《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Track.23 だから今は

若干ながら重苦しい空気を背負いながら、僕達はマセレナードオンラインにログイン。早速リアラさんの家へと向かう事にした。

「あら、三人でわざわざログインしてきたんですか?」

「すいません、いきなりやって來たりして。今日は練習もありませんでしたし、家でゆっくりしていたんじゃないんですか?」

「いえいえ。丁度退屈していたところなんですよ」

リアラさんは僕達が突然やって來た事にも何も言わずに、笑顔で出迎えてくれた。まあ僕の場合は第二の家なのだから、あまり問題ではないけど今日はログインの予定もなかったし、迷ではなかったのだろうか?

「薫がいつもお世話になっています」

「あなたはこの前のライブに來てくれていた、リュウスケさんでしたっけ?」

「はい」

まるでリュウスケが親みたいな會話をする二人。いや、確かにお世話にはなっているけど、それをどうして竜介が言うの?

「何で竜介まで敬語なのさ」

「いや、何かステージで見た時よりもすごく綺麗で、つい張しちゃってさ。駄目だったか?」

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「敬語の僕が言えた口ではないけど、なんか竜介が言うと気持ち悪い」

「お前今日俺の悪口しか言ってないだろ」

とまあ、挨拶はこれくらいにして僕達は居間に通される。いつも練習ばかりしているせいか、家の中がこうも靜かだとどこか落ち著かない。

「ねえねえリアラっていつもこのゲームの中にいるの?」

家の中を眺めながら千由里が聞く。彼もこのゲームに何度かログインしているから、ようやくその疑問にたどり著いたらしい。

「はい。ここが私の家みたいなものですから」

「カオル君もそうだったけど、リアラはログアウトするつもりはないの?」

「するも何も、私はこのゲームの住人ですから」

「え? どういう事?」

當然のように言ってのけるリアラさんに、千由里驚いている。それは全く知らない竜介もそうだった。

「私はそもそもこのゲームに用意された、NPCすなわちノンプレイヤーキャラクターみたいなものなんです。とは言っても、NPCとはし違いますが」

「噓でしょ? 薫君はこの話を知っていたの?」

「最初の方に僕は聞いていたけど、まだ信じられていないよ」

「こんなにも人格を持ったNPCなんて聞いた事ないぞ。何かの気のせいなんじゃないのか?」

「気のせいではありませよ。私自が自覚をしているんですから」

先程に続いて重い話ばかりで、元気をなくす千由里と竜介。僕も同じ反応をしていたんだから仕方がないとは思うけど、折角ゲームで遊んでいるのだから、あまりこういう話をするのはなんだか嫌だ。

「そ、その話はこの辺にしてさ、折角音楽のゲームにログインしたんだから、遊ばないと」

「遊ぶって、俺達そういうの全く疎いぞ」

「大丈夫、僕だって最初はそうだったんだから」

■□■□■□

という事で、今日はいつもと違うメンバーで練習する事に。千由里はキーボード、竜介はギターという組み合わせだけど、ちゃんと練習はできるようにこのゲームはわざわざ譜面も用意されている。

「つまり同じ曲でも、メンバーの楽の組み合わせによって譜面が全部変わるように設定されているって事か?」

「うん。その辺は流石オンラインゲームだと思うよ」

「すげえな」

練習スタート。

「えっと、ここがこうで……」

「竜介君、まだ音も出せていないけど大丈夫?」

「お前は叩けば音が出るだろ。こっちは指が慣れないと簡単には音出せないんだよ」

「でも薫君も大変なのに、一ヶ月ちょっとでよくここまでできるようになったよね」

「だな。恐らくリアラさんが毎日教えてくれたおかげなんだろ」

し前までの薫君からしたら考えられないよ」

「前はそんなの見向きもしない男だったからな」

「二人とも會話が全部聞こえてるからね」

言っている事はあながち間違ってはないけど、それをこの狹い空間で堂々と言われると僕としても困る。

「本當に仲がいいんですね」

「まあそういう仲なんですよ僕達は」

「私そういうのしだけ羨ましいです」

「僕達だって仲間じゃないですか」

「それはそうなんですけど」

どこか寂しそうな顔をするリアラさん。滅多にそんな表を見せないので、僕はし驚く。

(何かマズイこと言ったかな僕)

でもバンドってそう言うもののはずなんだけど、リアラさんはどうしてこんな事を言ったのかな。

「何イチャイチャしてんだよ、二人で」

「い、イチャイチャなんかしてないよ」

「言っておくけど會話丸聞こえだからな」

その後もワイワイしながら練習は続き、気がつけば夕飯の時間。僕達は一度リアラさんと別れてログアウトをする事に。

「あ、ちょっとカオル君、殘ってくれますか?」

ログアウトする前、リアラさんに呼び止められたので僕は殘る。何か練習の事で伝えたいことでもあったのだろうか。

「どうしたんですかリアラさん」

「実はカオル君に々伝えておきたい事がありまして」

「伝えておきたい事?」

「この後ログインする予定ならば、リュウスケ君とチユリには黙っておいてもらいたいんですけど、先ほども話した私の事で々」

「リアラさんの事?」

「私は」

この後リアラさんの口からある事が語られた。それは彼のある事だったのだけど、今は僕も語りたくはない。だってそれは、僕の中にあるリアラさんへの想いが、打ち砕いてしまうから。

(だから今は……)

何も語れない。

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