《極寒の地で拠點作り》結束

「いきなり呼び出してすまんな。ああ、そこの椅子に座ってくれ」

「う、なんか張する……」

の會ギルドホームの會議室、長いテーブルに多くの椅子が據えられている。そこに何処かの偉い人だろうか、私にはわからないけど全員が口を開くことなく真剣そうな顔をして座っている。

私達がその一角に腰掛けたのを見計らってブラストさんが話し始める。

「同盟の皆、今日は集まってくれてありがとう。早速本題にりたい所だが、先に紹介だな」

そうしてブラストさん側の人達から紹介されていく。どうやらこの人達は別のギルドの人達の様で、騒の會は傘下のギルドを持たない代わりに大ギルドや大ギルドよりの中ギルドで同盟を組んで急時に結束するようにしているらしく、今ここに居る面々はその所屬ギルドの団長さんらということらしい。

そんな狀況の中、私に聲がかかった。

「えー、でさっきってきたのがユズちゃん、和みの館の団長だ」

「よ、よろしくお願いします」

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するとあまりピンと來ていないらしく、騒和同盟という小ギルドと一対一の異例らしい関係がより怪しくさせている様で団長さん達は訝しげな顔をしている。

「恐怖の魔、って言えばわかるか」

そうブラストさんが付け足すと、周りから『あぁ』という反応が起こった。私やギルドの名前よりも渾名が先行するって、名前が名前だけにただ印象悪くするだけなんだけど。ただ、そういった懸念を他所に皆さん、

「うん、でも思った程……」

「なるほど、この子がねぇ」

「恐怖とはまた……どうしてそんな?」

と、良い反応を示してくれた。その調子その調子、と考えていたら、

「ああ、意外だろ? こんなでも結構エッグい技使ってくるから安心して戦力に數えていいぞ」

ブラストさんが笑いながらそれを壊す様なことを言うものだから早々にイメージアップ出來なくなりそうなんですけど。

というか今気づいたけど、私の友関係が騒の會とソード&マジックとその他諸々までしか無い上に私が大きく存在を公衆に曬したのってあの第一回イベントの時だけで、その時に恐怖の魔と呼ばれる程の行をしてしまったものだから噂が一人歩きして凄い容の尾ひれが付いたり、先行したりするのだろう。

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まあ、渾名の印象が強過ぎるおで普通に道を歩いていても最近は殆ど気づかれなくなったり、記憶が薄れてしっかり顔や容姿を覚えている人が減ってきているみたいで行しやすくなったので悪いことばかりでは無いかもしれない。

とりあえずイメージアップがどうのというのは、後からどうせ技を使う所は見られるのでいいとして、どうやら本題にるらしく、ブラストさんは再び真剣な表に戻ったので話を聞こうと思う。

「それで本題だが……一言で言うと、大変なことになった」

「というとやはり?」

手前の妙齢のがブラストさんに問う。

「ああ、全員察しの通り、『紅蓮連盟』が宣戦布告してきた」

紅蓮連盟、ついさっきあの五人が話していたギルドかな。

「律儀なのか我々を舐めているのか……」

「まあどちらにせよ、相手が大変な脅威だってことには変わらないな」

そして唸って俯いてしまい、室がすっかり靜まり返ってしまった所で私達四人を代表して、恥ずかしながらその重い沈黙を解く様な質問をしてみようと思う。

「あの、その『紅蓮連盟』ってどんなギルドなんですか?」

すると団長さん達は顔を九十度回転させて、こちらを一瞬有り得ない、みたいな表になった。

だってしょうがない、私達田舎ギルドなんだもの。ご近所さんどころか通りがかる人もそうそう居ないから気軽に世間話なんてのも夢のまた夢。東や西や南で何が起ころうが吹雪の音で掻き消されてなんにも聞こえない。

そんな生活してるから、街とかに出ても他ギルドの名前なんてそもそも気にするようになんてしていないのだ。というかそんな立地にしたの元はと言えば私のせいだけどね。まあ、報以外は殆ど何とかなってるので良しとしよう。

「あ、ああ、紅蓮連盟ってのはな……何処から話せばいいんだ?」

「あ、えっと、確か街の掲示板に勢力拡大云々って言うのは、はい、見たことあります」

ブラストさんが若干揺しながら困っていると、突然リンちゃんが思い出した様に存知だと言い出した。これには名前さえ知らなかった私達三人は目を見開いて驚いた。

「えっ、リンちゃん知ってたの!?」

「い、いえ、先日見かけたのが初めてです」

「おっ、そうだ! ユズちゃん達さ、俺達が初めて會った頃にギルド防衛を手伝ってもらったの覚えてるか」

「忘れるなんてそんなこと、自壊なんて見たのアレが最初で最後ですし」

「へえ、自壊、そんなこともあったんですか」

「あ、そういえばあの頃まだケイさん居なかったんですよね」

皆、思い出話の様に話しているけれど、やはり何処か記憶が欠落している。何故か私だけが覚えているタクトという年のこと。彼がその自壊手段を取ってギルドを破壊したこと。

そのことじゃないにしても、それがいったい何だと言うのだろう。

「あのギルドの傘下は相當數あっただろ、それこそ東にも西にも南にも。その中で一部が集まり協力して徐々に力を持ち、復興し始めたのが『ギルド群・紅蓮連盟』だった」

「だった?」

ブラストさんは何か含む様に強調して言った。

「ああ、そうだ。そんな狀態も過去のこと。連盟とは名ばかりの一強、何を思ったか集合一つがある日突然仲間のギルドホームを襲撃・攻略、一瞬にして群れは一つに飲み込まれたそうだ」

聞けば騒から數か月経った今も勢力は拡大中で、取り込んだギルドは數知れず自ら隷従して傘下に降りるギルドもなくないという。そんな中、ブラストさんは新生紅蓮連盟が勢力を広げ始めた辺りで脅威を察知し、互いに不可侵協定を結んだらしい。

「それでブラストさん達はそんなギルドに絡まれた、ってことですか」

「絡まれたってレベルじゃないけどな。下手を打ったらマジで例の本が完結するんじゃないか」

例の本というのはあの興亡についての本のことだろう。つまりブラストさんはそれほどまでに危機をじているということだ。同時にあのブラストさんが危機を持っているってことは、相當に彼らは強敵なんだろう。

「そういえば大元の原因って何なんですか。ここに來る前、紅蓮連盟を名乗る五人組に絡まれて聞き出しましたけど……話してくれた中で一番恨みがましく答えてきたのが、チートアイテムを売りつけられたってことだったんですけど」

「おおぅ、まさかそこまで把握されてるとはな」

流石だな、とさも驚いた様にブラストさんは嘆して、それからニヤリと口元を歪ませた。そんな悪役めいた態度を取るものだから私達は驚いて、

「えっ、まさかブラストさん?」

「ははっ、冗談だよ。俺がそんなまどろっこしいやり方すると思うか?」

そうして尚も笑い続けるブラストさんだけど、仮にほんとだったらこの場の団長さん達を含めて敵に回していたかも、そう考えると危ないのなんのって。

「……それで、まあだいたいユズちゃんの言ってくれた通りだよ。俺は奴らとそんな取引した覚えは無いし、他に何のトラブルを起こしてもいない。完全に言いがかりだ」

ブラストさんは団長さんの一人に咳払いをされると、真面目な態度に戻るとそう淡々と話しだした。それに対し、ケイ君は問う。

「となるとアレですか。戦いを仕掛ける大義名分がしかったってことなんですかね」

「そうだろうな。奴ら、あんな形で強引に力を得たってのにこの期に及んで正當を論じやがる。何にせよ、こんなやり方卑怯過ぎる」

ついさっきまでふざけて笑っていたのとは打って変わってその眼には激しい憤りが見て取れる。すると、ブラストさんは改まってこの場にいる全員に真剣な表で話し出し、

「悪い皆、力を貸してくれ! 既に俺達、騒の會の手には余るものとなってしまった。普段カッコつけて、『俺達の問題は俺達で』とか言ってるが今回ばかりは正直キツい。本當にけないことだがすまない、協力してくれ! 頼む!」

と、言葉を強く顔を真っ赤にして終いには頭を下げてしまった。

すると、一番前に座っていた男の人が、

「ブラストさん、そんな頭を下げないでくれよ。この場に居る人間はそんなことしなくとも武を掲げてあんたの為に戦ってくれる。そうだろう?」

彼がそうして私達の方を見ると、全員當然の様に肯定の言葉をそれぞれ口にした。

「み、皆……ありがとな」

「いいんですって。ほら、この中で一番強い人がそんなでどうするんですか」

「ふふ、ブラストさん、照れてるのよ」

「あ、マジ? 俺良いこと言い過ぎちゃったか」

「いや皆、そもそも俺照れてないから!」

ブラストさんが言いつつ照れて弁明しようとすると、皆して笑い出した。

団長さん達がそんな絡みをしているのを見て、団結してるなぁ、と私はしみじみとじていた。そこにはやっぱりブラストさんの人の良さが関わってきてるんだと思う。

そんな和気藹々とした雰囲気のまま會議は纏められるかに思えた。

「団長っ!」

バンッ、と扉を開く大きな音と共にびとも取れる必死さの籠った聲が突如、會議室に響いた。これには楽し気な空気も引っ込んでしまい、代わりに張が辺りを包む。

「どうした」

さっきまでの様子からは一変、冷靜に騒の會の団長としての佇まいになった。

ブラストさんから問われ、息も絶え絶えに答えようとする団員の人の口から紡がれるだろう言葉は、そうしてこの場の誰もが予想していたものと同様の答えとなる。

「てっ、敵襲! 奴ら、紅蓮連盟です!」

こうして、全員の張が高まると同時に戦いの幕が切って落とされた。

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