《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Track.18 それが僕の答え

一曲目は課題曲『Start it up』。初めて音楽にれる人の為に作られた曲らしく、これに関しては僕も間違えずに何とかできた。でもその曲中にもリアラさんの凄さは観客をあっという間に魅了した。

(改めて聞くと、すごいなリアラさんは)

ドラムを叩きながら、僕はその凄さに思わず見とれてしまう。って、本番中に何をやっているんだ僕は。

一曲目が終わり、二曲目。カナリアはまだ二曲しか弾けないので、次が自的に最後の曲になるのだけど、その最後の曲が僕が作詞した曲。

『I meet a new story』

タイトルに深い意味は込めていないけど、僕はこのゲームに出會って、新しい語が始まったというじで作詞した。リアラさんに出會って彼の歌聲に惹かれて、バンドを組まないかとった事から始まったこのバンドは、これからが本當の始まりなのだから、長く続けばいいという想いを歌詞に込めてリアラさんには歌ってもらった。

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そんな想いが伝わったのかも分からないけど、一曲目以上にリアラさんはその曲を、しっかりと歌い上げ會場を沸かせた。

(あ)

そして僕は偶然にも、千由里の隣にちらっとある人の影が見えた。それが誰なのかは勿論分かる。

(竜介、來てくれたんだ)

ホッとで下ろしたくらいに、曲が終わりを迎える。

「聞いてくれてありがとうございました」

リアラさんがそう頭を下げると、何と會場はスタンディングオベーション。流石にここまでの予想はできていなかった僕達は、その反応に驚きを隠せない。

(すごい、僕達の歌が認めてもらえた)

竜介が來てくれた事も踏まえて、しだけ涙ぐんでしまう。

「まだ泣くのは早いですよ、カオル君」

そんな様子の僕に気付いたのか、リアラさんが聲をかけてくれる。そうだった、まだ終わってないんだった。

僕達四人はステージの前の方に橫に並ぶ。最後に皆で挨拶をして終わらせる予定になっていた。

「え、えっと。今日はこんな僕達の曲を聞いてくれてありがとうございました。初めだったのでまだまだ練習不足な所があったと思いますけど、これからもカナリアの事をよろしくお願いします! ありがとうございました!」

『ありがとうございました!』

全員で最後にそう言うと、観客が一斉に湧いた。たった二曲だったのに、ここまで盛り上がれるなんてやはりリアラさんのおかげなのかな。

僕達は喜びの余韻を殘したまま、ステージ裏へとはけていった。

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

初ライブ終了後。

この後ライブ參加者達による打ち上げが行われる事になっているけど、その前に僕は寄るところがあった。

「お疲れ様、薫」

「お疲れ」

「ありがとう二人とも」

それは今日ちゃんと來てくれた竜介と千由里の所。ライブが始まる前に千由里とは會っていたけど、途中から竜介も來てくれた事が僕は嬉しかった。

僕の今の答えを二人に直接聞いてもらえたのだから。

「あれが薫の新しい仲間?」

「うん。ゲームの中だけだけど、三人も大切な仲間なんだ」

「三人も、か。じゃあお前にとって俺達はどんな存在だ?」

「勿論二人も親友だよ。だからどちらかを捨てる事なんて僕にはできないんだ」

「確かにあんなに楽しそうな薫を見るの、私初めてだった。まだ不用な所はあったけどね」

「ま、まだ慣れてないからだよ。他の三人がかなり上手いし、それに追いつかないと駄目だと思っている」

それが僕の本心だった。そしてそれが僕が考えたなりの答え。これからも僕はこのゲームを続けるつもりだし、二人ともこれからも親友を続けたい。

だから二人には、今日のライブを見て分かってほしかった。僕のこれからの事を。

「お前が俺達に何を伝えようとしたのかはよく分かった。だからこそ、お前に言いたい事があるんだ」

「言いたい事?」

「すぐにとまでは言わないんだ。そろそろ、その引きこもり生活を終わりにしないか?」

「え? で、でもそれは……」

すごく無理な注文だった。そんな事をすぐにはできない。いや、というよりこれからも引きこもりをやめるつもりは滅相もない。

「私も竜介と同じで、薫には外へ出てもらいたいの。もう一度私達と高校生活をやり直そう」

「それはできないよ僕には。外に出たっていいことは一つもないし、傷つくだけだよ。だから……ごめん」

「薫……」

「じゃあ僕、これから打ち上げがあるから」

最後にもう一度ありがとうと伝えてその場を去ろうとする。

「本當にそれでいいのか? 薫」

だけどそれを呼び止めたのは、竜介だった。

「それでいいって、どういう意味?」

「そのままの意味だよ。お前は本當は……引きこもりを止めようと思っているんじゃないのか」

「そんな事ないよ。今言ったことは僕の本心、これだけはかわらないよ」

現実から目をそらすかのように僕は止めていた歩みを進める。

「行かないで薫!」

千由里が突然大聲でそんな事を言う。周りの人達がそれに反応し、僕もまた止まってしまう。

「千由里?」

「離れないでよ。私達は三人じゃないと駄目なの。もうこれ以上、寂しい想いをさせないで」

涙を流しながらぶ千由里。そんな彼を僕は見て見ぬ振りなんてできなかった。

「ごめん千由里。泣かせるつもりはなかったんだけど」

「お願い薫。私達がその傷を埋めてあげるから、帰ってきて」

「千由里……」

僕達はずっと三人で一緒だった。馴染とまではいかなくても、長い間を一緒に過ごしてきた。だからこそ彼は言えたのかもしれない。その傷を埋めてくれるって。

「明日練習はないから、一度ログアウトするよ。その時にもう一回話そう、これからの事を」

「薫……」

でも僕はそれに対して、素直にハイとは言えなかった。外に出るのがまだ怖いし、また學校に行ったらあの目にあうんじゃないかって思って、怖くなってくる。

だから僕は、逃げ道を作った。

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