《極寒の地で拠點作り》特殊イベント

「ケイ、お願い!」

「わかりましたよ、っと!」

私達は、最初にケイ君と會った場所で今までやってみたかったことをレベル上げついでに、やることにした。という訳で何処にでもいるファットキャタピラーを相手にする。

今、ケイ君はハープに頼まれて、あの水魔法Lv.1と毒魔法Lv.1の組み合わせ技を繰り出す。

「弾けろ、『毒の雨』!」

【ファットキャタピラーAは毒に侵された!】

【ファットキャタピラーBは毒に侵された!】

その、毒の雨とやらは前イベントで浴びたポイズンシャワーにそっくりだけど、ポイズンシャワーの方が量は多いし、範囲も広い。何より手間がかからない。

まあ、このコンボ技自、ロマンに限りなく近いと思うのでそういう所は置いておく。

それで、ファットキャタピラーの前にいたハープも毒魔法の影響をけない筈が無く、

【ハープは毒に侵された!】

「うぇぇ……なんかちょっと気持ち悪い……」

こんな調子で、吐き気を催してる様だ。

へぇ、この世界では毒をけると吐き気がする様になるのね。でも、私は即時解除されてしまうので永遠にそれを験することは無いと思う。

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それで、次の流れは何だっけ?

「あ、リンちゃん! ハープの毒を解除してあげて!」

「そ、そうでした! 『ポイズンヒール』!」

【ハープの毒狀態を解除した!】

「うぇ…………あ、楽になった! ありがとね、リンちゃん」

「は、はい!」

因みにこの『ポイズンヒール』、ポイズンと書いてあるけど、HP減ってく系なら何でも治せるらしい。まあ、普段は毒しか減ってく系は見ないから文字通りになることが多いんだけどね。

そうして、毒が抜けたハープはさっさと毒で弱ったファットキャタピラーを倒してしまう。

「よっ、ほいっ」

「キィッ!」「キッ!」

【ハープはファットキャタピラーAとファットキャタピラーBを倒した!】

「やったね!」

「やりましたね!」

「連攜、功ですかね?」

あ、そうそう、やりたかったことっていうのは連攜プレイね? 人數も増えたからやってみるに越したことは無いし、そもそも連攜プレイに憧れを持っていたっていうのが大きい。

今やったのは、ハープが相手を足止めしてる間にケイ君がハープ諸共相手を毒狀態にして、そこにリンちゃんがハープに毒解除の魔法をかけてあげて、ハープが毒で弱った相手を攻撃……という流れの連攜技だった。ハープだけで倒せる敵にそこまでするのは非効率的だ、と言われたらそこまでだけど、私達は何よりも楽しめればそれでいいからこれでいい。

…………私? 私は足遅いから足止め出來ないし、魔法といえば主に神攻撃したりを守る系しかないから、役回りは支援を行うケイ君とリンちゃんの護衛のみ。ハープの所をすり抜けて、近寄ってくる敵をばったばったと毆り倒す。

私の武は魔法だけじゃない、魔法を行使する杖自もまた武なのだ。

そんなじで、この連攜技其の一を繰り返しているとハープが嬉々としてこちらに走ってくるのが見えた。

……でも、なんかデジャヴをじるんだよね。

「皆、見て見て!」

「どうしたの、ハープ……あ、まさか?」

「うん、多分そのまさか」

ハープは、『毒耐(小)』なるスキルを手にれてた。あれだけ浴びてるんだから當然と言えば當然なんだけど……何より、またハープの所にスキルが行ったのがね。

思えば、私は混沌の克服を除くとスキルはラビットハンター以來何も手にれていないことになるので、いい加減何かしい。

それをハープ達に相談した所、ケイ君が、

「それなら、スキルショップに行きませんか?」

なんて言ってきた。

スキルショップ? 聞いたことの無い店だ。

「スキルショップ?」

「あれ。ご存知無かったですか」

「うん」

「私も」

ケイ君の話によると、どうやらスキルショップとやらはスキルが売っている店らしい。

流石に、私も何かスキルはしいから、自分の手で手にれたいなんて贅沢言ってられない。そのその……ってじでやってたら、いつ手にるかわからない。だから、行こうと思う。

そんな訳で、私達は連攜プレイ練習からショッピングにシフトチェンジし、街へと向かうことになった。

「あ、こっちです。こっち」

私もハープもリンちゃんも場所がわからないのでケイ君に先を歩いて案してもらうことにした。それにしても、こんな人目につかない路地にって、本當にあるのだろうか。

その疑問をケイ君にぶつけてみると、どうやら、スキルショップとやらは一般的に知られておらず、限られた人間しかその存在を知らない上、ちょくちょく場所が変わるという。まあ、隠し要素って言った所かね。

「あ、著きました! あそこです!」

「ここが……?」

「スキルショップ?」

「なんか普通の家っぽいですよね」

見た所、看板なんては存在せず、リンちゃんの言う通り普通の家っぽい。近くに來てみると尚更で、店が開いてる様には……あれ?

「あれ、開いてないんじゃない?」

「え?」

「だって、ほら……」

私が扉にられてるり紙を指差す。

『諸事により暫くの間、閉店させていただきます』

そこには、休業のお知らせだけが書かれていた。

「ねえ、ケイ君。実裝前ってことは無いんだよね?」

「はい。前に來た時は開いてたのでそれはまず無いです」

「そっかぁ。じゃあなんで……?」

NPCの店なので、勝手に休むことは無い筈だし。これは何かありそうだ。

「わっ! えっ、な、何?」

そう思ったその時、リンちゃんが何かに驚いた。

見ると、何やらウィンドウが浮いている。

「どうしたの?」

「こ、これ見てください!」

リンちゃんがその浮いたウィンドウを指差す。

それを皆で囲む様にして見る。

「これって……」

「わ、私が扉に手をかけようとしたら出てきて…………びっくりしましたぁ……」

そのウィンドウにはこう書かれていた。

『特殊イベント! 行方不明の店主を探し出せ』

「イベント?」

「そうみたいですね」

その特殊イベントとやらは參加型らしく、既に何人かがこれをけている様だ。

そして注目なのが報酬、

「クリア報酬は……『パーティメンバー全員に一つずつお好きなスキルをプレゼント』だってさ!」

「どうする、ハープ。ける?」

「まあ、ほぼノーリスクだし。やってみてもいいんじゃない?」

「リンちゃんとケイ君は?」

「わ、私は問題無いですよ!」

「俺も大丈夫です」

「じゃ、決まりだね」

という訳で、私はウィンドウの一番下にある『諾』を押す。これでイベント開始だ。

「でも、ユズ。諾したはいいけどさ。何処にいるんだろうね」 

「あー、なんかね。説明文に書いてあったけど、店主さんは素材集めに西の…………地図で言うとここら辺に向かったんだって」

私が地図を使って皆にそれを教える。

店主さんはこの、西の山の谷っぽい所に一人で向かったらしい。

「へぇ、なんか結構大変そう……」

「そうね。ちょっとしたハイキング……にはならないか」

「谷、ですもんね。そもそも、その谷に行く途中の山の中で彷徨ってるかもしれませんし」

「は、範囲広いですね……」

うーん、と皆で唸り始めたけど、ここで悩んでも仕方無いのでとりあえず向かうことにした。

谷へは、山道があってそこを店主さんは進んでいったと思われる。なので辿る形で捜すことにした。

「店主さーん!」

「スキルショップの店主さーん!」

「……いないね」

まあ、山道で聲をかけて見つかる程甘くないのはよくわかっていたことだから別にいい。そうして私達は更に深い所へ進む。

開けた場所に來た。

地図を見れば、もうしで谷って場所だ。そこで一旦休憩する。

「ふぅ…………見つかりませんね」

「そうだね。こんな所にまでいないとすると、やっぱり谷の下かなぁ」

「かもね」

暫く経ってから私達は立ち上がって、店主さん捜しを再開しようした…………のだけれども、

「リンちゃん、危ない!」

それはハープのび聲で止めることになる。しかし、そのびの原因はすぐにわかった。

だってソレは、リンちゃんのすぐ後ろで短剣を振りかざしているんだから。

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