《クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」》第十七話

宇宙歴SE四五一八年七月二十四日、標準時間〇九時二○分。

アルビオン第三艦隊第四砲艦戦隊所屬のレディバード125は敵駆逐艦と死闘を繰り広げていた。

艦長であるクリフォード・コリングウッド佐の的確な指揮により、初撃の一斉砲撃以外でも既に一隻の駆逐艦を沈め、もう一隻にも大きな損害を與え無力化していた。

しかし、その代償は大きかった。

直撃こそ免れているものの、過弾により超速航行機関FTLDが破壊され、更に二系列トレインある対消滅爐のうち、一系統トレインが機能を喪失している。

また、乗組員にも被害が出ていた。補修作業を行っていた二名の掌帆手ボースンズメイトが命を落としたのだ。

それでも人的損失は他の艦に比べ著しくなかった。それはクリフォードが予めハードシェルに著替えさせたためで、通常の簡易宇宙服スペーススーツに比べ、頑丈な外殻を持つハードシェルによって、艦発が起きても打撲程度で済んでいるためだ。

レディバードは加速の冷卻を無視する形で主砲を撃ち続ける。

戦闘指揮所CICでは主機である対消滅爐だけでなく、冷卻系補機の警報アラームまでもが絶え間なく鳴り響く。機関士用のコンソールには読み切れないほどの警告アラートが映し出され、人工知能AIの音聲警告が連続で流され続けていた。

既に非常用電源に切り替わっており、CICはオレンジの照明で照らされ、更に防スクリーンを掠める衝撃が艦全に伝わり、最も安全なCICでも激しい戦闘であることが分かる。

そんな中、クリフォードは指揮用のコンソールで戦況を分析していた。

(まだ何とか戦える。しかし、いつやられるか分からない……退艦のタイミングを誤ると全滅する……)

クリフォードは機関制室RCRにいる副長バートラム・オーウェル大尉に通信を繋いだ。それもオープン回線ではなく、個人用回線での通信でCIC要員には気づかれていない。

応急処置に追われていたオーウェルは個人用報端末PDAでの通信に一瞬怪訝な表を浮かべる。彼はその表のまま通信に応答した。オーウェルが何か言おうとすると、クリフォードは機先を制して早口で指示を出していく。

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「よく聞いてくれ。戦況は思わしくない。RCRそこから退去する準備をしてくれ」

オーウェルはクリフォードがPDAを使用した意味を理解し、すぐに「そこまで悪いんですか」と小聲で聞き返した。

「ああ、すぐに退艦命令を出すことになるだろう。そっちはFデッキに向かえ。使えるならマグパイで出するんだ」

クリフォードはレディバード唯一の搭載艇、雑用艇ジョリーボートのマグパイ――カササギ――で出するよう命じた。

ジョリーボートの定員は二十名程度。レディバードの定員の半數しか乗れない。殘りは出用ポッドを使用することになる。

「よろしいのですか? マグパイの方が生存率は……」とオーウェルが言おうとしたが、クリフォードはそれを遮り、「Eデッキにいる君たちの方が近い。それに全員乗れないなら、乗れる者が素早く乗って出する方が効率的だ」と言い、「これで通信は終わりだ。そちらは頼んだぞ、副長ナンバーワン」と言って返事も聞かずに通信を切った。

その間にも突き上げるように艦を揺らす衝撃が襲い続ける。

通信を切った直後、掌砲長が「加速アクセレーター損傷!」と鋭い聲で報告する。

クリフォードは「了解」と靜かに答え、素早くコンソールで損害を確認していく。

(加速キャビティが溶けている。加速コイルも三割以上使いにならない。もう砲撃は無理だな……時か……)

彼は艦ふねを放棄することを決めた。

「総員、退艦準備! RCR要員は直ちに格納庫に向かえ! 待機中の掌砲手ガナーズメイトはAデッキの出ポッドに……」

その瞬間、更に大きな衝撃がレディバードを襲った。人口重力が突然消え、オレンジの非常照明が點滅する。その直後、けたたましい警報音が鳴り響く。

クリフォードはその天地をひっくり返したような激しい衝撃に大きく揺さぶられた。指揮シートに座り、安全ハーネスをつけていたものの、一瞬気を失うほどの強い衝撃だった。

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しかし、すぐに意識を戻し、素早く「損害の報告を!」とぶ。

先任機関士であるレスリー・クーパー一等兵曹が「パワープラントPPエリアに直撃! 対消滅爐リアクター、両系統トレイン急停止トリップ! 現在力は質量-熱量変換裝置MECのみ! 人口重力裝置再起完了! リアクター急停止シーケンスに移行します!」とび、舵長のトリンブルが「通常空間航行用機関NSD反応なし! 現在慣航行中!」と報告する。

クリフォードはそれに応えることなく、「総員、直ちに退艦せよ!」と命じた。

そしてCIC要員に「すぐにAデッキに向かえ!」と命じながら、AIの初期化と起用核融合爐フュージョンリアクターの自回路の設定を行っていく。

(すまない。レディバード……私の最初の指揮艦……)

絶えず衝撃が襲う中、指揮報端末PDAで乗組員の出狀況を確認していく。

生命反応がある乗組員は自分をれて三十五名。新たに三名の戦死者が出たことになる。死亡した三名はNSD區畫にいた技兵だった。

対消滅爐があるパワープラントPPエリアに直撃したが、幸いなことに頑丈な遮蔽區畫であり、れ出た電子で斷続的な発が起きたものの艦の崩壊には至らなかった。

(今ならまだ間に合う……)

CIC要員が敬禮しながら退出していく。クリフォードは答禮しながら、乗組員たちが出に向かうことを確認していた。

確認していく中、一人だけかない乗員がいた。それはRCRにいる機関長ラッセル・ダルトン機関尉だった。PDAの報では圧が低下し心拍數も不安定だった。

すぐに副長であるオーウェルを呼び出す。

「機関長チーフはどうした。まだ、RCRにいるようだが!」

オーウェルは「どういうことですか、艦長」と聞きなおす。「チーフは対消滅爐かまの始末をつけたら出ると言っていたのですが」と焦りを含んだ聲で説明する。

機関長は機関に関するデータの消去を行っているうちに、斷続的な発に巻き込まれケガを負っていた。

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クリフォードはすぐにCICを飛び出した。

秩序を保っていたCICとは対照的に、狹い通路には天井パネルが何枚も落ち、腹を食いちぎられた獣の臓のように何本ものケーブルが垂れ下がっている。

非常照明のオレンジも不安定に揺らめき、突き上げるような発が足元を激しく揺らす。

クリフォードはハードシェルを狹い通路の壁に何度もぶつけながら、RCRに急いだ。PDAでダルトンの狀況を確認すると、危険な狀況にあることが分かってきた。

(機関長チーフのバイタルが下がっている。まだ、ハードシェルの力は生きている。間に合ってくれ……)

一度は回復した人口重力が再び消えた。クリフォードは悲鳴を上げる三半規管を無視し、飛ぶように進む。BデッキにあるCICからEデッキにあるRCRまで僅か五分で到著すると、そこには機関長と彼を助けようとしているオーウェルの姿があった。

「副長ナンバーワン! 君にはマグパイの指揮を命じたはずだ!」

オーウェルはその言葉に答えることなく、「機関長チーフの右腳が制盤に挾まれています! そっちから盤を押してください!」とんだ。

クリフォードは議論する間を惜しみ、「三、二、一で押すぞ! 三! 二! 一! それ!」と掛け聲と共にハードシェルのパワーアシスト機能を全開にした。

ミシミシという音と共に制盤が変形していく。

「もうしです! もうし! 押して!」

オーウェルの言葉に無言で制盤を押していく。

周りでは斷続的だった発音が徐々に連続的になり、非常照明すら消えていた。まだ生きているコンソールが放つだけが、狹いRCRを照らしていく。

十秒ほど経った時、「よし! いける!」というオーウェルの聲が響く。その直後、オーウェルはダルトン機関長を抱えたまま後ろに倒れこむように飛んでいった。

「機関長チーフ、無事か! バート、どうだ!」

クリフォードの問い掛けにオーウェルが荒い息で答える。

「はぁはぁ……意識はないようです。バイタルは低下していますが、自応急処置システムがうまく作したみたいです……はぁはぁ……」

「よし、出するぞ! バート、チーフを私の背中に乗せてくれ! 君は出ポットに向かえ!」

オーウェルは「最後までご一緒させてください」と靜かにいい、「Fデッキに出ポットがまだあったはずです」と先導し始める。

クリフォードはダルトンを背中に載せながら、「明らかな命令違反だぞ!」と凄んだ後、「だが、今は助かる」と明るい聲で謝していることを伝える。

オーウェルはそれには答えず、自分のハードシェルとクリフォードのハードシェルをロープで結んだ。

「ちょっと手荒な移になりますが、チーフを頼みます」

クリフォードが答える間もなく、狹い通路に出たところでジェットパックを作させた。宇宙空間で使用する移用ジェットパックを狹い艦で吹かすことは非常に危険な行為だ。クリフォードもオーウェルの行に一瞬驚愕するが、人口重力が切れ、今にも発する狀況では致し方ないと腹を括る。

Fデッキにある格納庫は奇跡的に損傷を免れていた。そこには雑用艇ジョリーボートであるマグパイが後部ハッチを開けて待ち構えていた。

「艦長! 副長! 早く!」

彼らの姿を認めた掌帆長ボースンのフレディ・ドレイパー兵曹長が大きく腕を上げてクリフォードたちを急かす。

「航行機関ドライブ起! 格納庫メインハッチ開け!」

マグパイのコクピットから舵長コクスンのレイ・トリンブル一等兵曹の焦った聲が聞こえている。

クリフォードたちがマグパイの後部ハッチに飛び込んだ瞬間、一際大きな発がレディバードを襲った。クリフォードは振り返ることなく、「発進! 急発進せよ!」とんでいた。

格納庫のメインハッチが完全に開く前にマグパイは宇宙そらに躍り出ていく。その直後、レディバードの艦が大きく膨らみ、眩いを放って四散した。

マグパイはその衝撃波に翻弄されながら宇宙そらをるように進んでいく。

短い加速を終え、慣航行に切り替えると力を落とす。敵に発見されないための処置だ。

クリフォードは雑用艇のカーゴスペースで漂いながら、ハードシェルのヘッドアップディスプレイに映る報を見つめていた。

(宇宙歴SE四五一八年七月二十四日標準時間〇九時二五分、HMS-N1103125レディバード125喪失……初めての指揮艦……すまなかった。そして、ありがとう……)

心の中で艦に別れの言葉を掛けるが、すぐに狀況を確認していく。

「副長ナンバーワン、狀況を報告してくれ。掌帆長ボースン、機関長チーフを頼む」

ドレイバーが「了解しました、艦長アイアイサー」と凄みのある顔に笑みを浮かべて敬禮する。オーウェルは事務的とも言える口調で

「マグパイには艦長を含め、十六名が搭乗しています。負傷者は機関長のみです」

クリフォードはその「了解」と短く答えると、指揮用のPDAを作していった。

確認できる範囲では戦死者五名、出された出ポットは十九で、なくとも戦死者以外は艦から出していることが確認できた。

既に戦闘はほぼ終了し、敵駆逐艦の生き殘りは本隊に向けて加速を開始していた。

砲艦戦隊の狀況は酷いものだった。

第三艦隊所屬の砲艦百隻のうち、九十三隻が喪失、殘り七隻も大破しており、宇宙空間を漂っている。各戦隊の旗艦である砲艦支援艦ですら五隻中三隻が沈められていた。

生き殘った砲艦支援艦の一隻は第四戦隊の旗艦グレイローバー05だった。左舷を大きく損傷しながらも出ポットや雑用艇を回収している。

舵長コクスン、旗艦に進路を向けてくれ」

クリフォードの命令にトリンブルはいつもの飄々としたじで、「了解しました、艦長アイアイサー」と応え、すぐに主機関を始した。

クリフォードはそこである疑問に気付いた。

「しかし、なぜコクスンがここにいるんだ? Aデッキから出するよう命じたはずだが?」

出ポットはに合わんのですよ。それに腕のいい縦士がいた方がよいと思ったんです。艦長サー」とさらりと答えた。

クリフォードは苦笑いを浮かべながら首を橫に振る。

「副長ナンバーワンといい、舵長コクスンといい、命令を守れない者が多すぎる」

そこで突然「フフフ」と込み上げてきた笑いがれる。そして、「それを認める私も同罪だな」と言って笑い聲を上げた。

マグパイは見つけた出ポットを拾いながら、グレイローバーに向かった。

HMS-N1103125インセクト級レディバード125は、第二次ジュンツェン會戦で喪失した。

第三艦隊砲艦戦隊の人的損害は戦死者及び未帰還者が七十パーセントに達していた。そんな中、レディバード彼の乗組員は九十パーセント近い帰還率を誇っていた。

しかし、早期に艦を放棄した結果ではない。レディバード125は初期の一斉砲撃後、二隻の駆逐艦を戦闘不能にし、砲艦戦隊で最も高い戦果を挙げていた。それだけではなく、敵が撤退する直前まで戦闘を続け、味方の全滅を防ぐ要因を作ったのだ。

だが、後にこの高い生存率が問題となる。

■■■

宇宙歴SE四五一八年七月二十四日、標準時間〇九時三○分。

クリフォード・コリングウッド佐らが敵駆逐艦戦隊と死闘を終えた頃、アルビオン艦隊とゾンファ艦隊はシアメン星系側ジャンプポイントJP付近で睨みあっていた。

アルビオン王國のジュンツェン進攻艦隊本隊二萬一千隻はJP付近での回頭を終え、ゾンファ艦隊を迎え撃つ構えを見せている。しかし、そこにリンドグレーン提督率いる第三艦隊の姿はなかった。第三艦隊はマオ艦隊の前面を橫切り、主星ジュンツェン方面に移しており、回頭は終えたものの本隊に合流するには更に三十分以上の時間が必要だった。

一方のゾンファ艦隊はマオ・チーガイ上將率いるジュンツェン防衛艦隊とホアン・ゴングゥル上將率いるヤシマ解放・・艦隊が合流を終え、アルビオン艦隊本隊を凌駕する二萬六千隻となった。ゾンファ艦隊はJPに向けてゆっくりと前進を続けている。

しかしながら、數こそ凌駕しているものの、アルビオン艦隊を強引に突破したホアン艦隊の損傷は大きく、またマオ艦隊は戦艦と駆逐艦が主力という歪な編であり、実力的にはほぼ互角という狀況だった。

この狀況下で主導権を握っているのはマオだった。アルビオン艦隊の総司令サクストン提督は敵支配星系で戦力的に不利な狀況にあること、ホアン艦隊を殲滅するために強引な戦闘を行ったことから未だに艦隊の戦列がれたままであり、積極的な攻勢が掛けられない。

マオはこの狀況が自軍に有利であることを認めるものの、これ以上の戦闘は祖國にとって悪影響しか與えないと考えていた。

(ここで戦えばホアン艦隊の多くが沈むだろう。我々はヤシマを得ることなく、多くの艦、將兵を失っている。これ以上戦力の損耗が続けばの危険すらある。我々はヤシマ解放艦隊の輸送艦隊さえ無事に帰還させられればよいのだ……)

今回のジュンツェン防衛戦とヤシマ侵攻作戦により、ゾンファ共和國軍――正式には國民解放軍――は二萬三千隻以上の戦闘艦を喪失していた。これは五個艦隊に相當し、ゾンファ共和國軍全のおよそ三割に當たる。これほどの損害をけたことから、現政権が倒れることは間違いない。しかし、現政権はクーデター紛いの政権奪取――前政権の重鎮を暗殺し、その混に乗じて政権を奪取した――を行っていることから、自らのの危険をじ、すんなりと政権を禪譲するとは考え難い。そうなればに発展する可能も否定できなかった。

マオは通信擔當士にアルビオン艦隊への通信回線を開くよう命じた。

四十秒離れたアルビオン艦隊から映像が送られてくる。そこには分厚い軀の偉丈夫であるグレン・サクストン大將の姿が映し出されていた。

マオはすぐに本題にっていく。

「本星系でのこれ以上の戦闘は雙方にとっても利益にならぬと思っている。一時休戦し、生存者の救出を行いたい。その後、貴艦隊に本星系から退去することを勧告する。條件については……」

マオが提示した條件は以下のようなものだった。

アルビオン艦隊による出者の回収と損傷した艦の応急補修を認める。また、アルビオン艦隊はシアメンJP及びハイフォンJPのステルス機雷を回収する。

ゾンファ艦隊はその間アルビオン艦隊に対し、一切の敵対行を停止する。

「……この條件を飲んでくれれば、我々は貴艦隊の本國帰還を妨害しない」

しかし、八十秒後に返ってきたのは明確な拒絶の言葉だった。

「我々アルビオン王國軍は同胞を救出するまでは、いかなる條件であっても転進しない。貴國はヤシマ星系で不當に拘束した王國政府関係者及びヤシマ市民を直ちに解放すべきである」

強い意志を込められた言葉に、マオはサクストンがシアメンJPに固執した理由を初めて理解した。

マオ自報通報艦からの報でアルビオン政府関係者を拘束し、更に本國ゾンファに移送する計畫があることは知っていた。また、既に數千人規模のヤシマの研究者、技者がゾンファに移送されており、ホアン艦隊の輸送艦隊にも多數の捕虜がいることは容易に想像できた。

(アルビオン関係者を解放することは問題ない。しかし、どうやって納得させるかが問題だ。輸送艦に臨検させることは我が國のメンツに関わる。それに我々がこれですべてだといっても信用しないだろう……)

マオは一瞬悩むが、すぐに決斷する。

「貴の要求をれる。現在シアメン星系にある輸送艦隊に連絡し、貴國民及びヤシマ市民を確認させ、本星系到著後に貴艦隊に引き渡すことを約束する」

マオは長期戦になれば自軍が不利であると考え、メンツを捨ててサクストンの要求を全面的にれた。現在、ジュンツェン星系にある食料はマオ艦隊とJ5要塞守備兵に対し、四十日分程度しかなく、更にホアン艦隊の七十萬人が加わると三十日程度しかもたない。つまり、今すぐにでも四パーセク(約十三年)先の輸送艦隊の持つ資を運び込まなければ危機的な狀況に陥るのだ。

サクストンは「基本的な合意はなされた」と重々しく述べた。

一時休戦となったが、両軍とも敵を信用できず、戦闘制が解かれることはなかった。

この休戦合意は第三艦隊の砲艦戦隊の生存者たちにとって福音だった。彼らは敵に近い宙域で孤立しており、合意がなされなければ捕虜になった可能が高かった。生き殘った砲艦と砲艦支援艦は出者を回収すると無事本隊に合流した。

クリフォードたちは旗艦グレイローバー05に収容された。重傷を負った機関長ラッセル・ダルトン機関尉は直ちに醫務室に連れていかれ、治療を施されていく。ダルトンは退艦から二時間後に意識を回復したものの、雑用艇ジョリーボートでは応急処置以上のことはできず、危険な狀況だった。

クリフォードはグレイローバーの軍醫にダルトンを託し、彼の回復を祈った。一時間後、軍醫からダルトンが命を取り留めたことを聞かされるが、彼の右腳は膝から下が完全に潰れており、切斷するしかなかったと伝えられる。麻酔で眠るダルトンを確認した後、彼はレディバードの乗組員たちを探し始めた。

レディバードの乗組員は比較的容易に見つけることができた。救出された者の多くがレディバードの乗組員だったからだ。

他の艦では出できた者自なく、出に功した者も自艦の対消滅爐の発や敵艦が放つ荷電粒子砲によって生じたガンマ線などの強い放線に曝されていた。更に艦の発によって生じた衝撃や殘骸デブリの衝突等により救出された時點で死亡している者が大半だったのだ。

しかし、レディバードではハードシェルと呼ばれる船外活用防護服を著用していたことが幸いし、かすり傷程度の軽傷者がほとんどで放線障害をけたものは皆無だった。頑丈なハードシェルは理的な防力も高く、更に耐放線防護能力も高いが、他の艦では通常の艦服であるスペーススーツしか著用していなかったため、このような顕著な生存率の差が出たのだ。

比較的元気なレディバードの乗組員たちは個人用報端末PDAを使って連絡を取り合っていた。

クリフォードは生存者リストを確認すると、安堵の息を吐き出す。

(私を除いて三十四人か……五名は失ったが、最悪の事態は避けられたということか……)

休戦の合意は取り付けたものの、総參謀長アデル・ハース中將は多忙を極めていた。第三艦隊に対し、直ちに本隊と合流するよう指示を出すと、生存者の救出、捕虜の確認、更にはシアメン星系にいるアルビオン政府関係者解放の実効的な方法についてゾンファ側と協議を始めたためだ。

ハースは以下のような提案を行った。ゾンファ軍の報通報艦を使用しシアメン星系に休戦合意を伝える。その際、シアメン星系に向かう報通報艦にはアルビオンの士を同行させ、更に時間を置いてアルビオン艦隊から監視のためのスループ艦を派遣する。これはシアメン星系に人質を隠されることを防ぐためだ。そして、準備が整い次第、輸送艦隊をジュンツェン星系に移させ、JPでアルビオン艦隊がすべての艦船の臨検を行い、各艦船にいるアルビオン及びヤシマの市民、財産をアルビオン艦隊に移送するというものだった。

當初、ゾンファ側の擔當士はその提案が敗戦國に対するものであるといって抗議した。そのため、渉は膠著狀態に陥り、ハースはマオ上將との直接渉に切り替えた。その渉の結果、ゾンファは人員の移送については認めた。しかし、ヤシマで接収した資については返還を拒否する。

ハースは人命を優先することとし、資についてはヤシマとゾンファ間の問題であるとして、アルビオンは関與しないとする妥協案を提示した。これにより、この一時休戦の協定は実行されることになった。

この渉が可能だったのはマオがジュンツェン方面軍司令であったからだ。ゾンファ共和國の軍人の権限は外政にまで及ぶことが多いが、特にジュンツェン星系は最前線の軍事拠點ということもあり、文はほとんどいない。そのため、方面軍司令の裁量は大きく、期限付きの休戦であれば方面軍司令の権限で行えたのだ。

休戦渉を終えたゾンファ艦隊の主力はJ5要塞にった。

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