《極寒の地で拠點作り》復帰、からの即出発

あのイベントから一週間程度。リンちゃんが復帰してくるまで私とハープ、ケイ君はギルドホーム周辺の修復に勤しんでいた。

「……!!」

ああ、シャード君も居たね。ごめんごめん。

それで修復とは言ったけど、あの男のおで主に東側から南側にかけてが地上部分は全崩落。の部分は南部の川も一部流れ込み、そしてと言うより峽谷と化していた。まさに大慘事、どうしようもない。

という訳でこっちは放置。転落防止に迷路の壁と同じく木で柵作りはしておいたから大丈夫だと思う。

溫泉の方はし建が破壊されたけどそこもあまり問題無い。だから私達がやったのは迷路の一部作り直しをして、あとは三人で何かやったり神様と駄弁ったりであの時が噓みたいな平和さをじていた。

そんなことを続けていると、ある日一週間ぶりくらいにリンちゃんがログインしてきた。復帰、ということなのだろう。

「皆さん、ご迷をお掛けしました。修繕作業も任せてしまって…………」

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リンちゃんは深々とお辭儀をして申し訳無さそうに言うけれど私達はそんなこと気にしない。

あの時、リンちゃんがログアウトしてから本人から聞けば嫌なことを思い出してしまうかもということでリザから何があったのかを聞いたけれど、改めてというか更に男への怒りが湧き上がってきた。だけどそれと同時に、ここで捕まえられて良かったとも思った。

「いいのいいの。リンちゃんが安心出來るならそれで良かったんだから」

「ユズの言う通りだよ。それに私達が勝手に作業始めてただけだし。ケイもそう思うわよね?」

ケイ君は自分に振られると思ってなかったのか、ハープに若干戸いながら応える。

「え? あ、ええ! 勿論じゃないですか!」

「……ほんとに思ってた?」

「當たり前ですよ。リンが無事で安心出來る狀態が一番なんですから」

今度は私がふざけてじとーっと目線を送ってやると、そうやって真面目な表で返された。それを見たリンちゃんがハッとした様にそう言い放ったケイ君に話しかける。

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「あ、あの、ケイさん……」

「どうした?」

「遅くなりましたが、あの時は助けて頂いてありがとうございました」

あの時、あの時? あの時あの時…………ああ、あの時か! リンちゃんが突然ケイ君に謝し始めたせいかただ単に印象にあまり殘ってなかったからかもしれないけど、あの時を連呼してしまった。

「あの時って?」

「ああ、ハープは見てなかったんだよね。ケイ君、カッコよかったよ? ね、リンちゃん?」

「え? あっ、はい! とってもカッコよ……あ」

そこまで言った所で、言ってて恥ずかしくなってしまったみたいでドンドン紅くなるリンちゃん。可い。

「カッコよ……?」

そこに意地悪くハープがってくるものだからドンドン紅くなって俯きかける。

「は、はいぃ…………かっこ、よかったです……」

するとリンちゃんは消えりそうな聲でそう呟いた。きっと今のリンちゃんの頭の中は、跳びついてきてぎゅっと力強く抱き締めてきてを張って自分のことを守ってくれる爽やかイケメン化したケイ君が、

『リン、大丈夫か!?』

とか相當化されて言っているんじゃないかと思う。あ、別に二人のこと馬鹿にしてる訳じゃないよ? 元々ケイ君も形だと思うし、良かった時の思い出をその時よりも良くじてても変じゃないからね。

「あっ、神様! 神様も何か言って下さい!」

慌てて話を逸らそうと必死なリンちゃんは黙っていた神様に助けを求める。

「む。今まで私が空気だったというのにようやく話しかけて來たかと思えば救いを求めるか」

しかし無にも神様は拗ねて手を差しべなかった。自分からってくればいいのに。憐れ、リンちゃん。

「…………」

「おーい、ケイくーん?」

「へっ? ……な、何でしょうかっ?」

それでこっちはこっちでボーッとしてた、リンちゃんのこと見て。

「ケイ、どうしたのさー? んー?」

ハープと來たらケイ君のこと肘で突いてニヤニヤしてる。

「うん。まあ、微笑ましいよね」

私としても二人の雰囲気が面白かったり可かったりするので何だか和む。だけど弄りすぎても可哀想なので助け舟を出してやる。

「でさ、いきなりだけどアップデートで來たじゃん?」

本當に突然の話題切り替えで何か流れが変だったけどまあ大丈夫でしょ。

「それってアレ? 『第二の街』って奴?」

「ああ、それなら私も知っているぞ」

「あれっ、神様居たっけ」

「ハープ、お主…………いや、いい。それでだな」

もうこの流れにも定番になってきた。そのせいか、神様ももう諦めることにしたみたい。

それで、神様からの報はだいたいお知らせの通りでちょっと詳しくなった程度であった。まあ、行って中見て來いってことなんだろうけどね。

「へえ、最初の街には無い新しい娯楽施設ねー」

「それに伴って新マップってことだからそっちも楽しみだね」

「私、容院とか行ってみたいです!」

「じゃあ最初そこにしましょう。出発はいつにしますか?」

「今」

私も含めて口々に々言う中、ケイ君が出発の話をしたのでそう即答してやった。思い立ったが吉日だ。

「即答ですか。それから今、と」

「大丈夫大丈夫! 道中もポーションし買えば他は何とかなるから」

「えぇ……? その大丈夫大丈夫の勢いでつい最近死にかけたんですけど…………」

私が自信満々に返すと、ケイ君は呆れ気味に応えてきた。

「そんなことあったっけぇ? あははー?」

だけど私はそんなこと知らない。巖がどうのこうのなんて私は知らないのだよ。

「私がいない間にユズさんが危ない人に……」

「あれ? リンちゃん、ユズは元からあんなじだった筈だよ?」

「うむ。違いない」

「神様のお墨付きですからね。これでユズさんは誇りあるメルヘナーですよ!」

「み、皆して酷い……ぐすっ」

私何も変なこと言ってないのに皆が、特にケイ君が意地悪なこと言うものだから、悲しくなってきて涙が出てきた。勿論噓だけど。

「で、どうするのだ。お主ら」

「え? 勿論今からだけど」

「あれ? ハープさん、ユズさんにあんなじだったからてっきり反対なのかと」

「殘念だけど反対派は貴方だけよ、ケイ」

「……ん」

ケイ君はハープに告げられた後リンちゃんを見遣ったけれど、そこでもコクンと頷かれてしまった。殘念、ケイ君。

「あー、もう! わかりましたよ! ユズさんは強いですし問題無いですね!」

そしたらヤケになって了承してくれた。別に最後のはいらなかったとは思うけど。

「んーじゃ、最初の街経由でれっつごー!」

「おー!」

「む。し待て」

皆の了承を得た所で早速行こうと気合いをれてたのに神様に水を差された。

「……何ですか」

「そう気を悪くするな。お主らすっかり忘れているだろうが、ギルドホームのレベル上げの話だ」

「えっ?」

「おおっ!」

言う通り、完全に忘れてたけれどそれを聞いて凄く気分が高揚した。

「……?」

「ギルドホームってレベルとかあるんですね」

一方この二人はキョトンとして私とハープのはしゃぎを傍で見ていた。そういう境遇に無かったリンちゃんと元々ソロだったケイ君が細かい説明事項に気づかなくてもしょうがないことだ。

「二人はまだわからないかもだけど、とにかく凄いんだよ」

「それで神様。今回は何を集めてくれば?」

「ああ、毒杯……『邪の毒杯』でいい」

ハープが材料を聞くと神様はそれだけ答えた。

「え? 一つだけでいいの?」

「ああ、問題無い。ただ、一つだけということはどういうことかお主らならわかるだろう?」

「難易度高い、ってこと?」

そういうことだ、と神様は言う。

それもそうか。ギルドホームは今Lv.3だからね。最大何レベルまであるのか知らないから何とも言えないけど、設備としては申し分無いからそれ相応の試練であるのが當然だろう。

尤も、私達に生産職は居ないので鍛冶場とかの施設は使ってないから割と損してると思う。今度、良い職人さんブラストさん辺りに紹介してもらおっと。

「お主ら、怖気付く……訳もないか」

「何ですか。自分で言って自分で否定して……まあ、確かにそうですけど」

「逆に燃えてくるよね」

「燃えてくるかどうかは知りませんが心強い味方、もとい敵にすると怖い人がいるので」

「よ、よくわからないですけど皆さんと出來るなら私もっ!」

ケイ君が私とハープ、どっちのことを言っているのかは知らないけど、とりあえずそれは置いといて皆の考えはどちらにしろ変わらない。

「…………わかった。それでは的な場所を教えようか。そうだな――――」

そんなじで神様から場所を教えてもらい、私達は改めて気合いをれて一旦最初の街に向かったのだった。

最早見慣れた景と敵モンスターを越えて最初の街に著いた。

「あー、何気に來るの久しぶりだね」

「そうだね。最近は修復とかもあったし何より間に合ってたからね」

HPとかMPはギルドホームで回復出來るし、レベル上げやらで戦闘になっても基本一振りで倒せるからポーションとか消費アイテムもあまり必要無かった。今回は新天地なので何があってもいいように買いに行く。

「なんか人がいつもよりないですね」

「前の私だったらその方が助かってたんだろうね」

「どうして…………ってあー、なるほどなるほど」

納得した様な顔を見せたかと思えば今度はニヤニヤして覗き込む形で見てくるハープに対して、

「どういうことですか?」

「リン…………想像出來るだろう?」

この中で唯一詳しく知らないであろうリンちゃんは純粋そうな目で見てくるものだからたまらない。そしてケイ君、君は前のイベントの途中に間接的に聞いただろうから今ので察したんだろう。でもその言い方は何か悪意をじるよ?

そんな時、私は嫌な気配をじた。

「っ! やあっ!」

「ユズさん!?」

突然の私が杖をスイングする行にケイ君は驚いた。何故そんなことをしたかと問われれば、その嫌な気配というのが何か投擲してきたので振っただけ。というか、これに反応出來てる自分が居ることに一番私が驚いた。

「ハープ!」

「言われなくともっ!」

とりあえず恨まれる様な覚えは逆恨みならあるのでハープに聲をかける。だけどいつ見ても流石だね、早いし速い。

街の中でこんなことやって、辺りがザワザワしてるのは私の存在に気づいたからではないと信じたい。まあ、もう気にしてないんだけどさ。

「くっ……離せっ」

「暴れないで」

そして私達が追いつくと、そこにはハープに屈して悔しそうなお兄さんが組み伏せられていた。

「どうしてこんなことしたのかな」

私はしゃがみ込んで、所謂ガチトーンってじで話し出す。だって不意打ちだしここにはリンちゃんもケイ君も居るんだから危ないでしょ?

「ヒッ! あ、ああ……くッ」

そうしてやったら一度怯えてから元の悔しそうな表に戻った。そんな怖いかな、私。

「どーする? 言いたくないみたいだし、その手のギルドに送りつける? それとも私達でどうにかしちゃう?」

「その手のギルドが何かわからないけど、ここはアレだよ…………『心の闇』」

はい、最近完全に忘れてた心の闇。シェーカさんの時も例の団長の男の時もこれ使ってればもうちょっと有利になったかもしれない。

それでこのお兄さん、もうちょっと耐えてくれると思ったんだけど意外と一分経たずに洗いざらい話してくれる気になったらしい。相當いやぁな過去がおありで。それが増幅されて頭の中を駆け巡るみたいだからたまらないね。

「それで、話してくれるんだよね?」

「ああ、話す話す! だからもう……」

「うん。だからもうあの話はしないよ」

「ヒッ」

相當響いたみたいで私がニィッと脅すつもりで、言いかけた言葉の続きを話してあげると悲鳴をらすものだから完全に服従モードだ。

で、その後話してくれたのは何というか予想が外れた。私としては何処か…………うーん。例えばタクト、君の所とか? あれ、何て呼んでたっけ。まあいいや、タクト君で行こう。今頃何してるかなぁ。

話が逸れたね。それでまあ、特に裏に何らかの組織があるという訳でも誰かに唆されたという訳でも無くて、ただ『恐怖の魔を単獨で倒した名譽』とやらがしかったみたい。それを聞いて呆れてしまった。そんな特に価値なんて無いだろうに。あったとしてもこうやって返り討ちにしてあげるよ。

「っ、これでいいだろ……?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう、じゃあね」

「えっ?」

私はハープに目配せしてサクッとやってもらった。私にだって慈悲はあるから詮索はしない。

「ふう…………さ、行こっか!」

「ふぇ……」

「どうしたの?」

「ひ…………あ、いえ何でもないです!」

私が一仕事終えて、振り返ってリンちゃんとケイ君に何事も無かった様に再開しようとすると、後ずさるリンちゃん。そして更に手をばすと後ずさりプラス悲鳴を上げられたと思ったら誤魔化された。

えっと、どういうことなの?

「ちょっと、どうしたのさリンちゃん!?」

「っ、あはははっ!」

「恐怖の魔って言われる所以が判った気がします…………」

ハープはそれを見て堰を切ったように笑い出すし、ケイ君は訳わかんないこと言い出すし、もうなんなの?

「もう……さ、ほら。早く行こう?」

「っはは! わかった、わかったわよ……ふふっ」

これだけ言っても笑いが止まらないハープと妙に距離のあるリンちゃんと何かを納得したケイ君を連れて私達は薬屋に向かうのだった。

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