コクピットに転がり込んだ雛樹は、葉月に言われるがままハッチを閉鎖する。そして一息ついた……いや、一息つけたのだ。

「やっぱり誰もいないな……」

この機に取り付いた時から、なにか違和はじていたのだ。あれだけ機の外裝に乗って立ち回っていたのだ。この機に人が乗っているならば、なんらかの反応がってしかるべきだ。

だが、この機はただただ前進するための姿勢を変えず、自分には全く関心を示さなかった。

そしてなにより、粒子砲の乗っ取りと遠隔作。あんなことができるのならば、この機の乗っ取りも可能だろうと踏んでいた。

「縦桿が勝手にいてるな……」

機の細かな姿勢制を行うための幾つかの縦桿がひとりでにき、機をっている。それに気づいた雛樹は縦桿に手をばそうとするが……。

《間違っても縦桿にれちゃだめよ》

「……っ」

隨分とタイミングよく葉月からのお叱りがった。狹苦しいコクピットで驚いたために、雛樹は天井で頭をしたたかに打ち付けてしまい、うめき聲をあげた。

《指示された挙以外の作がると、自壊システムが作するようになってるわ。隨分念りな乗っ取りみたいね……》

「自壊？」

《簡単に言えば自裝置ね。力機関へ送り込む燃料をオーバーフローさせてから……》

「そういう難しい話はわからんからいい」

《あ、そう。とにかくひどい狀態よ、いい？》

雛樹はどこかワクワクを抑えられない様子で、コクピットの全方位モニターに表示されたどんどん過ぎ去っていく外の景を眺めながら、肯定する。

《ハッキングでこちらから止めようとしても、自壊システムが作するの。で、それをどうにかしようとすると、その自壊システム自をなんとかしないといけないのだけど……》

「あれが、セントラルゲートか」

モニターを通して見えてきたのは、センチュリオンノア最大の門。セントラルゲート。今は大が開いており、防衛の役目を果たしてはいないが……。

《そう、セントラルゲートまでもうすぐでしょう？　間に合わないのよ》

「でかい大……あ！？　間に合わないって！？」

《ええ……。自壊システムを迂回して、その機のコントロールパスを奪い返してる時間はないの。自壊システムをどうにかしようとするのはもってのほか。企業ごとのブラックボックスを開けるに等しい行為よ。いくら急事態だからといって、とんでもない罰が課せられるわ》

「そんなこと言ってる場合じゃ……」

《まだ言える場合なのよ。祠堂君、今すぐハッチを開いて出しなさい。そもそもあなたがなんとかしようとしたのが間違いだったの》

諦めのを濃く出した聲を聞き、雛樹はコクピットのシートへ腰掛け、右手で眉間をむ。

「他に手は……？」

《セントラルゲート付近に、GNCとセンチュリオンテクノロジーのウィンバックアブソリューターが展開してるわ。彼らがなんとか……》

「ここから見てる限り、そのウィンバックなんたらにその余裕は無さそうだぞ」

《……侵してきているドミネーターが多すぎるのね。あまりにも多すぎる。今回撃ち込まれたドミネーターといい、諸悪の源である潛水がなにかしてきているのは間違いないわ》

上空では、空を覆いつくさんとするほどのドミネーターと、４機のウィンバックアブソリューターが戦していた。

青と黒の機、センチュリオンテクノロジーが所有するコバルトスケイルは、多數の粒子ミサイルを機のポッドから放ちながらも、多數のドミネーターに追われていた。

「接近數１０！？　なんやこの數ぅ！！　アホか！　捌ききれるわけないやろがい！！」

《それを捌くために我々がいるのだ。文句を言わず殲滅しろ、アインス・ノックノック中尉》

「わかっとるわいんなことォ！　んなことより自分はどうやねん、さっきから撃墜數落ちてきとるみたいやがのぉ！？　GNCの部隊長さんよ！」

《他人より己を心配したらどうだ。ランクβが複數そちらへ行ったぞ？》

「あああ！　くそがあ！　はよゲート塞がんかい！　なにしとんやおのれら！」

ドミネーターを追尾する複數のミサイル、そして、ノックノックが駆るコバルトスケイルを鋭い挙で追うドミネーターからの赤する矢での攻撃が差し、裂する。

『シールド出力、４５%低下。限界域マデ殘リ３０%』

けたたましいアラート音とともに、コバルトスケイルコクピットが激しく揺れた。

ドミネーターの攻撃が被弾したのだ。機に設定された人工知能、AIが注意を促していた。

《すまない！　ゲートから流してくるドミネーターを排除しきれん！　塞ぐどころの騒ぎじゃないんだ！》

「クッソ……なんやねんこの慘狀はァ」