特殊な擔架に乗せられたステイシスは安らかな表で仰向けに寢ている

。白く長い髪は擔架一面に広がり、張りのあるそこそこにかながツンと上を向き、谷間が拘束位の元から覗いている。

長や顔つきは十代半ばのだが、そのと程よくくびれた腰、むっちりとした太ももが彼を年相応以上に見せる要因だろう。

「素手でれられねーってのが殘念だけどよー、まじで」

「まだやることがあるでしょう？　ソウジから報告のあった男がまだ機にいるんだから」

その場にいた全員が、自分たちが先ほどまでってきた機へ目を向けた。

「ハッチを開けてその男をとりおさえなさい」

軽い口調の男、その隣にいたがそう言うと、何人かの戦闘兵らしき者たちが、その機のハッチの前まで階段で駆け上がり、銃を向け、一人がハッチを開けるため、アクセスした。

まだ機の制は奪ったままだ。ハッチはなんのためらいなく開かれていった。

「っ、なんだ！？」

勢いよく開いたハッチから、とんでもない量の海水が溢れ出てきたのだ。不意を突かれた兵士たちは皆一様に後ずさり、海水が出切ったコクピットに目を凝らしたのだが……。

「報告にあった男がいません！！」

「ハァ？　そんな訳ないでしょーが。機がここへ來るまで、出しなかったと連絡があったのよ？　よく探しなさいな馬鹿共。ほら、あんたらはお姫様をグレアノイド遮斷エリアへ運びなさい」

の命令で、彼らはコクピットへと踏み込んだ。海水で満たされていたコクピットは、その全てにおいてり気を帯び、天井からはそれが滴となって落ちてきていた。

隠れられる場所はない。それに、防水壁の役割も果たすはずのハッチを通り、コクピットが海水に満たされていたということは……。

その要素から、軽い口調の男は報告のあった警備兵の行方に気づき、顔を変えた。

「海中で出したんじゃねーか……？」

「ここは海の縁の２００メートル付近よお？　そんな深さで、人間がまともに泳げると思うわけ？」

「海中でハッチを開いた。それだけは間違いねーだろよ。まあ、水沒してびっくらこいて急いで出したってんなら分かんけどな」

防護服を著た兵士たちが、擔架にステイシスを乗せ、運び出し始め……。格納庫の出口へ差し掛かった時だった。

突然、艦すべての明かりが消え、のない暗闇の世界に変わったのは。

當然、格納庫は騒然となる。仕切っていた男兵士と兵士も同様にだ。

《第一力一時停止。間もなく復舊します》

「くっそ、なんだ驚かすんじゃねーよ。一時停止か……機関トラブルでもあったのかよこんな時によぉ」

艦放送の言葉通り、この潛水艦の電源は復舊した。復舊して明かりは元どおりになったのだが……ひとつ。おかしな部分が現れていた。

「！？　どうしたの！？」

格納庫から出ようとしていた、防護服の兵士たちが一人殘らず立ってはいなかった。ある者は腕を折られてき、ある者は腹を撃ち抜かれている。

そのほとんどは意識が無かったのだが……。

「ステイシスがいねェじゃんかよ……！！」

暴に落とされていた擔架の上に、重要な人が乗っていなかったのだ。

それに、防護服をまとった兵士が一人足りない。ここまでこそぎ負傷させられているのに、一人だけ影も形も見當たらないのだ。

「まさか……もうすでに侵していて、なりすましてやがったのか！？」

急事態。館全域にアラート音が鳴り、侵者が発生した旨を報告。侵者の男の特徴と、ステイシスの特徴を放送した後……。

《侵者は発見し次第即排除しろ。ステイシスは間違っても傷つけるな、いいな》

そう、言葉が付け足された。