《極寒の地で拠點作り》防衛線作り その二
「……この辺でいいかな?」
「はぁ、やっと著いたぁ」
「それにしても……高いですね」
ケイ君に堀の方を任せて私達三人がやってきたのは、神様が言ってた質の良い木が生えている山に來ていた。
「んじゃ、早速切り始めますか!」
ハープは右手側の闇ノ短剣を抜き、一番近くの木に近寄って本の方に添える。私とリンちゃんは念のため、し離れた所でその様子を見る。
「頑張ってね」
「お願いします!」
「はいよー」
そしてハープは、ノコギリの様に前後にダガーをかして切り進めようとする。
「ねえ、二人共! 凄いよ、これ!」
「なになに? どうしたの、ハープ」
どうやら、ダガーの切れ味についてらしい。
し近づいて見てみると、ハープが驚く理由がよくわかった。
既に刃は木の幅の三分の一ぐらいまで切り進んであって、その進み合はもうダガーのソレでは無い様にじる。神様が自信を持つのも納得出來る。
ハープがダガーをかすと忽ち刃が食い込み、木屑を撒き散らしながら遂に反対側まで通りきってしまった。
Advertisement
「おーい、切り終わったよー!」
「おおー!」
ここまで多分一分半もかからなかったんじゃないかな。それでハープは切りきった木に両手を著いて、
「じゃあ、倒すよ!」
「うん。何時でもいいよー」
思いっきり押す。
すると木は、本からズレて他の木に枝をぶつけながら斜面にドサッ、と倒れた。
「ふう……まずは記念すべき一本目、っと」
「記念すべき……ね」
「そ、『記念すべき』。だってここら一帯、多分何も無くなるもの。んな意味で記念だよ」
山の広場作りの第一歩ね、とか言っちゃうし。間接的に絶対そうなっちゃうのは確かに拭えないけどさぁ。
「ハープさん…………何気に凄いこと言ってますよね?」
「まあ、本當のことになるだろうし」
「とりあえず二本目行っちゃうね」
ハープはハープで早く切りたいみたい。
それなら、ジャンジャン切らせてあげよう。私とリンちゃんがどれだけ運べるかは別として……
因みに一番最初は柵作りである。
ケイ君が作る堀、そしてその予定地に沿って作るんだけど高さはだいたい二メートル程度にする予定だ。
それで、運ぶ役割は何度か言ってる通り私とリンちゃんの二人だけ。場合に応じてハープもってくれるけど、それでも三人だ。
「ねえ、リンちゃん」
「はい、なんでしょう」
「あの木、ちょっと持ってみて」
「ええっ? も、持てるでしょうか……」
リンちゃんは私に言われてさっき切られたばかりの原木を持ち上げようとする……が、當然ながらそれが地面から離れることは無い。
というかほんとにリンちゃん可いよね。頑張って持ち上げようとするリンちゃん可い。
「うぅ…………む、無理です、ユズさん」
「うーん、やっぱり?」
私も持ち上げようとしてみるけど、私でも思いっきりやらなきゃ上がらないレベルだ。これは予め二メートルに分割して運ぶべきじゃないかな、って思うんだよね。
「おーい、ハープ!」
「んー? どうしたの、ユズー!」
「って、いつの間にもうそんなに切ったの?」
「まあね」
私が々考えているに、既にハープは六本程切り倒していた。多分、こんなに原木作られても運ぶペースが追いつかない。
「ハープに重ねてお願いなんだけどさ」
「うん、いいよ」
「だいたい二メートルくらいで作った原木を切ってくれない?」
「つまり、もうそのまま地面に刺して柵に使えるようにしておくってこと?」
「そういうこと!」
數が數なので、ハープの言った通り加工などはせずに原木を二メートル程に切ったらそのまま地面に刺して柵作りに使用するつもりだ。
「よっ……はい、出來たよー」
「ありがとね」
ハープはこの短時間で更に手際が良くなったのか、ただ単に橫だから切りやすいのか、さっきよりも明らかに早く一回を切り終え、二メートルずつに切り分けた。
「リンちゃん、ちょっと來て」
私は待っていたリンちゃんを呼ぶ。
「はい、今度はなんでしょうか」
「これ、二人で擔ぐよ」
「二本……ですか?」
「うん。でも今度は短くなったし、二人がかりで左と右に擔いでいく形になるからさっきより楽だと思うよ」
という訳で私とリンちゃんは、ハープに手伝ってもらいながら肩の上…………『オン』じゃなくて『アバブ』ね。で、そこへ持ち上げる。
「大丈夫? リンちゃん」
「だ、大丈夫です。さっきよりは大分楽になりました」
「無理しないでよ、二人共」
「うん、わかったよ……じゃあ、ハープも切ったらだいたい二メートルずつに切り分けといてね」
「りょーかい」
「じゃあ行ってきます」
「行ってきます!」
そうして私達は出発した。
今、木を切っているのは山にってすぐの斜面だから今でこそ楽と言えるだろう。でも、幾ら沢山木が山の至る所にあるとしても、何時かはもっと奧にらなければならない。そうなれば、降りることも頭にれて運ぶことになる。まあ、転がせばいいんだけどね。
とりあえず今は運ぶことに集中しよう。今は今、後は後、それが私だった筈だ。後のことを考えるのは私のにあわない。
山から離れればいつも通りの荒野が広がる。そうなれば、あとは丘と丘の間の低い所を通っていけば良い。因みに行きは十分程だったので十五分か二十分あれば著くだろう。
それにしても、荒野の風がほんとに邪魔だ。その寒さに慣れはしても、悴んだりするのはどうしようもない。また、その強い風は私達や原木を煽ってくるので時折落としそうになったり倒れそうになる。足場が悪いのは元からなので下からは問題無い。
「リンちゃん、大丈夫? 休憩しようか?」
「だい、じょーぶ、です。はい……」
と、言いつつも割と息切れしてるリンちゃん。
仕方無いよね。リンちゃんまだ小學生っぽいし。こんな労働させてる方が悪い。明らかに年相応の仕事じゃない。とは言っても私一人じゃ運べないし、運べたとしても今でさえ悪い効率が更に悪くなるだろうから仕方無い。
だから何としてもリンちゃんを勵まさなきゃいけないのだけど。
「あー、ほら、リンちゃん。やっとギルドホームが見えてきたよ」
「あぁ……やっと、やっと…………!」
やばい、リンちゃんがゴールしそう。勿論、悪い意味で。
そうして私達はやっとの思いでケイ君の所へと辿り著いた。
「あ、ユズさん、リン。おかえりなさい。どうしでしたか?」
「……うん、ね。々ヤバい」
「で、です……ね」
これだけ頑張って、まだ全のほんのちょっとぐらいって現実が私にとって結構重くのしかかってくるのだから、リンちゃんにとっては絶以外の何でも無いと思う。何かしらのスキルを取るまでの辛抱なんだろうけど、神様はなかなかにブラックなことをさせてくる。
「……それで、ケイ君の方はどう?」
「えっとですね。まだ始めたばかりなので何とも言えませんが、正直言って間欠泉だけでは微妙ですね」
「そっかぁ……」
「まあ、工夫次第って所でしょうか」
「工夫ねぇ……」
こっちは『運ぶ』っていう簡単にも殘酷にも聞こえる単純作業だから工夫のしようがね……でもほんとにどうしようか。スキルがあるとも限らないんだよね。
因みに組み立てるのはある程度貯まってきた、と思ったら建てることにしているので今はとりあえず運んできた二メートルの原木は放置だ。
「まあ、お互い頑張ろうね」
「そうですね」
「じゃあ、また行ってくるよ。ほら、リンちゃん」
「ふぇ……またですかぁ?」
顔を上げたリンちゃんの目が一瞬凄い死んでた。
「ごめん! あとちょっと……は無理矢理過ぎかな」
「ほら、リン。ユズさんだって大変なんだから……すみません。本當はこういうこと、男の俺がやることなんですが…………」
「ケイ君はケイ君にしか出來ないことをやってるんだから。気にしなくていいんだよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「うん。こちらこそありがとうね。じゃあ、今度こそ」
「はい。お互い頑張りましょう」
という訳で私とリンちゃんは再び、ハープの下へと歩く。山に向かう途中、何故か振り返って見えるギルドホームがししくじた。
【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】
◎アーススターノベル大賞にてコミカライズ大賞と審査員賞を頂きました。6月1日に書籍が発売されました!第二巻も出ます! 「魔力ゼロのお前など辺境に追放だ!」 魔法の使えない公爵家令嬢のユオは家族から『能なし』と疎まれていた。 ある日、彼女は家族から魔物がばっこする辺境の領主として追放される。 到著した貧しい村で彼女が見つけたのは不思議な水のあふれる沼だった。 彼女は持ち前の加熱スキル、<<ヒーター>>を使って沼を溫泉へと変貌させる。 溫泉の奇跡のパワーに気づいた彼女は溫泉リゾートの開発を決意。 すると、世界中から様々な人材が集まってくるのだった。 しかも、彼女のスキルは徐々に成長し、災厄クラスのものだったことが判明していく。 村人や仲間たちは「魔女様、ばんざい!」と崇めるが、主人公は村人の『勘違い』に戸惑いを隠せない。 主人公の行動によって、いつの間にか追い込まれ沒落していく実家、ラインハルト公爵家。 主人公は貧しい領地を世界で一番豊かな獨立國家に変えるために奮闘する。 全ては溫泉の良さを世界に広めるため! ビバ、溫泉! 自分の能力に無自覚な主人公最強のスローライフ領地経営+バトルものです。 戀愛要素なし、ギャグタッチで気軽に読めるようにしています。 ※R15は念のためとなっております。 誤字脫字報告、ありがとうございます! 感想は返信できておりませんが、とても勵みにしています。感謝です。 現在は月曜日・水曜日・土曜日に更新しています! ※書籍化に合わせてタイトルを変更しました。舊タイトル:灼熱の魔女はお熱いのがお好き?魔力ゼロの無能だと追放された公爵令嬢、災厄級の溫めスキルで最強の溫泉領地を経営する~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が沒落してた~
8 118IQと反射神経と運動神経人外がVRMMOやったら!チートだった件
IQと反射神経と運動神経が人外の少年がVRMMORPGをやったら、ヌルゲーになった話
8 189俺と彼女と小宇宙とが織り成す宇宙人とのラブコメ
俺、菅原月兎(すがはらつきと)は転校した日にラブレター貰って、宇宙に拉致られる。 この物語の一人一人が他とはちょっと違う歪な愛を持っている。 月兎の自己愛。 マリスの全愛。 エマの純愛。 麗兎、玲浮兎の偏愛。 カリーナの敬愛・・・等々。 そんな彼、彼女達は人とは違う愛を抱えながらも自分の信じる物を必死に守り通す。 本作はそんなハイテンションSFファンタジーです。 *この作品は小説家になろうでも投稿しています
8 135名探偵の推理日記〜君が消えれば〜
あいつがここにいると面白くない。よし、じゃあ、あいつを殺そーー。 以上(異常)です。 〜登場人物〜 松本圭介 小林祐希 中島徹(被害者) 巖下修二(テストの順位2位) 有村健太(イケメン順位2位) 坂田奏多(テニス部內順位2位) 佐々木香奈美(噂好き)
8 50Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~
辺境の騎士爵長男として生まれたアルスは5歳になったときに頭痛と共に前世の記憶を思い出す。自分が日本人である桜木優斗(47)であることを。ただ、自分がどうして転生したのかまでは思い出せないのだが、前世は獨身貴族だったこともあり未練は、まったく無かった! そんな彼は自分の領地を豊かにするために、前世の知識を使い領地を富ませていくのだが、その手法が畫期的すぎるあまり天才扱いされ王族から目を付けられてしまうのだった。
8 162帰らずのかぐや姫
それは昔々の物語。竹取の翁が竹の中から見つけたのは、大層愛らしい娘でした。 成長し、それはそれは美しくなった彼女を一目見よう、妻にしようと 多くの殿方が集まります。 しかし、彼らは誰も知りません。世に聞こえる麗しき姫君の実體を――。 ――――――――――――――――――――――――― 武闘派なかぐや姫がタイトル通り帰らないお話です。 ファンタジー要素込み。シリアス寄り。ハッピーエンド。 冒頭はかぐやが鬼を食らうことから始まります。特にグロ表現ではないですが。 完結済み作品。自サイトで全文掲載。
8 51