《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第38話 #15『殘念勇者の伝説』

勇者が突然大聲をあげ、怒り始めた事により、馬車の中では張が走っていた。

「ど、どうしたんですか?マルマルさん、何が気にらないのですか?」

マリーナが慌てて勇者をなだめようとする。

「どうしたもこうしたもねーよ!!全員勘違いしてるぞ?運営は神様なんなじゃねぇ!!あいつらはただの人間だ!!」

「しかし、勇者殿。この世界を創造した者に変わりはないのではないか?」

「…ハック、お前までそんな事思ってんのか!?」

一同はガヤガヤと運営の事について話し始める。何故勇者が怒っているのか理解出來ないようだ。

「…まだわかんねぇのか?お前ら今何やってんだよ。自分で考えて、答えが出ない事に互いに意見言い合って理解しようとしてるじゃねーか。誰かに造られたからそんな事してるのか?」

「「「……!!」」」

「ハッキリ言う。俺はあんたらがNPCだからとか、プログラムで指定された事だけで行する存在なんて考えた事は無い!!!お前ら自分で自分を何だと思ってるんだ??」

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「「「……。」」」

皆がハッとして互いの顔を見つめ合う。どうやら何か大変な事を忘れていたようだ。

「アンジェラ。お前の<可もなく不可もなくユージュアリー>って、そう設定されたからそれに従って生きてるのか?お前『普通だ』って人に言われると喜ぶだろ?それはお前の『誇り』であり戦士としての『尊厳』なんじゃねーのか?」

「ユーシャ…」

「ヤンド。<素手の兇戦士ベアセルク>のせいで苦労してるのは分かる。ただ、そのせいで他の人に迷掛けられないからって、バック対処専門なんて噓ついて自分の危険から他の奴を守ろうとしていたのは、他ならぬお前の『優しさ』なんじゃ無いのか?」

「リーダー…すみません。」

「サイカさん。貴方の過去に何があったのかは俺は知らない。でもただひとつ言える事がある。そのいつも持ち歩いてる影に寫ってる旦那さん。亡くなってもなおその人を『変わらずする』気持ち、誰かに設定されたからそう思ってるのか?」

「いいえ、違うわ勇者君…」

「マリーナ。ミンギンジャンに黙ってまでこの冒険に著いてきたのは、自分の『意思』で決めた事なんじゃないのか?ただの町娘で人生終わりたくない、みんなに置いて行かれるのが嫌だから馬車の荷臺にり込んだ。その決斷も、予め設定されてたと言うのか?」

「マルマルさん…決めたのは、私の意思です!」

「わ!私は!!私がゆうたんの事!!好きになったのは!誰かに、決められた事じゃない!!ふぅー!ふぅー!!」

「おいおい!分かったよ落ち著けタリエル!ホントにお前は面白い奴だよ全く…」

「勇者殿…」

「ハック。…なぁハック。俺達の友はなんだ?お前はそれでもこの世界に存在する自分が、造主なんてが自らの心と神を作り出していたと思うのか?それは…とてもつまらなく、悲しい考えだぞ。」

ハックは無言のまま、涙を流していた。

「もしそれでもお前が『運営』の事を神と呼び、自らの存在をただのNPCと決めつけるのなら、俺はここに殘ってお前の為に戦う。知り合えて、共に酒を飲んで、多くの夜を語り明かした君の為に。君との友の為に、『尊厳』の意味を教える為に君を縛る全てと戦おう。」

勇者とハックは泣きながら抱き合った。この世界に降り立ち、ここまで來るまでの苦労は多かった。だが、いつもそばに居て支え合う仲間がいたからここに來れた。勇者はその仲間達を誰かに定められた存在だなんて言われるのが許せなかった。そして、本人達が自分の事をそう思うのは、もっと許せなかった。

「すまない、…すまなかった。異世界からの勇者よ。」

「いいって事よ。気にすんな、ケチでキザな錬金師。」

一同は目に涙を浮かべ、彼等のしい友に拍手を送った。

ギリ……

ギリギリィ……

─何処から、ナニカが『歯を食いしばる』ような、そんな音が聞こえた─

あれからまたしばらく時が経ち、荷馬車に居る皆はつかの間の癒しを求めて仮眠をした。皆それぞれハックから貰った紋章りのローブを布代わりに、狹い室で重なり合うように橫になっていた。

「オイ、ついたぞ。多分アレだと思う。」

者のアンジェラに起こされて、荷臺でうたた寢していたみんなは目を覚まし起き始めた。

「ふぁぁ…意外と時間かかって寢落ちしちまったよ。」

タリエルはまだ布を被って寢息を立てて寢ている。

「うむ…すこし疲労が取れたな。」

「!!どわぁぁぁ!!ごめんなさいサイカさん!!」

勇者がサイカに謝っていた。どうやら背もたれに寄りかかって寢ていたはずが、いつの間にかサイカの方に倒れていたらしい。膝枕の狀態で目が覚めて驚きの聲を上げていた。

「うふふ、疲れていたんでしょ?いいのよ勇者君。その代わり可い寢顔を見れたからね。」

「いやぁ、なんかすみません…」

「ねぇ!!ちょっと!!」

今度はマリーナが大きな聲を出す。

「どうした?マリーナ嬢??」

「領主様、居なくなってる!!」

簀巻きにしていたはずの場所を見ると、切斷されたロープと破かれたズタ袋がそこに殘されていた。

「…まぁ、問題無かろう。領主様には屋敷での調査さえ終われば元々用はなかったのだし。」

「いやぁ、參ったなあ。あの時屋敷の中でカルガモットの弟に會ったんだが…そこでこの報を貰う為にある約束をしたんだ。」

「どんな約束なの?勇者君。」

「…まぁでも、次に會った時でいいか。気にしないでくれ、それよりまずは…」

一同は荷臺から降り、目の前にそびえ立つ地下墓地に繋がる敷地の口を見ていた。

 

「こっちの方が優先だ。やっと會えるな。なぁ、『殘念勇者』さんよ?」

第38話 END

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