《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Bonus Track.1 結記念パーティ

バンドが正式に結したその日の夜、この日を結記念日と稱して、軽いパーティを開くことになった。場所は、何とゲームでわざわざ建てたというリアラさんのマイホーム(一階建ての木製でできている)。どうやらここでほとんど過ごしているらしく、ログアウトしている事のほうがないらしい。

「うわあ、これはすごいな。うちも住んでみたいわ」

「空き部屋が何個かありますし、ここで暮らしますか?」

「いやいや、そこまで世話になれへんって。これでも一応毎日ログアウトしてるんやから」

「そうですか。ちょっと殘念です」

「俺もちょっとそこまではいいかな」

ションボリするリアラさん。まあ、確かに一つ屋の下で、同じバンド仲間同士が生活するというのは、とてもいい案かも知れない。しかも僕にとっては好都合すぎる。わざわざあの嫌な現実世界に戻らなくたっていいんだから。

「じゃあ、あの、僕ここで生活してもいい?」

「え? カオル君が?」

「うん。どうせログアウトしてもろくな事やってないから」

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「ろくな事してないって、あんたどんな生活しとんねん」

「それは緒だよー」

「まあ、別にええんやけど」

「でも、本當にいいんですか? カオル君」

「むしろ迷でなきゃ、こんな俺でよかったらよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ」

という事で僕は、しばらくこの世界のリアラさんの家での居候が決まった、他の二人も、居候まではいかないがここを拠點とする事になり、僕達はちょっとした家族みたいな関係になった(バンド仲間だけど)。

「よし、これで全部食べも揃ったし、乾杯といきますか」

「そんな焦らさないで、早く言ってくださいよ」

「分かった分かった。じゃあバンド『カナリア』の結を祝して乾杯」

『かんぱーい』

■□■□■□

記念パーティは、時間も忘れてとにかく盛り上がった。皆出會ったばかりだからなのか。話題がありふれていて、誰の話を聞いていても飽きなかった。

「え? じゃあナナミさんは本當に関西人なんですか?」

「當たり前や。関西人を舐めてもらったら困るで」

「別に舐めたりはしていませんけど、そういうキャラなのかなって思っていてたからてっきり」

「おう喧嘩売ってんのか?」

「だからそうじゃないですって!」

マジで怒りそうな雰囲気のナナミさんから逃げている僕の傍らで、アタルくんとリアラさんののんきな會話が聞こえてくる。

「なんか騒がしい人達ばかりですねこのバンド」

「それがいいところなんですよきっと」

「それに比べてリアラさんは、結構もの靜かな人ですよね」

「そうでしょうか?」

「だってあの歌だって、すごく綺麗でゆったりとした雰囲気でしたもん。俺そういうの憧れます」

「呑気に會話してないで、僕を助けて二人共」

「逃がさへんでー、このへっぽこー」

そんなとても楽しい時間もあっという間に過ぎていき、気がつけば日付が変わる時間になっていた。

「うわ、もうこんな時間や。そろそろ落ちるわ」

「あ、俺もこの辺で」

ある程度後片付けを終えたあと、ナナミさんとアタル君がログアウトし、殘った僕とリアラさんで殘りの後片付けをしていた。

「すいません、わざわざ手伝ってもらって」

「いいよ。僕はこれからかなりお世話になるんですから、これくらいの事はしないと」

「全然気を使わなくていいですから。先にお風呂にって休んでてください。部屋も準備しておきますので」

「本當にいいの?」

「はい」

「そこまで言うならお言葉に甘えて」

ていうかお風呂とかあったんだこのゲーム。まさにログアウトしない人向け(悪く言えば廃人)ようの設備だ。家を建てられるのも立派な証拠だろう。

(流石はVRMMOの世界!)

ちょっと違うかもしれないけど。

■□■□■□

「ふぅ、癒されるぅ」

リアラさんの言葉に甘えて、先にお風呂にった僕は、湯船に浸かりながらこれまでの事を振り返ってみた。

(まさか三日で、バンドを組めるなんて思っていなかったな)

何にもできない僕だから、多分誰ともバンドを組めずに終わるって思っていたけど、三日で結までありつけるなんて思っていなかった。しかも皆それぞれ個的で、とても面白い人ばかりで、すごく気が楽になれる。特にナナミさんは、まさにこのバンドのムードメーカーといっても過言ではない。まさかこんな所で本の関西人に會えるなんて思ってもいなかった。

(それにまさか、リアラさんと一緒に生活することになるなんて……)

これが今日一番驚いたことだ。彼の家がこのゲームにあるって事にも驚いたけど、まさかその家に僕も住ませてもらえるなんて、なんて奇跡なんだろう。これでもう、しばらくは嫌な思いする必要はないし、誰にも邪魔されないかな生活が送れる。

のんびりとした時間を過ごしていると、口からリアラさんの聲がした。

「カオル君、著替えここに置いておきますね」

「あ、ありがとう。って、何で男の著替えがあるの?」

「何かこの家を建てた時に特典についてきたんですよ。使い道に困っていたので、よかったら使ってください」

「あ、うん」

特典に男の著替えとか、どんなゲームだよ。

「そういえばリアラさん」

著替えを置き終えたリアラさんに僕は一言聲をかける。そういえばまだちゃんと言えていなかったけこの言葉。

「はい?」

「改めて言わさせてもらうけど、こんな僕とバンドを組んでくれてありがとう」

「いえいえ、こちらこそです」

本當はこんなんじゃ言い表せないほど謝をしているんだけど、それはまた別の時にでもとっておけばいい。とにかく今だけは彼にこれだけはちゃんと伝えておこう。

ありがとう。

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