ドミネーター、タイプヒューマノイド。ランク……判別不可能。RBが言うにはβに似ているということだが……。

著弾した漆黒の球が姿を変えた直後、両名は戦慄した。

立ち上がった際の長は８メートルを超え、容姿は人型、だが他の人型個と比べて異様に人間により近い形をとっている。

腕は長く、立ったままながら地面に拳をつけ、膝を曲げてどっしりと構える巨漢。

黒いグレアノイドの表には、異常に大化した筋のようなものすら見える。

そして頭部には、４っつの赤く生々しい目が不規則に配置されていた。

「ッハ！　こっちもヘンナ奴ならあちらさんもときたもんだ。どうするCrazy Guy、尾巻くかい？」

「あんたは？」

「ああ？　やるに決まってんだろうが。厄介事と鉄火場にゃあ足突っ込むに限るぜ」

「ならやろうか。おたくは隨分腕に自信があるみたいで安心した」

「へぇ、言うじゃねェかこの野郎。テンション上がってきたぜ」

そう言い合いながら、自分たちよりはるかに大きな巨を持った怪を前にした。

雛樹はライフルの弾倉を外し、再裝填。RB軍曹は肩に擔いだ大剣を持ち上げると、準備運だとでも言うように片手で振り回しながら、大柄なリボルバーを左手で抜いた。

そして、上空から落ちてきた黒い影。いくつも通り過ぎては方舟の中心部へ向かっていくのが見えた。

セントラルゲートに開いたから、ドミネーター群が侵し始めたのだ。

その事態にも、二人は目をそらさず眼前の敵を見據えていた。

「雑魚どもに浮気するんじゃねェぞ。“本命”はコイツだ。逃せばやばいことになるぜ」

「二腳機甲部隊の到著まで抑えるつもりなのか？」

「抑える？　馬鹿言うんじゃねェよ。あんな化け……」

腰のホルダーを銃を握った手で弾くと、大口徑のマグナム弾が空中に飛び出した。中折れ式リボルバーの弾倉を出させ、落ちてきた弾薬を式弾倉にするりと落とし、裝填する彼の口角は禍々しく上つり上がっていた。

「ぶちのめさねェともったいねェだろ？　期待してンぜ、CTF201のCrazyクレイジーシドー」

「……！！」

RBは、自分の元を左手親指でちょいちょいと指し示す。なぜ自分のことが分かったのかという雛樹の表を読み取り、なぜわかったかを示したのだ。

雛樹の元で鈍くる認識票ドッグタグ、それを見たと。

「好きにやろうぜ、俺もそうすっからよ」

「助かる。合わせるのは得意じゃない」

そうして彼らは臨戦態勢へ。そして、侵してきたドミネーター群に対し、方舟の各企業も迎撃を始めていた。

センチュリオンテクノロジー、特殊二腳機甲カタパルトに固定された青い特殊二腳機甲、ブルーグラディウス。

《嬢ちゃん！　市街戦用に出力を落としてあるが、飛行に問題ねェはずだ！　ムラクモもフル裝填してある！　俺たちの方舟を頼むぞ！！》

「謝します、エンジニアの皆さん」

方舟の急事態に駆り出された結月尉は、その青の機の縦桿を握りながら、神経接続を開始する。

自分のの覚が、ブルーグラディウスという機の四肢へと広がっていく。青い瞳がさらに蒼く淡いを帯びていく。

ふいにじる全能と、気分の高揚。フォトンノイド粒子による麻薬のような副作用。

その覚に振り回されないように確固とした意思を保ちつつ……。

「ノックノック。出撃準備は完了しましたか？」

《おーう、萬全やでェ。問題あらへん、はよ行こか》

「了解です……」