《極寒の地で拠點作り》防衛線作り その七

「とりあえずり口からねー」

「わかりました!」

「了解です」

ここ最近のメンバーで行う迷路作りはり口から始まる。柵作りを利用した壁作りは私とリンちゃん、それで天井作りはケイ君だ。

天井は別にいらないんじゃないかな、って思ってたんだけど、迷路やってる途中で肩車なり風魔法なりで道を知られないための対策で作るみたい。その天井に乗られた時も対策がしやすいからってのもあるらしいけどね。

まあ、何よりそうすることで柵を異様に高くする必要も無くなるから異論は無い。因みに今回の木の長さは天井もあるので三m程度にしてもらうようにシャード君に頼んでおいた。

とりあえず最初は基本の形である一本道を作ることにした。シャード君がり口に置いていった木を使って、り口の片方の柵から側にばしていく。

「『柵作り』っと」

「『柵作り』です」

「『柵作り』だよ」

「『柵作り』ですよっ!」

私達の『柵作り』による柵作りはいつもこんなじだ。これがテンポよく出來てくるとなかなかに気持ちが良くなってくる。こんなし奇抜なじになってしまうのは、スキルなどを使う時は必ず口にしなければならないからだった。

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そんな時、ふと、一人で『掘り』と連呼しながら地面を掘り進めるケイ君の姿が浮かんだが、何か悪い気がしてすぐに考えるのを止めた。

「片方はこんなじでいいかな」

「大丈夫です。では次、反対側お願いします」

そして同じ様に、且つなるべく平行になる様にケイ君に見てもらいながら設置を進める。一旦、木が無くなって、確認すると長さだいたい十メートルくらい、幅五メートルくらいの通路が出來た。

「記念すべき、柵の側迷路化計畫の第一歩だね!」

「いつそんな計畫名が付いたんですか…………それでケイさん、天井ってどうするんです?」

「もうやってもいいならやるけど。ユズさん、この後って曲がり角ですか?」

「うん、そうだけど」

「なら、もう丁度良いのでやっちゃいますね」

下がっていてください、ケイ君は言って前に出る。それで見張り臺の時みたいにあの土魔法を唱えると、逆シャッターとでも言える様子で地面から壁を生やして通路が塞がれた。

「ユズさん。『柵作り』で作った柵って倒れたりしないですか?」

「……? この前試しに々やってみて、折れたり倒れたりもしなかったけど。それがどうしたの?」

私がそう言うとリンちゃんは首を傾げた。

「あれ? ユズさん、この前柵に向かってフルスイングしたら思いっきり……」

「い、いや、私って々規格外だし、カウントしなくていいかなって」

「そうなんですか……」

リンちゃんの話を聞いて、うーん、と唸ってしまったケイ君。そんなに考えこまなくてもいいのに。

「仕方ありません。この方法しか思いつきませんから、ここはユズさん的思考で行きます」

「ふふっ、ユズさん的思考ですか」

「何その、ユズさん的思考って……」

「そのまんまの意味です」

あれか、ハープとか私とかで言う『何とかなるでしょ神』のことかな。でもケイ君はちゃんと考えた上でやってるんだろうから、そこは私と違うんだろう。

「それじゃあ、行きますね。『壁』」

すると、ズズズ、という何か重いが引き摺られてじの音がした。その音の正はすぐにわかった。柵作りの方の壁を橫から見てみると、逆シャッターの方の壁の上部からその壁を橫にした様なのが生えてた。さっきの音はこれが柵作りの方の壁の上をく音だったんだ。

「あ、これもしかして、見張り臺の時の床の時にも使った?」

「そうですそうです。あの時は壁の上に乗せるだけだったので崩れる心配は無かったのですが、今回は植えた木の上を移する形でしたからね。まあ、どうにかなりましたが」

「ユズさん的思考のおですね!」

「あんまり良い考えじゃないけどね」

そんなこと無いですよ、とケイ君は言う。

因みに逆シャッターとなった方は天井となった方と別々の作で行ったので切り離せるみたいで、実際に引っ込めてもらったけど全然天井はどうとなることも無く、綺麗な斷面で両側の木に支えられていた。便利だね、土魔法って。

そうしてその後は順調に作業は進んでいった。

最初の一本道の後、り口から見て右の曲がり角を作ってそこからまた一本道で左の曲がり角。そしてその後に丁字路を作り、まずは行き止まりとなる右側から手をつける。ここで私はあることに気づいた。

「あ、そういえばさ」

「なんでしょうか?」

「こうやって分岐しちゃったけどさ。これからこんなじで作業していくとなると、シャード君、私の場所分からなくなるんじゃない?」

今は左側は手をつけてないしフラッシュで明るくしてるけど、いつか分からなくなってもおかしくない。

「ご主人様の場所なら分かるんじゃないですか?」

「そんなペット覚で……それにどちらかと言えば多分、ハープの方が懐かれてる気がする」

私達の中で唯一、シャード君と意思疎通出來るからね。私はスキル名からして一応、主従関係の主に當たるので結構けないと思う。今度、シャード君とコミュニケーション取れるように練習しなきゃなぁ。

その後、一度にシャード君が運べる量としても迷路はそんなに進める訳じゃないことに気づいたので杞憂だった。

暫く作業を進めた後、休憩を取った時に駄弁っていると、今度はリンちゃんが何かに気づいたみたい。

「あの、そういえばなんですけど」

「どうした? リン」

「私達、こうやって迷路作ってるじゃないですか」

「うん」

「でもこの辺りって全く人が來ないじゃないですか」

「そうだね」

「……皆さん、気づいてくれるんでしょうか?」

「…………うん」

なんかこの場所にしよう、って言い出した張本人であるせいか、なんか凄く悪くじる。確かにリンちゃんの言う通り、この辺りは滅多に……というよりほんとに人を見かけない。極希に、遠出してきたであろうパーティを対岸に見るだけで、何も無いと見られているこちら側だと恐らく見たことは無い。私の存在はまだしも、このギルドの知名度は限りなくゼロに近いだろう。

「そうですね。リンの言う通りです」

「ああ、なんかごめん……」

ケイ君の言葉がグサリと刺さる。

「いえ、ユズさんを悪く言った訳じゃないです。それならそれで宣伝すればいいんですよ」

「宣伝?」

「はい、宣伝です」

ケイ君は宣伝すればいいと言ったけど、イベント中にわざわざ小規模ギルドのために遠出してくる人はいないんじゃないだろうか。

的にはどうするんですか?」

「ああ、まあイベント中にでも気にされないくらいの何かを作る、とかかな」

「レジャースポット的な?」

「そうですね」

まあでも、とケイ君は続ける。

「そもそも人を呼び寄せる必要は無いんですよね。今度のイベントは倒し合いなのでギルドの場所が相手に知られないのは本來良いことの筈…………ですが」

「それじゃあ、面白くないよね」

私はケイ君の言葉に続けてそう答えると、ケイ君はし期待していたかの様に返してくる。

「ユズさんならそう言うと思いました」

「皆で守ったり攻撃したり考えたりしてこその協力ですもんね!」

「そう! リンちゃんもわかってるー!」

私達のプレイスタイルはまったりゆったりだけど、皆で楽しくやる、もそうだからね。

「そうと決まれば考えていきたい所ですが、そろそろ作業に戻りましょうか。シャードさんも大分運んできてくれましたし」

シャード君は私達が休憩してる最中に三回ほど來てくれた。再び作業するには充分な量だ。

「そうだね。案なら作業しながらでも出せるし」

「じゃあ、私、早速いいですか?」

「いいよー」

「えっとですね……」

こうなると、ひたすら『柵作り』しまくるだけの単純作業が楽しくなるから凄く良いと思う。別にリンちゃんと作業するのも楽しくはあるんだけど、より楽しいってじかな。

まあ、そんなじでわいわいやりながら、今後の予定と迷路作りを同時進行で行っていくのであった。

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