《極寒の地で拠點作り》謎の

「うわぁ……」

上り坂を上りきると今度はすぐに下り坂で、そこを下りきった先にはさっきの空とは比べにならない程度の空が広がっていた。

「なんかダンジョンっぽくなってきたね」

「でも々と毒々しいです」

リンちゃんの言うことは比喩ではなく、辺りには毒の滝が滝壺へ飛沫を撒き散らしながら流れ落ち、溜まった毒が今度はを行き、毒の川となっている。

「どうやって渡ろうか」

「淺ければポーション使うなり、リンの回復魔法でどうにかなるんですけどね」

「じゃあちょっと、私が調べてくるよ」

この環境は、アンチ狀態異常のエキスパートの私にしてみればどうってことは無い。

「良いの? さっきみたいに変なのだったら…………」

「大丈夫大丈夫。どちらにせよ、私が行けばわかることでしょ?」

「うーん。じゃあ、危なくなったら戻ってきてね」

「宜しくお願いします」

「わかったよ」

私はなるべく川幅の狹い所を選んでしずつ毒に浸かっていく。濡れるけど、裝備のセット効果なので一箇所でもげば毒の餌食だ。それはしょうがない。後で火魔法で乾かそう。

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……それにしても、

【ユズは毒に侵された!】

【ユズは毒狀態を解除した!】

【ユズは毒に侵された!】

【ユズは毒狀態を解除した!】

【ユズは毒に侵された!】

うるさいのなんのってもう。

ログを開いてみると案の定バーってなってて、もう字面からしてうるさい。通知音もうるさい。

まあでも逆に言えばそれだけだから特に問題無く進める。

「あー、ここ深いや」

「駄目ですか」

「他の所行ってみるよ」

引き返して陸に上がると、の毒が雫を作ってポツポツ落ちる。あー、だいぶ毒染み込んじゃってるね。重たい。ネバネバベトベト型じゃなかったのが救いだ。

そうして何ヶ所か回った所でやっと大丈夫そうな場所を見つけた。

「ちょっと川幅広くなってるけど大丈夫?」

「ええ。これくらいなら皆死なないと思います」

「私に任せてください」

「よーし、じゃあ皆で渡っちゃおう」

皆はなるべく早く渡り、且つ転ばないようにしなくてはいけない。転んだらその分だけ渡り切るのが遅くなって、萬が一ハマってしまったりしたら死んでしまうから。その為に、一応私が最後尾に居る。

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「それじゃカウントダウン。さーん、にー、いーち……今っ!」

先頭に居るハープの聲で皆でスタートを切った。

「きゃっ!」

「うぅ、やっぱ抵抗あるぅ……」

「この気持ち悪さはやはり慣れませんね……」

毒の中をバシャバシャ言わせてどよーんとした雰囲気で進む。

「皆、頑張れー!」

私と言えば、何もしてあげられないので応援しておく。これで雰囲気はしくらいは良くなるでしょ。

そんなこんなで無事渡ることが出來た。とは言っても、この間たった三十秒くらいだけれども。

「リンちゃん、お願い!」

「は、はい……!」

まずリンちゃんが自分にポイズンヒールをかけてからハープ、それからケイ君へとかけてあげてから更にヒールをする。リンちゃん大活躍だね。リンちゃんもキツいだろうになんか悪いや。

「あー、生き返るぅ」

「お疲れ様。渡る所はまだあるけどなるべく楽な所探すから頑張って!」

「うん。ありがとね」

それからはこの繰り返し。後から、私がおんぶしていけば良かったんじゃないかな、とか、ハープは向こう岸の誰かに向かって地使えば、とか思ったので帰り道はそれを取りれよう。

「いやぁ、もう一生分毒食らったよ」

更に奧へ繋がる道を進みながら、ハープは毒の川の想を述べる。

「そうだ。帰りにポーションの空き瓶で掬えるだけ掬っていきましょうよ」

「良い考えだね。ここなら取り放題だし」

「そう考えるとこのダンジョンも悪くないかもしれませんね」

リンちゃんが笑う。確かにここは毒が大量に採れるから、素材やらトラップやらに使うには凄く嬉しい場所だと言える。

「あ、また空?」

「遠目で見るじ、川は無いですかね」

「油斷しないで。初手がアレだったダンジョンだよ」

私達は慎重に空に向かって歩く。ここまで敵モンスターが出て來てないから、ここで油斷させてりかけの所でいきなり襲ってくるかもしれない。

しかし、襲ってきたのは敵モンスターなどではなかった。

「きゃっ!」

「ん? うわっ! 何これ?」

何かシュッ、という音が聞こえたかと思えば突然、前を歩いていたリンちゃんとハープがを翻した。

「えっ? ちょっ、どうしたの?」

「上からっ、水が……!」

「水?」

「えっと、霧吹きみたいなじでした」

「と言うと何かを吹き掛けられたってことだよね? 大丈夫なの?」

シュッ、という音はそれが吹きかかる音だった。毒とか麻痺とかその辺りの狀態異常だと思ったのだけれど、

「うん。特に何とも無…………あれ?」

「ふらふらします……」

でもその癥狀は目眩に近いじで、狀態異常の表示は無かった。

「肩貸すよ」

「ありがとう……」

「ほらリンも」

「すみません……」

とりあえず中央に見える立て札まで行く。そうやって肩を貸している間にもハープの目はどんどん虛ろになっていく、心做しか息も荒くなって火照って來てる様にも見える。

えっと、こんな即効の風邪なんてあるの? しかもゲームの中で。いやゲームの中だからアリだけどさ。

「立て札、何て書いてあるんです?」

「え? あ、『休憩所』、休憩所だってさ」

「休憩所?」

どうやらこの殺風景な空は休憩所らしい。休憩しろと言う割には罠もあったし設備も何も無い。

「まあ休めるなら休んでいきましょう。二人もこんなですし」

「そうだね。ほら、ハープ。一旦寢っ転がろ?」

「…………」

「ハープ?」

おかしい。ハープは相変わらずの表で反応を示さない。

「おい、リン! リンったら!」

あっちも同じらしく、ケイ君が名前をんでいる。そんな時、

「ね、ハープ。ハープって、ばっ?」

視界が揺らいだ。一瞬私も同じのにやられたと思ったがそうではないらしい。

ハープの顔が目の前にある。私は地面に寢っ転がっている。どうやら私はハープに押し倒されたみたい。

「はぁ……はぁ……」

「え? あの、ハープ?」

ハープの顔は紅し、目にはハートマークが寫っている。なんかお灑落…………なんて言ってる場合じゃない。早く何とかしない……え?

「ん!? むっ!?」

どういうことだろう。これはどんな、え、なに、狀況が、ちょっ、は?

「んっ、ふむっ、ちゅっ」

…………私は、私は今、最高の親友と、を重ねている。それも割と深めの。

「リ、ン! お前……っ!」

そちらを向かせてはくれないけど、そうぶ聲が聞こえた。あっちも同じ狀況の様だ。

さて、どうしたものか。とは言っても私、こんな狀況で冷靜に考えられる程慣れている訳ではないのでどうしようもない。正直言って無理。

気づけばハープはローブをがし始めており、下に著ている方も時間の問題だろう。あぁ、私、の子にやられちゃうんだ。しかもいつも近くに居た親友に。

というか、どうして警告が來ないんだろう。これがハラスメント行為にれていない筈が無い。その理由はすぐにわかった。

ふと、そこからプロフィールとかステータスが見られる、ハープのホーム畫面を開いてみた。ウィンドウの左上にメニューがあり、下側にはリアルタイムでの狀態が調べられる。そこにはHPとMPの數値や狀態異常の有無が表示されている。今はその狀態異常の欄に用がある。

それは有無だけでなく、何の狀態異常にかかっているか見ることが出來る。毒なら普通の毒から猛毒、麻痺なら弱とか強とか。今、ハープは魅了にかかっている。それもただの魅了じゃない。

『魅了(超強)』

超……強? 私自、魅了系の魔法やかかっているのを見たのはないけれど、他の狀態異常と同じで強・中・弱があるのは知っていた。今回はそれらを超越した超強という段階だ。當然そんなは知らない。勿論、普通の方法で解除出來るのかも、だ。

こうしてる間にもハープは呼吸の為に離す時以外は舌を絡ませて、服の側へ手をばそうとしてくる。

…………グズグズしていられないみたいだ。このままだと々危ない。関係的な意味でも貞的な意味でも。

さっき言った、普通の方法というのは回復魔法のことだけど、『普通以外』の方法があるのかと問われれば、一応有ることには有ると答えられる。

魅了、混等の系狀態異常はダメージを與えることでそれが解けることがあるということが知られている。

もう戸ってはいられない。確実に解く方法は、一度になるべく大きなダメージを與えること。

私は押し倒された時に手放してしまったメイスを摑む。大きなダメージとは言っても割合ダメージだし、私が強めにやったら多分ハープ三人分くらいは葬っちゃう気がするので弱めにやる。

よし…………ごめんね。

私は、ハープがを離すタイミングで、杖の先でコツン、とハープの頭を軽ーく叩く。

「うぐっ……!」

すると、ハープの頭上のHPバーがグンッ、と減って赤になった。もう自分が怖いレベル。

「っと、ハープ!」

著崩れた服を直してし吹っ飛んだハープに駆け寄る。

「い、たた……私は何、を」

頭を抑えて、ハープが固まる。その先にはリンちゃんとケイ君が致していた。ああいや、そこまで進んでいる訳じゃなくてハープと同じ程度。

で、ハープは固まってから再び顔を赤くし出す。

「あ、ああっ! ユズ!?」

「うん、私はここだよ」

「そうじゃなくて……その……」

こうもモジモジしているハープは珍しい。もしかしなくても、二人を見てうっすらと魅了にかかっていた時のことを思い出したのかね。

「何? どうしたの?」

「いや、私、さ? 何処まで……やっちゃったのかな、って……」

うっすらというのは本當にうっすらの様で、何をしたのかはっきりとは覚えていないみたい。

ここで私はいつも見られないハープを見て、し意地悪してみたくなった。

「んー? 何処までって……そりゃあ、私の口からは言えないなぁ」

「えっ」

「ハープ、激しかった。意識飛ぶかと思ったよ」

「えっ」

ハープが赤くなりながら固まっている。

まあ噓は言ってない。ハープったら、なかなか呼吸させてくれないんだもの。苦しい苦しい。

「まさかハープが普段から私のこと、そんな目で見てたなんて…………」

「ち、違うの! 私、魅了で……」

「でも、良いの。ハープが正直に打ち明けてくれたから」

「ふぇっ?」

「……私達、もうただの友達で居られないね?」

「そ、それってどういう…………」

「そこぉ! イチャイチャしてねぇでとっとと助けに來……むぐっ」

予想外にもハープが最後、割と照れ気味だったのが驚きだったけど、それも誰かさんのしびれを切らした苛立った聲で掻き消された。

その後、リンちゃんも同じ様に荒療治で正常にしてHPも回復する。赤面するリンちゃんも可かった。それに対応するケイ君はもっと面白かった。

「もう、酷いよユズ!」

「ごめんてば。でもほんとに私、貞の危機だったんだって」

「そ、それは……その……」

一旦、相変わらず顔を赤くさせながら怒るハープだけど、私がソレを指摘すると勢いが弱まるものだから、弄り甲斐があるというものだ。

「あー、はいはい。ここは百合の花を咲かせる場所ではありませんよ?」

「なっ!」

あー、ケイ君がなんか言って來てるなー。ここはちゃんと言ってやらないとなー。

「そんなこと言ったら、ねぇ? ケイ君もリンちゃんとお楽しみだったじゃん?」

「ふぇ……」

「ばっ! 楽しんでなんかいません! リンも魅了のせいでしたくもない相手にさせられて。リンも俺なんかとは嫌だった筈ですよ。なぁ、リン?」

尤も、リンちゃんはアレ以上のことは知らないので、キスオンリーだけどお楽しみだったと私がそう茶化してやるとケイ君は聲を荒らげてそう反論してから、リンちゃんに意見を求めた。

「わ、私は…………」

「あれっ?」

すると、本人は満更でもない反応を返してきたものだから、呆けてしまうケイ君。ふー、満足した。

その後、何回目かの気の取り直しをして再び出発した。気のせいかもしれないけど、なんだかハープの距離が近い様な気がする。最後のあのじもそうだけど、もしかしてもしかしなくてもそうかもしれない。そしてそこに、ハープならいいかなと思ってる自分が居るから更に驚きだ。

そうして、小さくも私達に何か大きな変化を與えたトラップを、私達はなんとか乗り越えることに功したのであった。

『ふふっ……』

「ん? ハープ笑った?」

「え? ううん、笑ってないよ」

「おかしいなぁ……」

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