《とある素人の完全駄作》5話 獨りになんかさせない
「ん......」
暗転していた前田の意識が鮮明化していく。それに伴って、別のものも鮮明化していく。的には、左側頭部の鈍痛。
しばらくして完全に目が覚めた彼は、違和に気付いた。常盤臺中學のエースにして、『超電磁砲レールガン』の二つ名を冠された最強の発電系能力者エレクトロマスター、坂琴との全力戦闘ガチバトル。その幕は琴が放った、メガネをかけた小學1年生の某名探偵もビックリの見事なボレーキックーーーではなく、ハイキックによって閉じられた。そしてその一撃によって前田の意識も沈められている。つまり彼は今、戦場(?)となっていた河川敷の土with雑草の上に橫たわっているはずなのだ。しかしそれにしては地面が溫かい。そしてらかい。まるでベッドの上のように。目が覚めていたのに閉じていた目を薄く開けると、天井が見えた。
(知らない天井だ......)
と、某國民的ロボットバトルアニメの主人公みたいな事を前田が考えた時。
Advertisement
「あっ、起きた? 大丈夫?」
聲のした方を見ると、佐天がいた。いや、佐天だけではない。琴と黒子、初春もいた。
「うん、大丈夫。......まだ側頭部がドチャクソ痛むけど」
「それ、大丈夫って言わないんじゃ......」
「ごめんね、頭蹴っちゃって。本當にごめん!」
「いや、別に気にしてないから。そんな謝らなくても」
「それにしても、まさか最後の最後でお姉様があんなダーティな戦をとるとは思いませんでしたわ」
「白井さん、それ言うのもう5回目ですよ」
わっちゃわっちゃとお喋りが盛り上がる。このまま放っといたら俗に言うガールズトーク的なものが始まって置いてきぼりにされそうな予しかしなくなってきたので、前田は口を開く。
「とりあえずさ、ここドコ?」
しかし、お喋りのド真っ最中に話しかけて聞こえるはずもない。全員が前田の質問に気付いていない。そこでこんな作戦に出る前田。
音エネルギーをって相手の聴覚をダイレクトに刺激する。
『トリアエズサ、ココドコ?』
琴たちが一斉に振り返る。質問に答えたのは佐天だった。
「學生寮のあたしの部屋。さっきの河川敷からも、智也の部屋からも近いしね」
「近いったって、人間1人運ぶのはキツかったんじゃないの?」
「わたくしの空間移テレポートを使えば、どうって事ありませんわよ」
ドヤ顔を決める黒子。を、完全に無視して前田は、今度は琴に質問する。
「ところでさ、坂さん」
「ん?  何?」
「イマドキノオジョーサマハスカートノシタニタンパンヲハイテイラッシャルノデスカ」
「棒! 臺詞がスッゴい棒読み、ってかやめれ! その遠い目でこっち見んのやめれ!!」
そう、前田は目撃してしまったのだ。ハイキックによって意識が完全に闇に沈む直前に。スカートの下にあるはずの花園ーーーを、完璧に守護する短パンてっぺきを。
短パンさんコンニチハ。
1人のお嬢様の手によって、世の野郎共のの子に対する幻想が、ぶち殺された瞬間を目の當たりにした前田であった。そう考えると、琴もある意味では『幻想殺しイマジンブレイカー』である。
「ていうかそもそも、子が全員スカートの下に短パン履いてる訳じゃないから! 他の常盤臺の生徒全員を私1人と一緒にすんな!」
とにかく全力でツッコむ琴。その橫からヒョコッと顔を出した初春が、
「そうですよ、前田さん。きやすければ下著なんて履かなくてもいいって思ってる人だっているんですよ。ねぇ、白井さん」
「確かに、白井さんの下著の布地の面積スッゴい狹かったなー」
この場に自分がいていいのか、分からなくなってきたので、
「......そろそろ帰ろうかと思うんだけど。もう5時過ぎてるし」
と言う前田。すると、
「本當に、もう大丈夫なの?」
と聞かれ、つい戸う。
「結構強めに蹴っちゃったから、無理しないで休んでね。まぁ、蹴った張本人の私に言われても、「は?」だろうけど」
思わず質問する前田。
「......えっと、もしかして心配してんの? 俺の事」
それを聞いた佐天が憤慨ふんがいしたように、
「何言ってんの!? 友達のこと心配するなんて當たり前でしょ!?」
「え......友達?」
「そうだよ、蹴った側の私にも責任あるんだから。そうじゃなくても心配くらいするわよ」
「人間を蹴るのに故障した自販売機を蹴るのと同じ覚でやれば、前田さんのダメージも増えてしまうでしょうしね。本來なら風紀委員ジャッジメントとして傷害扱いしてますわ」
「本當ですね~。坂さんがあんな奧の手を隠していたなんて、びっくりです」
「い、いや、だからそれは......!」
再びわっちゃわっちゃと話し出す4人。しかし、前田が口を挾むことはなかった。そして、それに最初に気が付いたのは佐天だった。
「え? ちょっ、智也!? どうしたの!?」
前田の、星のない夜空のように黒い瞳から、明な雫しずくが落ちていた。一粒、二粒、三粒......止めどなく落ちていく涙は、佐天のベッドのシーツに大きなシミをつくっていく。
慌てたのは佐天たち4人である。
「え、何? あたし、何かマズい事した?」
「さ、佐天さん私に聞かないで下さいよぉ」
「もしかして、私が蹴ったのが泣くレベルで痛かったとか......?」
「時間もかなり経ってますし、いくらなんでもそれはないと思いますわよお姉様」
各々が一通り意見を出したところで、年の聲が空気を震わせた。
「あーちがうちがう、そうじゃなくて......」
「そうじゃ、なくて?」
先を促す佐天。それに前田は、涙をこぼしながら、しかし平然とした風に答える。
「俺ずっと友達とかいなかったからさー。ずっと獨ひとりだったから、そうやって心配してくれる人もいなくてさー。能力チカラで隠れてなくても誰もーーー」
ふと、言葉が途切れた。
「......そっか」
そう呟いた佐天が微笑ほほえみながら、い子供をあやす母親のように前田を優しく抱きしめたからだ。
「......えっと、佐天さん?」
「それは寂しかったよね。でも、もう大丈夫だよ。あたしがいるし、初春もいる。坂さんに白井さんだっている」
一拍の間を置いて、佐天はこう続けた。
「もう智也を、獨りになんかさせない。あたしが約束する」
「そうですよ。そもそもクラスメートなんですから、もっと仲良くしましょうよ」
「うん、もちろん私たちだって同じ気持ちだよ。ね、黒子?」
「ええ、當然ですわ」
彼たちの言葉は、冷めきっていた年の心を溫めていった。その言葉に、前田は答えなかった。ただ、母親に甘える子供のように、佐天のセーラー服の裾すそを握り、小さく嗚咽おえつを洩らした。そんな弱く脆もろい一面を垣間見せた年の頭を、佐天は優しくで続けた。泣き止むまで、何度も、何度も、何度もーーー
【書籍化・コミカライズ】手札が多めのビクトリア〜元工作員は人生をやり直し中〜
ハグル王國の工作員クロエ(後のビクトリア)は、とあることがきっかけで「もうここで働き続ける理由がない」と判斷した。 そこで、事故と自死のどちらにもとれるような細工をして組織から姿を消す。 その後、二つ先のアシュベリー王國へ入國してビクトリアと名を変え、普通の人として人生をやり直すことにした。 ところが入國初日に捨て子をやむなく保護。保護する過程で第二騎士団の団長と出會い好意を持たれたような気がするが、組織から逃げてきた元工作員としては國家に忠誠を誓う騎士には深入りできない、と用心する。 ビクトリアは工作員時代に培った知識と技術、才能を活用して自分と少女を守りながら平凡な市民生活を送ろうとするのだが……。 工作員時代のビクトリアは自分の心の底にある孤獨を自覚しておらず、組織から抜けて普通の平民として暮らす過程で初めて孤獨以外にも自分に欠けているたくさんのものに気づく。 これは欠落の多い自分の人生を修復していこうとする27歳の女性の物語です。
8 173裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
親友に裏切られて死んだと思った主人公が目を覚ますとそこは異世界だった。 生きるために冒険者となり、裏切られることを恐れてソロでの活動を始めるが、すぐにソロでの限界を感じる。 そんなとき、奴隷商に裏切れない奴隷を勧められ、とりあえず見てみることにして、ついて行った先で出會ったのは傷だらけの幼女。 そこから主人公と奴隷たちの冒険が始まった。 主人公の性格がぶっ飛んでいると感じる方がいるようなので、閲覧注意! プロローグは長いので流し読み推奨。 ※ロリハー期待してる方はたぶん望んでいるものとは違うので注意 この作品は『小説家になろう』で上げている作品です。あとマグネットとカクヨムにも投稿始めました。 略稱は『裏魔奴(うらまぬ)』でよろしくお願いします!
8 188學園事件証明
整合高校の七不思議にこんな話がある。 誰も知らない不老不死の生徒が存在すると… 根倉で性格の悪いただの生徒である和鳥 野津(わとり のず)は學校で起こった數々の事件を推理する…
8 162僕は精霊の王と契約し世界を自由に巡る
僕は生まれながらにして、不自由だった 生まれてからずうっと病院で生活していた 家族からも醫者からも見放されていた そんな僕にも楽しみが一つだけあった それは、精霊と遊ぶことだ 精霊は僕にしか見えなかったがそれでも精霊と遊んでいるときはとても楽しかった 僕は死んだ だが、異世界に僕は転生した! その世界で僕は精霊の王と契約し自由に生きていく
8 180異世界はガチャで最強に!〜気づいたらハーレムできてました〜
ある日、青年は少女を助けて代わりに死んでしまった。 だが、彼は女神によって異世界へと年はそのままで容姿を変えて転生した。 転生の際に前世の善良ポイントで決めた初期ステータスと女神からもらった 《ガチャ》と言う運任せのスキルで異世界最強を目指す。 処女作ですので長〜い目で見てくれると光栄です。 アルファポリス様で好評でしたのでこちらでも投稿してみようかと思い投稿しました。 アルファポリス様で先行更新しているので先の話が気になればそちらをご覧ください。 他作品も不定期ですが更新してるので良かったら読んでみてください これからもよろしくお願いします。
8 184チート能力を持った高校生の生き殘りをかけた長く短い七日間
バスの事故で異世界に転生する事になってしまった高校生21名。 神を名乗る者から告げられたのは「異世界で一番有名になった人が死ぬ人を決めていいよ」と・・・・。 徐々に明らかになっていく神々の思惑、そして明かされる悲しい現実。 それらに巻き込まれながら、必死(??)に贖い、仲間たちと手を取り合って、勇敢(??)に立ち向かっていく物語だったはず。 転生先でチート能力を授かった高校生達が地球時間7日間を過ごす。 異世界バトルロイヤル。のはずが、チート能力を武器に、好き放題やり始める。 全部は、安心して過ごせる場所を作る。もう何も奪われない。殺させはしない。 日本で紡がれた因果の終著點は、復讐なのかそれとも・・・ 異世界で過ごす(地球時間)7日間。生き殘るのは誰なのか? 注)作者が楽しむ為に書いています。 誤字脫字が多いです。誤字脫字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。 【改】となっているのは、小説家になろうで投稿した物を修正してアップしていくためです。 第一章の終わりまでは、流れは変わりません。しかし、第二章以降は大幅に変更される予定です。主な修正は、ハーレムルートがなくなります。
8 109