《極寒の地で拠點作り》飛んでみた
「えーと、あっちの道から降りてきて」
「小ギルドのギルドホームを見つけて」
「大丈夫ですか?」
「うーん、無理」
道中、適當な所でログアウトしてお晝食べてから、カナカさんとラギさんとこのギルドホームに向かっているのだけれど、案の定迷った。実際行ったことのあるのが私とハープだけなのが困ったもので、私達二人が頑張って頭から捻り出すしかない。
今は谷に向かわない方の坂を下って、あの時攻略した小ギルドの片方の近くに居る。
そういえばあの時、小ギルド數ヶ所行ったのとカナカさん達のギルド行ったの別々の日だったんだよね。でも二日目もこっちの方通ったのは覚えてる。それは間違いない。
「もういっそのこと、飛んでみる?」
「飛ぶって……まさかあの重力をどうこうする奴?」
「違う違う。アレだと周りに被害出ちゃうから」
それに空中じゃかなり不自由になるからね。いちいちケイ君に壁出してもらうのも大変だろうし。
「『暗黒球』!」
「これって……例の中が空の、ですか?」
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「そういえば皆の前で見せたことあるのはその形だけだったね。でも今回は違うよ」
「……大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫! ……とは言ってもちょっと危ないかもしれないから気をつけてね?」
皆に注意したら、暗黒球を変形させる。
まず平べったい円柱を作って皆を乗せる。
「皆乗って!」
「えっ? ま、まさかこれで……」
「危ないってレベルの話じゃないですよ、これ」
まさか、流石にこれで完はない。高所落下で死ぬなんて冗談じゃないよ。
私は更に外側に壁を作って桶みたいにする。これで一応は柵の役目となって安全が上がる。あんまり高くし過ぎても見渡せなくなっちゃうから、私の腰上くらいの高さにしておいた。
あとは摑んだり抱き締めたりしてを支えられるように、床から背よりも高い棒を突出させておく。
手すり付き背もたれ付きの椅子とか作りたかったんだけど、あまり複雑なは作れないらしくて無理だった。複雑の基準がよくわからないけど、この程度のは作れるみたいだったからこんな形にしておいた。
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「信じてるからね!」
「そ、そんなに言う? 信用されてないなぁ」
ハープ始め、リンちゃんケイ君にも心配の目を向けられてるけどそろそろかしてしまおう。
「じゃあ、行くよ!」
「っ!」
私が杖を掲げると、ゆっくりと暗黒球がき出す。別に杖をかす必要は無いけれど、作するにあたって意思を伝えやすくなるからやってる。
「浮いてる!?」
「とりあえずは浮いたから良かったよ」
今までは飛ばすことはそこまで屆かせるための手段で、地面に置いたり設置したりして使うことが目的だったから心配だったけど、飛ばすことだけを目的としても問題無いみたいだ。
私はドンドン高度を上げる。だいたい上がりきったかなと思えた頃にはかなり遠くまで見渡せるようになった。
「よし、探そうか」
「ユズ……凄いね」
「え、景が? そうだね!」
ハープは表を変えずに一旦溜め息を吐いて、また、凄いねと呟く。してるのかな?
リンちゃんとケイ君にも探してもらってる。何度も言うけど二人は彼らのギルドホームを知らないのでギルドホームらしき建を見つけたら教えてもらうことにした。
「ん、しょっ…………見えない」
そう嘆くのはリンちゃん。見えることには見えるじだけど安全の為に柵を高くしてるから、下の方がなかなか見えにくい。だから助けてあげようと思う。
「んっ、うぅ……わっ!」
「どう?」
「ふ、踏み臺? ありがとうございます……!」
ニュッ、とリンちゃんの足下から現れたのは四角い。踏み臺みたいなだ。この程度なら単なる突起の範疇なので問題無く作れる。
四人全員がフルで探せるようになってから暫く、遂にソレは現れる。
「ハープさん、あそこはどうですか?」
「どこどこ? ……あー、あれね。ちょっとユズ!」
「なーに? 見つかった?」
「あのギルドホーム、それっぽく無い?」
二人の指差す方向に、森の中でちょっと開けた土地があり、そこに何か建っているのが見えた。この辺りならあの日いた範囲にると覚的にはそうだと言っているから、まず調べる価値はあるだろう。
それで私は暗黒球をそちらに向かわせる。すると、あの二日目の時に確かに見たギルドホームが建っていた。ちゃんと見つかって良かった。
「よし、じゃあ降りよっか……ん? どうしたの皆、そんながっしり棒に摑まっちゃって」
「いや、降下する時も油斷しちゃいけないと思ってね」
「降りるじゃなくて落ちるになるかもしれないですし」
「わ、私、絶系慣れてますから……っ!」
リンちゃんの優しさあふれるフォローをけたことだし、慎重に下方向へ暗黒球をかす。
既に見張りの人は私達を視認しており、中に人を呼びに行った。カナカさんかラギさん、居るといいなぁ。
それで、私達は無事地面に降り立つことに功した。初運転は事故無く安全に出來た。
「これならもう免許取ったも同然だね!」
「うん! 帰ったら免許証作ろうか! ……で、こんなこと言ってボケてないで、これ開けよう?」
「う、うん。一応、乗ってくれるんだね……」
意外な対応のハープにしみじみと優しさをじられたので、とっととけるようにしようと思う。
「っと。はい消したよ」
「うわっ、開いたぞ!?」
どうせ後でまた使うので完全には消さずに壁だけ消す。すると案の定、このギルドの人達に囲まれて全員が構えていた。
その中から見覚えのある顔を二人程見つけた。
「カナカさん! ラギさん!」
「えっ、貴方達? どうしてここに? ってそれより何よ、その変なの!」
「落ち著け。困ってるだろ……それで? いったいどうしたんだ。空飛ぶ円盤に乗って、ウチに侵略しに來たのか?」
はははっ、と冗談を言ってラギさんは笑う。でもまあ、そう見えてもおかしくなかったかも。
私はラギさんにかくかくしかじか、用件を伝える。すると快く了解してくれて、立ち話もなんだから、と二人の案の元でギルドホームにった。終始、メンバーの人はざわついていたけどラギさんの一聲で元の配置に戻っていった。
連れていかれた先はり口ってすぐの応接室。騒ノ會は奧に客間があってそこまでは魔法陣で行くけど、罠を見せない仕組みは々あるらしい。
「さてさて、我らがギルド、『ソード&マジック』へようこそ。安直なギルド名だが気にしないでくれ。ウチの放浪団長が付けたんだ」
やっとギルドの名前を知ることが出來た。もしかして、それが『剣と魔法』的なじなのは、ラギさん率いる殆ど剣使いのグループとカナカさん率いる杖使いのグループがあるよってことなのかな。
「で、だ。侵略云々は置いといて。エンブレムだっけか」
「はい、エンブレムの柄の由來です」
「どうしてまた……ああ、エンブレム作るのね」
「聞いて回ってるんだったよな。それで? ここの前は何処行ったんだ?」
「前は、騒ノ會のブラストさん達ですね」
「ぅふっ……ぶ、ブラスっ!? げほっげほっ!?」
「うおっ! カナカ、大丈夫か!?」
咳き込んだカナカさんをラギさんは驚いて背中をさする。
「ぐ……だ、大丈夫よ」
蹲りながらカナカさんはサムズアップする。今にも力盡きそうなじだけど。
「……そうよね。たった四人のギルドでも、序列二位様と四位様が居るんだもの。繋がりがあってもおかしくなかったわね」
「おいおい、そんなこと言ったら俺達だって……」
「そうよねぇ……はぁ、団長今頃何処に居るのかしら」
「繋がり云々はいいとして、位置報くらいは開示してほしいものだな」
暫くして落ち著いてきた頃、カナカさんが口を開いた。ラギさんと話す中でもわかるけど、やっぱりカナカさん、テンションの高い低いがわかりやすいなぁ。
「うーん、やっぱりブラストさんって凄い人なんだね」
「ええ! 凄い人も何も! 初期頃、初期マップでの東側が、ギルドがギルドを吸収、大ギルドの立で爭いの絶えない地となる中でたった一つだけ吸収することもされることも無く、そこに在り続けたギルドがあるの! それが騒ノ會よ!」
ハープに投げかけた言葉だった筈なのに、またもやカナカさんが飛び込んできて、熱烈なマシンガントークを繰り広げてきた。凄い切り替えだよ、ほんと。
「すまん。また、だ……」
こうなるとやっぱりラギさんもお手上げの様で、どうしたものかと呆れて苦笑いしている。
ラギさんによれば、カナカさんはブラストさんと言うよりかは騒ノ會のファンらしい。どういうルートか、例の興亡についての本を読んだことがあるというくらいには好きみたいだ。
「あーだから! こーゆー訳で!」
「おし。カナカもこんなんだし、団長も相変わらず不在で済まないが俺だけで対応させてもらおう」
「宜しくお願いします」
「うーん。とは言ってもなぁ」
あ、なんかこれ嫌な予。
「言っても……?」
「……見ただろ、エンブレム。で、聞いたよな、ギルド名。そういうことだ」
外にもこの応接室にも掲げてある旗や飾りには、剣と杖がバツ字にクロスしているエンブレムが。そして彼らのギルドの名前は『ソード&マジック』。
まさに、そういうことだった。
「言うまでもないよな。重ね重ね済まない。あれもこれもあの放浪野郎のせいなんだ」
「遂に団長の肩書きが消えましたね」
さっきから、ここまで罵倒される人ってどんな人なんだろう。逆に気になる。あ、そういえば……。
「ラギさんさっき、『そんなこと言ったら俺達だって』と仰ってましたけど、それって?」
「ああ、それか? 恐らく知っていると思っていたが名前挙がったのも一度だけなんだから仕方ないか」
「え?」
「ウチの団長は第一回イベントの第――」
「副長!!」
その時、部屋のドアがバァン、と大きな音を立てて開いた。
「えっ!? なになに! 何があったの!?」
これには話に夢中になってたカナカさんも我に返り、あたふたし始める。テンプレート的な驚きの言葉を発し始めるけど、流れとして問題無いから大丈夫だろう。
「は、はい! 簡潔に申し上げますと、団長の帰還です!」
「なんだって!?」
報告をした人も聞いたラギさんも凄く驚いてる。ラギさんの場合、今話してたことが団長さんのことだったので突然のことに驚きが加速している様だ。
「それで、団長は何処に……」
「今、表に……ってあれ!?」
「どうした?」
団員の人が仰け反って一度部屋の外を確認すると聲を上げた。そして、ラギさんが近づくと見覚えの無い男の人がずいっと姿を現した。
「っと、元気だった? ラギ……あと、えーっと、カナタ!」
「カナカよ!」
「あはは、冗談冗談!」
見た目優しそうなじの男の人はカナカさんを満面の笑みでからかってから、こちらに気づいたみたいだ。
「お、あれ? お客さん來てるの?」
「そうだよ。丁度、お前の話してたんだ」
「そうなの? タイミング良かったね」
ラギさんと話してから、男の人はこちらに歩み寄ってくる。
「……初めまして、僕はこのギルドの団長をやってる『ルーク』だよ。よろしく!」
そうして私達の前で止まった男の人は、再びにっこりと笑ってじ良く自己紹介をしてきたのだった。
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
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