《極寒の地で拠點作り》更なる魔境化

「神様、ただいま!」

「ただいま帰りました」

「……ただいま」

「おお、帰ってきたか」

神様は皆が挨拶すると、喜んだ様な聲で返事してくれた。唯一ハープだけ何故か張してるけど、レベル上げが楽しみなだけだろう。

「どうだ。例のは手にったか?」

「はい、勿論です!」

私はインベントリを開いて邪の毒杯を見つける。『だいじなもの』欄には混沌の鍵や転移の石程度しかないので探す手間が無いから助かる。

私はそれを出して、神様に提示する。

「む?」

でも神様は何故かあまり良い反応をしてくれなかった。

どうしたって言うんだろう……あ、まさか。

「もしかして…………偽だった?」

そんな様子なものだから、偽なんじゃないかと思ってしまった。私とて自信満々に出したけど、あのダンジョンを攻略したのは実質ハープだ。邪の毒杯は、同時に見つけたとはいえハープは私よりも狀況をよく知っている。だから、ここはハープに聞いてみるのがいいかな。

「ねぇ、ハープ。何か知ってる?」

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「……え、何? 何を知ってるって?」

「どうしたのハープ。そんなにガチガチになっちゃって」

そのハープに話を振ってみれば、ビクッとしてから返事してきた。やっぱり張だと思ってたけど、調悪いのかな。

「ううん! 何でもないよ! んと、私もね、ユズが見つけるまで気づかなかったからわかんないや」

「そう? なら仕方無いや……で、神様どうなんですか?」

「あ、ああいや、問題無い。邪の毒杯はこれで間違い無いぞ!」

「変な神様……」

ハープも神様もやっぱり何処かおかしい。でもどうしてそんななのかは私にはわからない。ケイ君とかリンちゃんはもっとキョトンとしてるし。

「でさ、神様。早くギルドホームのレベル、上げちゃってよ!」

「そう急かすでない…………ほれ、終わったぞ」

「えっ、もう?」

「何も変わってないですよね」

「あはは、相変わらずわかんないくらい早いね」

いつも通りの雰囲気に戻ったハープは未経験の二人の様子を見て笑う。しょうがないよね、実際早いし。

「Lv.4だったっけ。今回は何が変わったんです?」

「ふふ、驚くでないぞ?」

「勿ぶらなくていいよ」

「はは、すまないな。では外に出てみるといい」

変化が顕著でわかりやすいぞ、とハープに文句を言われても結局直接言わない神様。とりあえず言う通りにすればわかる筈なので、大人しく外に出てみようと思う。

「……なんか風の音しない?」

混沌の鍵で、もやの道をカットして出口へと向かう廊下の途中、ハープが突然そんなことを言い出した。

「確かに、びゅおーってじのが聞こえます」

「びゅおー?」

試しに耳を澄まして聞いてみると、臺風の時に聞こえる様な強い風の音がする。

「でもこれくらいの風ならたまに吹きますよね」

リンちゃんの言ってることは尤もなんだけど、何となく嫌な予がするんだよね。で、こういう時の嫌な予は大抵當たる。つまりは。

「よっ……あれ」

「ハープ?」

「開か、な…………っと、開いた!」

「寒っ!」

若干開けた扉から流れ込んだ風は私達に當たる。

もう慣れた筈の荒野の冷たい風は、確かにとても寒くじられた。

「あ、あれ? ここ、どこ……」

「もっと北に行った所の雪山の中じゃないですかね」

「いやいや、おかしいでしょ。り口のドア開けたら雪山って」

「冗談です。でもこれくらい視界真っ白って相當ですよ」

「こういうの、銀世界、って言うんですか?」

「どうなんだろう。いやぁ、でも一面の、って呼ぶには視界が狹すぎると思うんだ」

私も含め、皆して口々に言うのは目の前の景。

吹雪、雪嵐、ブリザードだ。既に積もってるし、何これ。

とりあえず見たし、戻って神様に詳しいこと確認しよう。

「はは、驚いたろう」

「驚いたも何も、アレってどういうこと?」

「どういうこと、か。ただの『気象作』だが」

「どう『ただ』なのかわからないけど、あの大雪が今回のレベルアップの影響なのね」

「そういうことだ。アフィポス城……私が言うのもなんだが、どうもセンスの無い名前だな。まあいい。Lv.4ギルドホームは『気象作』が特典だ」

ちょっと自れてから、神様は説明を始める。

「気象作って言うからには他のも出來るんだよね? 勿論止めることも」

「他と言えば出來ないことも無い。だが私はこのままが良い」

「なんで?」

「好み」

一言だけ言い放った神様は、止めるつもりもさらさらないとも言う。

「……我が儘?」

「そうだ、悪いか」

「い、いや、無いけど……さ」

神様ってたまにこういうことあるから、その度にキャラ崩壊したかと思い込んじゃう。

「安心するといい。積もる雪の高さ上限はしっかり設定している。上限が來ても雪は降り続けるが、不思議な力が働いて積もらなくなる。だから安心して出り出來るぞ」

不思議な力っていうのが何か気になるけど、そこはそういう設定なんだと心に留めておこう。まあ、どう足掻いても雪は降り続けるってことだ。

「範囲ってどのくらいなんですかね。まさか川以南とか行っちゃいます……?」

「そのまさかだな。ここを中心とした円狀で、基本柵のし外側と言った所だ。外周の柵は完全な円でなく南側が大きく潰れている形になっているだろう? だからその南側だけは範囲が広くじるだろうな。あぁ、もっと広く出來ればいいというのに、殘念だな」

殘念か。神様にとってはそうだけど、プレイヤーにとってはキツい。

私達の場合は、そもそも私達のギルドホームなので、帰りは転移の石で飛べるからまあ何とか。行きも南に抜けられる抜けがあるから、そこが塞がれなければそれで大丈夫かな。

問題と言えば溫泉の活用くらい。これからまた集客することがあったとしても、こんな大雪の中來てくれるかなぁ。溫泉の為に來てくれたなら迷路通らなくてもいいようにはしたけどさ、これじゃまたマッチポンプになるよ。

私達側が発生させた大雪で疲れさせて、私達が用意した溫泉で寛いで謝される……こんなひどいことそうそう無いね。

実際の範囲をまだ見てないからわからないけど、それでも神様基準の『そこそこ外側』は相當なんじゃないかな。それこそ南側は川挾んで山の方まで到達してたり。あぁ、お客さんの苦労が増えるよ…………。

でも防衛面では最高なので、とりあえず溫泉の問題は後にしておく。そして、その後も説明は続いたけど、

「特典と言ったが、報酬はまだあるぞ」

「えっ、何? 何があるの!?」

「部屋が増えた」

「もういらない……」

「それから収納が増えたぞ」

「それもいらない……」

「鍛冶場、その他施設の質が上がった」

「そもそも私達使ってない……」

ってやりとりがあったりして、まあ大雪以外は正直そんな嬉しくない。今度のレベルアップはそんな所だった。

元々ギルドホームに帰ってレベルを上げる他、何をする訳も無く、そこでログアウトのつもりだったのでこれでお開き…………の筈だったんだけど、アレを神様にも考えてもらおう。

「ねー、神様」

「む。ユズ、どうした?」

「エンブレムってわかります? ギルドの印みたいな奴」

「ああ、わかるぞ。で、それがどうした」

「まだ私達の、作ってないので神様にも一つ提案してしいんです」

「ほう。そうか、わかった。快く引きけさせてもらおう」

「ありがとうございます」

良かった。まあ多分やってくれるとは思ってたけどね。

そんなじでやるべきことはやり終えた。長い一日だった。いやほんと、危ないダンジョンだったよ。んな意味で私達の関係がどうにかなりそうだったし、最後の方なんて私があんなだったからよくわかんなかったし。

「く、んぅぅ……っと」

そうして私は現実世界に戻った。機を外してびをして立ち上がる。疲れた疲れた。

今日はもう、ご飯食べてゆっくりお風呂って、ししたら寢よう。エンブレムも考えるし、暫くは平和だろう。そう信じたい。

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