《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第39話 #16『殘念勇者の伝説』

山の中、切り立った崖に突然と現れた重厚な石造りの両開き扉。そこには大きなザゥンネ家の紋章がっていた。

ダスキドが言うには魔法がかかった鍵をこの扉に差し込むと扉が開く仕組みらしいのだが、あいにくその鍵は紛失してしまっているとの事。

その扉の前に、満面の笑みを浮かべて仁王立ちする勇者○○。

「よし、みんな。俺達全員揃っての記念すべき冒険の始まりは、この俺が先陣を切らせて貰うぜ!!」

「「「おぉ〜〜!!」」」パチパチパチ…

皆からの聲援をけて鼻高々の勇者。片手に黒いメニューボードを構えて、意気揚々と扉の取手に手を掛ける。

「それじゃ…行くぞ!!!」

ここから先は約100年間程、前人未到の地となる。その道に今、勇者は第1歩を踏み出そうとしていた…

「ん?あれ?」ガチガチ

「どうした?勇者殿?」

「いや……あれ?」ガチガチ

前人未到への第1歩は、まさかの踏み出せないという結果で終わってしまった。

「ねーなにしてんのさーマルたん?」

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「いや…だからね?」ガチガチ

「ユーシャ、おふざけはいいから。」

「いや結構真面目なんだけど?」ガチガチ

「あ、リーダー!!なんですかもう〜そういうのホント笑えないんですから〜!やめて下さいってば〜」

「いやいや、冗談とかでは無くてな…」ガチガチ

今度は取手を摑んで思いっきり引っ張ってみる。扉はビクともしなかった。

「…もしかして、ホントに開かないの?勇者君??」

「うーんしょ!!くっっ!!このっ!!噓だろおい!!」グッググッ

扉は開く所か、取手でさえも固くて引くことは出來なかった。まるで元から開くようには作られていないとでも言うぐらい、扉には隙間も遊びも無かった。

「あ、あのぅ。ここ開かなかった場合、私達ってどうなりますか?」

「それはだな…領主を拐して、虛偽の理由で屋敷に侵したし…まぁ良くて永久追放、重ければ打首獄門のさらし首って所だろうな。マリーナ嬢。」

「あー。さらし首ですかぁ。パパ怒るだろうな〜」

さらし首って、怒られる程度で済むかよ!といつもならツッコミをれるのがこのパーティでの勇者の役目だが、勇者はそれどころでは無い。

「いやいやおかしい。いや!いやいや!おかしいぞなんだこれ??」ガチガチ

今度は両手両足をフルに使って取手を引っ張る勇者。だが、勇者の顔が真っ赤に染まるだけで扉はビクともしなかった。

「………うーんっく、くぁ!くっそマジかよ!?」

肩で息を付き、諦めて取手から手を離す勇者。黒いメニューボードを開き確認する。

「おかしいなぁ。ロック解除はそのまま表示されてる。なのになんでここは開かない??」

「む!?効果が発してないという事なのか?勇者殿!?」

「いやそう言う訳ではないと思うが…マリーナ、ちょっとこっち來て手伝ってくれ!」

「ハイ!なんですか?」

「ちょっとあっち向いてて。」

「え?はい?わ、分かりました…」

マリーナが扉に背を向けるようにして、馬車の方向を向く。そのマリーナの背中の肩甲骨の辺りから背骨の所に勇者は手を當てる。

「ひょわあっ!!」ピーン

「…うーむ。やっぱり効いてるな。」

マリーナは赤面し前かがみになる。

「り、リーダー。今一何を?」

「え?いやだからロック解除出來るか試したんだよ。」

「な、なんのロックを解除したんですか?リーダー。」

「えぇ?いやだからマリーナが裝備している乙當てをだな…」

「何どさくさに紛れてそんな事してんのよ&そんな事いちいち説明するなスターンプ!!!!!」バッシィ!!

勇者はマリーナのビンタをモロにくらい、扉の方に飛んで行った。

「…いってえなマリーナ!!何もそんな全力で打つ事ない…あれ?」

さっきまで月夜の明るさ位はある所にいたのだか、勇者は突然暗闇の中に放り出された。

「うぉぉ!?なんだよここ!!急に真っ暗だぞ!?」ガサゴソ

手元ですら見えない真なる暗闇の中に放り出された勇者は、とりあえず手探りでの回りの安全を確かめていた。

「なんだよ何が一どうなって…あん?」

(………う…ま……)

「なんだ?、めっちゃ遠くからなんか聞こえる…?」

(……お……しゃ……だい……)

「なんだ…?っと、ここ壁か。向こうに誰か居るのか??」

壁に手を付き、耳を當てて音を聞こうとした瞬間、勇者はまた制を崩す。

「どわっと!!お?明るくなった。なんだったんだ一???」

明るくなったと言っても変わらない月明かりの空の下ではあったのだが、先程の真っ暗闇よりかは隨分とましにじた。

「しっかしマリーナのビンタは効くなぁ…ん?どうしたの??」

幽霊か何かでも見たような、絶句の表のみんなが勇者の方を向いている。

「は?何!?もしかして開いた??」

後ろを振り返り扉を確認するも、やはり扉は開いてなかった。

「…なーんだよ開いてないじゃん。うわ!だからなんだよみんなのその表!!」

引きつった笑顔だったり、口をパクパクさせたり…

「何!?俺?俺がどうかしたのか?!」

勇者は自分のをあちこちってみたりする。しかし特におかしい所は見けられなかった。

「なんだ?顔か??」

今度は顔をってみる。特にも普通だった。

「ま、マルたん…今…」

「なんだよハッキリ言ってくれよ気持ち悪いな!」

「ゆ、勇者君、落ち著いて聞いてね?今…君…」

「「「扉の中通り抜けて行った。」」」

「……はい?」

「すまぬ。今見た事をまだ頭の中で整理出來ていない。だが、コレだけは言える。勇者殿は扉を通り抜けた。」

「いやいや何言ってんだよ冗談だろ?」

「で、でも、そうとしか見えませんでした。リーダー。なんともないんですか?」

「なんともないってか…だからなぁ。壁なんか通り抜けれないに決まって…んん?」

そう言えば先程數秒間ではあったが、謎の暗闇の中にいた。

その考えを吹き飛ばすかのように、ポケットの中が振する。

「マジかよ。まただ。」

取り出した黒いメニューボードに表示されたのは、『イベントドア:通過』の文字。

「ちょっと待てよ…おい。」

勇者は扉の取手にれる。やはり固くてビクともしない。しかし今度は『取手では無い扉本に』れる。れるのはれたが、ちょっとでも通り抜けようとするとスルッと手が扉の中にって行った。

「うわあぁぁぁ!!キモッ!!手がったぞ!!」

慌てて手を引っ込める勇者。

「もしかしてさっきマリーナに吹き飛ばされて、俺扉の向こう側に飛んでったのか!?」

「うん。ユーシャがスポッと扉の中ってって、みんなでんだらすぐ出てきた。ようにさっき見えてた。」

「勇者殿、それもデバッグ能力の一環という認識でいいのだな?」

「いや…うん。それでいいと思う。けどこれ、滅茶苦茶気持ち悪いな。」

今度は肘の辺りまで扉の中にれてみて、直ぐに引っ込める。

「うわあぁ。なんて表現したらいいんだ?痛い訳では無いけど、自分のの中を砂の塊が無理やり通り過ぎてくみたいなじするぞ。きもちわりぃ〜」

ゾルゾル、もしくはズルズルといった不協和音が中に響く覚。くすぐったいような、何か蟲が這っていくような覚に勇者は嫌悪を丸出しにする。

「そ、それでリーダー。扉の向こうはどうなっていたんですか?」

「あ…すまん。真っ暗で何も分からなかった。」

「「「…で、イタズラに乙當てを外した代償はどう払うの??」」」

當てを外されたマリーナ、マリーナよりも激おこのタリエル、ノリで乗っかっただけのアンジェラが勇者ににじり寄る。

「えぇーっと…たはは!」

「「「もっかい見てこい!!」」」

勇者は3人によって扉の中にもう一度押し込まれた。

第39話 END

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