突如として吹き荒れた烈風に吹き飛ばされた琴は、全力で磁力を作して己の勢を安定させた。それがもうし遅れていれば、橋に激突して気絶しオチていただろう。

（ハッ！ 黒子、初春さんに佐天さんは!? 皆、無事よね!?）

慌てて視線をかす。その先には、琴と同じ常盤臺中學の制服を著たツインテールお嬢様と、セーラー服を著た黒髪ショートの、そして同じくセーラー服を著た黒髪ロングのがいた。どうやら黒子の空間移テレポートで一度避難したようだ。

（よかった......）

ホッと安堵の息をつく琴。そんな彼たちの上空から。

「佐天さんらの周りには超音波と衝撃波でシールド造ってたんだけど、流石さすがは常盤臺の大能力者レベル4。風紀委員ジャッジメントだけあって、非常時における対応の速さが凄い凄い」

ハッとして聲がした方を見上げる4人。その先に前田はいた。

背中から翼のように2本の竜巻を生やして。

（（（（なっ......!?））））

と、驚愕する琴たち。それを一瞥いちべつした前田は、

「熱作しイジって気圧変えれば、風くらい出せるさ」

適當な調子で言うと、

ドパッッッッッ!!!!!!!! と。

奇妙な音が響いた時には、琴の背後を取っていた。

「後ろは振り向かない。そんな暇あったら全力で回避」

前田の全フル加速アクセルのスピードを見て、そう考えていた琴だが、あまりにも圧倒的すぎるスピードは回避さえも許さない。膨大な運エネルギーが衝撃波という形で至近距離から放たれる。またしても上空に飛ばされる琴。そして。

「いくらアンタでも、空中じゃけねぇよな」

そう言った前田が超高速で突っ込んでくる。そして。

ゴッッッッッッッッッ!!!!!!!! と。音が響く。軽くっただけでも甚大じんだいなダメージを負うであろう、必殺の一撃。『それ』をーーー

超電磁砲レールガンと呼ばれる『それ』を、琴が空中で放った瞬間だった。

竜巻でギリギリその一撃を防いだ前田のがグラリと揺れる。その間に琴は磁力を作。勢を安定させ、無事に著地すると共にぶ。

「今度は、私の番よ!!」

「いいね」

再び急降下する前田。回避さえも許さない、その絶対的なスピード。それを琴は恐れない。待ちけるように、挑むように、左足だけで立って右足の革靴ローファーの爪先で地面をトントンと叩く。年の拳が膨大な運エネルギーを宿し、その蒼拳ソウケンが破壊を振り撒くーーー

琴の背後に、空間移テレポートじみたスピードで回り込んで。

しかし、

しかし。

しかし！

回り込みと攻撃。その僅かなスキ間で琴がく。左足を軸に高速回転。重と慣を全て乗せた右足が風を斬る。前田にとっては予想もしなかった一撃。しかし琴にとっては、いつもやってる事だった。ただ、相手が変わっただけ。

（まさか、人間相手に『この技』を使う日が來るとはね......!!）

その必殺技の名は！

『常盤臺中學伝、おばーちゃん式ナナメ45度からの打撃による故障機械再生法』

「ちぇいさーっ！」

というふざけたび聲と共に、琴はスカートのまま前田に振り向きざま上段蹴りを叩き込む。結果はーーー

側頭部にズドンッ!!!!

アメコミなら背景にSMASH!! とか書いてありそうなじで。

前田の脳が、割と結構ガチめに揺れた。

その瞬間、前田の、黒子の、初春の、そして佐天の思考は、プロの合唱団さえも羨む程のシンクロを発揮した。

（（（（そういく？））））

そして、琴のハイキックをクリティカルで喰らった前田の意識は、闇に落ちていったーーー