《ノアの弱小PMC—アナログ元年兵がハイテク都市の最兇生と働いたら》第4節—方舟最強の生

もうすぐ、本土を発ってから半日経つ。方舟……海上都市センチュリオンノアまであと一時間……だが。ここまで無事に戻ってきて、騒な通信が艦橋を荒立てる。

「結月尉……、センチュリオンノア、サウスゲート守衛部隊から電!! サウスゲートから南南東20キロ地點にて、ドミネーターの出現が確認されました!」

「進行方向は?」

「ランクアルファ、ベータの群れが海上都市へ接近中! 守衛部隊は我々との挾撃、殲滅を提案してきています」

球形モニターの中に立的に表示された、挾撃プランの映像。海上に現れ、方舟に向かう大量のドミネーターの群れを、立映像化された戦艦アルバレストと、方舟側の守衛部隊が遠距離砲撃で挾撃するイメージが映されている。

挾撃と言っても、相打ちを避けるために戦艦側は高度を上げ、撃ち下ろす形になっていた。

「とのことですが、どうします。ジャックス大佐」

一応責任者に許可を得ておこうと、靜流はジャックス大佐へ通信をれておく。帰ってくる答えは、もちろん……。

《そのプランに乗れ! 守衛部隊から追加報酬ふんだくってやらァ》

「守衛部隊はあなたと同じ、企業連正規軍所屬でしょう」

《ああ、部署が違うんだっつー話よ。へっへ、気にくわねえ奴らだ、恩を売りつけてやりゃあいい》

の考え方がいちいち下品なジャックスに呆れながら、靜流は執務室との通信を切り、すぐさま指揮に移った。

「対ドミネーター兵の出力準備を。あと航行速度と高度上昇、目標の後方上空へ付いてください。ドミネーターから発生するグレアノイド反応を広域化したレーダーへ表示します」

次々に的確な指示を飛ばす靜流と、艦手により戦艦アルバレストは大きく進行方向を変える。その巨を海原でゆっくりと振りながら波を立てていく。今現在レーダーへ投影されている。ドミネーターから発せられるグレアノイド反応を追い、反重力爐出力を上げて加速してゆく。

ブリッジに響く力音がその出力の変化をありありとじさせ、クルー達は心ともに臨戦態勢へ移行していた。

Advertisement

「挾撃する以上、ブルーグラディウスは出せねぇな」

「サージェス大佐、いらしていたのですか」

「流石に戦闘指揮くらいは取らんとな、結月ちゃん。ったく、せっかくのお楽しみを邪魔しやがってよォ。この代償は高くつくぜ化け共」

どこぞのの香水の匂いを漂わせながら後ろに立った彼は、ブツブツとなにやら文句を言っているようだ。が、シズルはそんなことに構わず狀況整理、指示を進めてゆく。

程距離まで約6分。フォトンノイド粒子砲6基、グレアノイド知ミサイル10基、シールド共に展開完了。このまま直進しつつ待機します。尉、大佐、次の指示があれば従います」

「そのまま待機を続行、6分後に備えてください」

「了解」

シズルがオペレーターとのやりとりを一旦終えようとしたその時だった。サージェスがレーダーに映る何かに気づき、獨り言のように……。

「様子がおかしいな。群れがばらけ始めてやがる」

「本當ですね……。まさかこちらに気づいたのでは」

海域上の報を表示しているモニターに変化が現れた。赤い點で表示されている、一つ一つのドミネーターの表示。まとまっていたはずのそれが、それぞれ突然離れ始めたのだ。

「その可能もあるが……それにしては迎撃してくる気配がねぇよ。なにか知しやがったな。いますぐサウスゲートに連絡をれろ。もしかしたらセンチュリオンノア側の化けを出しやがったのかも知れねェ」

「“ステイシス”を? まだ私たちで対処できるようなこの狀況で?」

嫌な騒ぎをじ、シズルはオペレーターにセンチュリオンノア側へ連絡をれるよう指示した。自はシートに深く座り、報告を待つ。

ステイシス……。方舟が所有する兵の中でも、頭ひとつ飛び抜けた戦力を持つ“生”。

「ステイシスは今調整中のはずです。出撃するわけが……」

「その……結月尉」

不穏な空気を漂わせながら、オペレーターは言う。

「ステイシスが、獨斷で方舟から出撃したようです……」

Advertisement

「噓でしょう!?」

その報告にシズルは耳を疑った。今現在、センチュリオンノア最大の兵であるステイシスは不安定な狀態にあり使えるようなものではなかったはずなのだ。

そのステイシスを知し、レーダーに映るドミネーターの群れはバラけたというのか。

「下手をすれば“彼”の巻き添えを食うことになります! 進行方向を修正、今すぐ戦線を離してください!」

「ああだめだ、遅ェ」

広域化されたレーダーの端から新たなグレアノイド反応が知されて表示された。

そのグレアノイド反応はドミネーターのよりも強く大きく表示され、それは高速でドミネーターの群れへと向かっているようだ。

……——。

方舟の頂點に座す化け。レーダーに映ったそれへ、方舟側は何度も何度も呼びかけていた。

《ステイシス、出撃は許可されていません。いますぐ帰還してください、今すぐに、帰還してください!!》

「……」

薄暗くシステマティックなコクピットには、赤いが電子回路のように巡っている。

その中に座し、様々なチューブをに取り付けられた機のパイロットはその呼びかけに答えない。

驚くべきことに、ドミネーターに出現するグレアノイドの赤い粒子と同じものが、センチュリオンノアの最大戦力と呼ばれる者の周りに現れている。

海面を大きく裂きながら、暗い夜の空を弾丸のように飛ぶ漆黒の機

その機の表面にも、コクピットと同じようにグレアノイドのラインが巡っている。鋭利な黒い裝甲を持つその機の背や腕に裝備された、明らかに不釣り合いなほど巨大で金屬部品が折り重なった兵の各部が怪しいきをみせていた。

それは、洗練されたシルエットを持つ機との対比で、やけに不気味な様相を呈している。

の背のバーニアから鋭く吹き出る推進剤と、排気口から出る赤いグレアノイド粒子が高速で飛ぶ機に尾を作りながら——……

その黒い巨人は前方の空に飛んでいる、多數のドミネーターを捉えた。

Advertisement

十數に及ぶ小型中型ドミネーターの大部隊。本來ならばセンチュリオンノアの一線級部隊が出撃し、殲滅に當たるような狀況だがこの機は臆することなく真っ向から突っ込んで行っている。

すでにドミネーターの攻撃の程範囲、おびただしい數のの矢が雨あられと向かってきたのだが……。

低空を飛行していたその機は、弾かれたように上空に飛び出し、の矢の線から外れた。

……かのように思えたが、途切れることなく放たれているそれは、上空へ外れたその機の足元を追ってきていた。

しかしそれ以上回避しようとせず、噴かしていたブースターを一旦完全に止めてしまう。

上に押し上げていた推進力が消失し、ゆっくりと上がりやがて止まる。機を包む靜寂、その剎那。

靜止した機を捉えたの矢をアームで摑み、向かってきたその威力を一度完全に殺しつつ肩部に凄まじいトルクを掛けた。

その隙にも、何本もの禍々しいの矢が裝甲に直撃するが、その漆黒の裝甲を傷つけることはない。その機の矢を砕き弾き、しかし衝撃だけは殺せず何度か空中で後退しながらも。

“10時方向、戦域を離する大型艦を海上にて発見、捕捉”した。

おかしい。狙いは、眼前の怪ドミネーターではない。

コクピットモニターにてドミネーターの群れ、その向こうの下界に見える大型の戦艦に、ピントを合わせながら拡大してゆく。そこまではこの機のシステムによるアシスト。しかしここからは違う。

最高戦力と呼ばれる生が“センチュリオンノアに居ながらにしてじていた”とある【人間の気配】。その人間のいる場所を、“最高戦力ステイシス”自覚で探る。

見つけた。右舷後方裝甲付近の部屋。この機る“彼”の口角が上がった。

攻撃をけつつ、の矢をつかんだ側の肩部トルクを大量の赤い粒子と共に解放。

凄まじい出力で放たれたの矢は直線上、正面に居たドミネーターの黒いを貫きながら、戦線から離しようと舵をとる戦艦に一直線に向かってゆく。

現在、戦線離中の戦艦アルバレスト、その艦橋では……——。

「前方に展開するドミネーターより攻撃がきます!!」

アルバレスト艦橋でオペレーターがぶ。たった一つの“赤いの矢”による攻撃ではあったが、より早くより正確に飛んできていたその矢は船側面を捉えていたのだ。

學防壁を多重展開しろ!! 狙いがおかしい!!」

向かってくる攻撃の予測弾道を見て、ジャックスの暴な指示が飛ぶ。

ステイシス機を、敵と認め対峙しているドミネーターが、戦線を離しようなどと行している、“敵”をじさせないこの艦に……ピンポイントで、しかもこれほど強力な攻撃を仕掛けてくるだろうか。

艦隊側面、著弾予測位置へ、青い粒子を放出しながら幾重にも展開された防護壁。青く質化したで構されたそのシールドは、淡くを放ちながら、秒単位でその強度を増してゆく。

その急ごしらえの強度は、向かってくる矢を防ぐまでになれるのか……。

學防護壁の展開完了!! ……右舷へ被弾しますッ! 衝撃に備えてください!」

強力な加速に伴った凄まじい風切り音を纏いながら、その矢は戦艦アルバレストへ薄する。

その赤いの矢は船右舷をるように著弾。

多重展開されたシールドを削るように破壊してゆき、その向こうの右舷裝甲を大きく破損させた。

が大きく振し、破壊されたシールドが粒子となって散り、裝甲はめくれ上がりぜて四散した。

橫から毆りつけるような衝撃は艦橋までも襲った。球モニターの艦マップに表示された艦マップ、その右舷付近のダメージエリアが赤く染まる。

「……くっ、損傷報告を!!」

ぐわんぐわんと鳴る頭に翻弄されながらも、シズルはオペレーターに指示を出した。

「右舷シールド、裝甲共に大破しましたが力部に異常なし! 脅威対象、艦を掠め裝甲を抉り後方へ抜けました。船員バイタルサインにも異常は見られませんが、艦部が大きく出しています……ここは」

オペレーターが艦マップ、そのダメージエリアを拡大しシズルへ見せる。右舷後方に位置するその部屋は。

「捕虜、祠堂雛機が療養中である部屋の外壁が大きく破壊されています!」

「なんですって!?」

この時、ジャックス大佐の頭の中に引っかかっていた、今しがたの攻撃に対する違和がおさまるところにおさまった。祠堂雛樹という男が、巨大な怪を蹴り飛ばしていた戦闘映像。突然の帰還命令、その機會を待っていたかのようなステイシスの暴走。

そして、狙ったかのように飛んできたの矢の一撃。

「結月尉よぉ。グラディウスでステイシスを抑えろ。狙いがわかった」

「どういうことですか」

「気づいてんだろ。今しがたの攻撃、ドミネーターのもんじゃねぇってこたぁ。速度と子圧比が強化されてやがった。じゃねぇとこの艦のスペックで展開できる多重シールドを削り取るなんて真似はできねぇよ」

過程はどうあれ、ジャックスと同じような結論に至った結月靜流は言う。

「やはり今のは……ステイシスからのものでしたか」

「ああ。しおイタが過ぎるってもんだ。単騎では心細いだろうが、できるだけ抑えてくんな。あれと祠堂雛樹を接させると、ややこしいことになるような気がしてならねぇんだ」

「……わかりました。東雲準尉、“ブルーグラディウス”オペレート準備を!」

《もう始めてます。いつでも出撃できるよ》

その通信を聞いた靜流は凜とした面持ちで、しかしどこか不安を見せながら格納庫へ走っていく。

殘されたジャックス大佐はシズルの代わりに司令塔となり、戦線離続行の為ため、航行進路を指示、右舷被弾部付近の乗組員の正常なエリアへの移狀況を把握しつつ、被害の大きい雛樹の部屋の監視カメラの映像をモニターへ映し出した。

「……うっそだろ、オイ」

が、その部屋の映像は全く映り込んでいない。大方、破壊された裝甲の破片か何かで監視カメラ自が破壊されたのだろう。通信からして途絶してしまっていたのだ。

方舟の最高戦力と揶揄やゆされる者が駆る漆黒の機は、投擲とうてきした赤いの矢がアルバレストへ著弾したのを確認した。

しかしそこでようやく自分の置かれた狀況に気づいたらしい。

大量の怪ドミネーターに包囲されている、と。いや、気づいてはいたが今まで眼中になかっただけだったのだが。

そのほとんどが、人型ヒューマノイドランクα。

ドミネーターのランク分けは下位順に、α、β、Γ……と、その形狀から分けられるのだが。

この人型ヒューマノイドランクαは、“ドミネーターの基本形態にして數が多く”、普通なら単騎で挑めるような狀況ではない。

的なこの包囲網の中で平然としている黒い裝甲を持つ機は一何者なのか。

すでに攻撃は始まっていて、幾つものの矢が機へ放たれてはいる……が。

その數多のの矢が裝甲を貫くことはなく、裝甲の表層を淺く削っていくばかり。

頭部、人でいう目の部分に赤いが燈る。積んでいる反重力機関を用いて空に浮いていた機、その“各部ブースター”が慣らしだとでも言うように次々に噴した後、一気に上昇しさらなる上空へ離した。

それに反応したドミネーターは、間髪れずその機の後を追った。群れとなり、まるで空に向かってびる柱のように“縦一直線”になりながら追う。

索敵レーダーモニターで、追ってきているドミネーターの群れを確認した、漆黒の機、そのコクピットに座る“彼ステイシス”。

口角をギィッとあげ、兇悪な笑みを口元に浮かべながら、橫目で“グレアノイド粒子チャージ完了”の文字を確認した。

その瞬間、音速を超える速度で上空へ上がり続けていた漆黒の機は“突如反転”する。

反転……しながら。機に不釣り合いなほど大型で、無骨な兵が右腕を覆うように変形していく。

追ってきているドミネーターと向き合う頃には巨大な砲ほうしんを持つ兵へと変貌へんぼうを遂とげていた。

が三つに分かれており、赤い粒子を撒まき散ちらしながらそのそれぞれが唸りを上げて左右に回転し。

巨大な金屬塊がれる、恐怖をう重く続く音を放ちながら、照準は一直線にこちらに上がってきているドミネーターの群れの真ん中へ。

グレアノイド粒子三連結砲、出。

極限まで加速された巨大な赤いエネルギーの塊。

その大量破壊線が、一直線に並んでいたドミネーターを薙ぎはらいながら海へと落ち、広範囲の海面を強烈なグレアノイドの赤いで染める。

蒸発した海水が辺りに広がり立ち上り、景を白で埋めていった。

出後、機に裝備されていたその砲は、その凄まじいエネルギー放出に耐え切れなかった。

歪んだ砲が回転しながらも、不規則な音を立てて火花を散らせ、瓦解してゆく。

モニター上に、ノイズと共に明滅するウェポンパージの文字。

一回撃ち下ろしただけで使えなくなったそれをなんの未練もなく外し、その巨大な鉃塊は火を吹きながら海に落ちてゆく。

まるで隕石のようなそれは、やがて大きな発を起こし海面をさらに噴き上げさせた。

この慘狀だ。全てなぎ払った、かに思えたが。

コクピットが大きく揺れる。

生き殘ったドミネーターが機に取り付いてきたのだ。取り付いたドミネーターは、武でもある腕しょくわんを鋭く尖とがらせ、大きく振り上げて部裝甲をめがけ、振り下ろしてきた。

巨大なハンマーで思いっきり毆られたかのような衝撃に、コクピットの中の“彼ステイシス”は大きく跳ねる。

間違いなくの矢より威力の高い一撃。裝甲にヒビがり、赤くる粒子がその裝甲の下かられてしまっていた。

「……」

この機には先ほどの巨大な粒子砲以外に攻撃兵が搭載されていない。

それもそのはず、この機に出撃予定はなく、唯一搭載されていた粒子砲は試作兵であり、試のため機に取り付けられていただけだった。

その証拠に、兵裝狀態を示すモニターには予備兵裝が無いことを示す文字が出現している。

に張り付いたドミネーターはその腕を、ヒビのった黒い裝甲に潛り込ませ抉えぐり剝はがしにかかっていた。

……が、機の彼の髪がふわりと浮き、剣呑な雙眸が赤く染まる。

腕にドミネーター特有の赤いグレアノイドのラインが浮かび上がり、それはコクピット壁に走る同様のそれと縦桿を握る手を伝って繋がり……。

次の瞬間には、機裝甲の“ヒビから突き出した”いくつものグレアノイドの“赤いの刃”が取り付いていたドミネーターを串刺しにしていた。

張り付いていた怪ドミネーターは、機から強制的に剝がされ宙吊になる。

その後、きを封じられたドミネーターの頭部を、機の右腕で暴に鷲摑みにし、徐々にトルクをかけてゆく……。

ドミネーターに出のはなく、頭部は軋み、耳障りな音を立てて形を変えていった。

……負荷に耐えきれなくなった頭部は赤いを撒き散らし、潰されたリンゴのように破壊されてしまった。

だらんと力無く垂れ下がったその怪ドミネーターを、漆黒の機は躊躇ためらいなく遙か下の暗い海へ落としてしまう。

これで最後のドミネーターを撃破した。だがその機に乗るステイシスと呼ばれる彼にはなんのも、達もない。ただただその先にある目標にだけ、今は興味を惹ひかれて落ち著かない。その漆黒の機は次に目標を定める。

先ほど攻撃を加えた戦艦アルバレスト右舷後方へ。

——……。

することもなくベッドに寢転んでいたら、突然壁が吹き飛びついでに自分もベッドから転げ落ちた挙句、床に頭を打ち付けしばらく意識を失っていた祠堂雛樹は、こちらへ向けられた異形の気配に反応し目を覚ました。

「あ……ったま痛いぞクソ……突然なんだよ」

ベッドに手をかけ何があったのか把握……するまでもなかった。

派手に壁が破壊され、夜の帳が下りた大海原が広がっている大パノラマ風景が自分を迎えてくれている。

部屋を見渡すと、ベッドはひっくり返り、破壊された裝甲の一部が散らばり足の踏み場もない。

打ち付けて腫れた頭をさすりながら、がよだつような化けの気配を外にじつつ。

驚きで丸くなっていた目を、鋭く、剣呑なそれに変える。片方の瞳が赤みを帯び、熱を持つ。

そのに叩きつけられるようにじる、強大な怪ドミネーターの気配。

その異形の気配がどんどん近づいてきている覚に悸が止まらない。

赤いを帯びた右目の熱が、気配と比例して強くなっていく。その気配の出どころを探ろうと、風に靡なびく髪を押さえ、壁にできた大からを乗り出した瞬間。

視界にフェードインしてきた、無機質な塊でできた漆黒の巨人。

背筋に、悪寒が走る。

ギラギラとる頭部の目、洗練された漆黒の裝甲に電子回路のごとく走る赤いグレアノイドの

なぜか破壊されている部裝甲からは、赤い粒子がれ出していた。

……——。

漆黒の機部のモニターには、驚き絶句している男の姿が映し出されている。彼ステイシスは前々からじていた“同類の気配”を目の前に興し、その男の右目を拡大。

淡くを放っている赤い瞳と、獣のような縦に細い瞳孔を確認。そして確信を得た。

「あっはぁ……、やぁっと見つけたわ……。私バケモノと“遊べる”人間……」

口角が上がり兇悪な笑みを浮かべ、モニター越しに彼を見て放った言葉はどこか危ない気配を漂わせていた。

……——。

雛樹は絶句した。気配は確実にあの怪のものだったはずだ。だが、目の前に現れたのは、靜流が乗っていたあの“ウィンバック・アブソリューター”と呼ばれる二腳機甲と同じような外見をしていたのだ。

その漆黒の巨人は、両方の腕を後方へ引き絞ると、思いっきり戦艦の裝甲へ突き立てた。まるで、“機を固定するアンカーのように”。

いざという時に備えて、手頃な金屬片を片手に持っていたのだが……目の前の漆黒の機、その部が展開し……コクピットがせり出してきたのを見た瞬間。

目を見開き、口をポカンと開け力。その金屬片を床へ落としてしまった。

そのコクピットに座っていたのは、褐に、純白の長い髪のだった。見た目、13歳から15歳といったところか。

えらく出の高い拘束をだらしなく纏い、なにより……。

怪しく赤いをのぞかせる瞳。

それは瞳孔の形といい、といい、自分の右目と同じものだった。しかも、彼のものは、両の目とも赤い特殊な瞳なのだ。

薄く笑みを浮かべたその端整な顔のは、自らのに取り付けられた大小様々なケーブルを強引に外しながらコクピットから立ち上がった。

ケーブルを外したせいか、一斉に漆黒の機のシステム、力が落ちる。

力が抜けたようにガクンと落ち込む機だったが、腕を戦艦の裝甲に突き刺しているおかげで、不安定だが宙吊りに。落ちることはない。

「ふふ、ねぇ! あなたにれさせてぇ?」

「……あんた、その……は!」

そのの褐のところどころに回路のように走る、赤いのライン。

“ドミネーターの表に現れる紋様もんようと同じ”だ。

足で、まるで羽が落ちるかのようにふわりと自分が立つ床まで降りてきて、無邪気な様子でぺたぺたと近づいてきた。

拘束こうそくいの袖は後ろに回っている。なんてことだ。この子は、腕を固定されながらこの機っていたのか。

しかし、れるとはなんだ。腕を拘束された狀態でどうれるつもりなのか。

だが、その懸念は一瞬で吹っ飛ばされることになる。

目を見開き、直していた自分の顔目掛かおめがけて跳んできた褐白髪のに……を塞がれた。

ぬるりと、粘らかく暖かい

意表を突かれた一瞬の出來事だったが、目を回すのに十分なインパクトだった。

「ぬぁ……!?」

「あっは!! ほんとだぁ。“アルマ”がれても“黒い塊”にならない。へぇ……そう。人間の溫かさって、こんなのだったわねぇ……」

離れていく彼は、目をっぽく細めて、心底じている高揚を噛みしめている風だ。

「お父様ですら、“アルマ”にれないもの……。私がれられる人間の男……ねぇ、あなた——……」

《そこまでです、ステイシス。ステイシス・アルマ。彼から離れなさい。これは重大な命令違反です。あなたには出撃命令は下されていません》

戦艦に取り付いている漆黒の機の後方に、青い粒子を放出しながら悠然と滯空している、青い二腳機甲、“ブルーグラディウス”から、結月靜流の聲が聞こえてきた。

その聲の主に背を向けながら、容姿端麗な褐は攻撃的な鋭い目つきになり、瞳だけかし後方を気にする仕草を見せた。

「あっはぁ……その目障りな“青いクソ”でアルマの前に出るなんて……。ああ、なんて勇敢な子なのかしら……」

『今すぐそこから離れなさい』と、再びそう言われた褐白髪のは『せっかちねぇ』と半ば呆れながら言葉を返す。

だが、そういうの表は……雛樹にとって理解不能な恐怖を抱かせた。

口元は笑みを浮かべてはいるが……目が據わっている。獣のような赤い瞳は獲を見定めたかのようにかない。

「ねーえ、あなた」

「んん?」

と、思えば。らしい見た目にそぐわぬ妖艶な表を浮かべ、こちらに視線を移して、蠱的に間延びした聲で呼びかけてきた。

「お名前、教えてくれはしないかしらぁ?」

し不安げな表を浮かべたに、雛樹は本土に置いてきた子供達の顔を重ねてしまった。

「……しどう、祠堂雛樹だよ。君の名前は?」

「あっは、なんだか子供扱いねぇ? ふぅん……こんなのも新鮮でいいわぁ。しどーお兄ちゃん? きひひ」

くすぐったそうに笑いながら、そう言われてもだ。どうしたって自分より年下のにしか見えないのだから仕方ないだろうと心の中でつぶやきながら、の次の言葉を待つ。

ひとしきり笑った彼は、一呼吸置いてから雛樹の質問に答えた。

「ステイシス・アルマ。方舟のゴミ共はみぃんなそう呼ぶわぁ」

「ステイシス……」

「ねえ」

ぐいっと顔を寄せてきて、ステイシス・アルマは言う。

「ねぇ、ひなき。アルマと一緒に來てほしいの……お願ぁい」

その言葉に、疑問符を浮かべた雛樹だったが。金屬を叩き割ったような甲高い音に、から出かかった何故? という問いは飲み込まれてしまった。

そうしているうちにも両腕をアンカー代わりにして、戦艦の側面でぶら下がっていた漆黒の機が、どんどんずり落ちてきている。

後方に見える青い巨人、ブルーグラディウスの周囲に展開された、自立して浮遊する三本の巨大なブレード……主兵裝“ムラクモ”。

《忠告はしました。ステイシス・アルマ、その機が海の底へ沈んでも知りませんよ》

アンカーにしていた漆黒の機の腕、その片方をムラクモで切り落としたのだ。支えを一つ失った漆黒の機は自重で落下寸前。しかしなんとか殘された片腕だけで踏みとどまっていた。

「くひ、きひひひ……、“クソ”。怒らせる相手間違ってることに気づいてるぅ……?」

限界まで見開かれた両目と、怒りで引き絞られた瞳。そして狂気に満ちた笑い聲。

こんなが放っていい殺意じゃない。一このは何者なのか……。

別れの言葉もなくその、ステイシスは落下しかけている漆黒の機、その部コクピットへ飛び乗り……。

「あっはぁ……海の底で後悔しなさぁい……」

腕が落とされているそのハンデなど、全く意に介さない様子でそう言うと部裝甲を閉じ、再び機力を起させた。

腳部を戦艦側面の裝甲に押し付け、蹴り出してアンカーにしていた腕を勢い良く抜くと同時に、背後にいたブルーグラディウスへ薄した。

「ッ、なんて起速度……!!」

システム、力起にかかる時間。それが恐ろしく短く、無いに等しい漆黒の機の速攻に怯み、迎え撃つことができなかった。

靜流は、前面推進ブースターを起させるトリガーを思いっきり踏み込み、機を後退させながら……、展開していた浮遊する三本の剣ブレード、ムラクモに神経を集中させていく。

結月靜流の不意を突いた、靜止狀態からの弾丸のようなフル加速。

それを目の當たりにして靜流は、“三本だけ”のムラクモすらうまく統制できない。

とっさの判斷で、三本のうち二本のコントロールを手放し、殘った一本のコントロールへ移行した。

《きひひひッ、サァ、遊びましょう?》

「なんてデタラメな出力してるんですか……ッ」

相手には近接での攻撃手段しかないはず、そう思い備えていたはずだったのだが。

化けと話し合おうとした自分が馬鹿だったと思い知らされる。

目の前にいるのはもはや本能でく獣。言葉で律するなどと考えている場合ではなかったのだ。

あっという間に懐にられ、漆黒の機、その殘った腕によるコクピットを狙った刺突攻撃が迫る。だが紙一重で反応することができた。機側面のブースターを噴かし、空中で自機を回転させつつスライドさせ、部裝甲をかすめさせいなすことに功。

そして、コントロール下にあるムラクモの一本でカウンターを見舞う。

初撃を外して後方に流れていた漆黒の機、その肩部に撃ち込まれた一本のムラクモ。

鉱石の砕ける音と、機から剝がれた裝甲の破片が飛び散り、赤い粒子がまるでのようにだくだくとれ出ては宙に散る。

だが、全く効いている様子がない。怯むどころか、ノックバックさえしない。

「2番、3番統制——……! 目標を貫きなさいッ」

目まぐるしく展開するモニターに視線を走らせ、各ムラクモの狀態を把握しながらコクピットで聲を出す。

靜流の青い瞳がより一層蒼さを増し、淡くが放たれた。

それはまるで雛樹、そしてステイシスと呼ばれるの赤い瞳と対照的に。

「うぎ……ッ、きひひ……。流石にやるぅ……」

一撃、ムラクモが貫いたあと、間髪れず二本目三本目が腳部、腰部を貫いてきた。

流石の“化け”も、この鮮やかな連撃にきを止めてしまった。

ブルーグラディウスは、近接攻撃回避の際に行ったブースターによる機の回転、その遠心力を持って腕に裝備されている理兵、白く巨大な特殊鋼ブレードを高速展開した。

ブレード展開後、今の運エネルギーを相殺するために、再度ブースターを噴かしピタリと停止。

ムラクモを引き戻し、機の周囲に再展開。勢を立て直した。

《結月ちゃん。ステイシス機の力低下確認。うまくやったね》

「いえ、事前にエネルギー回路の場所を把握できていたおかげです。的確なオペレート、流石さすがです姫乃」

縁の下の力持ち、東雲のバックアップがあってこその、この攻勢。

漆黒の機、その力部は直接潰さず、力部から各駆部にエネルギーを伝達する、“人で言う、所謂管”であるエネルギー回路を斷ったのだ。

これで、二腳機甲ウィンバックアブソリューターの活は停止する筈。

……本來ならば。

「あはぁ……気持ちいいくらいだわ……。これくらいの苦痛……」

漆黒の機、そのコクピットは顔を伏せたまま、口元だけ歪めていた。

「起きなさぁい……“ゴアグレア・デトネーター”……」

そう、呟くと。コクピットの赤いがさらに増し、赤いの回路がそこらじゅうに張り巡らされた。

……——。

見るに堪えない姿になった黒い機、その心臓部分とを斷たれたにも関わらず、機部の熱量が上昇し続ける。

《結月ちゃん、ステイシス機再起……機関出力上昇! どうして!? 力部と駆部のパスは斷った筈なのに!》

「……やはり得の知れない化けですね。方舟もよくあんなものを最大戦力などと……」

新たな脅威に戦慄しながらも、青の機ブルーグラディウスはムラクモの剣先を全て、漆黒の機に向けた。

「仕方ありません……力部の破壊を試みます!!」

《気をつけて、あの機力部を破壊してしまうと、周囲に深刻なグレアノイド汚染が広がるから!》

「留意しますが、対処できるかはわかりませんね」

そう言って、力無く笑う靜流。外部を映し出すモニター、その中心には未だ活を続ける漆黒の機、“ゴアグレア・デトネーター”の姿が捉えられている。

表示された複數のレティクルがそれぞれ、その中心に収束してゆく。

青いレティクルが赤に変わり、“LOCK ON”の文字が現れた。

呼吸を止まるほどに、集中する神経。

「ムラクモ、全弾出します……!!」

トリガーを引こうとしたその時。

《待ちなさい結月ちゃん!!》

「なんですか!」

《ステイシス機の様子がおかしい!》

「……? 様子……?」

そう、様子がおかしい。

ブルーグラディウスにロックされているにも関わらず、“目覚めてすでに行できる狀態にあるステイシス機”がこうとしない……けないでいるのだ。

そのことに困しているのは、なにも靜流とオペレーター、東雲姫乃だけではない。

ステイシス自もまた、困していた。

「……何故、うごかないのかしら? デト? あなた……アルマの言うことに逆らうのぉ?」

コクピットから、機に向かってそう言うが……ゴアグレア・“デト”ネーターは答えない。

異常を知らせるインジケーターにも表示は見られない。

……何故、自分の作をけ付けないのか。

……——。

戦艦アルバレスト。破壊された裝甲の裏、出した部屋で雛樹は行を起こしていた。

右足を破壊された裝甲の壁に乗せ、それをつっかえにし、何かに対して踏ん張っている。

「ぬぐっ……怒らせる相手を間違えてるって……? あんたは“怒りを向ける”相手を間違えてるんだってことをだな……!」

細めた左目とは逆に、これでもかと見開いた右目は異常な狀態となっていた。

赤い瞳はそのままだが、白目、眼球の部分が全て黒くなっているのだ。そして眼球に巡った、管のように細く赤いの回路。

もはやそれは、人間のものではない。

「他はどうあれ、ターシャは止めろ……!」

雛樹自の腕に巻きつかせ、両手で摑むように保持している『質量を持った赤いの線ライン』。

そのラインは……目視する事が難しいほど細く長くなりながらも、漆黒の機“ゴアグレア・デトネーター”の裝甲のヒビへ繋がっていた。

「こんな一筋縄で干渉できるとは……あれ、完全にドミネーターと同じだな……。腕が捥げそうだ……抑え、込めるのかこれ……ッ」

ミシリ、と、足場にしている裝甲部分がひしゃげていく。それだけの力が、今雛樹に掛かっているのだ。

気を抜けばが持って行かれ、大海原へ落ちてしまう。

腕に巻き付いた赤いも、強くに食い込んできた。

……——。

「あっは、あははは!! 信じられない……あの人間、意外と“ドミネーター因子”と馴染んでるのねぇ。さっきから、この子が上手くかないと思っていたら……、質化したグレアノイドこうでこの子を縛り付け続けてるなんてねぇ?」

全くこうとしない機の中、ステイシスは抑えられない高揚を剝き出しに、狂気を孕んだ聲でそう言った。

「きひひ、伝わってくるわ。あの“クソ”を護りたいのね……。でもだめよぉ、あのは排除するわ」

雛樹の干渉によって機の制がままならない中……ステイシスはゆっくりと目を見開いてゆく。

「アルマと張り合うには100年早いわぁ、人間」

突如、漆黒の機、その周囲に展開された球狀の赤いのシールド。そのシールドは、雛樹が繋いでいたラインを切斷した。

張り詰めていたそれを突然切られ、雛樹は思いっきり餅をつき転がった。

握られていた雛樹の手には、繋いでいたものが無くなり、暴れまわる赤い紐狀の線。端から赤い粒子となって消えていく。

《ステイシス機、グレアノイドスフィアの展開を確認。ムラクモを放ってたら潰されてたね……》

「一あの機に何が……」

《……! 結月ちゃん! ステイシス機の駆を確認! 來るよ!!》

「ええ、目視しました。迎撃態勢にります」

《まだエネルギー供給量は安全域で止めてあるから、無理しないようにして!》

「了解しました」

靜流は、漆黒の機周囲に展開するグレアノイドスフィアというシールドが、一點に収束されていくのを確認した。

先ほどまで防壁と化していたそれは、巨大な円錐形を描き……巨大な鋭い槍となる。

《グレアノイド最大収束……? 噓……あれ、本気で墜としに來るつもりだ》

「グラディウスのフォトンノイド貯蔵量はいくらです?」

《30秒後、6000Xeゼヴェルに達するよ》

「あの攻撃の生に使われたグレアノイド粒子量は」

《あれ単で推定3萬Xe》

「……ああ、もう。本當に化けですね……。何故企業連の定めたエネルギー保有規格を軽く超えてるんですか」

ブルーグラディウスのエネルギー、その全てを防に回してもまず防げない威力の攻撃だということが理解できた。

あれは、ステイシスの知範囲なら目標を追尾し、確実に當ててくる。その追尾速度は音速を軽く超えて來るはずだ。

その攻撃は、方舟を壊滅直前まで追い込んだ最上級のオメガ級ドミネーターを葬った記録もあるほどのものだ。

「ムラクモ一本破壊されてでも、機関部を潰しておくべきでしたね」

《ごめんなさい、結月ちゃん……》

「いえ、機関部を潰したところで止められていたかどうかわかりませんし。気にしないでください。仕方ありません……いざとなればベイルアウトします。後の処理、お願いしますね」

そんな絶の淵からわされる會話など知らぬステイシスは、漆黒の機のコクピットで兇悪な笑みを浮かべていた。

不快なノイズを立てるモニターで、青い巨人を自の目で捕捉。

「あは……塵すら殘らないから安心なさいな、青いの……」

巨大な山すら更地にするほどの破壊の槍が捻れ、放たれる。

……その、手前。

《止まりなさい、ステイシス》

アルバレスト艦橋、ブルーグラディウスのコクピット、そして漆黒の機のコクピット。

その全てに響いた、悍な男の聲。思わず姿勢を正してしまいそうになる程の説得力を持った鶴の一聲。

「……!! お父様……?」

その聲を聞いた彼ステイシスは顔を変え、の気がすっと引いてゆく。それに呼応するように、展開していた赤する剛槍の出力も落ち著いていき、粒子化し、消滅してゆく。

シズルがけていた威圧も次第に無くなっていった。

《私が離れている間に何をしているんだ? 戻ってきなさい》

「でもっ、でもぉ……」

《駄々をこねるな。いいかい、戻って來いと言ったんだ》

「お願いお父様ぁ。もうしだけ、もうしだけだからァ……」

《お前がここまでごねるのは初めてだな。だが駄目だ。今お前が害しようとしている相手をわかっているのか? センチュリオンノア、その一端を擔う企業の特殊二腳戦機甲……それを我々の最高戦力であるお前が屠ることの罪が》

「だって邪魔してくるんだものぉ……」

隨分としおらしくなってしまったステイシスは、その男の言葉を聞いてブルーグラディウスに背を向けてしまった。

その會話を通信越しに聞いているシズルはどこか安堵したような表で……。

「企業連合兵統制局きぎょうれんごうへいきとうせいきょく、高部総一郎たかべそういちろう局長。ステイシスの制止、謝いたします……」

《ああ、遅れてすまなかったね。センチュリオンテクノロジー所屬エースパイロット、結月靜流君。ステイシスが迷をかけた。機の修理費は連合が負擔する、その旨むねは伝えておくから安心してほしい》

「はい、了解いたしました」

助けの聲と挨拶をわし。

靜流は戦域から離れていくステイシスの機、ゴアグレア・デトネーターを、放心しながらモニター越しに眺めていた。

    人が読んでいる<ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最兇生體兵器少女と働いたら>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください