《極寒の地で拠點作り》遭遇
私達は日曜日に行われるイベントに向けて、レベル上げ兼対策を行っていた。
「凄いじゃん、ハープ! この調子なら本當に上位とか……」
「でも、普通の敵モンスターで出來ても対プレイヤーでこんなこと出來るとも限らないし……」
ハープは自信なさげである。
今やってるのは、背後からかに忍び寄って一撃で相手を仕留める練習で、その前は持ち前の素早さで相手の懐に一瞬で潛り込み仕留める練習をしていた。
それで、出來る限り人型の敵を相手にして行っている。その方が弱點が何処なのか學ぶことが出來るからだ。
「なら、実際に対人戦で……」
「いやいや、ユズも分かってるでしょ? 運営が定めてるルールにある訳じゃないけど、暗黙の了解でプレイヤー間のPKが法度だってことぐらい……まさかまた、どうにかなるとか思ってたりしないよね?」
怪訝な顔をして聞いてくるハープに私はちゃんと、
「大丈夫大丈夫!」
冗談だよ! と答えた……筈だったのだけど、ついそう言ってしまった。
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「じゃなくて、冗談だよ冗談! 本當に冗談だって!」
「ホントに?」
「本當だって!」
じとーっ、とした目でこちらを見てくるハープ。
どうしてもこう、口をらせてしまうことがあるのは何とかしなければ……とりあえず反省反省っと。
そして私が、うんうん、と腕を組んで頷いていると、
「自己完結しない! ほら、そこに座って!」
「えっ? いや、ここ、道の真っ只中……」
「いいから!」
やばい、ハープの説教が始まる。
たまに私が弾発言やその様な行をとった時に行われる、ゲリライベントだ。因みに避けては通れない。
面倒見が良いが故の行なんだろうけど、私にとっては耐え難いで何とかして避けようとするんだけど、走っては追いつかれ、を隠しては見つけられ、果てには『私を探さないで』的なニュアンスの置き手紙を殘したが結果は虛しく、終わる頃には辺りは真っ暗になっていたこともあった。
という訳で、私がこのイベントに遭遇してしまった場合、避けることは出來ないのである。
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だけどここは現実世界では無く、ゲームの中の世界、現実では出來ないことだって出來る。
例えば、こう……
「だからね? ユズは……」
「『暗転』!」
私はそれを呟いて唱えた。
よし、こうすればAGIが私の何十倍もあるハープでも追ってこれないけど、私は闇の中でも周りは見えるので問題無い。
私は早速、靜かに立ち上がって振り替えるとそろりそろりとゆっくり進む。幸い、目を瞑っていてハープは暗転されたことに気づいていなかったので安心した。
抜き足で私は足元を見て慎重に歩く。暗転を抜けたら全速力だ。【AGI:20】のダッシュなんてたかが知れてるけど。
その後、私は差し足で進み、もうしの所で初の難関イベント回避が出來るその場所へ忍び足で……進まない、否、進めない。
どうしてだろう、と、どう考えてもこの私の右肩に乗っている手の主に原因があるとの結論しか出ない。振り向いて、その手の主に聲をかけようにもそれが私の終わりを示すのは明らかだ。でも私の足はかないままなのでそうするしかない。
私が諦めて振り向くと、そこには天使の様な表のがにっこりとした笑顔で私を見ていた。
闇の中、見ていたというのは語弊があるかもしれないけど確かにその目は私を見つめている。
私にとっては悪魔な彼に対して、引きつった笑顔で私はこう切り出した。
「や、やあ、ハープさん……こんにちは」
「ええ、こんにちは……『柚葉ちゃん』?」
あっ、これ駄目やつだ。
ハープは現実では割と本気で怒ると、ちゃん付けになる。それはこの世界でも同じの様で、柚葉と言っている辺り相當ヤバい。
「あ、あのぉ、離し「何?」……ひッ! い、いや、どうして気づいたのかなぁ、って」
「そんなの簡単よ、気配をじ取ればいいの……特に柚葉ちゃん、貴の気配は察知しやすいの」
「それって既に境地に達してるんじゃ……」
「あはは、そうかな? まあ、とりあえずこちらへ來なさい、ね?」
「ひぁっ!」
先程の「何?」と言い、今の「ね?」と言い、普段のハープからは想像出來ない程低い聲で言われるものだから、どうしても小さな悲鳴を上げてしまう。
そんなハープに逆らうことも出來ずに私は元の場所へ引きずられていった。その際、ハープが片方のダガーを地面から抜き取っていく姿が見えた。
多分、『影い』でも使ったんだろう。あれって影じゃなくて闇でも使えるんだぁ、何かに使えるかなどと考えつつ、元の場所へと戻されていく私であった。
「ふう、やっと終わったぁ」
「ん? 柚葉ちゃんはまだ続けてしいの?」
「ひッ……い、いや、何でもないです反省してます、はい」
「なら、よろしい……じゃあ、ユズ、レベル上げ再開しよっか!」
「あ、う、うん、そうだね、それがいい」
変に話を戻してまた地雷を踏んだらたまったものじゃない。私もハープに賛だった。
「じゃあ、また人型の敵を狙っていくよ?」
「うん、いいよ」
レベル上げとは言っても、対策中心のつもりだ。
私と言えば、ハープが戦ってるのを傍で見てるだけだ。何故かって? 私が魔法以外で出來るのはこのメイスと言う種類の杖で毆るのみ、ハープみたいに高いAGIと元からの運神経を活かして敵を殲滅するなんて蕓當は、ただSTRが高いだけの私には技を磨こうにも磨けないので出來なかった。
まあ、私は一応、魔法使いだし近接戦闘する必要は本來は無いんだけどね。
そんな訳で々やってると、木で休んでる私の所に向かって、し離れた所に居るハープがこちらに走ってきた。
「おーい、ユズ!」
「どうしたの? いきなり走ってきちゃって……」
「あのね、これ見て!」
嬉々として話し掛けてくるハープが、ウィンドウを開いて見せてきた。
「えっ? これ、新しいスキルじゃ……」
「そうだよ!」
ハープが見せてきたウィンドウのログには、
【ハープは『消音』を手にれた!】
【解放條件:一定の回數以上、相手を視認した後、気付かれずに攻撃を加える】
「えー、ハープばっかりズルいぃ……」
「あはは、ユズもすぐゲットできるって!」
そうめてくれるんだけど、この対応も二度目なのであまり信じられない。
「まあ、それはいいとして、効果はどうなの?」
「ああ、えっと、『行する際の音を消す』文字通りね」
「あれ? でもさっき走ってくる音がした様な?」
「あ、そうそう、このスキル常時発じゃなくて、任意発みたいなの。まあそれでも走る作音は消せなかったけどね?」
へぇ、ということはやっぱりこっそり進む時とかだけになるのか……でもハープならその素早さでどうにかなるから、そもそも走る時の音なんて気にされないか。
という訳でハープのスキルがユニークスキル含めて四つになった訳だ、しかも二日連続。
これはいけない、流れが出來てしまえばどうしようもない。なんとかしなければ……
まあ、それはいいとして、
「ねぇ、ユズ、気づいてる?」
「やっぱり、ハープも?」
「そりゃあ、あんなバレバレなのはね」
「だよねぇ……どうしよっか」
私達はついさっき、尾行されていることに気づいた。ストーカーかな? と疑ったけど、時折見せる姿からはそんな騒なでは無いことに気づいた。
「私が行ってこよっか?」
「まあ、何かあってもハープなら大丈夫だろうし、実戦経験積めるのは良いことだもんね」
「そうならない様にしてくるよ、相手も相手だしね」
そう言って私は再び暗転を唱え、木々を闇に包む
すると、ハープは右の茂みに飛び込む。
「解除、っと」
闇ドームは収して消え、私だけが現れる。
尾行者はさぞ警戒することだろう、いつから尾行してるか分からないけど、イベント參加者なら偵察に來てもおかしくはない。でもなんで私達の所に來たのか、それが不思議でならない。
まあそれも捕まえてから吐かせればいいので、今はハープの仕事が上手く行くよう祈るだけで、私は素知らぬフリを続ける。
すると、後方の木の裏から、
「ひゃっ!?」
何とも可らしい聲が聞こえたが、これはハープの聲ではない別の誰かのだ。私もその木の方へ向かうと、
「ユズ、ほら、問題無かったよ、この通り」
「む、うぅ……!」
そこには私達よりい、小學生か中學生くらいのがハープによって首筋にダガーを當てられて怯えている。
「ほらほら、どうしてこんなことしたのかな?」
「むぅぅー!」
黒いコートと限りなく黒に近い紺のローブの二人に囲まれてるの図、周りから見たら私達の方が怪しくて悪者に見えるだろう。
「ハープ、とりあえず離してあげたら? そんな口を塞いで苛めないでさぁ」
「だって、一応この子が何かやらかそうとしてたのかもしれないよ? だったら、未遂でもそんな甘いこと言ってないでちゃんと締めとかないと駄目だよ」
確かに暗殺とかされて、デスペナルティ食らうのは嫌だけど生憎私達はたまに出る素材程度しか持ってなくて、経験値が惜しいくらいのみである。
因みに混沌の鍵は、デスペナ回避の特殊効果持ちなので全く問題無い。
そしてハープは相変わらずの首にダガーをあてがいながら左手で口を塞ぐ。
「そんな騒な……まあ、とりあえず事だけでも聞いとこうよ、ね?」
「むぅ……ユズがそういうなら……ほら!」
「ぷはぁっ!」
「……ねぇ、どうして私達に著いてきたの?」
これで迷子とか言われたら大変だ。
私達は本當に悪者になってしまう。ここがゲームの中で良かった、良くないけど。
「あ、あの、す、すみませんでしたぁっ!」
そう言って深々とお辭儀をするは慌てて謝罪している。
「どうしてこんなことしてたの?」
「……あ、あの、私、この通り、自分で言うのも何ですけど、いじゃないですか。年相応って言えばそうなんですけど……この格のせいでうざったらしく思われたみたいで」
何だか話が見えてきた様な気がするけど、ここはこの子に任せることにした。
「それで、つい先程ギルドホームを追い出されちゃいまして……周りにパーティを組んでくれたりギルドにれてくれる様な方も見つからず、途方に暮れていた所、お姉さん方を見つけたと言う所です……本當にごめんなさい!」
「ああ、いいのいいの! 事も分かったことだし、さっきはいきなりごめんね?」
ハープはその半泣きなに謝る。
「い、いえ、すみませんでした……で、では私はこの辺で……それではっ」
「あっ、ちょっと!」
私が呼び止めようとしたけどそのまま走って逃げてしまった。ハープが追いかけて捕まえるのも良かったけど、これ以上事を荒らげても仕方無いので放っておいた。あの子は心配だけど、きっとまた近いに會うことだろう。
それにしてもあの子の親は何してるんだろ。放任主義なのかは知らないけど、一緒にプレイしてるなら付き添ってあげればいいのに……
何にせよ、これ以上の詮索は出來なかった。
「うん、まあ々あるのよね、世の中には」
「そうだねぇ……名前聞き忘れちゃったし。とりあえず今日はもう戻らない? なんか疲れちゃった」
「ユズ、何かやったっけ?……まあいいや、賛」
主に私はハープの説教をけた。
この世界の痛覚は足の痺れまで再現する様だった。
私達は転移の石で帰還後、神様とし話した後はすぐにログアウトした。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無雙する〜【書籍化】
【Kラノベ ブックス様より1〜2巻発売中】 【コミカライズ、マガポケ様にて好評連載中】 剣、魔法、治癒、支援——それぞれの最強格の四天王に育てられた少年は「無能」と蔑まれていた。 そんなある日、四天王達の教育という名のパワハラに我慢できなくなった彼は『ブリス』と名を変え、ヤツ等と絶縁して冒険者になることにした。 しかしブリスは知らなかった。最弱だと思っていた自分が、常識基準では十分最強だったことに。あらゆる力が最強で萬能だったことを。 彼は徐々に周囲から実力を認められていき、瞬く間に成り上がっていく。 「え? 今のってただのゴブリンじゃなかったんですか?」「ゴブリンキングですわ!」 一方、四天王達は「あの子が家出したってバレたら、魔王様に怒られてしまう!」と超絶焦っていた。
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