《とある素人の完全駄作》10話 破壊の王
學園都市の第3位『超電磁砲レールガン』坂琴みさかみことは、巨大な怪と正面から対峙たいじしていた。攻撃されるたびに再生・大を繰り返す、白み掛かった半明の巨。
『幻想猛獣AIMバースト』
幻想手レベルアッパーのネットワークの暴走によって出現した、AIM拡散力場で出來た怪。AIM拡散力場とは、學園都市に蔓延まんえんしている、能力者たちが常に無意識に放っている微弱な力の事。怪はそれを取り込んで、何度でも再生する。更に、幻想手レベルアッパー事件の首謀者、木山春生きやまはるみから、多才能力マルチスキルをけ継いでいるため、その戦闘力は圧倒的。常盤臺中學のエースと呼ばれる琴さえも苦戦していた。再生を止めるには、幻想手レベルアッパーのネットワークを解しなくてはならない。木山からワクチンソフトをけ取った、風紀委員ジャッジメントの初春飾利ういはるかざりが、データの解析と転送のため、闘している。琴も負ける訳にはいかない。だがーーー
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琴は防戦一方だった。
相手は巨大なうえ、回避行を取らない。攻撃は當たる。だが、ダメージを與えても、すぐに再生する。しかも多才能力マルチスキル。攻撃パターンが多い。
(くっ......! 攻撃パターンの多さなら、智也君とタメ張るんじゃないの?)
更に、
「なんで原子力の施設なんかに向かってんのよ!? 怪獣映畫かっつーの!!」
巨大な怪が原子力施設に突っ込んだら、どれだけの被害が出るか、分かったものではない。
(こいつには、やられたらやり返す程度の知しかない。機力とか戦況への対応力とか、そういうの全部ひっくるめると智也君の方がずっと厄介だけど......!)
琴の脳裏を、木山の言葉がよぎる。
『あれは一萬人の子供たちのーーー』
そう。幻想猛獣AIMバーストは言ってしまえば、幻想手レベルアッパー使用者である一萬人の子供たちの思念の塊かたまりなのだ。大技を繰り出そうとするたびにその事が脳裏をよぎり、思わず攻撃を躊躇ためらってしまう。
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學園都市第3位は優しすぎた。
そして、その優しさが裏目に出る。
ビュルッと。怪の手が琴の足を摑む。
「っ!! まずっ!! うあぁぁぁぁっ!!」
投げ出される。原子力施設の外壁に叩きつけられるーーー直前に磁力を作。ギリギリのところで安定した著地をする。だが、その勢いが強すぎた。著地のショックで足が痺しびれるように痛む。
「痛いっ!! くぅぅぅ......!!」
思わず涙目になる琴。しかし、そんな余裕はなかった。橫に大きく跳んで回避する。琴がほんのし前までいた場所に、幻想猛獣AIMバーストが猛スピードで突進してくる。
りながら勢いを殺して著地する琴。その間には既に。
外壁が崩壊していた。
「しまった!!」
幸い、外壁を破壊したところで突進を止めたが、危機的狀況である事に変わりはない。
ゆっくりと。
幻想猛獣AIMバーストが、琴の方を向く。怪が、の姿をとらえる。
(っ!、どうすれば......!)
その時。
「くな」
聲が響いた。直後、
ズウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン......!!と。
幻想猛獣AIMバーストの巨が地に沈む。まるで、上から凄まじい圧力がかけられているかのように。
(これは、下降気流!? 気圧を作して、無理矢理発生させてる!? そんな事が出來るなんて......まさか!!)
琴はハッとして、後ろを振り向いた。
大空の中ーーー無限の青の中を、誰かが飛んでいた。
そこには、風の翼を攜えた年が飛んでいた。
前田智也まえだともやが、飛んでいた。
(あれは......間違いない、夢に出てきたヤツだ。能力複數持ちってのも夢のままだとしたら、坂さんでも流石さすがに火力が足りんな......けど、坂さんが弱いって訳じゃない。『この技』とか即死レベルだしな)
『この技』。
前田は両手を握り、前へ突き出した。前田の両手を、高圧電流が走る。青白いは、拳に集中し、そして
ビギュゥゥゥン!!!!
2本の閃が、轟音と共に空を走る。琴もよく知っている。いや、知っているどころではない。あれこそが彼の代名詞なのだ。
「ウソ......超電磁砲レールガン!?」
超電磁砲レールガンの模倣コピー。普通なら不可能なそれを、絶対支配ドミネーターは可能にした。
音速の3倍で飛ぶ閃を追うように、前田の後ろから高圧電流を纏まとった無數の氷柱つららが、幻想猛獣AIMバースト目掛けてミサイルのように殺到する。
全ての弾が怪を貫く。
「ギュォォォォォォォッ!!!!!!」
怪の絶が轟とどろく。先ほどまで琴が與えていたダメージを、軽く上回る程の威力。だが、幻想手レベルアッパーのネットワークがあるのなら関係ない。再生が始まる。
それよりも速く。
前田は高度を落とす。地面スレスレの超低空飛行。そして、前田の全が、薄く青いを放つ。
風の翼プラス『全フル加速アクセル』。その超人的な機力。
蒼い年が地面を蹴る。その瞬間。
地面が砕くだけた。
跳躍の勢いを全て乗せた回し蹴りを喰らい、再生直前の幻想猛獣AIMバーストが新たな傷を負う。だが、支配者はそこで止まらない。
怪の頭上で弾かれたようにUターン。
右手の蒼いが炎に、炎が氷に、氷が電撃に、そして全てが混ざり合う。開かれた掌てのひらが濃い紫のを宿す。
突如、吹き荒れる嵐のような凄まじい轟音が鳴り響いた。
琴はその音が前田の、そして彼の能力そのものの怒りのびのようだとじた。
前田の黒い瞳には、ある一つのが宿っていた。それは怒りではなく、絶でもなく、悔恨でも悲壯でもなかった。
そこにあったのは、
(絶対に......助ける!!)
ただの、ちっぽけな決意。
瞬間、拳を包むが、発したように量を増した。真夏の太が撒き散らす純白を、拳から溢れる闇の輝きが塗り潰す。
「はああぁぁぁぁっっ!!」
の底から迸ほとばしる雄びと共に、全ての破壊力チカラを解き放つ。
そして、直後。
音 が 消 え た 。
そう錯覚する程の轟音が耳を叩く。
衝撃波、超音波、炎熱、氷結、電撃、電磁波。あらゆる力が回転の勢いと重力加速度に後押しされて絶対的な破壊を生み出す絶技。
『全破壊フルバスター』。
その破壊力が、怪の巨の側へと浸しーーー
幻想猛獣AIMバーストの全が、弾け飛んだ。
『絶対支配ドミネーター』
冠された支配者の二つ名に相応しく、破壊の王は怪をねじ伏せる。學園都市第3位の超能力者レベル5である琴でさえも圧倒される。
(すっご......)
余りにも甚大じんだいなダメージをけたためか、先ほどまでよりも再生に時間がかかっている。
(これなら......智也君の加勢があれば、初春さんも間に合う......!)
だが、
ベチャッ。
琴の背後で、っぽい音がした。
振り向いたの目の前で。
年が。
の海の中で倒れていた。
「え......?、智也......君?」
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