《極寒の地で拠點作り》第二回イベント その七
「死ね……ッ」
「うわわっ!」
「ちょこまかと……!」
さて、遂に始まってしまったブラストさん達との対戦だけど、やっぱり數の利もあってか押され気味だ。
最初に暗転したは良いものの、闇からハープが突然突っ込んでいくいつもの戦闘スタイルはけ止められて意味をさなかった上に、ドーム全に攻撃を加えられたので退避せざるを得なくなり、その後何度か暗転するもした瞬間に中心にいる私の所まで攻撃しに來るので結局、基本暗転無しで戦うことになった。
因みにハープの奇襲が防がれてしまったのは、距離を取られていたのもあるけど、シェーカさん達によれば、
『まあ、ソレに熱を燃やす、困った人がいつも近くにいるからかしらねぇ……?』
だそうだ。共の嵐がとある二人を除いて吹き荒れる。ああ、うん、何故か凄い納得出來るよ。その二人はキョトンとしてたけど。
話は戻るけど、私は大槌使いのクアイさんと、変わらず副武で短剣使いのシェーカさんを相手に、ハープは同じく短剣使いのサラさんとシェーカさんを相手に、ケイ君は防に回れるので全員が相手となる。ブラストさんは両手の大剣使いであるが故に一振り一振りが大きいので基本三人の後ろで見守る形で、時折シェーカさん達三人が退避すると私達全員に攻撃してくる。
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なので、実質全員が全員と戦っている様なだ。今だって、クアイさんはすばしっこく避けるハープを追って攻撃している。
「この癡が……」
「え、ち、癡!?」
ハープは突然そんなことを言われて、自分の格好を再確認する。見るからに年下のの子にそんなこと言われると思ってもみなかった様で明らかに狼狽している。
「このクソ寒い中……そんな元やらヘソやら曬してるの何処が癡でないと言うの……」
心做しかし饒舌になったかな、とじるその口から突き刺さる言葉を放たれて赤くなるハープ。
「そ、そんな……出度、だいたい35%くらいだし! 癡なんかじゃないよ!」
「……ハープ、そこなの?」
何とも微妙な數値に微妙な反論をするので、私はこれまた微妙な視線を向けてあげた。
「出度とか……関係無く、癡……」
気になる判定は、そもそも格好の時點でアウトとされた。大丈夫だよ、ハープが癡でも私達は何時までも親友だからね!
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「やめて! 私、癡じゃないから! そんな目で見ないで! 微笑んでこないで!」
おっと、いけない。いつの間にか、目だけじゃなくて顔にも出ていたみたいだ。反省反省、っと。
「仕方無い……次……」
「うぅ…………ッ!? ケイ!」
突如、唸っていたハープが立ち上がった。そう思ったら、ケイ君に向かってんでいた。
「下種野郎……」
原因はクアイさん。見れば、ハンマーを持ってケイ君へ毒を吐きながら走り始めていた。
「おっと、行かせないよ」
助けに行こうとするハープを今度はサラさんが相手する。
「退いて!」
「退かないって言ってるじゃない、ハープちゃん?」
「気をつけろよ、サラ! ハープちゃんは弱點突きが上手いからな。まあ、奇襲じゃなく真っ向からの攻撃だからお前なら大丈夫だろうがそれでも強敵だ。何せ、俺が認めたんだからな」
「はい! わかりました、先輩!」
やっぱりブラストさんはちゃんと見ている。
ハープは何処で磨いたのか知らないけど、知っての通り弱點を突くのが上手だ。その度は奇襲時なら基本一撃、多くともだいたい二、三撃程、確かなだ。しかし、チートとも思われそうなアレに気づかれていなさそうなのは幸いだった。
そして、ハープがサラさんと睨み合っている間にもケイ君とクアイさんの距離はまっていく。
「『壁』!」
「死に曬せ……」
見た目もいの子がき通った聲でこんな汚い言葉を放つのは何とも嫌なものだけど、そんなこと言ってる暇は無い。こうしてる間にもせり上がったケイ君お得意のソレを破壊せんばかりにハンマーを振りかぶり跳び上がってくる。
その力が何処から沸いてくるのか、その外見からしてわからないけど、恐らく破ってくるだろう。
「『毒の雨』」
「はあっ!」
クアイさんが聲を上げてハンマーを振り下ろすと予想通り、大きな音を立てて崩れ落ちる壁だったけど、それを見越していたケイ君は二、三歩後退してこれまたお得意の組み合わせ魔法を唱える。
「……!?」
すると、そのままの勢いで著地したクアイさんは、その紫に濁った水溜りに足をらせて後ろ向きに思いっきり倒れて後頭部を強打する。そのせいか、かないクアイさん。その機會を見逃す私では無い。
「あらぁ、ユズちゃん。まだ私は倒せてないわよ?」
そして當然の様に立ち塞がるシェーカさん。しかし私はそこの所はちゃんと対策しているつもりだ。
「そうですね。でも大丈夫です!」
「……何が大丈夫なのかは知らないけど、どのみち加勢に行かせはしないわよ」
私がし巫山戯た調子でそう言うと、シェーカさんはいつもと違った雰囲気で、訝しむ様子を見せながら構えてくる。ちょっと怖い。
「ええ。ですから、元より私は行きませんよ?」
「それってどういう……」
「やっちゃって、シャード君!」
「……!!」
私が合図を出すと、ケイ君の影からひょっこりと全を現したシャード君。今日はハープの所でなく、ケイ君の所にお邪魔させておいた。
影から出てきたシャード君は、合図通り倒れるクアイさんに襲いかかる。
「サラ! シェーカ! クアイを援護だ!」
「なっ! いつの間に……」
「助かります、ユズさん!」
「いいのいいの! ほら、ケイ君もばしばし攻撃しちゃって!」
「はい!」
ケイ君はケイ君で得意の水魔法で倒れているクアイさんを攻撃している。
なかなかに酷い景だよね、これ。だって、倒れてかないの子を一人と一が嬲ってるんだもの。まあ、相手が相手だけにそんなことで止めてあげる様な油斷は出來ないんだけども。
「仕方無い……俺が行く! 二人共、近寄るなよ!」
「ごめんなさい、お願いするわ」
「おうよ。二人は足止めしといてくれ」
「こ、來ないでください! 攻撃すれば、この人も巻き添え食らいますよ?」
攻撃を止めて、クアイさんに近寄るケイ君とシャード君。ケイ君、流石にソレは、小さなの子を人質に取ってその臺詞は、ねぇ? それになんか、こう、死亡フラグっぽいし。
「うわぁ……私、今まで割と冗談っぽく思ってたし言ってたけど、まさかほんとにそんな奴だったなんて…………ごめん、ケイ。認識改めるよ」
悪黨にありがちな言葉を吐いたケイ君は、その一言でハープをドン引きさせてしまった。
そんなケイ君は今、私に助けを求めている。
けれど、私も例にれずドン引きしているため、弁明してあげることは出來ない。という訳で無視する。
「そ、そんなぁ……」
「……っ! ケイ君、後ろ!」
クアイさんの指が一瞬いた気がした。その後、私にもわかるくらいの強い殺気が放たれ、近くにいたケイ君は數歩後ろに飛び退く。すると、ゆらりとクアイさんが起き上がり、立ち上がる。勿論、手にはハンマーが握られている。
「やっぱり……お前は……下種野郎……」
「よう、クアイ。やっぱ起きてたか。一応、來たんだが大丈夫みたいだな」
「勿論……でも、し意識飛んでたのは……事実……心配かけた……」
「俺なら問題無い。さ、攻撃再開と行こうぜ」
「了解……それじゃ、っ!」
すると、早速ケイ君に襲いかかった。
「……!!」
「シャードさん!」
が、すかさず二人の間にり込んだシャード君がハンマーを抑える。
まだ木を運搬させる作業と切る作業くらいしかさせてなかったせいか、本來使うであろう戦闘面でのスペックを知れていなかった。だから今だって、打撃面を抑えて耐えている姿に割と驚いている。一応、私の魔法で出した眷屬なんだけどね。
まあいいや、頑張ってるし応援してあげよう。
「おーい! シャー……あいたっ!」
頭にゴツンって來た。ゴツンって。
「ユズちゃーん? そろそろ余所見、止めましょうか」
見ると、笑顔なんだけど何処と無く怖さをじさせる表のシェーカさんがそこに立っていた。
私達は戦闘中。ついケイ君達のやり取りに気を取られていて、シェーカさんがそこにいることすら完全に忘れてた。
「す、すみません!」
「ふふ、いいのよ。それじゃ、始めましょう? ハープちゃんとサラの方も始めちゃったみたいだし」
間を取って睨み合ってるだけみたいだけど、雙方共様子を窺っているのだろう。現にハープの目も何時に無く真剣なになっていた。
一即発の狀態で、こちらにまで張した空気が伝わってくる…………時折聞こえてくる誰かさんの素っ頓狂な聲が無ければ、よりシリアスな雰囲気になってただろうけど。
まあ、二人共頑張ってるみたいだし私も頑張んなきゃね!
「じゃあ、行きますよ! ……『暗転』!」
私は一番のお気にりの、いつもの技を繰り出す。々解析されてるとはいえ、これをするかしないかで大分変わってくる。何せ私は防、素早さ共に貧弱という言葉が惜しい程には貧弱なのだから。
「っ、流石ね……」
「これがなきゃ、私即死ですので……ぐっ!」
唱えた直後、シェーカさんは私目掛けて突っ込み飛び込んできた。
ブラストさんの言う通り、展開中の私はドームの中心點にいる上に一瞬だけど無防備だ。その隙を狙われて、攻撃されそうになったんだけどすんでのところでけ止める。結果、何とかなった。
うーん、一対一で特に相手のAGI値が高い時は気をつけなきゃいけないかな。
一瞬の隙を短剣で切り込んできたシェーカさんは私からの反撃を避けるために素早く元いた所まで戻っていく。私も中心點からし外れて様子を窺う。
さて、どうしたものか。暗転のドームはいいとして、急降下型アトラクションこと奈落のはハープやシェーカさんくらいの人には何故だか察知されてが開くと共に避けられてしまう。シャード君はケイ君の所に出払っちゃってるし……生気の強奪はリスクが大き過ぎるし今使うべきじゃない。
かといって闇から抜けて突っ込んでSTR値にものを言わせて毆りに行くのも暗転が無駄になる。
って、あれ? 何か一つ忘れてる様な……?
「ユズちゃんが來ないなら、私が行かせてもらうわよ?」
「えっ? あっ、はい!」
思い出せないはしょうがないと割り切って何か行を取ろうとしたら先を越されてしまった。それで何か慌てちゃったし。
そういえば気づいたんだけど、何気にブラストさんだけじゃなく、シェーカさんも魔法のおまけ的な魔法群がユニークスキルってだけで何をしてくるかあんまり知らないんだよね。
分とか…………あ、それから、見えない攻撃?盜賊団の首領倒した時の。
まあ、幻使いと言われるくらいだから何にせよ気をつけないと。
何度も言うけど、このドームから出たら私終わりだからね。ここが私のフィールドだ! ……みたいな?
って、全然ふざけてる場合じゃないんだけど、仮に全部魔法が効かなくても私には文字通り『力』があるからね。何かシェーカさんのことだから効かなそうで不安になってくるけど……大丈夫だよね? うん、大丈夫!
そう自分に言い聞かせた所で、私の行く先不安な戦いが始まった訳だ。
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マート、貓《キャット》という異名を持つ彼は剣の腕はたいしたことがないものの、貓のような目と、身軽な體軀という冒険者として恵まれた特徴を持っていた。 それを生かして、冒険者として楽しく暮らしていた彼は、冒険者ギルドで入手したステータスカードで前世の記憶とそれに伴う驚愕の事実を知る。 これは人間ではない能力を得た男が様々な騒動に巻き込まれていく話。 2021年8月3日 一迅社さんより刊行されました。 お買い上げいただいた皆様、ありがとうございます。 最寄りの書店で見つからなかった方はアマゾンなど複數のサイトでも販売されておりますので、お手數ですがよろしくお願いします。 貓と呼ばれた男で検索していただければ出てくるかと思います。 書評家になろうチャンネル occchi様が本作の書評動畫を作ってくださっています。 https://youtube.com/watch?v=Nm8RsR2DsBE ありがとうございます。 わー照れちゃいますね。
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