨む。

(すまぬ…すまぬ、マリーナ嬢。堪えてくれ…)

なるべくマリーナの方を見ないようにして、ハックは心の中で心底謝った。

「全く、この事は私のに留めておくから、もう二度とこんな事はしないように!いいかね!!」

「「はい…すみませんでした。」」

そしてあっという間に2人は外柵正面のり口から敷地外へと追い出されてしまった。

「すまないマリーナ嬢。要らぬ恥をかかせてしまった。侵の目的を濁す為にはあの噓が最も効果的だったのだ…」

マリーナはまだグズグズと鼻を啜りながら手で顔を覆い、涙を流していた。

「…純粋な君にはとても許せる事では無いだろう。申し訳なかった。」

「ぐずっ…もう、衛兵さん、遠くに行きましたか…??」

「ん?あぁ、既に見えないぐらいの位置に行ったが…」

するとマリーナはパッと泣きやみ、手の中からあるを出した。

「これは…香辛料と、巡回経路図!?マリーナ嬢!これは一…!?」

「ぐずっ…私だって、の涙という武ぐらい、につけてるんですからね!」

マリーナは見つかった直後に自分で持ってきていた調理アイテムの中から香辛料を取り出し、顔を抑えて泣いているフリをしながら香辛料を使って涙を出していた。その涙に注意を引き寄せ、ハックが言い訳をしているに隙を見て詰所の壁にあったこの紙を引き剝がしてきた。

「君は…。君って人は、誰の娘だったのか忘れていたようだな。私は。」

「うっふっふ!パパの自慢の娘です!転んでもタダでは起き上がらないように育てられました!」グズッ

「よし、ここで整理しよう。詰所の中にはベットが1つしかないのを見ていたか?マリーナ嬢。」

「はい!警備用の武もありましたけど、常に大人數が居るようには揃えられて居ませんでした。」

「では、私の推測と照らし合わせて、ここの敷地に衛兵は…」

「「2人!もしくは、いても數人!」」

「そしてこの巡回経路。これを見る限り屋敷の外は見張られて居るが、中までには居ないと見積もられる。おおよそあの詰所で見張りの代が行われて、もう1人は巡回に回るか詰所の中で待機しているのだろう。」

「領主様って確か、剣の達人クラスでしたよね?」

「そうだ。見つかったら領主様直々に八つ裂きにされるという條件。元々ここにろうとする盜人など想定もされてなかったという事になる。」

「それならマルマルさん達が功する確率が高いですね!」

「ではマリーナ嬢、今我々が勇者殿の為に出來ることは何か、分かるかな?」

「それは…」

「「なるべくあの衛兵をここに引き付けておく事!!」」

2人の回答はピッタリ一致し、大きくハイタッチをする。

「ここで待てばいずれ冒険者組とも合流出來る。実に上手い作戦だ。我ながら優秀な生徒を持って鼻が高いぞ!マリーナ嬢!!」

「そ、それじゃあハック先生!あのっお願いというか、協力してしいんですけど…マルマルさん達の為に、どこまで出來ます?!」

「フム?必要ならいくらでも協力は惜しまないつもりだが…どうしたのだ??」

「……じゃあ、しっかり歯を食いしばってて下さいねぇ」スゥー

マリーナはハックとの間合いを詰め、適度な歩幅を取り、右手を大きく後ろへと引き絞る。

「な、何をするのだ!?ま、マリーナ嬢?まさか…」

「その『まさか』ですよ!さっきどさくさに紛れておとかったお禮です!食らって下さい!!パパ直伝の〜」ハァァァ

「や!やめ…」

「大魔道飯店流!お・も・て・な・し!スターァンプ!!!」

マリーナから繰り出される、全力ビンタがハックの左頬に直撃する。クリティカルヒット!!

「ぐはぁっ!!」ガッシャァァンン

その場で耐えられなかったハックは勢いそのままに外柵に激突し、大音量の衝撃音を鳴らした。ちなみにこの技は、勇者〇〇がいつもけているあのビンタである。

「おいなんだ!なんの音だ!」

詰所から1人、屋敷の裏手側からもう1人衛兵が走って來た。これはチャンスとばかりにマリーナは大聲でぶ。

「きゃぁぁぁああぁぁ!!」

「なんだまたお前らか!!」

「この人!!こんな恥をかかされて結婚を取りやめるなんて言うんです!!ホント信じられない!!サイッテーー!!」ビシッ

「「「な、なんだってぇ!?」」」

「私にあんな事まで教え込んどいて、自分が困ったら私を捨てるなんて!この恥知らず!!」

「お、おいよさんか!人が見てるだろ!」

なんの事か空気を読んだハックはマリーナに合わせて下賎な男を演じる。

「ぼ、僕の家名に恥を塗るのだけは許さないっ!君とは婚約破棄だ!」

「また言ったわこの人!!えーんえーん!!あなたの母上に言いつけてやるんだから!私に今まで何をしたのか!!」

「おい!やめろお前ら!!癡話喧嘩は他所でやれ!!」

「なんだコイツらは!」

「分からんがどっかのバカ貴族のボンボンだろう。町娘に手を出してここで逢い引きしようとしていた!」

「おい!ここは領主様のお屋敷だ!ここで騒ぐんじゃ無い!!」

ハックとマリーナは衛兵から見えない角度でニヤリと笑う。

「そうよ!領主様にお捌きをしてもらいましょう!!きっと領主様なら公平なお捌きをしくれるに違いないわ!領主様〜!!おたすけ〜!!」

「なんとでも言うか良い!平民の貴様の言葉など、誰が耳を傾けるものか!」

「いい加減にしないか貴様等!もっと人を呼ぶぞ!!」

「いいわよ!もっと人を呼んでちょうだい!この男の無様な様をたっくさんの人の目に焼き付けてもらいたいからね!!」

「貴様…貴族の僕に対してそんな態度許されるとでも思ったのか!?」

ハックはびながら橫目で屋敷の上を見る。マリーナも言い返しながらその方向をチラっとだけ見る。

2階の一室の窓から、勇者とタリエルがこちらを覗いている姿が見えた。

第33話 END

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