《極寒の地で拠點作り》第二回イベント その六

という訳で四人がいる場所のすぐ近くの通路まで進む。

「ユズちゃん達もよくこれだけのを作ったわね」

「だよな! 見たじ、凄い広さっぽそうだったしな!」

すると相変わらず元気そうなブラストさんの聲が聞こえてきた。シェーカさんもしばらく會ってなかったけど、変わらないじで良かった。

「団長、煩いです…………」

「ほらぁ、クアイも言ってるじゃないですか、先輩」

「仕方無いだろう、こうでなきゃやっていけないんだよ。それから、サラ、先輩って言うのやめろっていつも言ってるだろ?」

「仕方無いですよ、先輩は先輩なんですから」

「先輩っつっても、このゲームでの話だろ? それも一、二週間の差の」

「もー、そんな細かいこと気にしてるとが離れてっちゃいますよ?」

「でも、サラ……今の団長……傍から見たらハーレム狀態……」

「なっ!? 先輩、やめてくださいよ!」

「なんで俺なんだよ!」

「ブラスト? 貴方、後で……ふふ」

ここからは見えないけど、シェーカさんが怖いオーラを出しているのがよくわかる。

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「うわぁ、先輩。ご愁傷様です」

「サラ。貴方もよ?」

「ええっ!? なんで私も?」

「サラ……正妻に逆らっちゃ駄目……」

「ハーレムとか言い出したのはクアイなのにぃ…………」

とか言って落ち込んだっぽい聲を出すサラさん。

って、ちょっと待って。

「ね、ねぇ、ハープ、今のクアイさんの聞いた?」

私は衝撃の事実にし狼狽えつつも小聲で問う。

「え? 聞いたけど、正妻って所のこと?」

「うん。そうだけど…………知ってた?」

「うーん。まあ、それとなくは……でも驚いたことには驚いたよ?」

なんとハープは薄々づいていた様だ。でもまさか、ブラストさんとシェーカさんはリアルなご夫婦だったなんて……それに、クアイさんの口振りからするに冗談って訳でもなさそうだし。

それにしても夫婦揃ってあれだけの強さって、改めてすごいことだと思う。

「……ユズさん、ハープさん。驚いてる所悪いですが、もうすぐ第一の罠です」

「えっ? わ、わかったよ……」

揺してしまっているが、やることはやる。

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第一の罠とは毎度お馴染み、落とし(冷水付き)だけど、今回は一応、いつもと違って防衛戦となるのでし手を加える。

「いいから……早く進もう……」

「あー、もう他人事みたいにぃ。いいよ、私先行っちゃうから!」

「そんなに急ぐと危ないぞー」

「大丈夫ですよ、先ぱ、ってうわぁっ!」

「サラが……消えた……」

「消えたわね」

油斷してくれたサラさんは、こっそりケイ君が作させていた落としに落ちてくれて、他の三人に無様を曬している様だ。

「ほーら、言わんこっちゃない」

と、ブラストさんは笑いながらに向かおうとしている様な音がするけど、ここで私達はもう一押しする。

「ケイ君、お願いね」

「了解です」

ケイ君がし顔を上げて、『壁』へ杖を掲げる。

「『壁』」

「……! 団長、天井が……」

「おおっ、と!」

クアイさんが聲を上げてブラストさんは避けた様だ。出來るだけ早く、天井の『壁』から生やしてもらった『壁』はシャッターの様に下りてきて落としにいるサラさんと三人を遮斷したことだろう。

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「遮斷功ですかね」

「そうっぽいね」

「それじゃ、次行きます。『壁』」

またしても、生える音が聞こえる。今度は地面をる音も聞こえてきた。

「えっ!? ちょっ、閉じ込め……」

迅速に進められた作業のおで、サラさんのびは聞こえなくなった。彼の言いかけた通り、落としに蓋をして閉じ込めるのが目的だった。

「おーい、サラー! どうしたー!」

壁を叩く音と落ちたサラさんに呼びかけるブラストさんの聲が聞こえる。

「『分離』……それから、『戻れ』」

ケイ君がそう言うと、ガッ、ズズズ、という音がした。すると、

「サラ!」

というブラストさんの聲が聞こえ、駆け寄る音がした。

私達も鬼では無いし、一応防衛戦とはいえ迷路は迷路であってほしいので攻略を完全に阻止する方法は取りたくなかったのだ。ブラストさん達からはちゃんと迷路の概念を壊さない上で防衛していきたいと思う。

…………閉じ込めるのは道を妨げることにならないか、と思うかもしれないけど、まあ、迷路自の道は塞いでないし、罠の一環でもあるし、何より一定時間を過ぎれば解放してあげるつもりだし、そこは……ね?

等々、私が誰に向かってか弁明していると、不意に迷路から落ち著いたじのこんな聲が聞こえてきた。

「団長……退いて……私がやる……」

「えっ?」

私が驚いているのも束の間、何か重いが床というか地面に當たる様な音と衝撃が伝わってきた。

「もう一回……」

その聲の主はクアイさんで、間髪れずに彼がそう言うと再び衝撃が伝わってくる。そう二、三回程度、それも割と早いペースでそれを繰り返していると、ピシッ、と何かに亀裂がる様な音がする様になった。次第にその音は大きくなる。

「……っ! 『壁』が破壊されます!」

「えっ?」

「最後……」

ケイ君がび、クアイさんがそう呟いた所で割と大きな音が響き、崩れ落ちて水に落ちる音がした。

「わわっ、ちょっと、私、避けれ……危なっ!」

「破壊功……」

「お疲れ様」

「流石だな、クアイ。相変わらず、お前のハンマーは凄いな」

「よっ、と。本當にね、その小柄なの何処にそんな力が……まあ、ありがとね」

「ふふふ…………」

褒められて嬉しそうな聲を出すクアイさん。

「まさか、あのフード被ったローブ姿の人がハンマー使いだったなんて……ハンマー持ってなかったじゃん…………」

事前に彼らの姿を遠目で見ていたケイ君だけは、何とも微妙な表でそれを聞いていた。

「まあ、私でも間違えるよ。ローブ姿なら杖使いだと思うし……ほら、ケイ、落ち込まないで?」

「いやいや、落ち込んでませんよ!」

そんなケイ君を冗談っぽくめるハープとそれにつっこむケイ君。何気にこのコンビ、良い組み合わせだと思うんだよね。

「突破されちゃったは仕方無いけど、冷水に浸からせることには意味はあるから、このまま行くよ?」

「うん。仮にこのまま、突破されても溫泉が待ってるからね。あの格悪い隠し扉が見つけられなきゃ大丈夫だよ」

「ちょっと、ハープさん。格悪いって何ですか、アレもれっきとしたギミックです。まあ、が相手方に多ければ多い程バレる可能は高くなりますが……」

ケイ君が弁明していると、

「さ、寒い……これ作った人、なかなかに格悪いですよ……」

ケイ君の作った落としに落されたサラさんが、考案者が壁越しにいるとも知らずに愚癡り始めた。

「ほらぁ、相手さんにも言われてるじゃん」

ケイ君はああ言うけど、私としてもやっぱりアレは格悪いと思う。だって男の人は見つけられない以前にそこを探すことさえ許されないんだもの。

「む……」

味方側からも相手側からも罠や仕掛けが格悪いと言われて、何か言いたげな目で私やハープ、壁越しのサラさんへと見やるけど、結局それ以上何も言わずに押し黙ってしまった。

とりあえず一旦、それは置いておくとして、罠に集中することにする。とは言っても、私、特にハープは何もせず、ケイ君が作させるのを見守るだけなんだけど。

結局、その後、同じ様に落としに嵌めたり、冷水に潛って進む所をより複雑にり組ませたり、こっそり天井にを開けて毒を浴びせたりしたけど割と簡単に対応されてしまい、騒ノ會の凄さを見せつけられてしまった。まあ、単純に迷路としての機能は働いた様で結構迷ってくれて、そこは良かったと思う…………罠やってもやらなくても殆ど変わらなかったとかいうのは置いといて。

「あれー? あっ、やっと抜けましたよ、先ぱーいっ!」

「はしゃぎ過ぎ……」

「まあまあ。良かったじゃない、抜けられて」

「やっぱり、ユズちゃん達だったよなぁ」

「そうね。あの子達、かなり凄いことやってくれたわね……それにしても、あの罠とかって誰が考えたんでしょうね」

「そうだな。ユズちゃんもハープちゃんもリンちゃんも罠に通してなさそうだしな」

「あ、そういえば結構前になるけれど新メンバー迎えたって言ってたわね」

「あー、じゃあ多分その子だな」

「凄く……格悪そうな悪人面してそう……」

「あの子達からしてから悪い人間はれないと思うけど…………っ、まさか、脅されて?」

「今の和みの館はソイツが握ってるって訳か」

「夜な夜な、ベッドの上で……嫌がる行為を強要してたり……」

「許せないわね…………」

の子三人を脅しての様に扱ってる、ですって? 許せません! 先輩、私に倒させて下さい!」

溫泉前広場にて、ゴールするなり騒ノ會ワールドを展開して、理不盡な言いがかりがケイ君を襲う! まあ、あちらも冗談でやってるのだろうけど。というか、割とシェーカさんがノリノリなのに驚きだよ。

「ふふっ、はは、あはは! ケイ、何か知らないけど々言われて……っ、ははは!」

「知りませんよ! だいたい、なんで俺がハープさん達に、その……そんな行為をさせるって言うんですか!」

「いやっ! ケイ、駄目だって! そういうの、私達、そういう関係じゃ……」

「……マジでやめてください、怒りますよ?」

「いやー、ケイに襲われるー」

し赤くなりながら顔に青筋を浮かべるケイ君とそれをからかうハープ。

こっちはこっちでまた別の世界を形しているので、良い……のかな? うん、まあ、良いってことにしとこう。

「二人共、イチャイチャしてる所悪いけど、もうちょっと近く、溫泉裏まで行くよ?」

「ちょっと、ユズさん! 俺達の何処がイチャついてる様に見えるんですか!」

「えー? 違ったぁ?」

「違いますよ!」

そんなケイ君が面白くじたので私もしちょっかいを出してみた。うん、良い反応だ。

そうして、溫泉裏の隠し扉からの通路に著く頃にはブラストさん達は既に建っていて、あの陣にバレたりしないか結構ドキドキしていた。けれど、意外とそんなことも無くて、溫泉を楽しんでくれている聲が聞こえてきたので安心した。

「バレなさそうだね」

「流石、格悪い罠師さんの力作だよねー」

「……もう、ツッコまないことにします。本當は格悪い訳でも罠師でも力作でも何でもないんですが」

それもう結構ツッコんでない? とか言ったらケイ君がいじけちゃうからやめておく。

「んんっ、まあ、あれですよ。油斷はって奴です」

ケイ君は咳払いをして、そう忠告してくれた。

「そうだね。敵は思わぬ所から來るかもしれないよね」

「あー、もしかしたら、シェーカさん達じゃなくてブラストさんがそこの扉から…………」

ハープが、來るかもねー、と言おうとしたであろうその時、

「おおっ!?」

ドーン、という音が通路の奧、隠し扉のあった所から驚く聲と共に聞こえてきた。ハープの言ったことが本當に起こるとは思ってもみなかった私達はかなり驚いていた。

「痛ぇ……でもまさか、本當にあるとはな」

その音の主はやはりブラストさんで、思いっきり開いたらしく地面にぶつかって痛がっていた。

「ん……おっ! ユズちゃん、ハープちゃん、久しぶりだな! それから、格悪くての子三人を手玉に取ってる奴は……」

「そんなことしてませんって!」

「おっ! 君か! ……ああ、でも、この仕掛けといいさっきまでの罠達といい格悪いのは事実だぞ?」

そんなことを言われてやっぱり何も言い返せなくなるケイ君はとうとういじけてしまう。

「いいですよ……俺はどうせ格悪いんですよ……」

「まあまあ、ケイ君。で、ブラストさん、こちらの隠し扉、湯ってわかってて見つけたんですよね」

「ああ、大丈夫だ。『ちゃんと許可は取ったからな』」

その時だった。

「死ね……」

頭上からフードを被ったローブ姿のが、大槌を振りかぶって落ちてきたのだった。

「……っ!」

私はそれを反的に橫に避ける。

「クソが……」

「來るよ、二人共!」

ハープがぶと、シェーカさんとサラさんも下りてきた。

「避けられてるじゃん、クアイぃ」

「やっぱり、流石よねぇ」

「だな。見込んだ通りだ」

すると、陣全員が服を著て、更に武もそれぞれ持った上で溫泉の壁を飛び越えてきた。

「な、なんでっ!?」

「あら、ハープちゃん達には悪いけど隠し扉があることはわかってたのよ。だから安心して飛び越えさせてもらったわ」

「やっぱり敵いませんかぁ……」

「あっ、サラ、あの罠とか作ったのあの男の子だぞ」

「なっ! 何ですって!」

「ええっ!?」

突然矛先が自分に向けられて狼狽えるケイ君は、いつ襲いかかられてもいいように杖を構えている。うーん、そういえば皆さん全員、近接武っぽい。なので、私はいきなり接近戦になってもいいように打撃武として使える様に構え直す。

「あれ、そういえば、もう一人……リンちゃんの姿が見えないが……」

「え、あ……リンちゃんは、いません」

ブラストさんから放たれた言葉にしだけ空気が暗くなった様にじた。

「団長……」

「そ、そうか。まあ、なんだ……すまん」

空気を読んだクアイさんがブラストさんに呟きかけるとブラストさんは謝ってきた。

「いいんですよ。私達だって、リンちゃんが何故來なかったのかはわかりませんから」

「ただ、最後に來た日はちょっと、いや、かなり様子がおかしかったですけどね」

「そうか……まあ、協力出來ることはやってやるから何時でも相談してくれ」

「あ、ありがとうございます!」

「いいっていいって」

すると、ブラストさんは背負っている大きな両手剣を抜いた。

「んじゃ、仕切り直しと行きますか」

そんなブラストさんの目つきはガラリと変わった様にじ、雰囲気も変わった様にじた。

「っ、二人共、構えて!」

「……數はあちらの方が多いですね」

「なら、こっちから先に仕掛けてあげるものだよ。『暗転』」

私は最早、戦闘では定番となったソレを展開するとその場からし離れる。

「ああ、先輩、これが噂に聞いていた暗転ですか!」

「そうだ。割と厄介だが、設置型の筈だ。それに使用者中心だろうから、展開されてもすぐに中心に向かって何かしら攻撃すれば問題無い。まあ、今は既に逃げているだろうがな」

くっ、読まれてる……特徴も々知られていて驚いた。やっぱりブラストさんは凄い、戦闘だけじゃなく観察眼もしっかりしてる。油斷は出來ない。

「やっぱり慣れませんね。目を閉じても開いても暗闇というのは…………」

そう言って外へとを向けているケイ君はそう言って構えている。

ケイ君には、以前からしずつ暗転の暗闇に慣れてもらう練習をしてもらっていた。それこそ、ハープのおかしいくらいの気配察知能力には屆かなかったけど、それなりに暗転なら気配がほんとに何となーくだけどわかってくれるようになって、方向覚も摑める様になったみたい。

「よし、じゃあ二人共、頑張るよ!」

「おー!」

「やってやります!」

そんなじで、ブラストさん達と初の戦いをえる覚悟を決めるのだった。

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