《極寒の地で拠點作り》早くも帰宅
「僕はルーク、よろしく!」
「こちらこそ」
にっこり笑って自己紹介してきてくれたので、こっちも笑って返す。
するとラギさんはあぁ、と聲を出した。
「やっぱり団長。お前もわからないか」
「二位様と四位様と九位様が揃うと……何て言うか、壯観って言えばいいのかしら」
「えっ?」
九位って、第一回イベントの? まあこの流れで他は無いか。
それにしてもブラストさんやこのルークさんと言い、こんなない私の他ギルド流の中でホイホイ上位者に會って良いものなのかな。
「あっ、この子アレだ! 表彰式で変なこと言った子だ!」
私の聲に続き、ルークさんは私を指差してぶ。
なんだろう……私、直接面識無い人には魔以外これしかないんだろうか。
「変なこと?」
「あ、ああっ、何でもないです! 気にしないで……」
カナカさんが頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。知られていいものじゃないからね。止めておこう。
「ユズ、良かったね。久しぶりに魔って呼ばれなかったじゃん」
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「なっ、良くないよ!」
それでもってハープが小さな聲でそんなことを言ってくるものだから堪らない。
ハープは良くも悪くも知名度低いからね。一緒に居ても私が何か言われるだけで、もしかしたら連れだと思われてるかも。まあ本人がそれでいいって言ってるし、別にいいのだろう。
あーあ、私も世間的な知名度ゼロになってのうのうと暮らしたいよ。
「で、お前はまた山に篭ってアレ採って帰ってきたのか?」
「うん。消費アイテムだからね、無くなっちゃうと僕雑魚になるから」
「……?」
アイテムを使い切っちゃうと弱くなる? ステータスを一時的に強くするアイテムでも使ってるのかな。
そうやって私が考えていると、その答えをカナカさんが教えてくれた。
「あー、えっとね。『ぼむぼむいわ』っていうモンスターが山の中に居るのよ。団長はそのモンスターがドロップする、発するアイテムを使って戦うのよ」
ぼむぼむいわ……なんかすごい、名前が可い。その點々を丸にしたらもうだいたい、そこら辺に幾らでも居るマスコットキャラクターに付いてそう。
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「ちょっ、カナカ! なんで僕の技言っちゃうの!?」
「別にいいじゃないの。設置場所がバレなきゃいいんだし。耐えられるとしたら大盾使いくらいでしょ」
すると、ルークさんはび出してカナカさんに訴え出した。それをカナカさんは理屈で抑えて軽く流そうとする。
「いやいや、真似されちゃうと……!」
「真似する?」
私達は総じて首を橫に振る。だって消費アイテム頼りだと戦闘中無くなっちゃったらキツいし、何よりその度に取りに行くのが面倒だ。
「だそうよ」
「だろうな。それにこの後も加工に加工を重ねるんだ。よくもまあこんなので戦おうとするよな」
「ほんと。消費アイテムで九位まで行ったなんて、よくやるわね……」
「はは、イベントって聞いて張り切って集め過ぎちゃったからねー」
世の中にはこういう人も居るんだなぁ。普通に聞けば、あー本武の傍らネタでやってるんだろうなぁ程度に見えるけど、この人ほんとに一筋なんだもの。ゲーム楽しんでるよ。
うーん、でも発か……リンちゃん、嫌なこと思い出してなければいいけど。
「あ、そういえばかなり遅れて聞くけど、皆は今日何しに來たの?」
「エンブレムの柄の由來についてだとさ。あの説明の必要も無い凝ってもいない安直な柄のな」
「シンプル・イズ・ザ・ベストだよ」
「それを言ったらお終いね」
三人共、仲良さそうだね。放浪って言ってたものだから、相當駄目なじの団長さんだと思いかけてたけどそんなことは無かった。ブラストさん達とはまた別のギルドの人達との付き合いなんてそうそう無かったけど、これなら仲良く出來そうだ。
暫く話をした後、いつまでも居ても迷かけちゃうし、最終的にエンブレムの柄を決めてシールを買いに行かなきゃいけないのでそろそろお暇することにした。
「じゃあ私達はこの辺で……」
「あ、もう帰っちゃうの?」
「はい。今日はありがとうございました」
「何もしてないけどな」
「また來なさいよ」
そして私達は表に出る。見送りはいいって言ったんだけど、ルークさんが、私達が変な乗りに乗ってきたって言うのをカナカさんから聞いたものだから興味津々でついてきた。
挨拶をしてから乗り込んで壁を出したり、し飛び上がってみせたりする度、
「おおー!」
聲を出して面白がっていた。
最後に、終始興していたルークさんとかに挨拶して空へと飛び立った。いつ會うかわからないけど、次の機會があったら乗せてあげようかな。
「そういえば、これでカーブしてるとこまで行かなくて済んだね」
「ギルドホームに直行です!」
「いや、キツいんじゃないか? ほら、改めて見ても相當だし」
川の近くまで飛んだ頃、既に降雪範囲の境い目がわかるくらいには見える。森を抜ける割と前から遠目で降っているのがわかっていた。やっぱり神様降らせ過ぎだと思うの。
「大丈夫大丈夫、私にかかれば! ……って言いたい所なんだけどね。屋作ろうにも複雑扱いされて無理なんだ」
「じゃあシャード君が掘った所の近くに降りる?」
「そうなるね」
「掘った道、完全に埋まってないといいですけど……」
「日にち挾んでアレだから、大丈夫だろう。まあ、神様の言う降雪量の限界がはっきりしないから何とも言えないけど」
しの心配をじながら降雪範囲ギリギリに降りる。出る時はひたすら掘ればいいけど、る時は南側の抜けを探さなきゃいけないから埋まってたら困る。
実際に降りて掘った道を探してみると、り口となる部分が無事見つかった。
見える範囲の道を見通してみると、殆ど下半分は埋まってしまっている。でもだいたいどう掘ったかはわかっていた。
「って訳でまたお願い!」
「……!」
なので帰りもシャード君に頼む。ほんっと雑用ばっかでごめんね?
にしても考えだなぁ……こうなると毎度毎度いちいち掘ってもらう訳にもいかないし。帰りは普段なら転移の石使うから必要ないけど、どちらにせよ行きは通るから結局考えなきゃいけない。
うーん、やっぱりアレかな。私は橫を歩くケイ君をじーっと見つめる。
「な、何ですか……?」
ケイ君はこういう目の時の私が何を言うか、だいたい嫌な予でもじてそうな苦笑いで私の目線に応えた。
「ふふっ、何でもないよ?」
「そう、ですか……それならいいんです」
私がそう返すと、ケイ君は不安と安心が混じった様な聲で話を終わらせようとする。まあ話は続けるんだけどね。
「ところでケイ君、ギルドホームから一番近い山までどのくらいあるかな」
「えっ? 南側に向かって、川挾んで、し……ですよね。それが?」
「でさ。の地下通路ってなんかワクワクしない?」
「ええ。しますね、しますけど! すみません、さっきから話が見えないんですが……」
「わからない? ほら、掘りやすいスコップ作るからさ!」
ここまでヒントを出してあげたら、流石に理解したみたいだ。そうしたら、しだけハッとした顔をした後、ジト目に変わって訝しげに聞いてくる。
「……まさか、俺にギルドホームから近くの山まで掘らせようとしてます?」
「駄目?」
「駄目です」
キッパリ。
ケイ君は即答した。
「そんな態とらしくフードの奧から上目遣いしても無理なは無理ですよ」
「あはは、やっぱりユズは斷られるのね」
「無茶振りだったかぁ。こうなったら……!」
ケイ君に一蹴され、ハープに笑われた私は策に出る。そのつもりだったのだけれど、
「おっと、リンは利用させませんよ。俺は學習するんです」
「ふぇっ?」
くっ、ケイ君に先回りされたっ! リンちゃんに頼んでもらえばイチコロだってのに!
「リンは俺の味方だよな」
「え、あの…………はい」
リンちゃんは一度恐る恐るこちらを確認してから、ケイ君に頷いた。
「ズルいよ、ケイ君!」
「ははは、ユズさんは相変わらず考え無しですね。どうするかなんてすぐわかりましたよ!」
「今回はユズの負けだね」
「うぐ……」
結局、私の案は沒になり、範囲の中から外までの道は後で考えることになった。
そして、一旦の話し合いが終了するとまた別の話し合いがスタートする。
シャード君が掘り終えて柵の側にる。そして、スキー板がしいレベルの積り合なギルドホーム前広場をズボズボ言わせて進み、ようやく帰宅する。
「ふー……あぁ、雪が重い。もう大変だよ」
「フードあるだけいいじゃない。私だけこんな格好なものだから、隙間に雪はるわ風は凌げないわで散々よ」
ゲームじゃなかったら死んでたよ、とハープは嘆く。
「折角作ったのだ。溫泉にでも浸かってきたらどうだ? そのままでは寒くて仕方ないだろう」
「そうする……」
「って言うか、寒さの原因が暖まるように言うんですね」
「む、ラストダンジョンを出す為だ。背に腹は代えられない」
々ツッコみたい所はあるけれど、寒いし私達もハープと一緒にってしまうことにする。
そうしてまた溫泉にる為に外へ出て雪に沈みながら進む。
帰りは超短距離の転移の石で、ギルドホームのり口扉の前まで戻ってくるから大丈夫。
それでも行きはアレなのでとりあえず今回は、神様に気象作をオフにしてもらうことで寒さを緩和することになった。
「さーて、著いたしろー」
バランスを取る為に集中していると別のことに意識が向き始めた。施設から施設への移が難しくて時間がかかる私達のギルドってどうなんだろう、廊下でも増設しようか、とかなんとか考えているといつの間にか所に到著してた。
「皆居る?」
後ろを見遣ると、ハープ、リンちゃん、ケイ君全員いてバッチリだっ……た? あれ、全員?
「うわっ、なんでケイ君居るのっ!?」
「アンタねぇ……覗くのがダメだからって堂々とついてくるものじゃないよ?」
「ちゃっかりし過ぎです!」
「はっ、いやいやそんなんじゃ無いです無いです!」
ケイ君は私達からの攻撃をけて慌てて否定する。
ハープに至っては蔑みの目を向けているけど、そのケイ君はなんて言うんだろう。場合によっては大変なことになるよ、ケイ君。的に言うとアダ名とかアダ名とかアダ名とか。
「じゃあ何だって言うのよ、変態ケイ」
「変態はやめてください…………はぁ、アレですよ。溫泉、お湯って無いじゃないですか」
そういえば。
基本集客してないし、るの私達くらいでその私達もらないから忘れてた。そうだよね、私達の前にった人が居ないんだからお湯れてる筈は無いか。
「ご、ごめん! ……ああ、でもケイは前科があるから疑われても仕方ないね!」
「前科って、私の?」
「だーかーらー! アレは事故だって言ったじゃないですか!」
私の言葉を掻き消す様に全力否定し始めるケイ君は、もう完全にうんざりしている。
「でもドキってしたでしょ。ユズ、私の貧相なのと違って良いしてるから」
「ハープ!?」
「なっ、何が『でも』ですか! ……そんな、覚えてません」
「覚えてない、ってことは確かに々見たってことだよね」
「っ、知りません……! 何が何と言われてもアレは事故です。さ、早くお湯をれに行きますよ」
流石に言い過ぎた、と笑うハープはスタスタ歩いていってしまったケイ君の背中を見遣る。
「そのネタ、私にも気遣ってほしいなぁ」
「あはは、ごめんごめん」
反省してるんだかしてないんだか。笑いで誤魔化す素振りを見せるハープだけど、ケイ君もあんなだし多分もう大丈夫だろう。
それからは特にトラブルも何も無く、無事暖まることが出來た。それなりに歩いたし溫泉にもったし、やることはやった。今日はもうログアウトでいいかなぁ?
「ユズ、何やりきった様な顔してるの? まだエンブレム決めてないじゃない」
……良くなかった。
結局、私は最後の仕事をする為にギルドホームに戻ることになった。
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