《ノアの弱小PMC—アナログ元年兵がハイテク都市の最兇生と働いたら》73話-思想の違い

ガーネットの殺気をけながら、RBは肩をすくめ口を開く。

「単純に舊日本軍……本土の奴らが厄介な戦力を手にれたってことでいいのかァ? 6年後ってこたァもうちょい強くなってんのか」

「いや、もはや戦えるような狀態じゃなかったように見えた。だからその點において彼が兵として利用されることはなさそうだ」

雛樹が見たあのステイシスからは微かにしかドミネーター因子の波長と呼ぶべきものがじられなかった。

それこそ抜け殻のような……。

「しかし……これは公にしても良い報とは思えませんな。我々は信用するとしても企業連上層部がたかが一兵卒の言葉を聞きれるかどうか……。そもそも信用されるかどうかも怪しいところでは?」

「アラタの言うとーりやわ。今こうして聞いとるうちでさえも半信半疑やのに」

「企業連上層部にこの報を上げるつもりはない。先刻の報道を見たろうが。これ以上余計な報を流せば我々の立場が危うくなるのは目に見えている」

アルビナは椅子の背もたれに深くもたれかかり、本意ではないがとため息まじりに言い捨てる。

「しかしステイシスという生の抜け殻を手にれ、それを模倣しようとしているのでしょうが……本土は人実験を行えるほど人口に余裕があるのですかね? 」

「食糧事も悪いみたいやし、口減らしには丁度ええやろけどねぇ?」

「ハ、相変わらず品のねェこった」

「事実やろぉ?」

呆れたように蘇芳の言いを咎めRBではあったが彼にはなんの反省のもない。

本気でそう思っているからこその言葉ではあったが、孤児院を知っている雛樹にとっても不愉快な言葉ではあった。

ガーネットは相変わらずむすりと大人しく壁にもたれている。蘇芳の言葉には特に何もじていない。

合理的に考えればその考え方は実に効率的で何の疑問も抱かないからだ。

「いや、本土ではそういった研究などに嬉々として応じる組織がある。祠堂、お前も知っているだろうが……」

「あれは……あまり思い出したくないですね」

「あれ?なんやのん、えらいもったいぶりはるねぇ」

彼らが邪魔をするせいでどれだけの部隊員が殉職したことか。

いまだに脳裏にこびりつくあのおぞましいまでの景。

タイプα、βを含むドミネーター軍の前に立ち向かうでもなく、ただただ敵であるはずのドミネーターを守ろうとしての壁を作った彼らのことは思い出しただけでも吐き気がする。

「本土にあるカルト教団のことだ。名を四十夜(しじゅうや)の福音といったか」

ドミネーターの存在により 本土が疲弊し閉鎖的になるにつれ、人々は救いを求め點々と宗教に傾倒することが多くなった。

數ある宗教団の中でも頭一つ抜けて大きくかつロクでもない団が四十夜の福音という、ドミネーターを神として崇めるカルト教団。

彼らはドミネーターを人類のさらなる進化を促す救いの神として信仰し、日々祈りを捧げている。

祈りを捧げるだけであればまだいいのだが……。

「なるほどな。そういう奴らは喜んで神にを捧げるわけだ」

「そういうことだ。そのため本土軍部とつながっていると見たほうがいい。今やこの海上都市も本土も一枚巖ではない」

有りに言えば『ドミネーターを殲滅し世界を正常な狀態に戻す思想』と『ドミネーターを人類の手で利用し更なる進化を求める思想』という相反する思想が混在している。

それは本土に限らず、この海上都市でも同じことだ。

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