《極寒の地で拠點作り》問題解決?

「……待て」

ラアトによって開かれた地下室への扉へ向かう私達に向かってタクトは立ち止まるように言ってきた。

「何? 早く、貴方に囚われた人達を助けたいんだけど」

「……君達は、彼らを助けた後どうするんだ?」

「どうするって……そりゃ、ギルドを返すでしょ? ほら、タクト君も謝れば…………タクト君?」

タクトの、ギルドリーダーの処遇についての問いにそう返していたら、タクトが震えて俯いてるのに気づいた。

「…………めだ」

「え?」

「それは、駄目だ」

「駄目って、どういうこと?」

「ユズ、ラアトさんの話で……」

「あっ」

そこで私は思い出す。

ラアトの話では、タクトはこのギルドで雑用をしてたんだっけ。それも、こんなことを思い起こさせて実行させる程度には酷い扱いだったんだろう。だからタクトはこうやって止めようとしてくるんだ。でもこっちもこの問題の終結の為にいているので止める訳にはいかない。

「ほら、タクト。何時までもそんなとこで突っ立ってんじゃねぇ。さっさと地下牢の案でも……」

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「うるさい! 裏切り者の分際で僕に話しかけるな!……あー、これで奴らを行かせたらギルドリーダーが……そしたらまた……なら、もういっそのこと……」

「お、おい……タクト?」

ラアトに向かって喚き散らした後、小聲で々うわごとの様には何か言っているのが聞き取れた。

このタクトという年の表はコロコロ変わるものだから面白いんだけど、そんな悠長なことを言っていられる狀況でも無い様だった。

その後、タクトはゆらっ、としながら神様の石像の所へ向かった。そして、こう呟いた。

「……最初からこうしておけば良かった」

「は?」

次の瞬間、ゴンッ、と何かがぶつかり合う様な音がした。

「タクト、お前……ッ!」

タクトが石像を、自らのギルドの要である石像を杖でフルスイングして毆る。これは……壊そうとしているのかな?

「ああ、そうだ! もう一度、あのリーダーの手に渡って苦しい思いをするくらいなら、ギルドごと破壊してやる!」

タクトがやろうとしているのは『自壊行為』だ。

石像は破壊されるとその破壊した人間やその所屬ギルドのとなる。

だけど、自分の手で自分達のギルドホームの石像を壊した時は『自壊行為』となり、石像破壊後、ギルドホームは消え去りギルド自も消滅するという、使い所と言えば被占領直前に乗っ取られるくらいなら、という風に使うことくらいだと思える程度の奧の奧のどうしようもなくなった時用の技だ。

とりあえず、私達はタクトを止めなければならない。

「ハープ、止めよう!」

「うん!」

「……いや、お前ら、もういい」

「えっ?」

止めようとしたら、それを逆にラアトに止められた。こうしてる間にもタクトはフルスイングを繰り返している。石像破壊のゲージは既に殘り四分の一を切った。

「いやいや、心配しなくてもいいさ。別に死ぬ訳でも消える訳でも無い。ただ、元の場所へ戻るだけ……そこで再び、俺に合うを探すまでだ」

「……わかったよ、ハープもそれでいいよね?」

「まあ、ラアトさんがそういうなら……」

「おう、ありがとな」

こんな狀況で言うのもあれなんだけどさ。

年に壊されかけてる石像に向かって喋りかけてる二人の図ってなかなかにシュールだと思う。

そんなことを考えていると、

【自壊行為が確認されました】

などとアナウンスが流れた。

見れば、既に破壊ゲージは空になっており、石像からはピシッ、ピシッ、という亀裂が走る音が斷続的に響くばかりである。

「……ああ、終わっちまったか」

ラアトはそう、し名殘惜しそうに呟いた。

何気に著は持ってたのかもしれない。その対象がこのギルドホームなのか、ギルドリーダーなのか、タクトなのかは知らないけど、私達には関係の無いことだ。

因みに、図上には、

【ギルド及びギルドホーム消滅まで、あと01:37】

という風にカウントダウンのウィンドウが浮かんでおり、この間にギルドホームの収納のアイテムやら何やらを回収しろ、ということなんだろう。

そうして、殘り時間一分を切った頃、

「……それじゃあな。あ、アフィポスの爺さんによろしく言っといてくれ」

たったそれだけ言い殘して、ラアトの宿った石像は完全に崩壊した。最後はあんな形だったけど、何かタクトに言う言葉は無かったのだろうか。

そんな疑問を浮かべていると、いつの間にかカウントダウンはゼロになっていた様で、最早お約束となった眩いに包まれて私は目を瞑った。

頭がぼうっとする。

私は誰だっけ。ここは何処だろう。

何でこんな所で寢転がってるんだろう。

「……ズ、ユズ!」

何か頭の上から聲が聞こえる。

ああ、私、ユズだったね。

そしてこれは、ハープの聲だ。おはよう。

「んー? 何、私寢てた?」

「あ、起きた! シェーカさん、起きましたよ!」

「え、そんなに寢てた?」

「まあ、私が目を覚まして、シェーカさん達、応援が駆け付けてきた後もずっと眠り続けてたから……」

私は起き上がって辺りを見回す。

ギルドリーダーらしき人が縄で手などを縛られ、騒ノ會の団員に連れられているのが見て取れたので作戦は功したものと思われる。

それとは別に、何か違和じる。その『何か』が何なのかはよく思い出せないから何とも言えないけど違和がある。

そんな所に、シェーカさんが近づいてきた。

「もう、貴方達には偵察をお願いした筈なのに……何時までも帰ってこないから心配したのよ?」

「すみません……」

「ふふ、良いのよ。結果として、相手ギルドを抑えることが出來たんだから」

「ええ、まさか……相手リーダーさんが・・・・・・・・・自壊行為を起こす・・・・・・・・なんて思いもしなかったですよ」

「……え?」

私はその瞬間、先程からじていた違和の正に気づいた。

「ん? どうしたの、ユズ」

「え、いや、タクト君がいないなぁ……って」

そう言った私にハープは首を傾げる。

「タクト……君? そんな子いたっけ?」

「え?」

私はハープにタクトについて説明した。

そのついでに今回の偵察の推移についても確認した所、何故かすり変わっている所があることに気づいた。

一つ目はギルドホームでの戦闘、私の記憶ではそもそも部では戦闘すら行われなかったので起きたという時點で違っている。

二つ目は最後の辺り、タクトが喚き散らした後ラアトの宿る石像をタクト自が破壊し、自壊行為に至ったこと。ハープの中では、相手リーダーさんがラアトごと奪われるのを恐れて自壊行為に至ったとなっている様だ。

他にも細かく言えば々あるけど、どれもタクトに関することだけが抜け落ちている模様で、當事者である、囚われていた団員さんや相手ギルドの人にも聞いてみたけどそんな奴は知らない、の一點張りでやっぱり変わらずだった。勿論、シェーカさんにも確認したけど、同じ答えが返ってきた。

「ユズ、大丈夫? 今のユズ、ちょっとおかしいよ?」

「あぁ、うん。大丈夫……ちょっと疲れてるだけだから」

私だけが覚えてるあの年。

でも、確信には至らないけど、ラアトはと真理の神だ。だから、私達全員の真理を歪曲して、元々逃げるつもりだったであろうタクトの後押しをしてあげた。そう考えると、興味が無くなっただとか下らないとか言ってた割に、こう助力してやってる所がし微笑ましく思えてきて、やっぱりちゃんとタクトのこと考えてるんだな、って思う。

こう、事実を曲げたことに対して、タクトは気づいていないだろうけど、それを知ったら

「余計なお世話だ」

なんて言いそうなじだけど。

まあ、どうであれ、こう言った形で無事問題は解決したっぽくなったので良かった。タクトは何処にいるのかは知らないけど、ラアトが授けたであろうユニークシリーズとの後継魔法があればどうにでもなるだろうし、もう會えないとも限らない。

とりあえず、これでこのギルド間の問題の貴重な験は終わった。

という訳で私は、半泣きで向こうから走ってくるリンちゃんを見て、勵ましてあげよう……そう思った。

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