《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第48話 #20ep『殘念勇者の伝説』

暗い階段を降りて行くと、まさに霊廟といった荘厳な創りの広間に出た。明かりは一切無かったが、壁のあちらこちらに松明が立て掛けてあり、一同は散り散りに松明に燈りを燈していった。

「こいつは…驚いたな。」

「凄いね!とても綺麗!」

辺りが松明により照らされる度に、々な調度品の數々や、しい壁畫等が見えてくる。

「ここが…『殘念勇者の墓』なのか…??」

「どうやら、そうらしいな。所でタリエル?」

ハックに呼び止められて、タリエルがビクッとする。

「…大方、墓泥棒というは呪いに掛けられたりするらしいな。」

「な!なによ!」ビクビク

「…いや何、もし我々の中に邪な心を持った者がいたらなぁ?巻き添え喰らうのはゴメンだと思ったまでさ。」

「…ハイハイ出しゃ良いんでしょ!?分かりましたよーっと!!」ガチャガチャ

タリエルの袖からものの見事に金品財寶の類が出てくる。

「「う、うわぁ」」

「「最低だな…」」ヒソヒソ

「うるさい!冒険と言ったらお寶探しでしょうが!!いーじゃんちょっとぐらい失敬してもさぁ!!」

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「だからってなぁ…カルガモットにさっき墓荒らしじゃないって言ったばかりだぞ!?」

「悪かったわよ!うぇ〜〜ん!!」

「まぁとりあえずこのタリエルアホはほっといて…」

更に奧の方にもう一部屋あるのが見える。

「あそこだな、行こう。」

勇者を先頭に、皆が後に続く。

その部屋は、勇者達が探していただった。扉を潛ると、先程の広間程ではないが中々の広さの部屋があったのだが、中央に棺が1つだけあった。

「ここだ。暗いから足元に気をつけろよ。」

「まった!罠があるかも知れないぞ?勇者殿!」

「なら好都合だな。俺が1人で先行するから、離れていろ。」

皆は部屋の中にはらず、口の前で待つことにした。勇者は恐る恐る1歩ずつ前にすすむ。

棺まで後一歩という所で、ある事に気付いた。

「……ん??おい、蓋が空いてるぞ?」

「本當か?」「お寶は!?」「タリエルさん、落ち著いて…」

更に慎重に足を進める勇者。

「あー。どうやら空っぽみたいだ。」

「「「なーんだ…え!?カラ?!?!」」」

「ちょっとまて、蓋に何か書いてある…えーっと…」

「やめろ!!!」

突然の大聲に皆が驚いて振り向く。そこには息を荒くしたカルガモットがいた。

「頼む!やめてくれ!見ないでくれ!!」

「あ!おい!」「きゃあ!」

一同を掻き分けて部屋の中にろうとするカルガモット。

「おい!何やって…うわぁ!!」

勇者の事も突き飛ばし、棺に覆い被さるカルガモット。その勢いで、勇者の手に持っていた松明が弾き飛ばされた。

「いい加減にしろ!一何をそんなに慌てる必要があるんだ!!」

「ま、マルたん…」

「ん?なんだタリエル?」

口から覗いていたそれぞれは、絶句と言った表でこちらを見ていた。

「なんだ?急に!?」

「あれを見ろ…勇者殿。」

ハックに指を刺されてその方向を見る。その方向とは、先程蹴飛ばされた松明の転がって行った方向だった。棺よりも奧に転がった為、奧の『壁面』が照らし出されていた。

「……………はぁ?」

「見ないで…見ないでくれ!頼む!」

カルガモットは力なくただただ泣いていた。

『壁面』を見た勇者、口に溜まっていた他のメンバーも、見ているが信じられなくて部屋の中にってきた。

「なん、なんだ?これは??」

「なに、これ…」

「酷すぎるぞ…冗談にも程があるぞ!」

「わたし、怖い。」

「これ、は…想像してなかったな。」

「酷いわね」

口々に、壁面を見た想を言う。言うと言うよりも、思考が停止してしまい、勝手に口から出てしまった言葉だ。

あまりの怒りに打ち震え、勇者は暴にカルガモットのぐらを摑んで引き寄せる。

「おい、どういう事だよ!説明しろ!カルガモット!!」

「うぅ、うぁぁ…」

「どういう事だって聞いてんだよ!!ここに書いてあるのは、お前の祖先の、『ザゥンネ家の勇者の伝説』について書かれてるんじゃ無かったのかよ!!!!」ダンッ

「う…うぅぅ…見ないでくれ…頼む…」

壁一面、いや、部屋の四面全てに隙間なく書かれていたのは、ゲーム開発者が殘した『誰か』に対する罵詈雑言の數々だった。

「なんたんだよ!コレは!?聞いてるだろ答えろよ!!」

「止めろ、勇者殿…領主様は知っていたんだ。」

「なんだよ?何を知ってたって言うんだよ??」

「わからないのか??本當にわからないのか!?」

「こんなもん…分かってたまるかよ!!それはコイツの『全て』を否定するって事だぞ!?俺はそんなのぜんっぜんわかんねーよ!!」

「もう…いいんだ。もう…全ては終わってしまった。」

「てんめぇ!いい加減にしろカルガモット!!」

「ちょ!」「やめて!!」「おちつけ!」

思わず思いっきり毆りつけようとした勇者を、みんなで雁字搦めにして引き剝がす。

「いいんだ、好きにさせてやれ。…そうだよ。この部屋には最初からこれしかない。私の祖先に勇者など…最初からいなかったんだ。」

「やはり…そうなのだな?領主様。」

「あぁ、先代の領主、私の父が自ら命を絶ったのも、これが理由だ。これは領主から領主へとけ継がれる、絶対的な。この世の理だ。」

「それはこの世界に神も…悪魔もなく、ここは『創造』された世界と、言う事か…」

カルガモットが最も隠しておきたかった事、それはこの部屋の存在だ。伝説も、勇者も無い。ただただ殘されたのは、何者かの誰かに対する悪口。それはつまり、この世界がまやかしで歴史も何も存在しないという証明に、他ならなかった。

「ダスキドが『発病』し、それを苦にした父は最後にここの存在と、守らなければならない掟を殘した。私はそれまで、そんな事考えもした事が無かった。この世界がゲームの世界だなんて…」

「そうだったか。」

「弟ダスキドの為、ひいてはこの地に住む領民の為に、我々の誇りと伝統は我等が守る。『製作者』等に我等の人生はらせない。その為に…」

「英雄を、演じていたのだな。」

力なくカルガモットは頷いた。

「ぐるぅあぁああ!!うわぁぁぁ!!!」

勇者は怒り狂っていた。

何故、彼等はここまで苦労しなければならなかったのか?

何故、苦悩を重ねてまで守らなければならなかったのか?

何故、このようなふざけた存在が許されるのだろうか?

何故、彼等はNPCという理由で、人生を弄ばれなければならないのか?

何故、誰も彼等の尊厳を尊重してくれないのか?

何故、こんなを守る為にカルガモットは自らを犠牲にしなければならないのか?

何故、仲間達と傷つきながらも楽しんだ冒険を、名も知らぬ製作者に汚されなければならないのか?

何故、世の中はこうも理不盡なのか?

何故、自らのプライドの為にたった1人で立ち上がった男の肩にかかる言葉が、こんな口汚い罵詈雑言の數々なのか。

何故、

何故、

何故…

途中から、勇者は泣いていた。

「うぁぁああぁ!!何なんだよちくしょう!!コイツが何したって言うんだよ!!なんで…なんでこんな酷い事が出來るんだよ!!クソッタレぇ!!」ゼェゼェ

「ユーシャ、落ち著いて!!」

「リーダー!」

「勇者君!!」

「許せる訳ねーだろちくしょう!コイツ、んなモン守る為に、なんでも捨ててきて、俺達にだって1人で挑んで來たんだぞ!?なのに、なのになんで!酷すぎるだろぉ!!」

「もう、良いんだ。だから、私の為に泣くのはやめてくれ…勇者…」

「ちっっきしょぉぉぉおおがぁぁぁ!!!うあぁぁぁ!!」

勇者の怒號が、『ザゥンネ家の英雄の墓』に、いつまでもこだましていた。

第48話 END

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