《極寒の地で拠點作り》イベント結果
「うわぁぁぁぁっ!」
「またのご來店をお待ちしておりまーす」
び聲をあげながら吸い込まれていく最後の一人を、上から営業スマイルで見送る。
殘り三十分を過ぎた今、私というお得商品を求めて攻撃が激化し始めたけど、こちらとしても人數が多ければ多いほどポイント回収が捗るから嬉しい。でも流石に二度目とかそれ以上の人が多くなってきて一筋縄で行かなくなってきてる。
まあ、ワンパターンなのが駄目なだけで、最近出番の無かった心の闇を組み合わせたら、問題無くなった。
「これで、一気にドボン! っと」
明らかに混以上の効果がある心の闇で、虛空を見つめてぶ人や座り込んで呟く人を生み出しては奈落のに落とす、そんなじ。
ただ、たまに何度も倒されて學習している人がいる様で、
「これで……『ポイズンシャワー』!」
と、休憩していた私へ突然、し離れた所から、如何にも毒ですよ、ってのが頭上から降ってきた。闇魔法以外の六種類はデフォルトでLv.1のしか知らないからよく分からないけど、これは毒魔法なんだろう。
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なるほど、近寄ると危ないから遠くからじわじわと弱らせていくって魂膽か……猛獣じゃないんだぞ、私は。
まあ、それでも、
「うぇ……なんか、ベトベトしてるぅ……」
「なっ!?」
うんうん、驚いてる驚いてる。
今頃あちら側に表示された文は恐らく、
【ユズは毒に侵された!】
【ユズは毒狀態を解除した!】
と重なる様に表示されていることだろう。
これで何とかなると思っていたのか、
「おい! どうなってんだ!」
「知らないわよ! あんたが大丈夫だって言ったんでしょ!」
「おいおい、落ち著けって!」
焦って建のに引っ込んで、一緒に居るであろう仲間と丸聞こえな相談、否、喧嘩を始めた。
やっぱりこんな時、狀態異常即時解除は役に立つ。けれど、もう一度あのの悪いを浴びるのは嫌なので、一番こちら側にいた彼の後ろにこっそり近づいて、
「すみませんが、當店ではドロドロとしたのご來店はお斷りしておりますので……それでは」
「えっ……うわぁぁぁぁ!」
一瞬、驚き振り向いた彼は、毒の雨を降らせたの人ともう一人を巻き込んでスリル満點奈落の旅に出発した。
そんなじで、當店名『急降下型アトラクション・奈落の』を他プレイヤーの皆様に悲鳴をあげて楽しんで頂いていたら、いつの間にかイベント終了の時間が來ていた。
私達プレイヤーは元の広場に戻され、結果発表が行われた。
結局、五位より上の順位変は無く、無事というか、まあ一度も倒されなかったのだから無事なんだろう。
「それでは、一位、二位、三位の方はこちら……壇上へお上がり下さい!」
そう、司會役の人が言う。
そういえば、このイベントが運営主催なら、この人は運営の一人ということになるのだろうか。とりあえず今は、今までの文句は置いといて素直に壇上に登ることにする。
実際に登ってみると、観客や參加プレイヤー含め多くの人が広場を覆い盡くしていた。これは滅茶苦茶張する。あー、二位ってこんなに重みが……
「……ズさん! あのー、ユズさん?」
「あ、ひゃいっ!」
順位の重みをじていたら自分が呼ばれてるのにも気づかなかった様で、更に返事も噛んでしまった。これはかなり恥ずかしい。
隣にいるブラストさんは、親指を立ててにっこりしているけど勵ましてくれてるんだろうか。
「何か、一言お願いします!」
どうやら一言を言えばいいらしく、あまりこの世界に似つかわしくないマイクを私に向けている。
私は張と恥ずかしさで頭が真っ白になっていた上、いきなり言われた様なものなので咄嗟に、
「あ……え、えっと、皆様、當店へのまたのお越しをお待ちしておりますっ、はい!」
と、答えてしまった。
やばい、これ絶対、変な子だと思われた。
ざわざわしてるし、もう駄目……
「はははっ、ユズちゃんは面白いな! ……じゃあ次、俺でいいかな?」
あまりの恥ずかしさに俯いているとブラストさんがフォローしてくれた。
「あ、はい……」
私はブラストさんにマイクを渡した後も前を向けず、結局、表彰式終了までそんな調子だった。
「本當にありがとうございました!」
「いいっていいって。別にそんな謝されることはしてないさ」
私は記念品と賞品をもらった後、真っ先にブラストに謝する。
正直、ブラストさんのことはあまり良く思ってなかったけど、さっきのことで実は好青年なんじゃないかって思えてきた。
「おーい! ユズー!」
「あ、ハープ!」
ブラストさんの評価が私の中で急上昇している所で、私を見つけたハープが聲をかけてきた。
「私も居るわよー」
「シェーカ、お疲れさん」
「ええ、貴方もね」
「ユズ、あのコメント……」
「い、言わないで……」
今、そのツッコミをされると主に私がへこむ。
あー、なんか本當に変な名前付けられてもおかしく無いかも……せめて可い名前でお願いしたい。
「……それにしても、貴達がこんな上位に行くとはねぇ」
「はい、ありがとうございます」
「そうだよな。ユズちゃんは二位でハープちゃんは四位……って、シェーカ、お前二人に負けたのか!」
「何? 私は元々、戦闘は得意じゃないし……何より、新人が活躍してくれるのは良いことじゃない」
「え? でもシェーカさんお強いですし、あの分とかで私達なんかより効率的に出來るんじゃないですか?」
「ははっ、まあそう思うよな」
「え?」
「この人の言う通りよ。私の分は、文字通りを分けるからステータスも分割されるの」
シェーカさんの話では、分を含めたシェーカさんのユニークスキルは、魔法の延長であるので実はシェーカさんの主武は杖らしい。だから普段使ってる短剣は副武で、そんなに攻撃力が強くないみたい。分自も遠くへは行かせられないみたいだし。
「……と、いう訳なのよ」
「へぇ、それでも八位まで上り詰められるなんて凄いです!」
「四位の貴に比べればそうでも無いわよ」
「あっ、いや、そんなつもりじゃ……」
「いいのよ、さっきも言ったでしょ? 新人が活躍するのは良いことだって」
そう言ってシェーカさんは微笑んでくれた。
「ウチのギルドは運営さんの意向通り、『協力』してるからな。生産職が居て、素材採集役が居て、戦闘役の中にもサポート役と前衛が居る。因みにシェーカは主にサポートな?」
分擔出來るっていいぞ、とブラストさんは言う。
そういえば私達がこのゲームを始めて一週間だけど、私達のギルドに他人をれるなんて考えたことも無かった。
まあ、生産職もよく分かってないし、せいぜい矢や銃弾を作る程度のことしか知らない。今度、々考えてみようかな。
「そういえば、ブラストさんのユニークスキルって、AGI四倍なんですよね」
ハープがブラストさんに聞く。
あれ、なんか目がキラキラしてる様な……?
「そうだが、それがどうした?」
「あの、ブラストさんのAGI値って……」
「ふふっ、ハープちゃん、詮索は……ね?」
と、シェーカさんが手でバツを作っている。
確かにステータスそのものの様に分かりやすく、數値に出るはマズかったかもしれない。
「いや、別にいいぞ?」
「えっ? いいんですか?」
ブラストさんはと言うとそんなこと気にしてない様なじでいた。単純にそういう格だからか、自信があるからか。どちらにしろ、かなり高いに違い無い。ハープで468なのだから下手したら……
「ああ、でもあまり細かいの言っちゃうとアレだからちょっと伏せて言うが……1400ちょいだな」
「せ、せんよん……?」
それって結構細かい所、言っちゃってる様な気がするけど……野暮かな?
それはいいとして、思ってたより高かった。ハープなんて驚いて止まって……いや、「おぉ!」とか言って目をキラキラさせてる。
「ハープちゃんもこれくらい行けるよ、もうしで500なんだろ?」
「はい!」
「上を目指す者同士、頑張ろうな」
「いえ、そんな……こちらこそ!」
ハープはブラストさんにそう言われて尊敬の眼差しを向けている。ハープもブラストさん苦手なんじゃなかったっけ? まあ私も救ってもらったばかりだから、何も言わないけどさ。
「……パートナーがこういう者同士、私達も頑張っていきましょうね」
「そうですね……」
そうして目の前が熱くなっている中、ひっそりとこうした縁が生まれるのであった。
その後、広場に居る人も疎らになってきた頃に私達も解散しギルドホームへと戻った。
記念品である、銀のトロフィーを神様の橫に置いたら遠回しに喜ばれた。喜んでくれて何よりです。
そんなじで私とハープの初イベントは幕を閉じた。
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