《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第40話 #17『殘念勇者の伝説』
あれから勇者は何度も扉を通り抜け、側から扉が開かないのか試行錯誤を繰り返していた。
ハックの持っていた魔力で燈るランタンを借り、側から扉を開けるギミックを探していたのだが…
「やっぱり何かおかしい。扉があかないのもおかしいが…」
扉の向こうの真っ暗な通路にはそれらしいスイッチやレバーの類は見つからなかった。
削り取った巖丸出しの、通路と言うより窟と言った方がいいだろう。ずーっと奧まで続いており、曲がりくねったその先は見通す事が出來ない。
「しかし…外燈というか、松明とかロウソクの類が1つもないけれど、どうなってるんだ?」
探索させる気が全く無いようなその作りに若干の疑問を抱いていた勇者だった。
「よっと!っうわぁキモい。」ゾルゾル
「勇者殿!どうだった?」
1度外に戻ってきた勇者。とりあえずの報告を済ます。
「んーどうやらすぐ近くには解除用のギミックは無いみたいだ。それで、この扉の先なんだけど…多分だいぶ深い。」
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「ふうむ…しかし、困ったものだな。」
勇者ひとりだったとしてもデバッグ能力のおかげで何とか生き延びて探索出來るだろう。しかし、それでは意味がない。
皆と協力して一緒に冒険するという意味が。
「みんな、とりあえず通路の先まで行ってみるけど、何がどうなっているのか全く分からない。この扉の前でしばらく待っててくれ。」
「ひとりで大丈夫?ユーシャ?」
「まぁ…とりあえず死ぬ事も無いしなぁ。」
「あー。リーダーならトラップとかも平気ですからねぇ。」
「それでも、やはり心配よ。勇者君1人で先行するなんて。」
「あ!マルマルさん!何かあったらパパの手帳使って見て下さい!多分役に経つと思います!」
「あぁ、アレか。」
勇者はミンギンジャンから貰った古い手帳を取り出した。料理のレシピなんて言って渡されたが、細かく々な冒険についての記録が書かれていた。
「うん!なんかあったらこれ使うよ!」
「勇者殿、1つ重要な事を聞きたい。」
ハックが真剣な眼差しで詰め寄る。
「…部にモンスターは居るのか?」
「ハック、俺も不思議に思っていたんだ。こんな『イベントダンジョン』、モンスターがうじゃうじゃ居たっておかしくないぐらいなのに…」
勇者のじていた違和はコレだった。普通であれば、暗闇狀態のトンネル等では目の見えない代わりに聴覚などが発達したモンスターが沢山住み著いていて、その分エンカウント率が上がったりするものだ。
しかしこの扉の向こうは、生きの気配が一切しなかった。気配はおろか、まるで最初から『配置されていない』みたいだった。
「中も凄く綺麗なんだ。踏み荒らされてない…と言うより、誰も、何もって無いようなじだ。」
ハックはその話を聞いて、し考え込む仕草をした。この扉の向こうには々な可能がある。だが今は最も考えたくない可能がしづつ浮上して來ていた。
「危険なのは重々と承知だ。しかしこの狀況では勇者殿の能力に頼るしかない。済まないがいつでも帰って來れる範囲で捜索を頼みたい。」
「あぁ、分かってる。みんなし待っててくれ。」
勇者は意を決して、もう一度扉の中に消えて行った。
あれから小一時間は経っただろうか。
勇者が扉に潛ってからしばらくパーティーメンバーはその場で待っていたが、30分を過ぎた辺りから馬車の位置まで戻り、皆で夜食を取る事にしたのだった。小さな焚き火を起こし、暖を取りながらサイカとマリーナの手料理を食べる一同。これは勇者が帰ってきた時に勇者にも食事を與える為に必要な休息であった。
「それにしても…マルたん遅いねぇ。」
今はタリエルが口にした言葉だが、先程から皆が代わる代わる同じ言葉を口にしていた。
「マルマルさん、無事なら良いですけど…」
暖かなコーヒーを口にし、焚き火を見つめては扉に視線を移す。もう何度と繰り返した事か。
ーその時であった。
「お!オイ!!みんな!!」
扉の目の前で見張りをしていたアンジェラが驚きの聲を上げる。突然、今まで一向に開く気配の無かった扉が音もなく開いたのであった。
「やったか!勇者殿!!」
扉の前に駆け寄る一同。しかし、扉の向こう側には勇者の姿は無かった。
數メートル先までしか月明かりの屆かない、真なる暗闇がその先の通路に広がっていた。
「もしかしたら、スイッチは大分先にあったのかもしれないわねぇ。勇者君を迎えに行きましょう。」
かつて上級くノ一だった夜目の効くサイカを先頭に、パーティは暗闇の通路を降りて行くことにした。
窟の通路は曲がりくねってはいたものの、分岐や寶部屋などは一切ない作りになっていた。ややしばらく通路を下って行くと、簡素な作りの木の扉が現れた。ここまで一切敵の気配などは無かったが、ハックは杖を扉に當て、中の気配を探った。
「………うむ。」
「どうですか?ハック導師?」
「やはり全くと言っていい程敵の気配はじられない。ここにモンスターは湧かないのだろうか?」
「でも、なーんかおかしくない??こんな真っ暗な所、なんでモンスター出ないの??」
「「「うーん……」」」
皆が頭を捻っては見たものの、納得の出る答えは見つからなかった。
「まずはマルマルさんを探しましょう。」
「うむ、それでは皆、扉を開けるぞ」
サイカがゆっくりと扉を押し開く。その後ろには剣の柄に手を當てたアンジェラが、いつ何が來ても良いように殺気を尖らせる。
バタン
「「「うっわぁぁ〜〜!!」」」
木の扉の前に広がっていたのは、全くもって予想外の景であった。四周を切り立った崖で囲まれた、ダンジョンとは思えない程かなり広範囲の、緑溢れるとてもしい庭園のような場所が広がっていた。小さいながらも川が流れており、中央には綺麗な石版が敷き詰められて舞臺のようなホールのような広場があった。
「あらあら、凄い所に出ちゃったわねぇ〜」
「何これ!?ここ地下じゃ無かったの??」
「月が見えている。ここだけ空で、それが地上まで屆いていたのだろうな。」
「凄いね、ここ」
「と、とてもしい。」
「こんなの、初めて見た…」
月明かりに照らされた庭園に、誰もが息を飲んだ。その時…
「…おー……」
「ん?なんだ?」
「あ!リーダーです!!」
距離のある庭園の奧の方から、勇者が手を降ってこちらに走ってくる。
「マルたんだよ!無事だったみたい!おーい!!」
タリエルが勇者の方向に駆け出した。つられて他のメンバーも走り出す。
遠くにいる勇者は大きな聲を出し、しきりに手を降っている。余程皆と會えなかったのが寂しかったのだろう。
「…おー……るなー……」
「勇者君、余程寂しかったのね。」
「しかし…リーダーはなんて言ってるんですかね?」
「うーん。もうちょっと近付けば聞き取れるかも。」
段々と勇者までの距離もまりその表も見て分かるようになってきた。何だかとても焦っている様に見える。
「勇者殿〜!!大丈夫であったか〜〜!!」
「………おーい……」
「マルたん、なんて言ってるの〜??」
「マルマルさーん!!こっちは大丈夫ですよー!!!」
「おーい!來るなー!!罠だー!!」
「「「へっ」」」ガチャン
パーティメンバーが勇者のび聲の容を理解するのと、自分達が通ってきた扉の鍵がかかった音を聞いたのは、ほぼ同時だった。
第40話 END
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