《音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら》Track.29 彼の心配と彼の不安

僕の今日までの行が、リアラさんの負擔になっている。そんな事考えた事もなかった。

「ええかカオル。あんたが無理をしすぎると、リアラは心配するんや。だから練習にもっとらんし、このままカオルが無理して練習に參加したらただ繰り返すだけなんや」

「でも無理をしないと、僕は次のライブまでにもっと長しないと、どんどん置いてかれる。それが一番怖いんだ」

「それで倒れたら意味がないやろ」

「それは……そうだけど」

「焦る気持ちも理解できる。せやけど、それで周りに心配させてどうするんや」

「でも僕はそうしないと……そうしないと……」

また記憶が蘇る。そしてまた僕は過呼吸になりかけていた。先程まで何ともなかったはずなのに、どうしてまたいきなりこんな事に……。

「どうしたんやカオル。急に呼吸を荒くして」

「ハァ……ハァ……。な、何とか大丈夫だから、心配しないで」

「大丈夫な訳ないやろ! やっぱりログアウトして休むんや。リアラ達には今日の事は誰にも話さんから」

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「ごめん……。すぐに戻ってくるから」

これ以上ナナミやリアラさんに心配させるのもよくないと判斷した僕は、再びログアウトす事にした。

(今までこんなに頻繁に起きる事なんてなかったのに……)

これだとナナミが言っていた通り、もっとリアラさんやバンドのメンバーに迷をかける事になってしまう。そんな事ばかりを繰り返していたらいつかは……。

(先ずは乗り越えるべき事は、自分自の過去なのかな)

■□■□■□

ログアウトしてからしばらくの時間が経過した。その間に発作は落ち著いたものの、僕は布団の上でずっとボーッとしていた。さっきナナミが言っていた通り、僕がこれ以上無理をするような事があればリアラさん達をずっと心配させるだけなのは理解した。

(ナナミにまで説教されるなんて思わなかったな……)

でも彼が言っていた事は最もだったし、僕もここ數日どうかしていた。そのキッカケはやはりここ數週間で僕の中にって來たありとあらゆる報だった。リアラさんの事、例の資料の事、そしてあの電話の事。

でもそれらはマセレナードオンラインを始めた事に繋がる。まさかたった一つのゲームがキッカケで、ここまで自分の生活に大きな変化をもたらすようになろうとは思っていなかった。

(このゲームを始めなければ、千由里達との確執が消える事もなかったし、ある意味では転機だったのかもしれない)

ピロリロリーン

「ん?」

ふと攜帯の著信音がなる。畫面には見知らぬ番號が表示されている。

(この前の人と違う番號だし、誰だろう)

僕は恐る恐る電話を出てみる事にした。

■□■□■□

「カエデ君は大丈夫なんでしょうか」

私はもう何度目になるか分からないその言葉を自然と発していた。二日前に彼が倒れ、今日メールは送ったものの返事も返ってこない。もしかしたらまだ眠ってしまっているのだろうかと心配になる。

「もう何回言うんやその言葉、リアラ」

「ナナミさんは心配じゃないんですか? もう二日も連絡してこないんですよ」

「きっと返事を忘れているだけや。本當リアラは心配やな」

今日の練習は私とナナミさんしか參加していなかった。アタル君は今日用事があるらしくて、先程連絡がった。でも肝心の彼からはまだ一つも連絡がって來ていなかった。

「ナナミさんは心配していないんですか? カエデ君の事」

 

「そんなの心配に決まっているやろ。けど心配し続けても埒が開かんやろ」

「それは分かっていますが……」

「全く。その調子じゃカエデが復帰するまでは練習は無理やな。ウチは今日はログアウトさせてもらうわ」

「あ、待ってください」

心配すぎる私に呆れながらログアウトしようとするナナミさんを私は引き止めた。

しだけ話をしませんか? 折角子二人だけなんですから」

「それはええけど、何か話したいことでもあるんか?」

「話したい事は特にはありませんけど、一人になるのはしばかり不安になるので」

「分かった。じゃあし散歩がてらに近くのカフェでも行かへんか?」

「カフェにですか? いいですよ」

五分後、私とナナミさんは家から近くのカフェで二人きりのお茶をしていた。

「それにしてもリアラも大変やな。巷では歌姫って呼ばれていて、苦労してへんか?」

「別に苦労なんてしていませんよ。私はそのためにこのゲームに存在しているようなものですから」

「よくカエデも歌姫を最初にメンバーとして加えたなぁ」

「彼の方からって來てくれたんです。バンドを組まないかって」

「そういえばそうやったな。斷ろうとかは考えなかったんか?」

ナナミさんの言葉で私はあの時の事を思い出す。あの時カエデ君に突然聲かけられてビックリして、二つ返事で了承してしまったけど、あの時私の中に斷ろうと言う気持ちは不思議となかったのは覚えている。

「どうしてかは分かりませんけど、斷ろうという気持ちはありませんでした。不思議な話かもしれませんが、それは本當なんです」

「ほう、つまりその時から始まっていたんやな」

「始まっていたってどう言う事ですか?」

「そんなの決まっておるやろ。お主とカオルのや」

「こ、!?」

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