《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Track.14 もう一度あの頃に
竜介と千由里をこのゲームに招待して、僕達の歌を聞いてもらう。
それがバンドの皆で出した結論だった。正直な話、二人がそのいに乗ってくれるとは僕は思えない。二人は僕を引きこもりから出させようとしているのだから、ゲームの中の自分を見せたところで、余計に怒られてしまいそうな気がした。
(でもやるしかないんだよね)
僕はバンドの練習途中で、リアラさんに二人に話してくると言って、一度ログアウトさせてもらった。
(確か連絡先は……)
ログアウトしてすぐに攜帯を取り出す。先日二人が家にやってきた後も、電話はかけてきてくれたらしく、著信が何件かっていた。
『もしもし?』
その中から竜介の電話番號を拾い、電話をかけてみることにした。
「もしもし、竜介?」
『薫か。お前から電話をかけてくるなんて久しぶりだな』
「ご、ごめん。何度も連絡してくれていたのに、ずっと返事もできなくて」
最初に浮かんできたのは謝罪の言葉だった。先日の言い爭いの事から、今までのこと全てを含めて謝罪の言葉にした。
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『別に謝ることはないだろ。俺もしキツく言い過ぎた所もある』
「でも僕は、ずっと二人に心配をかけていて……」
『そう思うなら引きこもりなんかやめろ。お前には俺達がいるんだから、安心して外へ出てこい』
「それは……」
できない、と言葉にできなかった。そう、彼の言う通り引きこもりを続けている事が駄目なんだ。だからいい加減踏み出さなければいけないのも分かっている。
だけど僕は……。
『それで何か用か? お前の決意なら、この前も言った通り週末に聞く。それ以外に何かあるのか?』
「うん。真剣に聞いてしい話なんだけどさ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
竜介との電話を終えた僕は、攜帯を投げ捨てて布団にうずくまった。もうこの後ログインする気力も湧いてこない。こんな気分のまま練習や作詞もできない。だから今日は寢てしまおうと思った。だけど、
『もしそれがお前の答えなら、もうお前とは縁を切らせてもらう』
「どうして?! 僕は二人に見てほしいんだよ、僕が出した答えを」
『その答えは本當に正しいのか?』
「それは……」
目を閉じるとさっきの竜介の言葉が蘇ってくる。
その答えは本當に正しいのか?
僕はその言葉に何も返せなかった。自分もそれが正しいのかよく分かっていなかったからだ。
ゲームを取るか、親友を取るか。
僕は二つを天秤にかけるなんてできない。かけるくらいなら、どちらも取りたい、それが僕のみだった。
「はぁ……」
何度目かになるため息を吐くと、攜帯が鳴り響いた。投げ捨てていた攜帯を僕は拾うと著信畫面を見る。電話をかけてきたのは、意外にも千由里からだった。
「もしもし?」
『もしもし薫君? ごめんね遅くに電話して』
「そうでもないよ。それでどうしたの?」
『この前のこと謝りたくて。竜介君はああ言っていたけど、私はそう思ってないの』
「いいよ。僕も悪いから。それにこの前だって、一方的に電話を切ったし」
『でもちょっとキツく言い過ぎたかもしれないと思ったから』
「でも電話してきた理由は他にもあるんでしょ?」
『やっぱり分かっているんだ』
「竜介がきっと話していると思ったから」
千由里が電話をかけてきたのは、恐らく先程竜介に電話した容のことを話したかっのだろうと予想ができた。まさかその日にかけてくるとは思っていなかったけど。
『竜介から聞いた話だけど、薫君はそれで私達に何を見てもらいたいの?』
「今の僕を二人に見てもらいたいんだ。それに、僕にはどちらかを選ぶことはできない。それでしでも分かってもらって、これからも二人に親友でいてもらいたいと思う」
『引きこもりは続ける気でいるの?』
「それは……分からない。でももし、二人がこれからも変わらないでいてくれるなら、しは努力しようと思う」
『この前は私達には関係ないって言っていたくせにずるいよ。自分に都合のいいことだけ言って』
「この前は悪かったよ。でもあの後ゆっくり考えて、それがいいと思ったんだ」
それは僕の本心だった。どちらかを選べないならどちらも取ればいい。それがたとえ、自分のわがままだったとしても。
『そっか。それが答えなのね。だったら私はそれに協力してあげようかな』
「え?」
『竜介君は反対しているけど、薫君の言葉を信じる』
「千由里……」
『ただし一つ約束して。すぐにとは言わないけど、必ず私達のところに戻ってきて。また一緒に高校生活を送ろう?』
「……うん。約束する」
『じゃあ、おやすみ』
「うん、おやすみ」
最後にそう約束して電話を切った僕は、今度はちゃんと攜帯を近くの機に置いた。正直千由里がこの話を認めてくれたのはすごく嬉しかった。今までわがままな事ばかりしてきた僕に、未だに彼は味方してくれている。その優しさは僕の心にすごく響いた。だから僕はしだけ思った。
もう一度やり直してもいいかと。
千由里との電話で、すっかり眠気が覚めた僕は、その後夜明けまで作詞を続けたのであった。
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