《クリフエッジシリーズ第一部:「士候補生コリングウッド」》第十二話

宇宙暦SE四五一二年十月二十三日 標準時間一〇時〇〇分

<アルビオン軍潛部隊・クーロンベース外>

一〇〇〇

アルビオン軍の潛部隊は點検通路の非常用エアロックを破壊し、地點Aアルファと名付けた場所に戻ってきていた。

次席指揮のナディア・ニコール中尉は、負傷し意識を失ったブランドン・デンゼル大尉に代わり、十四名の部下の指揮を執っていた。

部隊は當初の二十五名から十六名に減り、そのうち十名が負傷している。

この小星AZ-258877の裏側に隠した搭載艇アウル1までは二十五km以上あり、負傷者を抱えて移することは非常に困難だ。

更に縦士が死亡し、アウル1の縦ができるものは自分と士候補生二名という狀況にも困していた。

は十名の負傷者を六名で運ぶことに懸念を覚えていたが、自分は指揮であり當然無理としても候補生だけをアウル1に送り出すことに躊躇いをじていた。

そして、全員で移することに決める。

「全員聞いて。船外活防護服ハードシェルの酸素はまだ充分あるわ。ここから全員でアウルまで移しても充分な余裕よ。負傷者はロープで繋いで運ぶ。何か質問は?」

クリフォード・コリングウッド候補生が発言を求めてきた。

「全員で移するのは非常に困難だと思います。ケガをしていないジェンキンズ(ヘーゼル・ジェンキンズ三等兵曹)もジェットパックが故障していますし、一人が作を誤るだけでも宇宙そらに飛び出す危険があります」

ここで言葉を切り、サミュエル・ラングフォード候補生の方を見ながら、

「ラングフォード候補生と私とでアウルを取りに行ってはどうでしょうか? ミスター・ラングフォードはアウルの縦が得意ですし、二人で行けば何かあっても対応できます。デンゼル大尉を含め、早急に治療が必要な負傷者のためにも是非やらせてください」

ラングフォードも「私もミスター・コリングウッドの意見に賛です。時間をかけている余裕はありません」と賛意を示す。

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ニコール中尉は暫し考えたあと、「判ったわ。ミスター・ラングフォード、先任の貴方が指揮を執りなさい。ミスター・コリングウッド、貴方は補佐を」

二人は聲を合わせ、「「はい、中尉!アイ・アイ・マム!」」と言って敬禮する。

ニコール中尉は思い出したように、「間違ってもミスター・コリングウッドに縦させないで頂戴。僅か二十五kmでも確実に迷子になるから」と笑って付け加えると、全員の笑い聲が聞こえてきた。

ラングフォードは真面目に、クリフォードは恥ずかしそうに「はい、中尉!イエス・マム!」と答えて出発準備に取り掛かった。

(ニコール中尉も良く判っている。僕たちが戻ってこなければ、全員がここで死ぬことになることは皆も判っている。だからしでも士気を上げておこうと笑わせたんだろう……やっぱり兵たちの間でも僕の航法の下手さ加減は有名なんだ……)

クリフォードはニコール中尉の考えには賛同できるものの、自分のけなさが笑いのネタにされたことにしだけ凹んでいた。

ナディア・ニコール中尉はクリフォードが思っているほど余裕があるわけではなかった。

何といっても中尉に昇進したばかりの二十三歳。実戦経験もなく、當然このような戦闘は士學校で習っただけ。デンゼル大尉が負傷したと聞いたときには胃を摑まれるような痛みをじていた。

は二人の候補生を見ながら、

(この二人にここに殘る十四人の命運を託すことになる。自分が直接攜われないということがこんなに苦しいことだとは思わなかったわ。まして、この二人はこの中でも一番経験がない。そう私よりも……この二人を信頼しているという演技すら苦痛が伴う……これから先、一艦を指揮することがあるのなら、この苦しさはずっと続くのね。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、艦長の、指揮の苦しさが判った気がするわ……)

はこの作戦でしだけ長できたと思っていたが、それも帰れなければ意味がないとも判っていた。

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だが、自分たちが生き殘れなくても生き殘れた者のためにできることはないかと考え、再度、クーロンベースのシステムに侵することを思い付く。

「ジェンキンズ、バトラー、ちょっといいかしら」と二人を呼んだあと、

「もう一度、敵のシステムにアクセスして頂戴。今度は敵の持つ報を手當たり次第にダウンロードして。できれば行方不明の商船の報がしいけど、何でもいいわ」

は候補生たちが戻ってくるまでの時間を利用し、混している敵からしでも報を手することを思いつく。そして、その報はアウル1が戻ってきたときに送信し、ブルーベルに転送するつもりでいた。最悪、効率は非常に悪いが、ブルーベルが拾ってくれることを期待し、全方位に送信することも考えていた。

(私たちが全滅しても得た報がブルーベルに渡れば、祖國の役に立つ。それに何もせずに候補生半人前たちを待つのも嫌だし……)

二人の技兵がシステムへ侵を任すと、彼は負傷者たちに聲を掛けていった。

一〇〇五

クリフォードたちはアウル1を回収するため、潛地點Aアルファを出発した。

できるだけ早く著くため、行きとは異なり小星表面から高度を取って進んでいく。

ラングフォードはその移中、頭の片隅でクリフォードのことを考えていた。

(こいつはなぜこんなに冷靜でいられるんだろう。大尉が倒れたと聞いたとき、俺はアルファ隊は全滅するんだと思った……だが、アルファ隊は任務を完遂するだけでなく、曲がりなりにも全員生き殘っている……それより、こいつがアルファ隊を逃がそうとしたときだ。自分を犠牲にすることに一切の躊躇いが無かった。俺にそんなことができるのか? 俺はなぜこいつを目の敵にしていたんだろう……)

彼は自分の狹量さが我慢ならなかった。

今回の作戦中も優秀な士と見えるよう頑張って演じていたが、死んでいく兵たちを前に壊れそうになる心を保つだけで一杯だった。

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パワープラント行き通路からの撤退時でも負傷者を捨てて自分だけ逃げたくなることが何度もあった。クリフォードがいなければそうしていたかもしれない。彼に対する対抗心だけが自分の神を繋ぎ止めていたと気付いていた。

だが、その対抗心もクリフォードが唯一人通路に殘り、アルファ隊を撤退させるという選択をしたとき、自分は完全に負けたとじていた。

そして、どうしたら彼のように振舞えるのか、そのことを考えていた。生き殘るということよりもどうしたら自分は彼のように気高くなれるのかということを。

點検用通路に出する際、彼は心に決めたことがあった。

通路への突の最後尾に自らを置き、負傷者たちの盾になる。そして、自分が無事に出できたら、クリフォードに謝罪しようと。

彼はその賭けに勝った。最後尾にいたにも拘らず、背中から撃たれるビームは彼に掠りもしなかった。そして、彼は無事、通路の奧に到著した。

(これは天啓だろうか? いや、何でもいい、まだやり直す時間があるということだ……)

彼は地點Aに到著した時、クリフォードに謝罪しようと思っていたが、狀況がそれを許さなかった。

一度タイミングを失うとなかなか言い出せない。今も危険な作戦中であり、のんびりそんなことを言っている暇はない。

(そもそもこんなことを考えていること自、間違っていることなんだが……)

彼は通信設定を命綱の有線側に切替え、クリフォードに話しかけた。

「ミスター・コリングウッド、いや、クリフォード。作戦中に済まないがしだけ聞いてくれ」と言って、自分の考えを話し始めた。

クリフォードも通信設定を有線側に切替え、靜かに聴いている。

そして、ラングフォードは、

「クリフォード、これからはサミュエルかサムと呼んでくれないか。それと今まで済まなかった」

「了解、サム。だったら僕のこともクリフと呼んでしい」

「了解、クリフ。よし、作戦に集中しよう! と言っても俺が邪魔していただけなんだがな」と言って笑った。

クリフォードから彼の顔は見えないが、彼は晴れ晴れしい顔をしていた。

クリフォード・コリングウッドはラングフォードの突然の告白に驚いていた。

彼の論理的な知は「今はそのような時ではない」と警告してくるが、彼の心は「今聞くべきだ」と訴えてくる。彼は心の聲に従い、周囲を警戒しながら、ラングフォードの話を聞くことにした。

彼はラングフォードが自分に劣等を抱いていたということに驚くが、とにかく話を聞いていく。時々、自分のことを過大評価しているところがあり、気恥ずかしい思いをしながら彼の告白が終わるのを待っていた。

時間にすれば一、二分。

だが、その僅かな時間で、彼はブルーベルの艦に初めて友を得た。

(何としても生き殘って、サムの誤解を解かないと……僕はそんなに立派な人間じゃない。父に怯え、航法なんかの苦手科目で士學校を落第しないかびくびくしていた小心者なんだ……)

彼自、偉大な父親リチャード・コリングウッドに劣等を抱かずにはいられなかった。

五年前の艦隊戦において戦艦一隻で最後まで戦線を維持し、味方の逆転をもたらした上、沈んでいく艦から出する時も部下たちの出を確認してからしか出ポッドに乗らなかった男。戦闘指揮は火のような激しさで、“火の玉ファイアボールディック”というあだ名まで付けられた男。

そんな男を父親に持つクリフォードはい頃からたまに帰ってくる父親が恐ろしかった。そして、父にどうしても認められたかった。

だから、撃の腕を磨き、父と同じように指揮や戦を極めようと必死に學んだ。

今回のことも父ならどうするだろうと考えただけだ。自分の意思で殘ったわけじゃない。

彼はこのことを伝えたいと思っていたが、今は作戦が最優先であることも理解していた。

だが、ようやくファーストネームで呼べることにうれしさをじている自分は許せるとも思っていた。

そんな彼らの想いとは関係なく、二人は宇宙空間を飛んでいく。

一〇四〇

行きよりもかなり速い速度で進んだため、出発から三十分でアウル1の近くに到著できた。

だが、速度を上げすぎたため、減速するのが難しい。

「タイミングを合わせて減速する。クリフ、俺の合図に合わせてくれ」とサミュエルが言うと、クリフォードはすぐに了解と伝えてくる。

サミュエルとクリフォードは二人とも運神経がよく、船外活EVAも得意であったため、息を合わせて向きを反転させ、同時にジェットパックを吹かして減速する。

ここで息が合わないと命綱で繋がれた二人に別々のベクトルに力が掛かり、複雑な回転を生んだり、命綱に絡まったりする恐れがあった。

わずか五分で減速すると二人はアウル1のすぐ橫に綺麗に著地した。

<ゾンファ軍クーロンベース司令部・主制

一〇〇〇

ゾンファ軍クーロンベース司令のカオ・ルーリン準將は報告されてくる報を聞き流していた。

ベースの損害は一部のセンサー類とドック設備に留まり、エネルギー供給、防スクリーン、制裝置類など主要な設備に損傷はなかった。

だが、ドックの設備は超速航行機関FTLD調整設備と大型マニピュレータ三基が完全破壊、外殻補修用自溶接機二臺が機に損傷、燃料補給口は二ヶ所とも損傷、更にFTLD調整裝置と通常空間航行用機関NSD調整設備の制裝置が完全に破壊されている。

要員の報告ではベースにある資材では完全復舊は不可能。資材の補給をけたとしても一ヶ月は使用できないという。

カオ指令は既にこのベースのことを考えていない。

彼は自分のキャリアを守ることだけに頭が向いていた。

(ベースなどどうでもいい。どうせ二ヶ月程度しか使うつもりがなかった囮に過ぎんからな……燃料は別途ラインを設ければ何とかなる……だが、このまま何の手柄も無く、ここを放棄すれば総參謀部、ひいては軍事委員會の覚えが悪すぎる……何か、何でもいいから手柄が必要だ……)

彼は必死に自分にとっての最善の策を考えていた。

その時、P-331のグァン・フェン副長から通信がる。

「こちらP-331。出撃準備の完了は約三十分後です。ワン艦長の容態は……」とここまで報告した時、カオ司令の聲が割り込む。

「了解した。できるだけ早く準備を整えてくれ。ああ、艦長は指揮を取れる狀況に無いな。現地司令の権限で君を艦長に昇進させる。グァン艦長、P-331の指揮を頼むぞ」

彼は戦時規定を持ち出し、副長であるグァン・フェン中佐を大佐に昇進させた上、代行としてではなく、艦長に任命した。

ワン艦長との確執が無意識にそうさせたのだが、グァン・フェンを懐しようとする意図の方が強かった。

その言葉を聞き、ワン・リーに心服しているグァン・フェンは、込み上げる怒りを抑え、

「了解しました、司令。戦時規定に基づき、臨時・・で艦長を勤めさせていただきます」と答えるだけに留めた。

カオ司令はグァン・フェンを懐できたと勘違いしたまま、自分の考えに沒頭していく。

(P-331でスループを沈める。敵の侵部隊はまだ小星上でうろうろしているだろうから、敵の搭載艇を破壊すれば降伏するだろう。ゾンファわが國の痕跡をクーロンから消した上で捕虜をここの要員に見せかければ、アルビオンとヤシマの関係に罅をれるきっかけにできるかもしれない。うん、この考えはいけるぞ……うふふふ……)

彼は不気味な笑みを浮かべながら、ベースにある汎用艇の発進準備を確認した。

「汎用艇の発進準備はどうなった?」

「発進準備はあと十分ほどで完了します」とオペレータからの報告が上がる。

「このままだと敵スループに撃ち落される可能があるな。発進準備完了次第、スループの死角にるタイミングに合わせて発進させろ! 目標は敵搭載艇だ。小星上のどこかに隠してあるはずだから発見次第破壊させろ!」

彼は二隻ある汎用艇を発進させることを命じたあと、敵スループ艦の向を確認することにした。

<ゾンファ軍通商破壊艦P-331・戦闘指揮所

一〇一〇

通商破壊艦P-331の副長グァン・フェンはカオ司令に狀況を報告したあと、苦い顔で戦闘指揮所に立っていた。

(あの“クソ”エリートは何を考えているんだ! ドックが破壊されたのも艦長がケガを負われたのも自分のせいだと気付いていないのか! 艦長の容態は無視しやがるし、俺を勝手に昇進させる。こんなことをすれば乗組員の士気が下がると思わないのか……)

P-331はワン艦長の下で敵の支配地域などで長年苦楽を共にしてきている。

ワン艦長は剛毅だが、部下たちの信頼が厚く、獨特な雰囲気、カリスマを持っている。彼のためなら死んでも悔いは殘らないとする兵たちは多く、甲板長のチャン・ウェンテェンなどはその筆頭だ。

グァン・フェンは自分の能力に自信を持っているが、艦長ほどのカリスマを持っていると思うまでには自惚れていなかった。

更に自分は攻勢には強いが守勢に弱い格だと思っている。艦長からもよく言われたが、直すことはできないし、直す必要もないと思っている。

(このタイミングで敵スループの攻撃をけつつ、ベースから発進するか……さすがに防スクリーンなしで攻撃をければ重大な損害を蒙るはずだ。だが、敵スループもベースを攻撃している以上、自慢の機を生かすことは出來まい。勝機は充分にある……)

彼は既にやる気になっており、いつもならそれを嗜めるワン艦長はここにいない。

(スループを沈めれば、國に帰れるだろう。それほど分がいい賭けではないが、賭ける価値はある。どうせここに居てもジリ貧だしな……)

彼は戦闘指揮所の士たちからベース発進時の手順を確認するため、ゆっくりと指揮シートにを沈めていった。

<アルビオン軍スループ艦ブルーベル34號・戦闘指揮所

一〇〇〇

星AZ-258877にあるゾンファ軍のベースに攻撃を加え始めてから、既に四時間経った。

艦長のエルマー・マイヤーズ佐は斷続的に加える攻撃を戦闘指揮所CICの艦長席から眺めている。

彼の表く、必要以上の言葉を口にしない。

ブランドン・デンゼル大尉率いるベース潛部隊から未だ連絡はなく、艦ふねは敵ベースのドック口を狙える位置で回避運を繰り返していた。

士のオルガ・ロートン大尉は、この不とも思える攻撃に既に嫌気が差していた。だが、潛部隊の支援のため仕方ないということは充分理解していた。

(あと何時間こんなことを繰り返さなくてはいけないんだ? 予定通りなら、ブランドンがもうそろそろ結果を見せてくれるはずなんだが……)

はこの攻撃が始まってから何度目かの回避パターン変更指示を、舵長コクスンと掌砲長ガナーに出している。

報士のフィラーナ・クイン中尉は敵ベースのきを注視していた。

だが、敵ベースは亀のように守りを固めるだけで、何のリアクションも起こさない。このため、得られる報は全くないと言っていいほどだった。

(これで敵が反撃でもしてくれれば解析のしようもあるのだけど……)

がそんなことを考えていたとき、艦の人工知能AIのメッセージがディスプレイに表示された。

『潛部隊が侵した點検通路付近において小星表面質の微量なれを確認』

はその部分をクローズアップさせ、れが発生した瞬間の映像を解析するようAIに指示した。

すぐに『通路から気洩した確率九十九・九九%以上』と表示される。

はすぐに、「潛部隊の侵箇所より期待の流出痕跡を確認! 何者かがベースから出てきたと思われます!」と報告する。

マイヤーズ艦長は艦長席から腰を浮かし、「可能な限りその地點の解析を急げ」と靜かに命じ、すぐに腰を降ろして元の表に戻った。

マイヤーズ艦長はCIC要員に対し、

「敵が何らかのアクションを起こすかもしれない。各員は即応できるよう注意しておいてくれ」

それに対し、CIC要員は「「了解しました、艦長アイ・アイ・サー」」と答えたあと、敵のきに対応できるよう手順などを再確認していく。

艦長は靜かにスクリーンを見つめ、

(ブランドンたちならいいのだが……敵が現地を確認するために出てきた可能もある。ブランドン、みんな、無事でいてくれ……)

彼は冷靜な表を崩さないが、心の中では潛部隊の無事を祈り続けていた。

一〇四〇

解析を続けていたクイン中尉はなかなか集まらない報に焦りをじながら、部下と人工知能AIを使い、必死に解析作業を行っていた。だが、芳しい結果は得られず、解析を諦めかけていた。

そのとき、部下の一人から味方からの通信を拾ったとの報告が上がってきた。

すぐに自分でも確認し、その容に驚きながら艦長に報告する。

「艦長、報告します。先ほどの潛地點から通信がっています! 潛部隊のニコール中尉です! ノイズが激しいため補正を掛けています」

「こちらは、……ガガ……です。敵ベースの……ドック設備を破壊……二ヶ月間は使用不能……任務は功し……ガガ……デンゼル大尉が負傷、戦死者九名、負傷者……ガガ……アウル1は……候補生が……更に敵の手に功……」

ところどころ通信が途切れるが、任務の功が報告された。その瞬間、CICに歓聲が上がるが、戦死者九名という言葉にすぐに歓聲は収まる。

マイヤーズ艦長は、「よくやった中尉! クイン中尉、アウルはまだか」と明るい聲で確認するが、

「アウルの識別信號は未だ確認されておりません……」とクイン中尉が答える。

「よし。潛部隊を拾ったら、キャメロットに帰るぞ! だが、油斷はするな! 敵が自暴自棄なる可能がある。最後まで気を抜くな!」

艦長の言葉にCICの空気は再び引き締まった。

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