《極寒の地で拠點作り》再出発
「うー、どうしてこうも朝から暑いかなぁ」
私は斜め上から照りつける日に朝からうんざりしていた。
「おはよー!ユズー」
「うわわっ!」
私はその聲の主に向かって振り返る。
「あ、なんだ。ハープかぁ……」
「あはは、相変わらずホントに驚くね」
私の間抜けな聲は朝の教室に響き、既にいる何人かは私達の方を見て不思議そうな顔をしている。
ただ、すぐにその表の原因には気づくことが出來た。
「ハープ!……じゃなくて、琴音!ここ現実世界だよ、ゲームの中じゃないよ!」
「あっ、そうだった!ユズ……葉」
私のプレイヤーネームを言いかけて付け足した琴音は続けて、
「……筆箱は杖じゃないよ?」
私はいつの間にか、筆箱を両手で持って構えていた。丁度、私の筆箱は筒狀で持ちやすかったから違和は無い。
「あっ、ははは……」
そう指摘されて、し恥ずかしくなる。
なるほど、世間で囁かれているVRゲームのちょっとした弊害っていうのはこのことか。
「まあ、お互い気をつけないとね……それにしても、普通に戻ってこれてよかったよ」
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「そうだねぇ……」
今日は月曜日、私と琴音があのゲームを始めた土曜日から二日後の月曜日だ。
神様と再會した後、一旦ログアウトしてそのまま寢ちゃったけど、朝起きても特に何ら変わらない普段の月曜日だったので安心した。
「それじゃ、この話は終わったことだし……今日はどうしよっか?」
窓の外を見て改めて安心していた所で、琴音が今日の予定を聞いていた。
「そうだねぇ、やっぱり神様の言う素材を集めてギルドホームのレベルを上げるのを目標にして、そのついでに私達のレベルを上げてくじで行こうかなって思うんだけど」
「要するに今まで通りってことね」
「うん、闇魔法のレベルも上げたいしね」
昨日、ログアウトする前に11レベル分の各ポイントを振っておいた。ステータスポイントの方は殆どSTRに振ってしまった。
もうなんかヤケになってきたじがする。
闇魔法はLv.3に上がり、Lv.4ももうしだ。
「そうだね。私も柚葉と同じLv.3だから上げないと」
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そういえば琴音の武固有スキル、『暗殺』は影いしか見せてもらってない。素材集めの時もとどめを刺してただけだから通常攻撃しかやってなかったし。因みに影いはLv.1のらしい。
「あ、先生來た」
前を見ると、眼鏡を掛けた私達の擔任が前のドアからってきた。気づけばクラスメイトも揃ってる。もうそんな時間か。
「じゃあ、私は席に戻るね」
そう言って琴音は席に戻っていった。
その日は早くゲームがやりたくて授業があまり頭にってこなかった。そのせいで突然、指名された時、
「えっ?何、敵?」
とか言って、立ち上がってしまった。
おまけに朝の両手筆箱付きだ。その時、琴音は呆れながら笑っていた。
琴音にも何か起きないかな、とは思ってたけど特に何も起きなかった……ぐぬぬ。
◇ギルドホーム◇
「ホントになんでハープには何も無かったのか」
「意識の違いだよ」
ふふん、と鼻を鳴らすハープ。
「お主らはさっきから何を話しているんだ」
「あー、聞いてよ神様。ユズがね?」
「あーあー!言わなくていいよ!」
慌てて阻止する。私の恥ずかしい行をわざわざ神様に報告しなくていいのに……
「何をそんなに。ますます気になるじゃないか」
「気にならなくていいです!」
神様にそう言っておく。
そういえば、神様ってこんな格だっけ?初めて會った時と比べて、なんか違和じるんだよね。
「えー?面白いのにー」
「面白くないって……で、神様、その裏ツリーのLv.3には何を集めてきたら上がるの?」
私は話題を逸らすと同時に本題にる。
昨日は今後の目標を決めたり、ポイント振り分けするだけで的なことは何も聞いてなかった。
「うむ、し待て」
神様の石像が沈黙する。
すると、その石像の上にウィンドウが浮かんだ。
そのウィンドウを確認してみると必要な素材は四種類だということで、
Lv.3ギルドホーム(アフィポス城)に必要な素材
〔デザートタイガーのヒゲ×5〕
〔オールドトレントの枯れ葉×20〕
〔ポイズンリザードの鱗×10〕
〔ハードビートルのツノ×30〕
こんなじだった。
というか、ツリーの種類に名前ってあるんだ。
名前と言えば、ギルドホーム自の名前は決めてなかったのを思い出す。今度ハープと一緒に考えよう。
「喜べ。この四つは全てここから北に進んだ所で採集出來る」
「えっ」
ハープが驚く。
でもその表は嬉しそうというより、嫌そうな顔だった。
「心配しなくとも、お主らの力があれば集めきれる。因みにHPやMPもここへ戻れば、全回復出來るから途切れることも無いぞ」
「えっ?」
今度は私が驚く。HPとMPが全回復出來るって?
だってヘルプ欄には、
「ギルドホームのレベルを上げれば、『HPやMPが全回復出來る様になる』など、頼もしい機能がつくようになります。気よくツリー解放に努めて下さい!」
なんて書いてあるくらいだから、Lv.2のギルドホームにしてはかなり凄いことだと思うんだけど……流石は神様って言った所か、
當のハープの言いたいことは勿論、これじゃない様で、
「そうじゃなくて……神様、他の場所は?」
「む……他の場所となると私には見當もつかん」
「そこしかないってこと?……もっと南が良かったぁ」
そこでハープはまた、明らかに防寒用じゃないコートで頑張ってを包まんとする。當の神様はその理由が分からない様で、
「何を言っている。近くて集めやすい方がいいじゃないか」
とか言ってる。
そういえば神様って、理を超越した存在とか言ってたからそういう気溫とかには疎いのかも。
とりあえずハープにやる気を出させる。
「ハープ、もしかしたら風だけでも凌げる所にいるかも」
「奴らは堂々とこの荒れた大地の上に蔓延っているぞ」
「うぇ……」
神様はちょっと黙っていてほしい。
私はハープをい立たせようと、
「ほら、ハープ!確かに私がこんな所にギルドホーム設置しようとは言ったけど、ハープも『やるからにはとことんやるよ!』って言ってたじゃん!」
「うっ……」
「どちらにしろここが拠點なんだしこれから慣れていかないとやっていけないよ?」
まあ実際、私も慣れた訳じゃないから滅茶苦茶寒い。でも私達は寒いと分かってて自分達で決めた拠點なんだから、何とか克服するしか道は無い。
「それなら私がどうにかしてやろうか?」
「本當ですか!?」
と、いきなり神様が提案してきたけど私にはどうも嫌な予しかしない。
「私も気溫というには疎くてな。よく分からないのだが……例えば、『中が燃える呪い』とかどうだ?」
「……はい?」
うーん、なんか的中した気がする。
ハープも首傾げてるし……というか疎いってレベルじゃない様な?
「何か変なこと言ったか?……あ、ユズ、お主には殘念だが効かんぞ。呪い故にスキルで無効化されるからな」
効かなくていいです。
と、今度はハープに向かって、
「仕方無い。お主にしか効かんが、掛けてやろう……あ、呪いとはいえ効果はたったの一週間程だ。だから全く問題無――――「ユズ、行こっか!」
そこまで神様が言いかけた所で、焦りながら私の腕を摑んで出口へと転げる様に向かった。
その途中、私達の後ろの方から、
『彼の者に……のから…………地獄の炎……燃え盡きる…………呪縛を……』
所々だけど聞こえてくる、恐らく例の呪いの詠唱が聞こえてきた。いやぁ、騒騒。
それがハープの耳にも屆いたらしく、スピードが上がる。やばいここでAGIの差が、あっ、引き摺られ――
そういうギリギリな所でやっと長い廊下を抜け、ギルドホームを出た。
「はぁ、はぁ……こんなに、命の危険をじるのは……初めて、だよ……」
「私も……」
ハープは息切れし、私は別の原因で死にそうになった。まあ、形はどうであれ、ハープを外に出すことは出來た。
「だからさ、すぐには戻れないからレベル上げついでに素材、集めて來ようよ!」
「そうだね……」
ハープも素直に従ってくれた。
ふと思ったけど、燃えてるハープをったら火傷したり燃え移ったりするのかな。だとしたら、それで敵にぶつかっていったらかなり強いんじゃ?と、そこまで考えた所で流石にハープが可哀そうにじられてきたので、そこで止めておく……晝間の仕返しはまた今度考えよう。
「じゃあ、まずはどれにしよっか」
神様は素材の種類を教えてくれると同時に、だいたいの生息地を私達の地図に記しておいてくれた様で、地図の一部が楕円形に囲まれている。
これらで一番近いのは……
「近いのは、オールドトレントだけどハープはそれでいい?」
「うん、もう、何からでもいいよ」
やっとハープも落ち著きを取り戻してきたみたい。それで寒くなってきたのか、コートを前に持ってこようとしているけど、さっきのを思い出して途中で止めた。
神様の覚の疎さが良い薬になりそう、と思った所で、
「よし、じゃあ素材集めの旅にしゅっぱーつ!」
「おー!」
ハープが寒さを諦めて突然ノリが良くなったのをじつつ、私達の辺境生活は本格的に幕を開けた。
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