《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Track.17 バンド『カナリア』初陣!

そして迎えた本番當日。朝から張してガチガチだった僕は、ナナミにからかわれていた。

「何やカオル、いっちょまえに張しとるんか」

「あ、當たり前だよ。ぼ、僕こういうの初めてだし」

「まあまあ、張するのはいいことですから、ナナミさんもからかわないでくださいよ」

「えー、折角面白いのに」

「お、面白くなんかないよ」

「カオル君もし落ち著いて。本番は午後なんですから」

皆にめられるが、それでも張は解けない。何せ僕は本番の事以外にも、気がかりな事が一つあるからだ。それは竜介の事。千由里はちゃんと來てくれると約束してくれたけど、竜介は本當に來てくれるのか、それが気がかりだった。

(來てくれないと、今度こそ僕は本當の友達を失う。そんなのは嫌だ)

こうして引きこもってゲームばかりしている僕にも原因があるのは分かっている。だけどずっと親友である二人だけとは離れたくない。その気持ちは僕の心の中にずっとあった。

「カオル君、やっぱり心配ですか?」

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そんな僕を見かして、リアラさんが言葉をかけてくる。

「心配ですけど、僕は信じています。竜介が必ずここに來てくれる事を」

「私も信じますよ。そしてライブも功させましょう」

「はい!」

僕達カナリアは、初ライブに向けての最終調整を行った後、いよいよ本番となる會場へと足を踏みれたのであった。

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

僕達の初めてのライブを行うイベント會場は、まだ晝過ぎとは思えないほど大変混雑していた。

「う、うわ。こんなに人が集まるんですね」

「か、カオルさん。が、ガチガチじゃないですか」

「そ、そういうあんたもガチガチやない。アタル」

「まあまあ三人とも、落ち著いてください」

あまりの客の多さに、僕達三人は張しまくりなのに対して、至って冷靜のリアラさん。流石はこのゲームに慣れているだけの事はあるかもしれない。

「カナリアの方々、こちらに來てください」

の人が僕達を呼んでいるので、そこへ向かう。だけどその途中、

「あ、いたいた。薫くーん」

僕を呼ぶ聲が聞こえる。振り返ると、chiyuというキャラクターの名前の子がこちらに寄ってきた。恐らく千由里だろう。僕は三人に先に行っててもらい、彼の元に寄った。

の周辺を見渡したけど、そこに竜介の姿は見當たらなかった。

「もしかして千由里? 本當に來てくれたんだね」

「勿論。約束はしたからね」

「でも竜介が來てないね」

「昨日もちゃんと連絡したんだけどね。でも心配しないで、きっと竜介は來ると思うから」

そう宣言する千由里。何故か不思議だけど僕は、その言葉は噓じゃないと思っていた。それほど千由里の言葉は信頼できたし、竜介もその想いを理解してくれていると思った。

「じゃあ僕、行くね」

「うん、観客席からちゃんと見てるから。頑張ってね初めてのライブ」

「うん」

最後に彼と握手をわして、僕は三人の元へ戻った。

「彼がカオル君の親友の方ですか?」

「はい。もう一人はまだ來てません」

「まだ、ですよね?」

「勿論。絶対來てくれますから竜介は」

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

それから三十分後、舞臺袖で僕達はもうすぐやって來る本番を張しながら待っていた。

「いよいよやな、リーダー」

「そうだね。もう後五分くらいかな」

「俺すごく張してます」

「大丈夫。僕も一緒だから」

刻一刻と迫る時間。殘りの時間もないということで、最後に僕達は円陣を組んだ。

「皆張すると思うけど、初めてのライブ楽しもう」

「頑張りましょう、カオル君」

「失敗するんやないぞリーダー」

「俺も頑張ります!」

それぞれ一言ずつ言い、そして最後は、

「じゃあ行くぞー」

『おー!』

皆で合わせて気合をれる。それと同時に僕達を呼ぶアナウンスがったので、僕達はその勢いでステージへとっていった。

一斉に湧き上がるステージ、

僕達は名もなきバンドであるのに、ここまで盛り上がってくれるなんてしだけ嬉しかった。ゲームだから、とかリアラさんがいるからとか理由は別にあるかもしれないけど、それでもこの舞臺に僕達は立てる。それだけでも嬉しかった。

「えっと皆さん初めまして、カナリアです」

観客の聲がある程度靜まったところで、僕はマイクを取り軽い挨拶をする。その間も心臓はバクバクだったけど、何とか心を落ち著かせる。そして一通り挨拶が終わったので、僕はドラム席に戻りそのマイクをリアラさんが取る。

「では私達の記念すべき一曲目、聞いてください」

こうして僕達カナリアのライブは、幕を開けたのであった。

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

その頃、ライブが始まるし前の観客席。千由里は未だ來ない竜介を、心配していた。

「もう何やっているのよ竜介。もうすぐ始まるのに」

昨日電話した時點では、はいとは答えなかったけど、彼も彼はきっと來ると信じていた。

(だって私達は、親友なんだから。絶対に裏切らないよね竜介)

しかし結局、ライブが始まるまでに彼が姿を見せることはなかった。

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