《極寒の地で拠點作り》話し相手

「うわぁ、何これ……」

「でっかいですね」

曲がりくねった舗裝されてない道を時折外れながら進むとが見えてきた。し離れているというのにしっかりと見えるソレは徐々に大きくなっていき、最終的に、ここまで大きいのかと思える程のサイズになった。

「なんでこんな大きいが出來たんだろう」

「隕石、とか」

「クレーターってこと? でもその破片が無いし、周りもそんな被害けてるじしないし……」

そもそも隕石なんて聞いたことないよ、とリザさんは言う。

當たりを見渡してもの中は綺麗な半球、周りには私達と同じ様な観客と小さいものの同じく半球の等が無數にあるだけ。何か手掛かりになるものはありそうに見えません。

「やっぱり、プレイヤーですか」

「わからないよ。ボスレベルの敵モンスターかもしれない」

「えっ? それじゃあ今にもこの辺に……っ!」

「あはは、落ち著きなよリンちゃん。こんな大きなだよ? 相當大きな個で目立つと思うんだけどなぁ」

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私が慌てて辺りをキョロキョロし出すと、リザさんに笑いながら諭されてしまった。うぅ、恥ずかしいです……。

「まあ、こんな所にそんなの居ないし大丈夫だよ。だからさ、とりあえずあの立方んとこ行ってみようよ」

リザさんが切り替えてくれたのでそれに乗じて調子を戻しましょうか。まずは元気な返事で!

「はっ、ひゃい!」

「……ふはっ」

直後噛んだ。また恥ずかしい……。

そうして大小様々なの間を通り抜けて例の立方までやってきた。

「こうして見ると綺麗なものね」

「こんな立方、もうプレイヤーですよね」

「うーん、でもねぇ……私もんなとこ回ってんな人とちょくちょく闘ってるけど、こんなの見たことないからなぁ」

そういえば完全に忘れてましたけどリザさんってPKerなんですよね。でも人のを奪いたいって訳ではなくてただ単純に闘いたいだけの様なので、基本的に倒してもアイテムは奪っていないそうです。

それで、そんな數多くの、それも多岐にわたる相手の戦闘方法を闘い抜いてきたリザさんが言うんですから間違いじゃないと思います。

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「まあ自分で否定しておきながら、プレイヤーじゃないとは言い切れないんだけどね」

「かなりレアな裝備持ってる人とかかもしれませんしね…………ってもしかして、ユニ」

「――ねぇ、ちょっと貴方達」

私がある一単語を発しようした丁度その時、立方から聲がかかってきた。

「え? あっ、はい。何でしょう?」

「手伝ってほしいことがあるの。し頼まれてくれないかしら」

のそっと出てきた聲の主はだった。こんな所に一人で居るのですから、この人もこの立方やらやら突起やらを見に來たんでしょうか。

「構いませんけど、いったい何を?」

「そんな警戒しなくてもいいのに……はぁ、とりあえずついて來て」

ため息を吐いて、はすたすたと歩いていった。それをリザさんは警戒を解かずに、私はいつも通りについていく。

數分経つと森の中にり、何処へ行くんだろうと思いながら奧へ奧へと進む彼についていく。

「……」

「……」

「……」

……それにしてもこの人何も喋らないですね。クアイさんとはまた違った、大人しげとでも言うんでしょうか。し気まずいです。

リザさんは警戒を解かないままなので構わないでしょうが、こんな張り詰めた空気は私には耐えきれないので何か話さないと。

「あ、あのっ!」

「何かしら」

は歩くスピードを緩めずにしだけ振り向いて応えた。

「えと……お名前伺っても?」

「あらそういえば、話していなかったわね」

と、彼はここまでと同じ様にハッとした表さえも見せずにそう話すものだから、敢えて話していなかったとも見えてしまう。でもこの人はクールっぽそうなので、これはこれで良いのかもしれません。

そして彼は一呼吸置いてから口を開く。

「『ローズィ』よ。よろしく」

「よろしくお願いします。では今度はこちらですね……私はリン、それからリザさんです」

「ちょ、ちょっとリンちゃん!」

リザさん含めて簡潔に自己紹介してしまうと、リザさんが私に抗議の目を向けてくる。そういえばそうでした、リザさんはまだローズィさんのこと信用してなかったんですよね。私もああいう経験がある以上警戒しないといけないんでしょうが、この人は困っている人、放ってはおけません。

それに、まだ會ってから十數分ですがこの大人しさ含め立ち居振る舞いは極々自然に見えます。ですから、悪いことしそうな人には全く見えないのです。

ローズィさんはこくんと小さく一度だけ頷いて名前を呟く。

「リンにリザね。覚えておくわ」

「っ……あぁ、うん、よろしくお願いしますね」

名前をしっかり覚えられてしまったリザさんは、嘆き気味に諦めて挨拶をした。これで仲良くしてくれれば良いのですが。

「さて、自己紹介も終わった所でそろそろよ」

「え? こんな森の真っ只中に何が……」

木々の隙間にちょっとずつ見えてきたのは一軒の家だった。二階建てで所々苔に覆われている木組みの……あれ、この家何処かで見た気が……。

「私の家よ。さ、上がってちょうだい」

うーん、思い出せない。まあ思い出せないならその程度のことなので、無理に思い出そうとする必要もないから後回しにしよう。

「いいですけど、手伝いって結局何なんですか」

私がローズィさんに続いてお邪魔しようとすると、リザさんはし強めに私がすっかり忘れていたことを問うた。多分ですけど、目的を知らずに相手のテリトリーにるのは危険だとじたのでしょう。

「やっぱりきちんと言わないと信用されないものね……そうね、『話し相手になってほしい』って所かしら」

「……は?」

「二度も言わせないで」

ローズィさんはしイラッとした聲でそう言い放つと、くるりと半回転して家の中にっていった。

どうすることも出來ないので、私達はとりあえず言われた通りってしまうことにする。

「お、お邪魔します」

「ん? ローズィ様、お客さ……痛ぁっ!」

「へ……」

ええ、することにはしたのですがここで一つ問題が。ローズィさんに連れられた先のリビングで、何やら人影が低めのテーブルの下でいているのが見えました。その人影は私達の存在に気づいたらしく、テーブルがガタンと大きな音を立てる程頭を強く打ち付けバタバタとのたうち回っています。

「はぁ、相変わらず他人様には見せられない駄犬っぷりね」

「あの、そちらは?」

「紹介するまでもない馬鹿な従者よ。だから気にしなくていいの」

そこで悶絶してる男の人への突然の罵倒に対して私が聞くと、素っ気ない口調で変わらずの無表で流そうとする。

しかし男の人は、それを許さないとばかりに立ち上がってから反論に出る。

「そんな! もうちょっとちゃんと説め――」

「黙りなさい、駄目犬」

「せめて最後まで言わせてくれても……」

が、ローズィさんの一言によって一瞬で敗北。抗議なんて許されなかった。

「貴方もわかっているでしょう? 私は煩いのが嫌いよ」

そしてローズィさんは、早く失せなさいと追い討ちをかける。

「うっ……で、ですがまだ掃除が」

「ならとっとと終わらせて。さもないと八つに分けて埋めるわよ」

何かすごい騒なことを言い放って、すっかり勢いを失った彼はとぼとぼと元の位置に戻っていった。

ローズィさんはというと、何も無かったかの様な顔でこちらに向き直ってそこにある椅子に座るよう促してきた。

「ごめんなさい。あんなのでも従者なの」

「安心してください。他人ん家のルールにどうこう言うつもりはありませんから」

従者って言い方とか彼に対する扱いとか気になることはあるけれど、私もリザさんに同意見なので一緒に頷く。

「それで、話し相手でしたっけ」

続けてリザさんが本題へと話を切り替える。

「ええ、そうよ」

「でもどうして私達なんですか? さっきの人も居るのに」

「言ったでしょう。アレは従者、話し相手になんてなるものじゃないのよ」

そういうものなんでしょうか。従者とかそういう存在は伽噺でしか見たことがないのでよくわかりません。でもあの扱われ方は々可哀想に見えますが。

というかそもそも気になることが多過ぎるのでルールに意見しない範囲で聞いてみようと思います。

「あの、従者って言いましたけどどうして従者なんですか?」

「ああそれ、私も気になった! だってあの人、プレイヤーじゃないし」

まずは何故主従関係になっているのかについて。

リザさんの言う通り、今も何処かの部屋でガサゴソ音を立てて掃除をしているであろう彼はアイコンがプレイヤーではなかった。でも、かと言ってちゃんとしたけ答えが出來ていたのでNPCという訳でもない。

「どこから話せばいいのかしら……とりあえず私の期から?」

「そんなに前!?」

「冗談よ」

ふふふふふ、とローズィさんは笑う。

ローズィさんみたいな人が冗談言うことにも驚いたけれど、それよりもその笑い聲が、口元がし緩む程度で殆ど表変えずに放たれていてちょっと怖い。

「で、本當の所は?」

「……空から落ちてきたの」

「え?」

「それで、『家も建てるし家事全般やる。だから住まわせて』ってだけ言われたの」

それだけ聞いてると訳がわからない。落ちてくる? 家も建てる? 家事全般やる? ……ますますわからない。

だけど、私がそれを理解する間もなくローズィさんの話は進む。

「私もその時はNPC相手のクエストだと思ってたのだけれど、いつまで経っても達されない、け答えが出來るだとかで不自然に思ったの」

「それで本人に聞いたんですか?」

「いえ、聞いてないわよ」

「えっ!」

思わず聲を出してしまった。まさかローズィさんも知らないとは思ってもなかったから。

「詮索するつもりは無いわ、興味無いもの」

「そ、それで大丈夫なんですか」

「大丈夫よ。今も今までもずっとあんなじだから」

となるとこの狀態は、得の知れない人をプライベートな空間に引きれて更に従者にしちゃってるってことになる。ローズィさん、々すごい。

ここまで來るともしかすると名前さえ知らないかもしれない、と思って聞いてみたら、

「アレは自分で『ケーフ』と名乗っていたわね」

と、それは流石に把握していたらしく安心しました。まあ、そうじゃなかったら可哀想で堪らなくなっちゃいますよね。

そうして暫く楽しく話した後のこと。

「あの、ローズィ様……」

部屋の奧の方から現れたケーフさんが恐る恐る話し掛けてきた。ここでローズィさんは例によって罵倒し始めるかと思いきや、

「……っ、來たのね。ケーフ、さっさと叩き潰してくるから」

「了解しました」

「え? あ、ローズィさん?」

鋭い目で外を見遣ったと思うと、立ち上がって玄関へと歩き始めた。そんな変化に訳もわからないまま、私は立ち上がって止めようとする。

「何があったんですか?」

変わってリザさんは落ち著いており、いつも通りの調子で問うた。

「來たのよ。獣共、もとい敵さんがね」

「敵さん?」

敵というと、そのまんまでしょうか。獣というからには敵モンスターでしょうし。

「私なら大丈夫よ。ついてきたいなら別に構わないけれど」

すると、ローズィさんからついてきてもいいと許可が出た。よくわからないままだけど、敵モンスターが近づいているなら手伝わない理由は無い。私はほぼノータイムで応える。

「ではお願いします。リザさんも來ますよね?」

「え? ああ勿論、うん、行くよ!」

「わかったわ。じゃあ二人共、ついてきて」

こうして私はリザさんと共に、ローズィさんの後についていった。

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